「ありゃ?上限引っかかったな……」
「流石にそう簡単に最強って訳にもいかねぇか。」
体力の欄が1500で上限に引っかかった。流石に元も鍛えないと無理そうだ。実際、ステータスプレートを少し弄ったら元のステータスプレートと同様の数値も出てきた。そっちの方はと言えば……魔物の肉を食う前と変わらない。
「身体を鍛えなきゃ流石にぶっ飛び性能は無理か……ん?」
「どうした?」
「いや、これ……」
画面を見やれば、下に耐性と銘打たれた欄がある。そこに追加されたのは、『ライフ管理』。
「ライフ管理……どう言うこった?」
「詳細見れねぇか?流石に説明あると思うが。」
タスクマネージャーにライフ管理、と入力してみる。どうもこのコンソールは検索機能もある様で、常識的なものについては答えられるし、何なら格ゲーのシステムに関する事なら事細かに全て記入されている。
「ライフを予定された方法以外で減らない様にする耐性……ただし即死や大ダメージには適応されない。」
「毒無効ってところか?」
「削りとかも適応されるんじゃね?」
「あー、sansとかみたいなのにも適応されるのか。つまり、変な減り方したとしてもライフはそのままって感じか。」
「だろうな。」
「そうなると条件付きの即死耐性って感じか。面白くなってきたな。」
幸利にも取り敢えず肉を食わせて同じ様にライフ管理を覚えさせる。こちらも数値は変わらない……と思いきや魔力がかなり伸びた。そしてもう一つ新たに解放された欄。「技作成」……聞いただけでヤバそう。
「なんか覚えられる魔法あるか?」
「取り敢えず白羅。あとアレ欲しい、ナイトメア。魔石使って一回ヤバい攻撃する技作る。」
「ほー、ますますVだな。」
「意識してないは嘘になるけどよ……ロマン技ってのは使いたいだろ!」
「さて、そろそろ攻略の続きと行くか。清水、杖の調子は?」
「まだ行ける。行こうぜ?」
そう言うと、50層に続く階段を降りる。部屋としては広いものに分類される、明らかなボス部屋。何が来るか……と身構える。その部屋は非常に気温が低い。そして、その中心には巨大な氷樹。その上で一匹の鳥が寝ている。
『オレサマの眠りを妨げるたぁ……誰だ?』
「おーおー、こりゃまた面白いチキンが居るじゃねえか。」
「だな。凍ってるからさしずめ冷凍ムネ肉ってところか?」
『喧嘩を売ってんのかお前ら?良いゼ、買ってやるよ。』
と3mはあるかと言う鳥が翼を広げる。ただでさえデカい鳥が、翼を広げて威嚇したならそれはもう相当の迫力になる。
『冥土の土産に教えてやる、俺サマの名はホルス!永遠に凍てついて愉快なオブジェに成り果てな!!』
「鳥で氷使い……しかもホルスか。」
「出禁ヤローだな。まぁ良い、やろうぜ!!」
幸利が杖の先をホルスに向けると、ホルスは一気に数十もの氷の槍を生成して投げつける。幸利はそれを杖でいなし、俺は一つ一つ避け、無理ならばガードして凌ぐ。
『俺サマの力、思い知れ!!』
氷槍を凌いでいる間に、たったそれだけの短時間で巨大な氷塊が生成され、落下してくる。流石に幸利に凌がせるのは無理なので、俺が氷を砕く作業に入るしかない。
「幸利、お前が攻撃しろ。俺がサポートに回る。」
「オーケー、任せな!」
「蛹を破り、蝶は舞う……さぁ、無に還ろう。」
手始めに氷塊を昇竜拳でぶち割り、ぱらぱらと舞う雹を
『っつー!あっぶねぇ!お前その格闘家ってナリで魔法使いか?面白れぇ!』
「ますます出禁ヤローだな、コイツ。」
「あぁ、でもだからこそ倒し甲斐がある。だろ?」
「んでもって、ハジメを助けに行く。こんなとこで突っ立ってる場合じゃねぇって事くらい分かってるだろ?」
そう言うと、幸利が右手で指パッチンをする。詠唱完了、といったところか。上から今度は巨大な闇が降り注ぐ。魔石を10個消費する必殺技、ナイトメア・シェイバーだ。
『テメェら意外とやるな!?でもそう簡単に喰らってやれないぜ!』
「そうかい、でも……2人ならその硬ぇガードも砕き切れるんだぜ?」
『ゲッ、ちっとマッズいなこれ!?』
ガードされながら生成され、落下する氷柱を無敵の前転で一気に近付くと、闘気を貯めた裏拳で氷塊を砕く。尚発生まで無敵である。一撃で、混を凌いだ鉄壁のガードが砕かれたのである。
『んじゃそりゃぁ!?』
「驚いてる暇があるんなら、懺悔の言葉でも吐くんだな。」
「はは、じゃあなトリ野郎。」
闇が、その鳥を覆いつくすと中から途轍もない絶叫が響き渡る。恐ろしいものだ、闇の魔法というものは。中ではチェーンソーの様な音が響き、ゴリゴリと何かが削れていく。
「ま、こんなもんか?」
「耐え切ってるとは思えんが……」
