ありふれた10割で世界最強   作:QAAM_M1911

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Round 6

「ハジメ、頼んでたアレ出来たか?」

「とりあえず籠手だけね。まだ全然完成度は低いけど……」

「いや良い。俺専用に調整された籠手なんだ、そっちのが使いやすい。」

 

そう言い、差し出された籠手を嵌めてみる。この籠手は攻撃よりも防御に重きを置き、尚且つ動きを阻害しないと言うコンセプトとの元作られている。レザー部分は市販品だが、手の甲は鉄により保護されている。それだけのものではあるが、まだ武器を作る工程に入ったばかりだった為にそれなりに苦労はしたらしい。

 

「……あぁ、丁度いい。」

 

そこで軽くジャブとストレート、ラッシュをしてみる。動きの阻害にならず、丁度いい塩梅だ。

 

「で、清水君にはこれ。」

「こりゃ……杖か?」

「持ち手と下の部分を分離させてみて。」

「仕込み刀か?こりゃいい!」

 

杖の下側は鞘になっており、内部から刃物が出現するものだ。斬るというよりは、刺す用途に使う形状をしている。普通に杖としても使えるし、持ち手の形状は鱗の様で芸術品としても価値がありそうだ。

 

「有難い。これって魔力の補助は?」

「中に魔石を埋め込んだし、多少はあるよ。」

「うーん……実用性を取るとすると、支給品の方がいい。が、ここを出るとなると……」

「こっちの方が良いな。普通の杖より攻撃力自体は高いからな。」

「……っし、明日の遠征これ使おう。」

 

チャキン、と仕込み刀を仕舞う清水。それと同時に、扉からコンコンと音が鳴った。明日の大迷宮に向けてひたすらモンスターの弱点などを調べるこの三人部屋に、誰かがノックを仕掛けるとは珍しいものだ。

 

「誰だ?」

『南雲君?起きてる?白崎です、ちょっといいかな?』

「北斗だ。ハジメなら起きてるぞ。今開ける。」

 

そう言って、扉を開ける。こんな深夜にどうした、と思うが正直言ってあの盲目少女だ。驚く事はない。

 

「俺と清水は外した方がいいか?」

「あ、うん。ありがとう。」

「……俺たちの意見は聞かないのな。まぁ良い、存分におしゃべりしな。清水、行こうぜ。」

「ったく、夜は寒ぃってのに。」

 

俺は掛けてあった上着を清水に投げ渡し、俺もついでに羽織ってから部屋の外へと出た。

 

「んで、あの2人がしっぽりやってる間どうする?」

「ハジメにそんな勇気ねぇって。つかガードアナザーブラッド並に硬いだろ。」

「いやアナザーブラッドはそっち関係は緩いだろ……じゃなくて。明日に向けて休まなきゃならんってのに。一体どうしたもんかね。」

「あの話もここじゃ出来ねえ。仕込み刀の練習でもするか?」

「そりゃいいな。広場なら大丈夫だろ、行こうぜ。」

 

 

 

眠気から来るあくびを噛み殺そうともせず、広場へと足を向ける。しかし、そこには先客がいた。まぁいるだろうとは思っていたが、まさかオマケまでついていたとはね。

 

「……八重樫。それと坂上か。」

「北斗君?清水君まで……何してるの?」

「いや、な。白崎がハジメに会いたいとか言って来て部屋から出て来た。ついでに清水の新武器の試し斬りでもしてみようかとね。」

「またあの子は……はぁ。」

「白崎のおかんかアンタは。」

 

清水が逆に二人は何をしているのか、と聞くと2人共に醒めた身体を疲れさせる為、と答えた。

 

「……さっきの模擬戦、凄かった。天翔閃を受けて無傷だったってのもそうだが、それより前のあのスライディングと飛び蹴り。受け流しも、何から何まで俺の先を行く……洗練されたものだったからな。どうすればそこまで強くなれるか……ってのはその技能が関係してそうだが、それを抜きにしても……な。」

「明らかに、私たちの誰よりも強い。私も坂上君も、負けてられないなと思って。」

 

そう言う2人の顔はきりっとしているものだ。だからこそ、俺は少しだけ心配になった。その顔は決意を決めているもの。その決意は一体どこに向かっているのやら、俺には知る由もない。杞憂になれば一番だが、ね。

 

「……八重樫、もし良ければ清水に刀を教えてやってくれないか?」

「え?新武器って刀なの?闇術師なんじゃ……」

「これ実は仕込み刀なんだ。一応刺突が主だから、そっち方面を頼む。」

「良いわ、教える事も上達の内だから。」

 

清水と八重樫が広場のもう反対側に行くのを見て、俺は息を思いっきり吐いた。背後には闘志を燃やす坂上の姿が。

 

「……よし、稽古始めるか。」

「ありがとう。俺ももっと強くなりたい。」

「まー教えられる技術は教えてやるよ。さて、じゃまず質問だ。お前格ゲー知ってるか?」

「格……ゲー?あぁ、スマブラとかか?」

「まぁあれも一つだ。俺が教えるのはリュウ、ストリートファイターのキャラだ。お前それにピッタリじゃねぇかと思ってな?」

「どんな奴だ?」

「格闘家で……技は見た方が早いだろ。行くぜ。」

 

