ありふれた10割で世界最強   作:QAAM_M1911

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ROUND2

「おはような、ハジメ。」

「おはよう。ガンエボ始めた?」

「勿論だ。アッシマー強いぜ、裏取り放題だかんな。」

 

高校に入ってからも、俺とハジメのゲーム仲間の関係は変わらず。勉強も人並みにはやっているが、やはりゲームに割く時間の方も結構多かった。校則が結構緩めなので、放課後なんかは携帯ゲーム機なんかで対戦してたりする。

 

とまぁ、高校に入ってから良い事ばかりでなく。人数も中学と比べて増えたため、俗にいうDQNな奴らも少なからず出て来る。それだけならばまだしも、ハジメがクラスのマドンナとも言える人物……白崎香織と言うのだが、何故か彼女に惚れられているのがダメージを加速させてヘイトを買っている始末だ。

 

「しっかしまぁ、前の中間ギリギリ助かったな。俺もお前も半分以下だったらゲーム禁止されてたぜ?」

「そうだね……というか、ツヨシが頭良いだけだって。結構助けられてるし。」

「困ったらお互い様、だろ。世の中、人情ってもんがなければやってけないもんさ。人情だけじゃやってけないのも確かだが。」

 

クラスの隅っこで話をしているわけだが、その周りにはあまり人はいない。まぁ理由は簡単で、俺がやくざ者の親族という事がバレているからだ。誰から流れたかは知らんが、別に気にはしない。そんな話があっても気の合う奴は喋りに来るし、なんならそんな噂程度で俺を露骨に避ける奴は程度が知れている……いやまぁ俺の強面が悪いのもあるんだろうけどさ。

 

だが、そんな俺と一緒に居ると言うのに。ハジメに構ってくる人間は居る。

 

「南雲くん、おはよう!」

「…おはよう。」

 

それが件の白崎香織。隣に居るのに俺に挨拶しなかったり、ハジメが村八分になってる原因の片翼である事を理解してなかったり……オブラートに包んで言えば頭がポンで済まれない感じの女子。ま、尽くすタイプな感じはあるんで二人の世界をつくるなら問題はない気がするがね。

 

「おいおい、俺ちゃん無視?」

「あ、ごめん!北斗くんおはよう!」

「あぁおはよう。好いてるは良いが盲目にはならんようにな。」

 

一応俺が居ると言う事で露骨なイジメはないが、村八分的な時間を過ごしているハジメ。なんなら自分から村八分になりに行っているんで彼女の好意はむしろ面倒ごとになってるんだが。

 

……あぁそうそう。俺とハジメにらもう一人ゲーセン仲間が居る。それが清水幸利。入学式の後たまたまいつものゲーセン行ったら居た。それがきっかけでちょくちょくゲーセンを共にする様になった。こちらはハジメとはちょいと違って高校生活は普通にやっていきたいって事で水面下での交流のみにしている。

 

「おはよう北斗君、毎日大変ね。」

「全くだ。八重樫も毎日お守りは大変だな。」

「本当に。香織ももう少し周り見てくれたら楽になるんだけど……」

「ハジメも、少し歩み寄るって事をしてくれりゃ良いんだがなぁ。」

 

別に俺と八重樫は白崎の恋を止めようとしている訳ではない。むしろ応援してはいるのだが、負担がヤバい。かと言って俺らがキューピッドになれる筈がないのでとりあえず周りに迷惑掛けないようにフォローしている。この仕事、やめたい。

 

「おっ、おはよう坂上。」

「おはよう。また二人のお守りが?ご苦労なこった。」

 

脳筋の坂上龍太郎。空手部に所属。俺が一度空手部に体験入部した時からの付き合い。まぁ俺には空手の様な型に嵌った動きは駄目だったから入部はしなかったが、共に格闘技をやっているって事で会ったら話す程度の間柄。んで……もう一人隣に居る奴。俺はコイツが嫌いだ。

 

「香織、また彼の世話を焼いてるのか?香織は本当に優しいな。」

 

天之川光輝。正義感溢れるスポーツ勉強共に万能な完璧超人。こう書けば良い奴にしか見えない……実際そうなのだが、逆に言えば自分の正義に背く様な奴は悪と決め付けてしまう、とんでもない奴だ。マイノリティを考えず、彼の持つカリスマ性によりマイノリティの意見を封殺してしまう問題児。それどころかマイノリティの意見をどう曲解すればそうなるのか分からないご都合主義も良いところな思考をする為、尚更手に負えない。

 

「……八重樫、やっぱコイツ気付いてない?」

「えぇ。驚くべき事にね。」

 

因みに俺も天之川からは嫌厭されている。やくざ者の親族ってだけでねぇ。そんな事を考えていながらも、天之川と白崎のチグハグと言うか、キャッチボールで互いにバスケゴールとサッカーゴールに投球する様なカオスさを生み出していた。

