OrverLord ─始祖の吸血鬼─   作:ブラック×ブラック

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原作を読んでいないので帝国が魔導国の属国となり、旧帝都の名が解らないので自治区とさせていただきました。
ご存知の方がいらっしゃいましたらコメント下さると嬉しく思います。(変更します)
自治区名が長すぎたので

魔導国旧帝国領内アーウィンタール自治区
        ↓
魔導国旧帝都アーウィンタール自治区

に変更しました。


第七話  魔導国旧帝都アーウィンタール自治区-1

嘗て栄華を極め繁栄の一途を辿ったバハルス帝国。

無能な貴族達を排し、鮮血帝と恐れられながらも国民の暮らし向きを良くする為の改革を断行した人物。

 

能力主義─。

 

それを謳うだけなら簡単だ。

才ある者は例え平民でもと言う皇帝に対し貴族達や保守派閥が妨害工作をしてきたであろう事は想像に難くない。

暗殺計画が密かに計画されていたかも知れないだろう。

そんな困難な状況下で彼は、見事にやり遂げた。

 

バハルス帝国 最後の皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。

 

この改革に関して言えば、好感を抱ける尊敬すべき人物だ。

彼は、指導者としてあるべく理想の姿を追い求め、施策を実行する事でより良い暮らしを国民に届けたのだろう。

最後の皇帝と呼ばれた男は、日々仕事に明け暮れていた苦労人だったと報告を受けている。

魔導国の属国としての道を選んでからは彼にも余裕が出来たのだと聞く。

亜人種のペ・リユロと言う、生まれて初めての親友を得る事が出来たそうだ。

 

対して私はどうだろうか…。

 

ただ、この地で始祖として覚醒し、知能や身体的能力は特別な事をしているわけでも無く、極めて高い『ユグドラシル』時代のステータスを引き継ぎ、正直『化け物』である。

ゲームを楽しむ為に時間と多くのお金を費やした。

まさに『重課金ゲーマー』『ゲーム廃人』ここに極まれりと言わんばかりの人生だ。

だからこそ『ユグドラシル』サービス終了が告げられた時のショックは今でも忘れない。

 

正直に言ってしまえば、課金の為に働いていた。

知らない誰かが他の趣味や何かにお金を費やす様に、私には『ユグドラシル』がそれだった。

 

そう考えるとジルクニフの苦労に比べれば、私のそれはちっぽけなものだろう。

街外れの歴史深い教会が今は彼の寝室であり安らかに眠る墓となっている。

羨ましいとは思わない。

彼の功績を考えると当然の事だろうと素直に思えるからだ。

彼は人生をしっかりやり終えた。

そして眠りについたのだろう…。

 

 

((まったく大したものだよ。))

 

 

旧バハルス帝国の帝都アーウィンタールを散策してみると誰もが目にする事が出来る。

街のいたる所にかの皇帝の業績を称える石板があり、その内容が記されている。

彼の功績、そして生きた証と言う訳だ。

散策を終えここに辿り着いたのは、太陽が没しようと喘ぎ空を赤く染める黄昏時だった。

 

 

この地へ来て抱く初めての罪悪感。

転生万歳と喜んでいた。

勿論今も変わらないが、こんな思いを抱くとは思ってもみなかった。

当然だ、かつての現実では架空の種族。

映画、小説、漫画、アニメやゲームに登場する彼等は、悪の権化として描かれる事が多い。

 

そんな彼等が眷属を作る時の心情はどんなものだったのだろうか。

長い時を孤独に生き抜く術として寂しさを紛らわせる為だろうか。

食事をとった副作用として意図せず眷属と言う形になったのだろうか。

それともよくある吸血鬼貴族の派閥拡大の為か。

ただの作業でしか無かったのだろうか。

その全てか、想像もつかない何かがあったのだろうか。

 

この罪悪感も、この地で始祖として長く生きていく時の流れの中、薄れていくのだろうか。

『本物の化け物』になる前に、人間らしさが残っているほんの少しの時だけは、この罪悪感を抱きそれと向き合おう。

 

「私は、始祖の吸血鬼。」

 