そう言うと俺は振り返り、両掌を腰に溜めて蒼い波動を生み出す。

 

「これがリュウの必殺技一つ目……“波動拳”!」

「うおっ!?」

 

突き出された掌からは波動が撃ち出され、慌てて坂上は腕でガードする。気はそこまで込めていないので大した威力にはなっていないはずだ。

 

「っー!腕が痺れた……!」

「まぁ曲りなりにも必殺技だしな。これが第一。んで……」

 

こっちは手加減が出来ない為、広場のサンドバック目掛けて撃ち放つ。

 

「これが第二の必殺技……“昇竜拳”!!」

 

身体を捻りながら打ち上げる事によってコークスクリューの様に破壊力を増す、天に拳を向けるが故に禁じ手とされた技。サンドバッグのど真ん中を捉えた一撃は、大きく身を捩らせる結果になった。……え?破れなかったのかって?無駄に大きな一撃にする必要はねぇよ。

 

「すっ……げ。」

「第三の必殺技……"竜巻旋風脚"!」

 

助走をつけずに少し跳び、そこからプロペラの様に回る。振り回される脚が相手を幾度も叩き、大きなダメージを与える突進技だ。

 

「……ま、竜巻旋風脚はあまり実用性はないにしろ、波動拳と昇竜拳は実用性抜群だ。その二つは覚えといて損はない。どうする?」

「ハッ、当たり前だ。やるに決まってるだろ!」

 

そう言うと、俺はまず波動拳を教える事にする。

 

「……まず、気を練る事から始めねぇといけない。漫画は……読まねぇか?ドラゴンボールくらいなら分かるか?」

「そのくらいはな。」

「悟空がよく『はぁあああ!!』って叫びながら変身してるだろ?あれをイメージすると良い。身体の中にある力をゆっくり循環させるんだ。」

 

坂上が力んで、身体が震え始める。だが、これはよくある失敗例とも言える。

 

「あぁただ力むのは良くねぇぞ。気功って民間医療が中国にはあってな、自然の力と交流するものでもある。ただ自分の中で完結するのも内気功って分類もあるけど、断然外気功の方が効果は高い。」

「マジでそんな治療があるのか?」

「単にブラセボ効果だよ。けど、本当に外気功の方が効果が高いのは確かだ。海やら自然やらに触れる事で、リラックス出来るからな。だからまず、深呼吸をするんだ。」

 

ゆっくりと深呼吸をする坂上。脳筋であるからこそ、相手が自分より賢い奴であると分かっているなら素直に受け取るのが坂上だ。だから天之河をあまり疑わないってのもあるがな。

 

「肺を少しずつ広げて、酸素を身体の末端まで行き渡らせたら、吐いて……よし。とりあえず基本はこんなもんだ。」

「え、こんな簡単なものか?」

「とりあえず身体動かしてみろ、動きやすいはずだ。」

 

坂上は空手の演舞をその場で演じ始めた。全くの素人目では分からない程度ではあるが、前よりもキレがある。それは坂上自身も理解している様で、演舞を一通り行った後狐につままれたような顔をする。

 

「……これが、気を練った状態?なんと言うか……いつもより身体が軽い様な……」

「そうだ。まず基本は身体を整える事から全て始まる。不健康の状態じゃ良いパフォーマンスは発揮できねぇからな。」

「……次は?」

「まぁ待て。まずはその基本を無意識に出来る様にならなきゃ次のステップには進めねぇ。後で波動拳と昇竜拳の指南書書いて渡してやる。」

「あぁ、ありがとう。」

「期待してんぞ?また今度打ち合おう。」

 

あちらの方を見ると、仕込み刀の指導も終わった様だ。程よく疲れた身体を軽いストレッチでほぐし、部屋へと戻る事にした。

 

「じゃ、明日な。」

「えぇ。皆無事で戻れるように頑張りましょう。」

 

自分の部屋へと戻る2人を見送る俺と清水。清水の手には杖があるが、この一時間もしない時間で杖は使い古されたと言っていい状態になっていた。

 

「……スゲェな。そんな厳しかったか?」

「そこまでじゃないけど、とにかく色々教えて貰ったからな。」

「ほー。で、戦闘スタイルは?」

「ま、普通に魔法使って接近されたら仕込み刀ですっぱり散らしてやるってのが良いと思う。俺そこまで体力ないし。」

 

話している内に、もう三人部屋に戻って来た様だ。扉をノックして、応答を待つ。

 

「ハジメ、もう終わったか?開けるぞ。」

「……寝てやがる。」

「粗挽きそんなに気持ちよかったか?」

「ハジメはソーセージにでもなったのか?粗挽きじゃなくて逢引だろ。」

「冗談だよ。ま、もう寝ようぜ。これ以上は明日に響くからな。」

「あぁ、じゃ、お休みな。」

 

清水が手元にある蝋燭をもみ消すと、部屋は真っ暗になる。窓はカーテンで閉め切っているので光も殆ど入って来ない。そんな空間でじっとしていれば、疲れた身体は直ぐに眠りに落ちる。これなら疲れを殆ど残す事なく明日の大迷宮に挑む事が出来そうだ。

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