ありふれた10割で世界最強   作:QAAM_M1911

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Round 7

「予定通り、体調も異常なし。籠手の用意もバッチリ。二人はどうだ?」

「僕もバッチリ、どうにかなるよ。」

「杖もきっちり整備してもらった事だ、俺も十分戦えるぜ。」

 

オルクス大迷宮遠征。まぁ大迷宮とは言えかなり整備されているらしく、正面入り口は受付窓口で死傷者の計測なども行っているとか。広場なんかには露店が並んでおり、活気がある。とてもモンスターが湧いて出て来る大迷宮なんかとは思えない様相だ。

 

とにかく、大迷宮を進んでいくのには変わりない。大迷宮の壁は淡く光り、光源を持たずとも視認が容易である。この壁は団長曰く「緑光石」という鉱物が多く埋まっているからだそうだ。この壁削って光源として売れば……って発想は多分もうされてるだろうな。

 

「しっかし、天之河も昨日と比べて反省の様子は変わらずでどうするんかね。良いやつなんだが、どうもね。」

「朝謝りに来なかったのもそうだし、変な折り合いでも付けて自己完結したんじゃない?」

「それはともかく。前の奴らが張り切り過ぎて俺らまだ何もしてねぇぞ。」

「良いじゃねぇか。俺ら楽できてな。」

「ははっ、言えてる。」

 

しかしこれはあくまでも俺らの遠征というもの。尚俺ら三人にはあまりやる気はない――のは置いといて、流石に一回も手を出さずに終わるのは上からの心象というものが終わる。という訳で……

 

「そろそろ行くか?」

「一回くらいは、やろうか。」

「決まりだな。団長、次は俺ら三人が。」

「よし、やってみろ!」

 

上半身がムキムキなネズミ、ラットマンに向かって一発ストレイト。向かってくるネズミ野郎はそれにより胴体に穴がぽっかりと開く事になった。続いて迫るラットマン二体に飛燕疾風脚を繰り出す。説明しておくと、こういう必殺技系を繰り出した場合、ゲームと同じように攻撃判定が出る。何が言いたいかって?あぁ、つまり……普通飛び蹴りは足裏で攻撃するものだが、南斗獄屠拳や飛燕疾風脚をした場合、下半身全てに攻撃判定が出る。見た目より数倍は攻撃範囲が広いのである。

 

故に今、吹っ飛ばされたラットマンは見えない力で蹴っ飛ばされたと見えている。直ぐに絶命するだろうが、面白い技能もあったものだ。

 

一方のハジメ。あまり戦闘向きな天職でなかったが、地形を錬成する事により罠を設置。見事なハメ殺しであるとしか説明できない。

 

んで……幸利だ。杖から仕込み刀を抜いた幸利は簡単な闇属性魔法で目くらましした後、急接近してラットマンの眉間に杖を差し込んでいた。中々スタイリッシュな戦い方になりそうだが……今の懸念点は彼単体ではあまり攻撃力は高くない事だろう。

 

「っし、終わりだ。」

「よしお疲れ様!三人とも良い戦いっぷりだったぞ!特に……南雲、錬成師でも戦える事を証明してみせたな!」

「いやいや……戦えるのもツヨシのお陰で……」

「そう謙遜し過ぎんなや。俺が色々教えたっても使ってるのはハジメ、お前だ。だからこれは誇っとけ。」

 

そう言い、俺は再び後列へと戻る。多分白崎がハジメへと"掛かる"からだ。巻き込まれたくはないしな。そんな感じで苦戦もする事なく20階層へと辿り着いた。

 

「よし、ここから先は一種類の魔物だけでなく、複数種の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今まで楽勝だったからとは言え、くれぐれも油断するなよ!今日はこの20階層で終了だ!気合入れろ!」

 

ま、そうそうこちらもやられる事はないが。何せ一応こちらもチートバッカーズではある。

 

探索を続け、少し経った頃にメルド団長が立ち止まって言う。

 

「擬態しているぞ!周りをよ~く注意しておけ!」

「あれか。」

 

