我輩はウマ娘になったポケモンである。 作:てょわわわぁ~ん
我輩は元レイスポス。名前はシャドーレイス。今は一介のウマ娘である。
雪の降り募るとある地にて、下らない矜持の果てに決別した王と幾百年かの時を経て和解した、王の双馬の片割れ。それが我輩であった。
好物の趣向からくる論争というものは、今にして思えば、本当に下らない話である。
話がズレた。
我輩は産まれながら、諸事情の為、車椅子生活を余儀なくされていた。むべなるかな。
足首の関節がすっからかんで、その先の骨もない。加えて、盲目であった。
しかし、我輩は立つことも出来れば、走る事も出来るのである。
かつてはポケモンと呼ばれた存在であるからして、持たざる者からすれば超常的な能力を持っているのは当たり前の話であり、そもそもそういう脚のつくりをしていたのは昔からであるのだ。
医者は、それは、それはもう大層驚いた様子であったし、鈴の音のような足音を刻む我輩の脚を食い入るように観察していたらしい。
なんなら走っても見せたが、こればかりは両親に強く叱られてしまった。
今にして思えば、両親からよく見離されなかったとつくづく思うのだ。体の作りが他と違う。目も見えぬ。そして超常的な力を持つ。不気味だっただろうに。
それを何の躊躇いもなく愛し続けてくれている両親には、只々頭が下がる思いである。
兎も角。そう言った『現代の人体科学、バ体科学でも計り知れない「何か」を持つ、ウマソウルの存在を語る上で外せない素養を持つ希少なウマ娘』として年に何度か研究施設で何らかのデータを採りながら、同時に『万が一の事故というのは万が一であるが故に、どうしようもなく起こり得る』と、この研究に参加しているウマ娘……GI勝利経験があるが、トレーニング中の骨折により引退せざるを得なくなったらしい……に熱弁され、その熱意に押され、必要な時以外は車椅子生活を続けているのだ。
まあ、確かに。我輩はレイスポスであったからして。人間たちの区分けで言えば、ゴーストタイプの色を持っていた。
なれば、人の魂、幽霊、或いはそれとは別に。ウマソウルと形容される『ウマ娘たちの内に宿る魂、それと同居ないし補強する至った願いや、想いの塊』を見る事はできる。目は見えないが。心眼のようなものと言えば、伝わるかもしれない。
だからこそ、数年前から看過できないのだ。
妹が産まれたあの時から。
ライスシャワーよ。君の内で共に生きる、『何処かの世界のライスシャワーを形作るウマソウル』よ。
その左脚に宿る砕けたような魂の傷跡は、誰かに向けた終わらない謝罪と後悔は、その跡をなぞる事はないだろうな。
⭐︎
「ライス」
「お姉ちゃん」
しんしんと、声がする。怖くないのに、寒気がする。でも、嫌いじゃない。
響き渡る鈴の音のような、しかし静寂の中にあるような、不思議な声。
癖の強い波打つような髪は長く伸びて、顔の右側を隠してしまうけど、元々見えてないからなのか、お姉ちゃんはあまり気にしていない。
でも、まるで周りが見えているように振る舞えるお姉ちゃんは、本当に凄い人だと思う。
「トレセン学園に、行くのよね」
「うん……ライスね、頑張ってみたいの」
「そう。風邪には気を付けて。餞別よ」
お姉ちゃんは、滅多に笑ったりしない。無感情な人、という訳じゃなくて、その想いが顔に出てこないだけとお姉ちゃんは言っていた。
だけど、今日は薄くだけど、確かに笑っていた。
ひょいと。投げ渡されたそれを慌てて受け取る。少し大きめの紙袋の中に、微かな重み。
「開けていい?」「いいとも」弾むようなやり取りの後、カサカサと開けてみる。
青い薔薇と、綺麗なレースリボンのついた、黒い小さな帽子。
裏には、頭に付けるためのヘアクリップが付けられていた。
「気に入らなければ、捨ててもらっても構わないわ」
「そ、そんなことしないよ!?」
「……急に大きな声を出さないで。耳が痛いわ」
今のは流石にお姉ちゃんが悪いと思う。ライスのことを何だと思っているのだろうか。
でも、嬉しい。胸の奥底から、優しくて暖かくて、綺麗な熱が込み上げてくる。
なんとも言えない暖かさを飲み込むように、お姉ちゃんを見た。
「……ありがとう、お姉ちゃん。ライス、頑張るから」
「ええ。行ってらっしゃい。ライス」
我輩とか内心言ってるけど、喋る時は別に出力されてたりすると、私性合!