ありふれた10割で世界最強   作:QAAM_M1911

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ROUND 1

「超ガソでフィニッシュ死んだぁぁぁぁ!!」

「あーっ、くそ!ホント強いな!こちとらユダ使ってんだぞ!?」

「つまり、俺が上手すぎるって事でQEDだな?」

「いやそうじゃな…まぁそうなんだけど!」

 

某日、南雲家。世紀末スポーツアクションゲームをプレイしていた2人はいつもの様に相手のキャラをバスケしていた。この家に住むは南雲ハジメ。そしてもう1人の遊びに来てる方は北斗剛(ほくとつよし)。2人共に、所謂オタクである。しかし、南雲の方は作り手になる事を約束されているのに対して北斗の方はプレイヤーとしての将来を約束されているのだ。南雲ハジメの親はゲームに対して寛容……というより両親もオタクに属する様な人物である為、その道に進む事は明白とも言えた。しかし、北斗剛の生家は普通とは少し違う。とある極道の組の頭の親族……と言えば確かに聞こえは良いが、そんなものは名前だけである。彼の生家も堅気で一般の家である……が本当に波瀾万丈な人生を送っているのである。

 

「じゃぁ次これ!オクラ抜きで!」

「へーへー。じゃオクラ使うわ。」

「何で使うの!?あっ、もしかして飯食いに行きたいのか!?」

「そうだが……もう午後二時だぜ?振替休日とは言えよ、飯くらい食わせろって。」

「あー……分かったよ、飯食いに行くか。」

 

 

 

そうして街に出歩き始めた十五の夜……ではなく昼下がり。適当に飯でも食いに行こうと思ってこの2人にしては珍しい外出。この2人、遊びと言えばゲーム、マンガ。外出など新作ゲームの列に並ぶ時位しかない。だが今から飯作っても遅すぎるのでこうして外で飯を食おうとしているのだ。

 

「おっ、アカツキ筐体出てんじゃん!マジか!」

「やる奴居るのか!?」

「俺だ!お前もやるだろ!?」

「当たり前だ!飯は後で良いな!?」

「後だ後!対戦車戦用意……って百円玉ねぇ!?ハジメ、あるか!?」

「財布あるんだからそりゃある……って僕もない!?」

「チクショー、両替してくる!台確保しといてくれ!」

 

そう言ってゲーセンの両替機に千円札を突っ込み、アカツキの台に戻った。しかし、そこにハジメの姿はない。

 

「どこ行ったアイツ……トイレなら両替機の方だしな。」

 

とりあえず外に居るかゲーセンから出た。どこに居るのか……と思案するまでもなく、通りはざわめきに包まれていた。

 

「……ハジメらしい。子どもと婆さん助ける為にチンピラに土下座か。」

 

アイツはとても優しい。多分だが世の女性から見てもかなりの優良物件ではないかと思うほどには、色々とデキる奴なのだ。そんなアイツが殴られるのはちと思うところがある。指を鳴らし、土下座しているハジメの方に向かう。

 

「おい、台確保しとけっつったろ?戻るぞ。」

「ツヨシ?」

 

とっとと戻るぞ、とチンピラに挑発するため目もくれずにハジメを呼んだ。

 

「なんだァ、テメェ?俺は今コイツと話してんだぞ!」

「レアもんの筐体なんだぞ!早くやるぞ!」

「このッ……死にてぇのか!!」

 

向こうが先に手を出せばこちらのもの、正当防衛になるからして……

 

「……死ぬのはテメェだ、アバズレが。遅延行為ありがとなハジメ。危ねぇから下がってな。」

 

俺は親戚が極道の頭、というのもあってその人(ゲーセン友達)から護身術……という名の喧嘩のやり方を習っている。いくら年上で力がある奴が相手とは言え、素人とアマチュアでは実力差は明確。

 

「ごあっ……!!??」

 

殴りかかって来たその拳を身を捩って躱すと、突っ込んできたソイツの後頭部に裏拳を入れた。前に重心が来ているからして、一回転して地面に叩きつけられた。

 

「コイツっ!!」

「激流を制するは静水……半人前の技では俺は倒せんぞ!」

 

ラオウみたいな強面で言う言葉ではない。俺はやはり極道の血が入っているらしく、割と強面である。父はいかにもな優男なのに。

 

蹴りが俺を狙うが、逆にその足を掴んで捻り、上へと投げた。あまり身体は柔らかくないのか、そのままひっくり返る金髪の雑魚がそこにいた

 

「痛ぇ!!?」

「喧嘩仕掛けるんならこの程度で叫ぶな、ゴミが。」

 

喧嘩がヒートアップしていき、最早騒ぎにまでなりかけたその時である。

 

「おい剛……何してる?」

「お師さん?」

 

ゲーセンから明らかにヤバそうな雰囲気の壮年の男性が出て来た。この男こそ俺の喧嘩の師匠、北斗大我。強面な外見とは裏腹に人情に溢れる人柄から、多くの部下が自ら着いて行くというカリスマ性を持った伝説とも謳われる男。反社の組織に身を置いていたにも関わらず、逮捕歴0という異常な品行方正さで警察を困らせたとも言う逸話もある。

 

