「は?ゲージが50本!?」
「ちょ、ちょっと待て!俺のゲージが50!?北斗の方はどうなってんだ?」
「ツヨシは10だね。それでも多いけど……」
清水のゲージは相当に多い。ゲージ50は最早バグであるのだから。
「そんなゲージ使うことないだろうに……」
「そうだよなぁ。今俺のゲージ、50満タンなのか?」
「うん、けどツヨシは8になってる。」
「ん……まぁさっきレイジングストーム撃ったからな。」
「あれ、でもおかしくない?3ゲージ打って今8ゲージでしょ?」
「まさかゲージ自動回復?え、やばくないか?」
攻撃もしていなければ、ギルティギアの様に走ったりもしていない。明らかにゲージが自動で溜まっている。
「待ってエグい……けど俺のはどうなってんだろ?」
「分からん……もしかしてここの領域じゃ元々ゲージMaxで始まるんじゃね?」
「そうだと北斗がゲージ減ってる理由にはならないぞ?」
考えども結論は出ず。時間だけが過ぎるのはかなり惜しい事である。この間にも他の奴らが成長していると思うと口惜しい。
「むぅ……まぁそれは後々考えるとして。これの解除条件はなんだ?」
「普通に終わらせるとかじゃね?」
「あ、待って!なんか板みたいなもんある。」
「おっ、マジか。」
「F1とF2……あれ、これボタン配列QWERTYじゃんこれ。かなりキーボードだよこれ!」
「とりま適当に押してみ?」
ハジメがキーボードの……多分F5キーを押した。すると、突然音声が流れた。
『Time Over.』
「ん?タイムオーバー?」
「デバッグキーかな。他も試す?」
「そうだな。F1は?」
「あ、待って。試合再開するね。」
「つかキーボード出現したまんまか。」
「ツヨシの能力だし、あとで返すね。」
と言うとハジメはenterキーを押す。試合が再び始まり、あの結界が再び張り巡らされる。
「じゃ行くよ!そぉい!」
「ごハァッ!?」
「2Pを強制K.Oか。成程。」
「痛ってぇ……けど0になっても死ぬ事はないのか。相応に疲れはするけど。」
「内部じゃ非殺傷?おいおい、モーコン再現したらどうなる?」
「まぁそれは置いといて。F2は……あ、両方のHP1になった。」
「あー、ctrlやらshift押して対象変える系か。」
そうして色々と調べて一時間程。どうやらこのデバッグキー、外部の人間によって操作する方式の様だ。弄られたらマズイにはマズイが、弄れる奴はジャッジマンに認定された奴のみらしい。無論ジャッジマンを認定せずとも決闘者の戦場自体は使える為、外から弄られる事への対策はどうにかなりそうだ。
恐らく"決闘者の戦場"は「試合」に特化したものの様で、相手の体力を削る事が主な使用法になると思う。つまり、トドメは別に刺す必要がある……dmc5のVの戦い方をクッソテンポ悪くした様なものになるのである。なので、これを使うのは基本的に格上の存在に挑む場合、もしくは足止めする時に限るだろう。
「……これどう使う?」
「そう言われてもなぁ。訓練とかで使う以外あまり使い方が分からん。」
「だな。で、無限の可能性の方はどうだ?」
「取り敢えず格ゲーの能力を使える位しか分からん。いやそれだけでも強いんだけどもな?」
「そりゃ強いわ。けどよ、まだ使えないもんも色々あるだろ?」
「特にワープ系の奴はな。あとバスケとか戦国陸上みたいなもんは俺の技量的に中々難しい。即死技も今のところは無理だな。体力も魔力も一気に持ってかれる。」
まだ色々と制限はある、だがレベルを上げていく事により体力の増強やら攻撃力の増加やらで再現が可能になったりはするだろう。後は自分のコンボ精度の問題だが、それはもう俺の身体で覚えるしかない為日々練習するしかない。
「……よし、ならハジメ。お前に頼みたい事があるんだがいいか?」
「え、何?」
「魔具みたいなの作れるか?」
「まだ無理だよ!?いくら錬成士とは言え経験が」
「別に今すぐって訳じゃねぇさ。それに今新しい武器貰ったってそう簡単に扱いきれるもんじゃねぇしな。」
「じゃ、じゃあ俺のも作ってくれよ!剛ばっかずりーぞ!」