彼等の頂点に君臨する存在として、胸の内にある憂いを断ち切ろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジルクニフ。君をこんな形で起こしてしまった事、申し訳なく思うよ。」

 

 

 

埋葬時には、きっと豪奢な衣服をまとっていたのだろう。

それも腐食し原型が解らない様になっていた。

装飾品はそのままだが、こちらは汚れが酷い。

遜色の激しい衣服であったろう布切れの下には、しわ枯れた肌では無く、白く若返りを果たした肌が覗く。

最後の皇帝ジルクニフは、眩しそうに顔に手をあて夕日を遮っている。

まだ、夢の中にいるような顔だ。

 

そろそろ、ナザリック地下大墳墓から帰還したヒルデリアが待ち合わせの場所にいる頃だろう。

アイテムボックスからスーツ一式とコートを取り出しジルクニフに投げ渡す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本来であれば、ここでお別れなのだけどね。」

 

 

そう伝えると途端に不安そうな顔をする。

訳もわからない状態で放り出されたら誰でもそうなるだろう。

ゲーム時代、対人戦だけでなくロールプレイも好きだった。

私は、『種族:始祖の吸血鬼』を獲得した時、自分のアバターに勝手な始祖設定を作っていた。

それをさも当然かのごとくジルクニフに伝る。

君の知らない事を知っているのだよ。

どうだい、博識だろう?と、笑みを浮かべてみる。

 

自分設定のプロフィールを他人が、しかもゲームを知らない人間が知る術は無いのだから当然であり、博識でもなんでもない。

ジルクニフはポカンと口を開け、私と異なる吸血鬼の赤い目で私を見ている。

 

((それは、あれか?

 痛い奴を見る目か?

 それだけはやめてくれよ!

 この世界でそんな目で見られたら耐えられないじゃないか!))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの…。」

 

 

見た目の年齢は、おおよそ二十五から九といったところか。

ジルクニフにも聞きたい事は山ほどあるだろう。

困難な人生を終え最後にはきっと達成感にも似た何かを抱き逝ったのだろうから。

勝手に蘇らされて憤慨しているかも知れない。

ナザリックに物見遊山で挨拶に行くのは、本来私だったのだがヒルデリアとルゥがそれを止めた。

代わりにヒルデリアが行くと言い出す始末だ。

彼女の自主性を尊重しようと決めたのだけど…。

 

なぜ止めるのかは分からない。

 

対人戦好きの私がナザリックに一人で戦争を挑むと考えたそうだが失礼な話である。

こんな素敵世界で、家族すらいない私が『娘達』を持ち家族を得たのだ。

無暗に彼女達に危険が及ぶような行為は取らないと思うのだけどな…。

それでも止められたのだから他にも理由があるのだろう。

ヒルデリアはよく出来た子だ。

私には見当もつかないので後で聞いてみる事にした。

 

 

「ジルクニフ。

 聞きたい事は山程あるだろうし、私はそれに応えたいとも思っている。

 勝手に起こされて、私によく無い感情を抱いているのかもしれない。

 だけど、今はこう言わせて欲しい。

 

 『真祖への覚醒おめでとう』と。

 

 私はこれから大切な用があってね。

 いつでも構わない、君も知っているだろう『グリモワール大迷宮』の事は。

 いつでも歓迎するよ。」

 

 

 

 

そう言うと夜空を切り取ったかのようなロングコートと腰まで長く手入れされた白銀色の髪を持つ

男は、見た事も無い優雅な動きで立派なシルクハットを取りジルクニフに挨拶をする最中に、どす黒い煤に姿を変え北東の空へ去った。

端正な顔立ちをした男の瞳が不思議な緑色をしており、猫のような縦線があった事に気付いた。

その瞳を覗いた時、かつて感じた事のある『凄まじい恐怖と絶望』とは異なる『畏敬の念』を感じ

た。それは最早、『崇拝』と呼べるものだろう。

 

徐々に意識が明確になり思考が回転をはじめる。

 

 

なんだ…なんなんださっきの男は…。

皇帝である俺を呼び捨てに…。

 

違う!そんな事ではない!