「……成程。ガキと婆さん、止めに入ったダチを助ける為にやったか。」

 

頭脳の方も相当にキレており、その知能で他の組と折り合いを幾度となくつけて、組長時代は表向き抗争状態に一度もならなかったとも。

 

「おいテメェら!」

「ヤ、ヤクザかよ!!?逃げ」

「今は堅気だボケが。弱者に手ェ出すとは分かってんだよな?」

 

引退しているとは言え、その覇気は未だに衰える事を知らず。少なくとも、彼が存命している間は日本で反社の抗争が起こる事はないとも言われる程、組の小ささに反してもたらしている影響力は高い。

 

「分かってんのか?俺ららみてぇなチンピラは社会のレールから外れたただの屑だ。屑がレールの下を壊したら……社会という電車は瞬く間に事故を起こす。それとも……まさか自分のストレスの発散だけに、コイツらに当たったのか?」

「ヒッ……」

「おい、答えろ。屑は電車の邪魔をしてはいけない。屑がレールに被害をもたらすなら、役人は屑を排除しにかかる。それが何を意味するか分かってんのか?極道だけじゃねぇ、お前らみたいなゴロツキまで検挙されるんだぞ!!この場は見逃してやる、冷えた頭で一回考え直せ!」

 

そう一喝すると、チンピラは一目散に逃げて行った。最初からやるなよ……

 

「剛、小言は後だが……手加減はしたか?」

「しないと怒られるでしょう。」

「なら良い……婆さん、大丈夫か?」

「ありがとねぇ……北斗の組長さんや、いつも儂らに優しいねぇ。」

「もう組長じゃないですよ。君も大丈夫か?」

「うん……」

 

少年の顔には怯えが含まれている。まぁ目の前で一方的とは言え喧嘩が起こったんだから、そりゃそうだ。

 

「あっ、北斗さん!お疲れ様です!」

「山下か。喧嘩を止めに来たならもう遅いぜ。」

「取り敢えず話だけでも。」

「大筋は剛にでも聞け。」

 

まぁこうなるよな、と。一応補足しておくと、この山下という警備員も元々は別の所の組員だったのだとか。んで叔父さんと喧嘩して破門、それに同情した叔父さんがバイト、その後の就職先の面倒まで見たのだとか。こういう事が何かと多い為、師匠はこの地域の一般人にも名前が知られている。

 

「じゃ剛君、聞いてもいいかな?」

「飯食いに来たんだがなぁ……あとハジメ、俺も乱入したんだからお前からも説明頼むぞ。」

「僕も!?」

「元はと言えばお前があのチンピラに土下座してたからだろ。」

「分かったよ……」

「まぁ近くのお店で食べながらででも良いから。」

 

取り敢えず近くのMドナルドで事情聴取となった。通報を受けて警察も来たがおとがめなし。チンピラが逆に非行で補導されたらしい。南無。

 

 

 

「飯食いに行っただけなのにとんだ事になったな。」

「全くだ。つか俺にゲージくれまくってるけど良いのか?」

「問題ない、押し通る!!」

「はいギャラルホルンぶっぱ!」

「あああああ!!?」

「出禁にしますよ!」

 

狙いのアカツキの筐体でハジメが叫び、店員からお叱りを受けた。尚俺は電光戦車を、ハジメは塞を使っている。俺は単純に最弱キャラを使うから、ハジメが塞を使うのは「なんかクセになるボイスしてるから」らしい。

 

「ったく、一応言っとくがお前は弱ぇんだ。なんかあったら俺に相談しろ?」

「あー、まぁ考えとくよ。」

「おう頼むから塞の挑発挟むな腹筋死ぬから。」

 

尚、この後コマンドミスって負けた。

 

 

 

「聞いたぞ剛。また喧嘩したんだってな?」

「まぁそうですね。」

「……剛、お前が優しいのは分かってる。でもな、いくら守る為とは言っても、やり過ぎるとマズイ。」

 

生徒指導室。ここが使われるのは進路指導とかそんぐらいではあるが、何故か物置としてごっちゃごちゃのまま放置されている変な場所だ。

 

「散々、叔父さんからも聞かされてます。」

「そうだな、でも忘れちゃいけない事だ。だから何度も口酸っぱくして言うんだ。分かったな?」

「はい。」

「よし、んで進路だが……やっぱ上を目指す気はないのか?」

 

確かに、俺はこの中学校でも頭は上の方に入る。ハジメはと言うと、まぁ上の下とかそのくらいではあるが、それでも県内の有名私立には手が届く。しかし、俺らにはそんな場所に入る気はさらさら無かった。

 

「……地元、離れたくないんですよ。」

「……そうか。お前の考えが固まってるなら頓珍漢なことを言わない限り口は出さない。」

「地元の学校で良いんですよ。あまり勉強ばかりしてると気が狂いそうで。勉強も趣味も、何事も塩梅ってもんです。」

「…まぁ良い、だがそれに浮かれて成績を極端に下げる様な真似はするなよ。」

 

それに首肯すると、俺は一礼したのち部屋を出た。鈴虫がそろそろ鳴き始める季節、腹が減ってきた。数十分後の光景を見ながら、俺は帰路に着いた。

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