「……ハハハ、良いよ!腕によりをかけて作ってやるさ!」
そんな話声が一つの訓練場に木霊した。陰で俺たちを睨みつけているアイツの目線は、まるで敵意を隠していない。まぁ、特に何をするでもない様なのでこちらからはアクションを起こす必要はないだろう。
「鐘の音……そろそろ時間か?」
「うっそ、もう3時間経った?」
「ワリィ、俺のスキルの解明にばっか付き合わせちまって。」
「いや良いさ。俺たちの仲だろ?」
「というかホントに良いの?僕たちとあまり表立って付き合いたくないって言ってたけど。」
「いや、前も言ったけどさ。天之河に着いてくより2人に着いてった方が良いと思ったから、な?」
「アッハハハ!そうだったね、言えてる。」
「ま、とにかく後で話そうぜ。皆に聞かれちゃちょいとばかしマズイ話題になりそうだ。」
そう言って、俺たちは自室へと戻った。一応風呂はあるが、この3人が居る時は誰も入って来ない。つまり、その時が一番話す良い時間となる。それまではゆっくりと休む事にした。
「……で、だ。ステータスどうなってる?」
数日間とりあえず訓練を行いまくり、レベルを幾ばくか上げて来た。俺のやつはと言うと……
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北斗剛 17歳 男 レベル:5
天職:格闘家
筋力:130
体力:160
耐性:135
敏捷:80
魔力:10
魔耐:50
技能:無限の可能性[+魔力自動回復][+条件魔力回復]・決闘者の戦場・気配感知・魔力感知・言語理解
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物理ばっか伸びる。というか結局魔力関係のステータスが一切上がってない。だが魔力自動回復がいつの間にか付いてた。これでいつでもお気軽にゲージが吐ける。
「僕はね……まぁ、そこまで……」
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:4
天職:錬成師
筋力:40
体力:60
耐性:30
敏捷:30
魔力:40
魔耐:30
技能:錬成・言語理解・作業[+高速錬成]
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ハジメは全体的にステータスが上がっている一方、あまりステータスの伸びは良くない。もっとも、周囲の成長率が激しいだけで実力はトータスの冒険者の中では成長率は丁度平均値程……だったと思う。あと一つ気になるのが、作業に高速錬成の派生技能があるという事。マジで意味が分からん。
「俺はどうも魔力方向にばっか行くみたいだな。やっぱ闇術師だぜ全く。」
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清水幸利 17歳 男 レベル:5
天職:闇術師
筋力:30
体力:25
耐性:40
敏捷:30
魔力:80
魔耐:60
技能:闇属性適正・変成魔法[+支配]・言語理解
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幸利はその天職の通り魔力に適正が大きい様で、物理のみだとハジメにも負ける。だが、それを補う魔力がある。そして何より支配の派生技能が出たというところが大きい。これは所謂モンスターテイマーと言うか、魔物を使役する事が可能になるという事。清水が居る事により、俺たちの旅の仲間が増やせる事になる。……スライムナイトのピエール仲間にならないかな。
んで、レベルが上がった事により分かった事が幾つか。まず、あの清水のゲージの多さ。あれ、どうも魔力を参照して表示しているみたいなのだ。ハジメもゲージ20あってまさか……と思ったら俺のゲージは10。うむ、どうすりゃ良いんだ。
だが、逆に考えると俺が魔力増えたらぶっ壊れる。何せレイジングストームは3ゲージ技。今の状態でも3発撃てる。そこに魔力回復手段が豊富……ヤバいだろ?