 

最早人間では無いジルクニフには本能的かつ身体的にあの男が上位存在だと理解していた。

この若々しい体も彼がもたらしてくれたのだろう。

 

 

それに、彼は『グリモワール大迷宮』そう言ったのだ。

 

ん……そうだ。グリモワール大迷宮だ。

 

 

アインズの出現と共に色々調べた。

あの『御方』に俺は、かつて助力を乞う事を提案したが誰かが止めるので疑問に思ったのだが…。

あれは、確か…フールーダだ!爺が止めたのだ!

 

帝位につく事で初めて知らされる帝国を裏で牛耳る大貴族が大迷宮にいた筈だ。

 

あの『御方』は一部の者しか知らないその名を口にした。

すると先程の『御方』がグリモワールの主なのか?

強大な力を抑えているような印象も受けた。

 

…あの『御方』は不老不死の化け物…なのか…?

 

 

いや、アインズの例もある…。

アインズ・ウール・ゴウン魔導国、アイツはどうなった!!!

 

 

間違いなく俺は死んだ。魔導国の属国として終えてしまったが人生を全うした。

その筈だ…。

だが、もっと時間が欲しかった。力が欲しかった…。そう願っていた。

 

ジルクニフの頭の中は”グワングワン”と言った感じで激しい頭痛にみまわれ、時間間隔が狂いそうになりながら生前の記憶を思い出そうとする。

自身に向けた激しい感情に支配されそうになった。

アインズに従属化を告げた後は気楽に過ごせたし、存外悪い事ばかりではなかった。

リ・エスティーゼ王国のような結果にはならなかったのだ。

友人も得た。

万々歳ではないか…。

 

 

 

 

 

 

 

「何が万々歳なものか!!!」

 

 

 

ジルクニフは愚かではなかった。

自身の変容は既に理解している。

人間とは違う、『何か』に変わった事を。

力が漲るこの肉体、だがその能力は解らない。

解らなければ、力が無いのと同然だ。

頑丈な若々しい肉体。

ただ、ジルクニフはそれだけで満足するような男では無いのだ。

説明を求める程度であればあの『御方』はお許しくださるだろう。

何をすべきか、どこへ向かうべきなのか、与えて頂いた衣服を着用しながらグリモワール大迷宮のある北東へと歩み始めた。

 

 

 

──────────────

   どことも知れぬ街

──────────────

 

『蒼の薔薇』

 

その名を関する冒険者達。

彼女達と過ごした時は、大切な宝となり今も鮮やかな思い出として彼女の中で生き続けている。

 

『国堕とし』の二つ名を持つ大吸血鬼。その二つ名を知る者はもういないだろう。

 

悠久の時を生きる吸血鬼にとり、彼女達の様な仲間と呼べる者達との出会いはそう無いだろう。

 

 

不老の化け物なのだから…。

 

 

魔導国にくみすれば…。

街の人々の安全を守るため、魔導国の傘下に与した憧れの『漆黒の英雄モモン』の詳しい話しを聞けるかもしれない。

だが、人類最強の英雄であれ人間種であれば寿命がある。

彼が生き続けられるであろう時は既に過ぎさっているのだ。

 

きっと死後も冒険に明け暮れているのだろう。

彼を思い出すたびに自然と柔らかな表情になる一瞬を彼女は愛しているのだ。

 

魔導王はきっと復活呪文を使えるだろう。

だが、彼女の知る彼は、誇り高く決して人間を捨てるような人物では無いのだから。

 

魔導国が王国を滅ぼしにきたあの日、イビルアイと呼ばれた少女の姿をした吸血鬼は、かつての素晴らしい仲間達と共に逃げた。

そして王国から遠く離れた土地で、しばらくの間は仲間達と冒険者を続けていた。

やがて仲間達も老い、そして今は安らかに眠っているのだろう。

仲間達に吸血鬼化を薦めた事が一度だけあった。

彼女達は、礼を告げた後にその申し出を断り、自分達と言う仲間がいた事を時々で良いので思い出して欲しいとイビルアイに告げたのだ。

吸血鬼化を薦めたのは、その時一度きりだ。

嘗ての仲間達もまた人として誇り高く生き、そして逝ってしまったのだ。

彼女達との約束を胸に、吸血鬼は旅に出たのであった。

 

 

 

 