気配察知のお陰で俺はコンマ数秒もかからずに分かったが、他の皆は分かってないようだ。俺が戦闘体制に入った直後、せり出していた岩の壁が変色、魔物へと姿を変えた。

 

「ロックマウントだ!二本の剛腕に注意!」

 

飛び掛かるロックマウントだが、坂上が空中ではじき返す……どころか明確なダメージを与えた。気功を少し教えてこれか。坂上の素質は素晴らしい物だ。はじき飛んだロックマウントを天之河と八重樫が囲もうとするも、地形によりそれは叶わず、ロックマウントの固有魔法"威圧の咆哮"の発動を許す結果となった。

 

ロックマウントは天之河たちが動けないうちに、距離を取って傍らにある岩をつかんで放り投げてきた。白崎らがそれを迎撃しようと魔法を構えるが、その岩はロックマウントである。不意を突かれた結果、魔法の詠唱を中断してしまう迎撃部隊を見て、俺は一気に飛び出す。

 

「反応が遅いぞ。“ジェノサイドカッター”!」

 

鋭く弧を描いた脚がロックマウントの身体を切り裂き、一撃に沈める。パラパラと崩れる肉体から零れ落ちる魔石を掴んで懐に入れる。

 

「俺だって……!“天しょ」

「やめんか馬鹿!!」

「死ねぃ!“ゴッドプレス”!」

 

ゲージを使って天之河が技を決める前にもう一体のロックマウントに駆け寄って頭を掴む。そのまま壁へと引き摺って頭を強かに打ち付け、反転して繰り返す。二度もやれば頭は砕けて塵は塵へと還って行った。

 

「全く……こんな場所で崩落事故なんて起こすな馬鹿。」

「分かってたならお前も壁を壊すんじゃないぞ。梁は無事だから天翔閃に比べたらまだ良いが。」

「あー、まぁすみません。すぐに出せた技がこれだったもんで。」

「とは言え、そろそろ皆限界か……引き上げよう。」

 

そう団長が言うと、皆が足を揃えて反転しようとした。しかし、その動きは白崎の声で中断させられることとなる。

 

「あれ、何かな……キラキラしてる。」

「あれはグランツ鉱石だな。見た目と希少性から貴族の御用達の一品で、プロポーズの指輪にも使われる代物だな。」

 

白崎が頬を朱く染め、ハジメの方を見やる。どうせプロポーズの指輪に付けようとか考えているのだろう。しかし……

 

「団長、あれ罠じゃないですか?んな鉱石があんな店に出される様な形な筈はない。」

「確かにそうだな……おい!?」

 

檜山ら不良グループが罠の可能性も考慮せずに壁をひょいひょいと昇り、鉱石のところまでたどり着いていた。

 

「団長!やはりトラップです!」

「おい戻れ馬鹿者!」

 

しかし団長の言葉は届かず。檜山の阿呆は罠に見事に引っかかった。罠に手が触れた瞬間、俺たちが拉致された時の様な魔法陣が部屋全体に展開される。

 

「皆早くここから出ろ!」

「逃げるなら……いやもう遅いか。」

 

そのまま、皆転移の光に飲み込まれていった。浮遊感を感じた後、次の瞬間には地面の感覚が戻っていた。俺たちが落ちたのは巨大な石橋の上で、全長100m、幅10m、高さ20mほどだった。その下は奈落、落ちたらまず助からない。

 

「お前たち、すぐに立ち上がってあの階段の場所まで行け!急げ!」

 

団長が上に登る階段を見つけ、発された号令にクラスメイトたちはわたわたと立ち上がって動き出す。しかし、そんな簡単な罠である筈もなく。階段の橋の入り口に魔法陣が現れ、骸骨が大量に湧き出した。その逆からは、それらとはまるでオーラの違う……魔獣と言えるソイツが現れる。

 

「まさか、ベヒモス……なのか?」

「ベヒモス……未だに誰も倒す事が出来なかった魔物、か。」

 

まだ俺たちが敵う相手ではない、撤退するのが賢明だろう。が、退却するにもその道筋には37階層で出てくるトラウムソルジャーが大量に。だがアレを相手にするよかはマシだ。直ぐにトラウムソルジャーの群れに突っ込む。

