足が折れたウマ娘はトレーナーの頂へ走り出す。 作:不死鳥マルコ・ドラフォイ
『天才』
私の走りを見た人は口を揃えてそう言った。
将来は有望だ、有馬記念も夢じゃない━━━━━━
私も疑っていなかった。
━━━━━あの事故が起こるまでは。
なんて変哲もない、普通の日。
学校が終わって、下校中の事。
どうやら私は、車に轢かれていたそうだ。
何も覚えておらず、一瞬で病室へと移動したように感じた。
そして、理解してしまった。
その事は分かっていたが、理解はしたくなかった。
「あ、足...?」
絶対に足だけは動かず、感覚もない...
そして恐らく医者であろう人の険しい表情。泣いている家族。
『もう治ることはありません...』
その一言は、一人の少女の心を壊すのには十分なものだった。
そこから一ヶ月。
病院には記者達が押し寄せ、平穏なんてまるで無いに等しかった。
許可も貰わず、私の気持ちになんて考えていない。
だが...そんな事はどうでも良い。
腐っていたのは私をスカウトしていた人達だ。
『うちのチームにはもう要らない。もう関わらないでくれ。』
『走れないウマ娘なんて要らねぇよ!』
『君、良い金儲けの道具になると思ったのに...残念だ。』
なんだこれ。
トレーナーとウマ娘は一心同体なんじゃないのか?
ウマ娘のことを金儲けの道具だとか、一方的な関係じゃないか。
こんな腐っている人が居るなら...
私が「トレーナーの頂点」...すなわち、有馬記念で担当バを優勝させてトレーナーの世界を変えてやる!
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「今日からトレーナーか...」
あれから9年。
当時10歳だった私も19歳になった。
その間ずっと勉強していたこともあって、T大にも声がかかっていたけど、全部無視した。
「今日から職員となります、スフォルトゥーナです。よろしくお願いします。」
『えっと...その足は?』
「子供の時に轢かれて折れました。今は歩けるまで回復しましたけど、また走ったら折れます。」
『えっ...』
『君可愛いねー、ちょっと俺と付き合ってよ。』
見るからにチャラそうな人が何か言っている。
「断ります。」
『はぁ?俺は先輩だぞ?逆らうのか?』
「はぁ...」
中央のトレーナーもこんな奴だったのかと、ため息が漏れる。
『お前、あんまり舐めてると...』
「喧嘩ですか?別にいいですよ?」
『両方とも!いいかげんにしてください!』
突然の声に少々驚きつつ、そっちに目を向ける。
緑色の服に、緑色の帽子...
『うぐっ!り、理事長秘書...』
道理で見覚えがある訳だ。この人が、"理事長秘書のたづな"さんか。
『何をしてるんですか!貴方達は!』
『い、いえ...あちらから文句を...』
「はぁ?嘘をつかないでください。」
『...とりあえず、後でスフォルトゥーナさんは理事長室に来てください。お話がありますので。』
『へっ!ざまぁみろ!』
『貴方も来ますか?』
『すみませんでした!それだけはご勘弁を!』
『それではこれで。失礼しました。』
バタン、と扉を閉めて出ていった。
あの先輩(とは認めたくない人)があんなに恐怖するとは...
私にも戦慄が走る...
まぁ、それはそれとして...
「それでは皆さん、今日からお願いします。」
トレーナー室は静まり返っていた。
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私が立っているのは理事長室の扉前。
「失礼します。」
扉を開けて、覚悟を決める。
そこにいたのは、理事長秘書。
そして...
「...シンボリルドルフ?」
確か、この学園の生徒会長だったかな。
『ご存知していただき光栄です。』
しかし、辺りを見渡しても何処にもいない人が。
「ところで、理事長は?」
『理事長はただいま出張中です。』
「そうですか。是非話したかったんですけどね。」
『そろそろ本題に入りますよ?』
理事長秘書のたづなさんがニコニコしながら話を変える。
『まずスフォルトゥーナさん。』
「はい。」
『あなたは7日間の停職処分とします。』
「えっ。」
驚いて変な声が出てしまった。
初日からこれはまずいかもしれない。
「なんとかなりません?」
『ふふっ、今日はそんな君に取引しに来たんだよ。』
「取引?」
横にいたシンボリルドルフが微笑みながら話し始める。
『そう。君を数時間、借りたいんだ。』
「そんなことでいいんですか?」
『それは"はい"ということでいいのかな?』
「そりゃ、もちろん...」
『じゃあ、ついてきてくれ。生徒会室まで案内する。』
ほんとに不定期です。
スフォルトゥーナの由来は「不幸」です。