「私が生き続ける限り、オマエ達は私と共に生き続けるんだからな…。」

 

 

 

 

キーノ・ファスリス・インベルン。

怪しい仮面をつけ、大切な仲間達といた当時の姿そのままでいるのだから、少しぬた所はあるが、今の彼女は、『イビルアイ』の名を捨てていた。

 

イビルアイの生存。

 

そんな話が魔導国に伝われば、冒険者を集めていた魔導王だ。

『蒼の薔薇』に所属していた人外の者の存在は把握していて当然だと考えるべきだ。

だが、永遠の時を生きる吸血鬼であるとは知られていない筈だと彼女は考えている。

ゆえに、旧リ・エスティーゼ王国付近。魔導国領内にはなるべく近付かないようにしているのだ。

 

漆黒の英雄モモンの情報は、吟遊詩人達が今尚謳い続ける英雄譚でのみ聞く事が出来る。

極大級魔法詠唱者の気配を消しさり、酒場の隅にある暗がりの席を選ぶと少しのアルコールを嗜むようにグラスを口に運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒場の隅にある暗がりの席、そこで聞いていた吟遊詩人が奏でるモモンの英雄譚。

『実際は、もっと凄かったんだぞ。』と、ほくそ笑みながらアルコールを口に運び瞳の裏に焼き付いた『漆黒の英雄モモン』の勇ましい姿を思い浮かべていたその瞬目、凄まじい力に抑え込まれた。

その圧に潰されそうになりながら”ガタン”と大きな音をたて眼前のテーブルに両手を置き体を支える。現状の把握に努めるよう心掛けるが何も出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((まさか、魔導国か…!この圧は…魔人…魔導王…一体なんだ…!!!))

 

 

グラスは、テーブルの上でクルクルと回り、液体である筈のアルコールは零れ落ちる事もなく、まるで透明の物体と化し、元からそこにあった装飾のようにグラスと一緒にありえない程ゆっくり回転している。

 

冒険者を集めていた魔導王。

キーノは、魔導国に対し良い印象を抱いていない。

そんな者がかつてアダマンタイト級冒険者として知られていた。

 

ならばここへ訪れた目的はただ一つ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((滅ぼされる!!))

 

 

 

 

 

そう感じたが、不思議と恐れはなかった。

仲間達の元へようやく逝けるのだ。

そして、叶うなら『あちら』でも蒼の薔薇として冒険を続けたいと願った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ。君、人間ではないね?」

 

 

そう尋ねられた。

その後、先程迄彼女を支配していた圧し潰すかのような途方もない力は消えさっていた。

即座に立ち上がり周囲を見回すが、先程迄と同じく酒場は賑わいを見せ、アルコールに酔い饒舌に仲間達と語り合う酔っ払い共の姿を確認できる。

吟遊詩人も変わらず漆黒の英雄譚を謳っている。

 

((一体先程の『アレ』はなんだったのだ…。))

 

アルコールを飲んだせいなのだろうか…。

で、あるならば今日は飲み過ぎている。

アルコールを完全無効化出来ないまでも耐性はある。

だからアルコールを楽しむ事が出来る。

小さな体で無理をして2,3本のボトルを空け、ようやく酔いを楽しむ事が出来るのだから今日は相当飲み過ぎたのだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*カツ・カツ・カツ*

 

 

 

酒場の喧騒の中、やけに鮮明に聞こえるピンヒールの歩行音が近づいてくるのが分かる。

 

 

((酔っていたのでは無い!!何かが近づいてくるぞ!間違いなくここへ来る…。

 なんだ、このオーラは…。魔人か!?))

 

 

混乱していたが、この場から即座に立ち去らなければならない事だけは理解できる。

 

 

((あんなモノに滅ぼされるなら魔導王に一矢報いた方がまだマシだ!!

 一刻も早く転移魔法で立ち去ろう!

 モモンの英雄譚を謳っている吟遊詩人、酒場の人達………。))

 

 

 

 

 

「クソッ!!!」

 

 

 

 

キーノは、最大級の威嚇と警告を込め叫び凄んだ。

 

 

 

 

「おい、お前!そこで止まれ!