んで何故今ステータスの確認してるか、と言えばだ。
「模擬戦だ!」
メルド団長が組み手……まぁ模擬戦を発案したのであるから。それぞれステータス毎に相手を決め、組み手をする。俺の初戦の相手は……
「北斗か……よろしく。」
天之河である。コイツはまぁ全ステータスが均等に上がっているらしく、現在はオール140。物理のみなら俺もやり合える。
「よーし、始めるぞ!天之河と北斗の試合、始め!!」
天之河は剣、んで俺は籠手だ。とは言え、俺が負ける要素はそうそうない。あるとすれば魔法で封殺されるくらいだ。
「行くぞ!」
天之河が剣を構えながらこちらに突撃する。それを見て俺はしゃがむ。
「何をするか知らないが……!」
「沈め……」
一気に天之河の足目掛けてスライディング。無論こちらへ全力で突撃してきた天之河だ、スライディングをもろに喰らってバランスを崩す。
「なっ!?」
「南斗獄屠拳!!」
しゃがんだ状態から小パン使って拾い、獄屠ぶっぱ。木剣で辛うじて防いだが、それでも大きく吹っ飛ばされるのは避けられなかった。
「くっそ……!」
「おいおい、どうした?勇者サマってのはこんな弱っちいのか?」
「言ったな!!」
挑発に易々と乗り、再び真正面から突っ込んでくる天之河。もうちょい自分を律する事が出来れば正真正銘聖人君主の筈なんだが、まぁ今は模擬戦だ。
「激流を制するは……」
「あっ」
誰が漏らしたか……いや間違いなくハジメだが、何をするかはご名答。
「―静水。」
剣を片手でいなした後、逆の手の裏拳で天之河をぶっ飛ばす。一応模擬戦って事でそこまで力は入れてないが……多分起き上がってくるだろうな。
「……このっ!万翔羽ばたき、天へと至れ―」
「ッおい何してやがる馬鹿者!!」
「“天翔閃”!!」
まさかの事態に同郷の皆が一斉に悲鳴を上げた。そりゃそうだ、クラスメイト最強との呼び声高い天之河最強の技。それが一人の人間に向けられているのだから。
「……ったく、手間かけさせやがる。」
当の俺はと言えば、特に慌ててもいなかった。別に横に避ければ良い話、だが色々と出来る事がある為それは敢えて考えなかった。
「ゲージも温まってきている。やるか。」
そう言って、俺は拳を目の前で開いた。
「白羅滅精!!」
全画面完全無敵技。光の斬撃が俺に向かって振り下ろされる。だが、当たろうが痛くも痒くもない。強いて言えば眩しいだけだ。ただひたすらに、周囲の魔力を形にして掌へと収束させる。
「……え?」
訓練場に大きな裂け目が出来たというのに。傷も負わず立っている俺、そして大技の隙に当てられる魔力。それを見て力の差を理解しない者はいないだろう。
「……どうした?この程度か?」
「クソッ……負ける訳には」
「お前の負けだ馬鹿者!!」
ぴしゃりと、団長の一喝が飛んだ。それを聞いて俺は構えていた拳を降ろした。
「何で」
「何でがあるか!今お前は仲間を殺そうとしただろう!」
「そんな気は」
「無いとは言わせない!確かに模擬戦をしろとは言った、だが再起不能になる大怪我を負わせろとは言っていない!こんな地面に大穴開ける技なんぞ人間に直撃したら大惨事だった、それが何故分からん!?」
ひとしきり捲し立てると、流石の天之河も拙い事をしたと考えが至ったのか、こちらに頭を下げる。
「す、すまない!ついうっかり……」
「別に大丈夫さ。作戦とは言え、こっちもちょっと煽り過ぎた。」
そう俺が言うと、団長は心配そうに俺の方に顔を向けた。まぁあんな剣の中に居たんだから当然とも言える。
「本当に大丈夫か……?何か怪我とかしてないか?」
「当たってないので特に問題は。」
「そうか……ってなるか!天翔閃の跡から出て来ただろう!?」
「俺の技能について色々と調べていたんですが、少しずつではありますが分かることが出て来ました。その手品の一つ、とでも言いましょうか?」
「……教皇にバレたら色々とマズイ事だな。これ以上は追及しないでおこう。流石に模擬戦も中止だ、会場も壊れたし何より勇者がこれでは他の皆も心配だ。明日オルクス大迷宮に行く事はもう変更出来んから……お前たちが不手際を起こしたら、直ぐに撤退する事を条件に行くことにする。良いな!」
今日の訓練は中止と天之河は説教。気にしていないとは言え、それではクラス全員の意識を変えるには足りないと感じてしまう。明日の大迷宮遠征……一波乱ありそうだ。帰るまでが遠足、とよく言うものなのだから。