 

「さて、効率よく倒すなら……これか?"セブンスヘヴン"!」

 

高速で動きながら、トラウムソルジャーの群れに無数の斬撃を喰らわせていく。一応の為にドスも持ってるからな、俺。

 

「んで……斬刑に処す!」

 

そのドスで続いて前方に居る奴らを斬りまくる。ドスの使い方も心得てるからな?一応ね。

 

「清水合わせろ!蹴り穿つ!」

 

群がり始めたトラウムソルジャーを閃走・六兎でぶちのめす。浮いたところに動き始めた清水が魔法で一気に殲滅、お残しも仕込み刀でぶっ刺す。

 

「っし!ハジメは……」

「うおっ、錬成で奴らを落とすのか!やるな!」

 

中々頭はキレる方ではある、であればハジメに清水を付けた方が良さそうだ。

 

「幸利、ハジメの援護行けるか?」

「任されて!剛はどうするんだ?」

「あの馬鹿を呼び戻しに行くんだよ。腐っても最高戦力なのは確かだからな。」

 

馬鹿、とは天之河の事である。力量差を理解せず相対するのは愚者の所業である。正直、付き従ってる八重樫や白崎に坂上、団長等の方が救出優先度は高い。今、天之河の最大攻撃を真っ向から喰らったのだが無傷である。

 

「俺の最高出力でも無理……となると無敵で時間を稼ぐか?」

 

ジェネラルのワープが無敵を続けるのに最適だが、攻撃も交えなければならないのが辛いところか。こちらに意識を向けさせるのなら多少のダメージを与えなければならない。

 

「覚悟を決める時が来たか……!」

「ツヨシ!」

「ハジメ!?何でここに来た!」

「作戦があるんだとよ。俺も付いてるから聞いてやれ。」

「……分かった。」

「簡潔に言えば、僕が地面を錬成してベヒモスの体勢を崩す。それで分かる?」

「まぁ大体な。落とし穴作るってことだろ?」

「そうそう、行けるかな?」

「やってやるさ、時間稼ぎは任せとけ!」

 

再び二手に分かれて、俺は呆然としている天之河に声を掛ける。

 

「ぼさっとするな!とっとと退却だ!」

「北斗!どうしてここに!?」

「そんなんはどうでも良い!早く逃げろ、お前が指揮しなきゃアイツら全員死ぬぞ。」

 

狂乱のクラスメイトは無暗に武器や魔法を振るうのみ、流れ弾に当たって死ぬ奴が出てもおかしくない状況である。

 

「お前はどうするつもりだ!」

「ここで足止めだ。さっさとあいつらの援護をしてこい!」

「でも!!」

「でもがあるか!あいつらが立て直して魔法を一斉に放てば、倒すに至らずとも逃げの一手になる……だから早く行け馬鹿者が!」

 

天之河はこちらを睨むが、その状況に納得がいったのか直ぐに立ち上がって後方へと向かう。

 

「ハジメの錬成も始まった、後は征くのみ……!」

 

まずは身体から気を弾として飛ばす。そこまでの威力はないが、ヘイトを向けるには最適とも言える。ベヒモスにいくらか当てた後、ようやくヘイトがこちらに向いた。

 

「俺を捉えられるかな?」

 

超高速移動による無敵時間を利用しながら、ハジメの罠の完成を待つ。しかし俺の攻撃が止んだとなれば直ぐにヘイトを散らす事になる。時々攻撃を入れるしかない。

 

「ったく、中々に面倒な奴だ。レベルを上げて殴るしか……いや、待てよ?」

 

確かにそれも良い。だが、俺のもう一つのスキルが役に立つのではないか?そう考えたら話は早い。

 

「清水!コイツを使え!」

「は!?……そうか、分かった!」

 

俺が投げたのはキーボード。つまり、だ。

 

「実戦投入は初だが、耐久性は折り紙付きだ。"決闘者の戦場"、発動!」

 

ベヒモスと俺の周囲に結界が出現し、密閉された空間で双方共に睨み合う。

 

『NO ESCAPE……FIGHT!』

 

無機質な音声と共に、ベヒモスが咆哮した。

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