 い、いや…外に出ろ!!!」

 

 

 

酒場の喧騒の中、キーノの声が特出して響く事は無い。

賑やかな場所と言うのはこう言う時に問題だと思う。

近付いてきた女は、少し困ったような表情を見せその場で立ち止まった。

 

 

 

「何者だ!

 オマエ魔導国の手先か!?」

 

 

 

『魔導国』この単語がいけなかった。

 

アルコールを楽しんでいる酔っ払い達の酔いを一気に覚ましたのである。

せっかくの気分を台無しにしてくれたのはどこの誰だと酔っ払い達は周囲を見渡し酒場一角の暗がりで目がとまり釘付けとなった。

テーブルの奥には、怪しげな仮面をかぶった旅人風の少女が、少し離れた場所には背中が割れ素肌が露わになっている豪華なドレスをまとった金髪の女と対峙している。

この状況は余り宜しく無いのではなかろうか…しかし、人間とは残酷なものだ。

怖いもの見たさからか『魔導国』の手先と呼ばれた女が旅人の少女に何をするのか注視し、ただその時を待っている。

 

 

まるで見世物小屋かのように…。

 

 

 

「…人間と言うのは…。

 外ですか…申し訳ございませんが、お断りさせて頂きます。

 私は魔導国如きの手先ではありません。

 貴女の元に訪れたのは主様の願いだからです。主様は、貴女とお話がしたいそうなのです。

 主様の元迄、素直に来て頂けると私としては助かるのですよ。」

 

 

『魔導国如きの者ではない。』ただそれだけを答え、淡々と主の意向を有無を言わさず伝え、主の言に従うのが当然だとでも言うかのような態度だ。

目前に現れた豪華なドレスをまとった女は、胸の前に手を当て腰を折るとクルリと反転し、キーノにその後に続かせるよう優雅に歩き出した。

この女が歩くその先には『主様』とやらがいるのだろう。

 

((魔導国如きだと…ふざけているのか…))

 

先程の『人間では無いね』とキーノの正体を言い当てた声の主。

低いが決して威圧的ではなく、なぜか心地よいとさえ感じた声の持ち主がこの女の『ご主様』と言う事なのだろう。

前を歩く女は、社交界等にいる淑女とは違う。

高価なドレスをまとってはいるが一部の隙も無い。

仮に後ろから攻撃姿勢に入ろうものなら即座に確実な『死』が待ち受けているだろう。

 

まだ死ねなくなった。

 

この女の『主様』とやらを見てみたくなっていたからだ。

キーノを二階席へ案内すると、奥の暗がりに端正な顔立ちをした不思議な双眸を持つ男が優雅に腰をかけている。

 

 

 

 

 

 

 

「かけて欲しい。」

 

男が静かにキーノに席にかける様にうながした。

 

先程聞いた声と同じだ。

キーノは、即座に先程の言葉に魔法が込められているのだと理解した。

自身が極大級魔法詠唱者であるからこそ導き出せた考えである。

これは重力系の魔法だろう。

 

((無詠唱で魔法を行使するとはとんでもない…。『化け物』どころの話ではないぞ…。))

 

 

 

 

 

「私の名は、バルディアだ。

 そして君をここへ案内した彼女は、ヒルデリア。

 私の娘だよ。綺麗な子だろ?

 

 なんでも好きな物を頼んでくれても構わないよ。

 安酒場で申し訳ないのだけどね。」

 

 

 

 

((ん~?なんだ?この状況は一体なんなんだ!!!

 この男は間違いなく魔導国の者だろう!))

 

 

 

 

「なら、厚意に甘えさせてもらうぞ。」

 

 

その言葉にドレスの女が形の良い眉を僅かにひそめたのが分かったが、注文の品が届いていない状況で話を終えるとは思えない。

何か明確な目的がある筈だ…そう、例えば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君、吸血鬼だね。」

 

 

 

 

((なっ!!!!))

 

 

 

 

 

「ははは…吸血鬼だと…?」




皇帝様とイビルアイちゃんの登場
ジルクニフはよく頑張ったと思います!

キーノ・ファスリス・インベルンと言う名前を少しの間つかわせて頂きます。

楽しんで頂けたなら嬉しく思います。
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