休憩時間中に――
ババァ長が約束してくれた、期末試験の結果で変わったはずの
僕らの召喚獣の装備を確かめるために召喚してみると……。
僕はデュラハン、雄二は狼男、秀吉は猫又でムッツリーニはドラキュラになっていた。
なんでも調整に失敗してオカルト部分が色濃く出るようになって
召喚者の特徴や本質が出てきているらしい。
そして姫路さんの召喚獣は――
「
……ボンッ ←サキュバス登場
「きゃぁああーっ!?あ、明久君っ!見ないで下さいっ!」
「アキっ!いやらしい目で見ちゃダメよっ!」
「ぎゃぁああーっ!」
姫路さんの召喚獣が喚び出されると、僕は姫路さんに首を180度回され
反対を向いたところで美波に目潰しをされた。
いくら召喚獣の首が取れるからって本体である僕の首まで取れるようにしなくても……
首を捻られるまでの一瞬見えた姫路さんの召喚獣はすごく色っぽかった気がする。
その証拠として鼻血を出しながらも一生懸命写真を撮ろうとしているムッツリーニが居たから。
でもレンズに血が付いていたので、ちゃんとした写真は撮れていないと思うんだけれど……。
続いて美波の召喚獣は――
「ふふっ、ウチのはきっとそういうエッチなのじゃなくて可愛いのが出てくるはずだから。見てなさい――
ゴゴゴゴゴ…… ←ぬりかべ登場
うんうん、たしかに色っぽくないよね。
なんていうか、色気も凹凸も何もない。
実に美波の(ある一部分の)特徴を良く現しているな。
でも今笑ったら、きっと殺される……。
「……ねぇ、アキ?」
「な、なにかな美波?」
背中を向けたまま話しかけてくる美波が異様に怖い。
まるで心臓を鷲掴みにされているような感じさえする。
「この召喚獣、ウチに何を言いたいのかしらね?」
「えっと……」
僕は言葉を濁らせながら助けを求めようとして周りを見たけど――
みんな、気の毒そうな顔をして目を逸らすだけだった。
仕方ない。ここは僕一人で切り抜けるしか……。
「そうだ。ぬりかべって真っ平ら……じゃなくて、真っ直ぐで硬いじゃない?」
『真っ平ら』というところで美波の殺気が強まった気がするけど
もう後には引けないので、ここは言葉を続けていくしかない。
「美波はいつも真っ直ぐ前を見て、固い信念で行動してるってことじゃないのかな」
「本当にそう思ってる?」
美波が表情を和らげて僕を見ている。
ふぅ……なんとか無事切り抜けられるかな。
「うん。美波が一生懸命頑張ってるって言いたいんだと思うよ。決して胸のことじゃなぎゃぁあああっ!」
「アキのバカぁーっ!」
殺されかけた。
――――その後。
召喚獣の不具合を確認するという名目で鉄人の補習をサボって
雄二とババァ長のところへ行き、問い
ババァ長は、あくまでも調整の失敗じゃなくて夏らしい仕様にしていると言い張るので
雄二が召喚獣を使った肝試しを提案した。
すると何故か、二年vs三年での肝試し大会になり、三年が脅かす役になった。
おかげで僕らは参加するだけで、補習もしなくてよくなったことを考えれば
万が一負けても二学期に行われる体育祭の準備と後片付けをすることくらい大した事じゃない。
雄二は本当にこういうことには頭がよく回るなぁ。
☆ ☆ ☆
――翌日。
「うわぁ……。なんか凄いことになってるね」
「まったくじゃな。ここまでやるとは……」
秀吉と二人で今回の舞台……お化け屋敷と化した新校舎三階を覗いてみて
あまりの凝った作りに、ただただ驚くばかりだった。
そして待機場所である旧校舎三階に戻り、みんなに様子を話す。
「そんなに気合入れて俺たちを脅かそうとしてるのか」
雄二も少し驚いた表情でそんなことを言っている。
「そっ、そんなに頑張ってくれなくても良かったのに……」
「そっ、そうよね。頑張りすぎは良くないわね」
姫路さんと美波は互いに身体を寄せるように手を握り合って少し震えている。
怯えている二人には難しいかもしれないけれど……
出来れば、楽しんでもらいたいと思う。
今は怖がっているけれど、後で笑って話せるような良い思い出になってくれれば……。
二人の楽しい思い出の中に僕も入っているといいなぁ。
――――
―――
――
そして問題のペア決め。
一応男女のペアってことになっている。
姫路さんと美波のどちらを誘えばいいんだろう?
正直に言えば……
美波と行きたいし、姫路さんとも行きたい。
二人とそれぞれ一緒に行っていろいろ楽しみたい。
でも――
僕は雄二みたいに誰かを守ってあげられる力強さや安心感が圧倒的に不足している。
そんな僕があんなに怯えている二人を誘っても楽しんでもらえないんじゃないだろうか。
どうしようか、僕が悩んでいると……
「お姉様のペアに美春が立候補しますっ!」
コンパスやらシャープペンといった文房具を落としながら清水さんが美波に飛びついた。
もし美波を誘っていたら……
あの銀色に光り輝く文房具たちは僕の身体に突き刺さっていたのだろう。
「美春!?ちょっと待ちなさい!男女のペアだって言ってるじゃない」
「大丈夫です!どうせ男女の比率は同じじゃないですし、美春とお姉様には性別の壁なんて些細な問題です!」
「もうっ!離れなさい美春!ウチはアキと組むことになっているんだからっ!」
美波はそう言うと、ガシィッと僕の頚椎を掌握した。この状況では……
たとえ後で清水さんが文房具の間違えた使い方をするのが分かっていても
頷くしか僕に選択肢はなかった。
「ですがお姉様!そんなブタ野郎が一緒では――」
「美春。ウチはアキと一緒に行くのを楽しみにしているの。それなのに、まだそんなことを言うのかしら?」
美波がそう言うと清水さんは悔しげに下唇を噛み締めながら
「……わかりました。そういうことなら、この場は引きます。ですが、万が一そこのブタ野郎が参加できなくなった時には美春と――」
チャラ、と光り輝く文房具を手に取りながら僕を睨んでくる清水さん。
すると意識がだんだん遠くなってきて……
美波が清水さんに何か言っているみたいだ。
――――僕の頚椎を握り締めながら。
「美春っ!もしアキを傷つけたりしたら……ウチが許さないんだからっ!」
「島田よ。明久が死にそうになっておるのじゃが……」
このままだと僕は本物になって肝試しに参加する事になりそうだ……脅かす側として。
――――
―――
――
なんとか僕のペアも美波に無事決まり……。
「美波ちゃん、ずるいですっ!私だって明久君と……」
「う……ごめんね、瑞希。でもアキと一緒に行ったらチェックポイントであの召喚獣を曝すことになるのよ?」
「はう……っ!そ、それは……」
姫路さんがすごく困った顔をしている。
そっか。姫路さんとも一緒に行って楽しみたいと思っていたけど
姫路さんに恥ずかしい思いをさせちゃうことにもなるのか。
なんとか姫路さんにも楽しんでもらえるような方法はないのだろうか?
☆ ☆ ☆
僕らは順調に肝試しをクリアしていった。
最初の難関……見たら夢でうなされそうなゴスロリ坊主先輩も
ムッツリーニと工藤さんで撃退した。
しかし第二の刺客……小暮先輩の色香にムッツリーニが
暴走した
そして――
いよいよ僕と美波の出番となった。