近所のペットショップにて。
「ペット飼うって、どうしていきなり?」
「楽郎くんは私が居ないとずっとゲームしてますよね」
「そりゃもちろん」
玲の言葉に楽郎は頷く。ゲームが生きがいの楽郎は、玲と二人きりの時間以外はほぼ全てゲームに注ぎ込んでいる。
そんな環境で玲がいなければ延々とゲームにのめり込むだろう。
「あ、ダメと言うわけじゃないですよ? もともとゲームしてる楽郎くんを見て好きになったんですし……」
「…玲さん、見られてるから」
「ひょえっ!? す、すいませんっ!」
周りの人から生暖かい目線を向けられ赤くなる二人。
「て、そうではなくっ! 楽郎くん前に言ってたじゃないですか、さばがん? というゲームのプレイヤーが病院に搬送されたって」
「あー、言った気がする」
ゲームを終えた後痛そうな素振りを見せる楽郎に、玲が何のゲームかと聞いたことをきっかけに鯖癌の話をしたのだ。
「その人みたいになられたら、私ショックで死んじゃいますよ!」
「さすがにならない……とは言いきれない」
「ので、ペットちゃんの面倒を見るために、途中でゲームを止めざるをえなくなれば、楽郎くんは倒れず私も安心できるという寸法です。できれば叩き起こしてくれるくらいのしっかり者の子がいいですね」
(うーん、理論的には合ってるのになんかズレてるような……まあいいか)
勢いに流された楽郎は
「って言ってもなぁ……ぁ」
虫や魚以外の知識が無く悩んでいた楽郎の視界に一匹の白蛇が映り込んだ。
そいつが入ったケースへ無意識に手を伸ばす楽郎。すると向こう側から白蛇が頭を擦り付けてきた。
「っ……」
「楽郎、くん」
その様子を見た玲が駆け寄ってくる。
「ああ、玲さん。どうしたの?」
「どうして、泣いているんですか?」
「あ? あれ? なんで、あんな昔の事……割り切った、筈、なのにぃ……」
ポロポロと涙を溢す楽郎に、玲は何も言えなかった。
「泣き止みましたか?」
「その、ご迷惑を…」
「いいんです。それより、この白蛇さんで良いんですか?」
玲がケースに入った白蛇を指差す。
「うん、こいつがいい。久しぶり…なのかな」
「♪」
「心なしか白蛇さんも喜んでそうですね。それで、名前はどうします?」
「名前……アレでいいかな?」
「…………」
玲の目には、楽郎の言葉に白蛇が無言で肯定したように映った。
「な、なんでそんなに通じ合ってるんですかぁ……」
「俺にもよく分かんないけど……」
「運命、かな」
ちょっと格好つけすぎたな、と苦笑する楽郎。それと同時に、白蛇の赤い舌がチロリと見えた。
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