流石に幸利の魔法一撃のみでもかなり強化されている。一撃でやれる筈だった。闇が晴れると、そこには満身創痍……とは言い難いがかなりの手傷を負ったホルスが地に伏していた。翼がもがれかかっており、動くことは出来ないらしい。
『クッ……あー、魔法の前の一撃、結構効いたぜ。そこに魔石を触媒にする魔法使われりゃ俺サマだってこのザマって訳よ。』
「ほー、アンタ中々強いじゃねぇか。」
『そりゃコッチのセリフだっつーの!!今まで戦ってきた奴らよりずっと強ぇっての!!』
「……その口振りと見ると、あの最強の冒険者がベヒモスと相対した時より後に住み着いたか。」
幸利がそう言いながら、杖を弄び前に足を踏み出す。
「さて……トドメだ。」
『いやいや待て待て!!もうヤッちゃうのか!?まだ聞きたいこと、あるんじゃないの!?』
「生憎と情報ならこれから探すところでね。魔獣の言葉も信用できるか怪しい。」
あ、ヤバい。幸利焦ってるな。レベル稼いで早く色々耐性が欲しいって顔してやがる。
「おいおい、幸利。お前忘れてねぇか?」
「え?……あーそうか。」
と言うと、幸利は杖の切先をホルスに向ける。そしてホルスに問う。
「さて、お前には二つの選択肢がある。このまま死ぬか、それとも俺に支配されて生き延びるか。お前はどっちを選ぶ?」
『支配されても俺サマの意識、残ってンだよな?な?』
「お前の態度次第だ。」
『わーったわーった!強いのは分かった、敵わなねぇ。契約すんよ。これで良いか?』
「分かった。」
と言うと、杖をホルスの眉間にぶっ刺す幸利。キエェ……と鳴いたホルスの身体が再構成されていき、最終的に普通の鳥程度の大きさまでに縮んでいく。
『結局ブッ刺しコースかよ!!』
「契約、と言ったのでな。まぁ支配とは変わらないが、自我があるだけマシだろう。」
「魔具にならなかっただけマシだと思っとけよ。」
『あー分かったよ!まぁこんだけ強ぇのと一緒に居りゃ安全か。まーヨロシクな。』
ハジメ、聞こえていないだろうけど……仲間が1人、増えました。
尚この時ハジメも仲間を増やしていた事は今の俺たちには知る由もない事である。
『幸利チャンよ!耳寄り情報があるんだけどよ、聞かねぇ?』
「魔獣の言う事ではあるが……良いだろう。」
「幸利、もっと気楽に行こうぜ?ハジメだって生きてるとは思うしよ。」
「分かってるけど……早めに助けに行きたいんだよ。」
『おー、なら話が早ぇか。あの坊や、生きてたぜ?』
ホルスがそう言い放つ。それに俺と幸利はあっけからんとする。だが一先ずはそれを聞いて安心した。
「だが何故お前がそれを知ってる?」
『そりゃ、俺サマがオルクス大迷宮からここに登ってきたからサ!』
「待て、ここがオルクス大迷宮じゃねぇのか?」
『あぁそうとも。真の大迷宮はこの下にあるのさ!100階層の下からが本当の大迷宮だぜ?』
「んだと……ハジメはそこで生きてられんのか?」
『どうだか。キングベヒモスのヤロー見るなり逃げ出しやがってな。ったく、一応アイツが戻る手段持ってたってのによ。まー、クライミングだけどナ!』
とりあえず、ハジメは生きているみたいだ。しかし疑問だ。何故キングベヒモスやホルスがハジメを襲わなかったのか?その質問にすぐにホルスは答える。
『あのヤローはな、「不完全燃焼のまま戦い損ねた奴が居る。そいつと戦いたいから人質にする」ってな。』
「俺の事だな。」
「そうだな……だが当のハジメは逃げた。つか何で逃した?」
『そりゃ、壁に穴開けて逃げられりゃムリってもんさ!俺ら一応身体デケェんだからな?』
「……そうか。」
そう言うと、とにかく下層へと進む。まだ、大迷宮にも達していないのだ。進む他に、道はない。だったら……と地面に落ちた氷の槍を拾い上げて、すっくと立ちあがった。
「一気に行くぞ!一日10階層の強行軍だ!!」
「あんまり調子付いてると怪我するぞ。」
「ったく、俺のランス……」
『ノリが悪ィな、幸利チャンよ!』
「ノリが悪いんじゃない、冷静なだけだ。」
幸利がやれやれ、と言う風に俺とホルスの後に続く。ハジメの野郎、生きてんだろうな?
「……しっかし、アイツら心配してっかね?」
「ん……誰?」
「あー、俺のダチだよ。あのクラスの中で唯一、っつっても良いかな。俺に対して好意的っつーかしっかり面と向かって接してくれた奴なんだよ。」
「アイツら、なら一人じゃない?」
「まぁな……そっちの方は絡み自体は少なかったけど、向こうの都合っつーかさ?そういうのも、アイツのお陰で分かるようになったからな。」
「……さっきの話、嘘?」
「嘘に真実を交えて話したら信憑性が増すって知ってっか?」
「ハジメ……」
「悪い悪い、でもまぁ孤立してたんは本当だよ。アイツだってあまり他人と交流はなかったらしいしな。」
オルクス大迷宮、とある階層より―――