 

「……ホント、ごめんなさいね。二人とも悪気はないんだけど……」

「分かってるさ。どうしようもないよな、恋と正義に盲目の二人はな……」

 

どうしようもない奴、と言えばこのクラスには何人かいる。先述した正義の傀儡と恋の狂戦士を除くとまず、ハジメにイジメを仕掛けている奴。檜山大介、斎藤良樹、近藤礼一、中野真治の4人。俺の噂が流れてから表立った行動は起こしてないが、俺が休んだ日などは酷い事になるに違いない。

 

そしてもう一人。これは少し叔父さんがプライベートを踏み込んでしまった事件がある。その人物が中村恵理。父親から虐待を受け続けていた少女。叔父さんが唯一警察から注意を受けた事件でもある。住居侵入、器物損壊、などの犯罪になるが児童虐待の現場で被疑者を抑えた事、そして何より叔父さんに懐いてしまったのが大きかった。警察と組、そして政治家連中の思惑が重なって、彼女を引き取る事を条件として逮捕を揉み消した。

 

その為俺も何度も彼女と会ってはいるが、彼女から嫉妬を向けられている節がある。まぁ分からない話ではない。何せ自分のヒーローの愛情を自分だけに、と思っているのだ。叔父さんは確かに独身ではある、だがそれ以上にお人好しなのだ。誰か一人だけを愛する事が出来る人間ではない。

 

だからどうしようもないのだ。彼女は物心ついた時から全てを憎み始めた。そんな闇の中で差し伸べられた一筋の光こそが北斗大我だったのだ。複数人を愛するという事を知らないのだ。人間、価値観は変わると言うが、それは成長に伴うものである。彼女は成長出来なかった、いやそれを阻害されてしまったのだ。伸びていく根は出来た亀裂へと伸ばしていくのは当たり前のこと。何か衝撃的な事件でもなければ、人間は変わる事は出来ない。

 

「……難儀なもんだよな。人って。」

「何か言った?」

「いいや、何でもない。」

 

高校生活も慣れ始めてきた頃。風と温かな陽気が微睡を運ぶ昼休み。その時に事件は起こってしまった。

 

 

 

「よし、飯食うぞハジメ。」

「あ、僕これあるから良いや。眠いし。」

「お前の分もあるっつってんだ。ほい、サンドイッチだけでも食え。」

「あーうん、じゃあ貰うよ。」

 

ゼリー飲料をちらつかせたハジメだが、流石にそれだけでは無茶が過ぎる。身体にも良くないので、とりあえず買ってあるコンビニのサンドイッチを食わせる。俺はコンビニで買った弁当2つとサラダ2つ。普通にめっちゃ食うので、足りないのを危惧して飯を追加しているのだ。

 

「南雲君、珍しいね。教室にいるの。お弁当、よかったら一緒にどうかな?」

 

そう声を掛けられたのは、まぁ予想はしていた。なんせ暇さえ有れば白崎はハジメに構う。それも手伝って、ハジメはとっとと帰るのだ。流石に鬱陶しい事この上ない。弁当を掻き込みながらその話を横っ面で聞く。

 

「悪いけど、食べ終わったから天之川君たちと一緒に食べたらどうかな?」

「えっ、お昼それだけなの!?だめだよちゃんと食べなきゃ!私のお弁当、分けてあげるね!」

 

クラス中から嫉妬と言うべきか、まぁ殺気の様なものがハジメに向けられる。マドンナと相席など、どうなるか分かっているからハジメは断ったのだが、空気を読まずにゴリ押しするのが白崎と言う女。

 

「……ハジメにはこれ食わせるから、自分の分は自分で食いな。」

「えっ?」

「あー、ありがと。ま、そう言う事だから。」

 

俺が小さい方のコンビニ弁当をハジメに押し付けた事で弁当事件は終わるかと思ったが、むくれっ面で白崎は椅子に座る。いや空気読めって。

 

「香織、こっちで一緒に食べよう。南雲は北斗と食べるみたいだしさ。」

 

天之河がそう言って結果的には助け船を出す。その中にはオタクのハジメとやくざの身内である俺への侮蔑が入っている事は言うまでもない、

 

「え?なんで光輝君の許しがいるの?」

 

……話にならん。来世からやり直せよ、お前。

 

……あぁすまない。七夜をインストールしてしまった。とにかく、白崎はドの付く天然である。俺はもう面白くなって笑い声を殺す事も難しくなってきた。

 

「くっそ……面白すぎだろ……!」

 

声が漏れ出た瞬間の事である。

 

教室が光り始めた。

 

比喩ではなく、足元に出現した幾何学的な文様、そして円環が光っていた。

 

「教室から出ろ!早く!」

 

何が起こってるかも分からず。そして、叫んだ瞬間。教室は光に呑まれた。

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