ありふれた10割で世界最強   作:QAAM_M1911

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ROUND 8

『ふん、結界の類いか……それも先の魔法などとは段違いの硬さだ。』

「なんだ、喋れるのかお前。」

 

グルルと唸り声を上げながら、ベヒモスは鼻で嗤った。吹き荒れる炎をステップで躱しながら俺は饒舌になったベヒモスに声を掛けた。

 

『少しは骨のある奴だと見た、故に少し話してみようと思うただけだ。』

「それはそれはご殊勝な事で。で、要件は?」

『何故あのような愚者に構うのだ?己が力量を弁えず蛮勇のみを振りかざす、あんな子どもを何故逃がす?』

 

愚者、とは話からして天之河の事だろう。俺も嗤い、ベヒモスの双眸を真っすぐと見た。攻撃は止んだものの、こちらの体力はあまりない。

 

「確かに、アンタの言う通りだ。アイツは馬鹿で、力というものを理解せず……挙句後先考えない。終いに自分が負ける事を想像出来ない阿呆だ。」

『分かっているならば尚の事、何故だ?』

「人間社会ってのは印象で出来てるのさ。あんな奴だが一応勇者なんでね。正直死んでも俺個人としては困らないんだが、死なれると俺らの地位ってもんがないのさ。」

『何故地位を求める?』

「まだまだ俺らは成長途中の赤ん坊でね。独り立ちするまでは地位が必要なのさ。親やら王の庇護下にある、ってもんと同じだ。」

 

ベヒモスは唸りを止めないが、考え事をしている様だ。そして自分の中で合点がいったのか大きく咆哮する。

 

『ガハハ!!王の庇護下か、なるほど……我が眷属の様なものか。』

「おっと、どうやらあなたは王様であった御様子。これは失敬。」

『ククク……我が眷属はやがて力を付け、我が元を離れ牙を剥く……そうかそうか!戦いの前にあった一つの靄が晴れたものだ!』

「そうかい、だが駄弁っている間に逃げの準備は完了しちまったか。このまま殺し合いといきたいところだが、お別れの時間となったな。」

 

俺の結界が崩れ、一気に後方へと駆けだす。

 

『ぬ!逃がすか!!』

「ハジメ、やれ!」

 

そう叫ぶと、ハジメが一気に錬成を起こした。大橋を崩壊させるかと錯覚する様な窪みがベヒモスの通ろうとした場所に開く。無論走っていたベヒモスはバランスを崩す事となる。

 

「よぉし、手前らやってまえ!!」

 

一斉にクラスメイトから放たれた魔法がベヒモスに殺到する。しかし、ベヒモスも黙っている訳ではない。バランスを取りながらも魔法を放ったのだ。それも、今攻撃している者ではなく、手近だった俺たちの方に。

 

「ありゃマズイな……!避けろ!」

 

幸利は前方に、俺は横に飛び退く事が出来たが、運悪くハジメの飛び退いた近くに着弾した。だがまだ動ける、それで十分。

 

「2人とも逃げろ!もう一度……ッ!?」

 

決闘者の戦場を展開しようとした時、頭痛が走る。まるで結界の展開を封じるかの様に。

 

「……成程、居座りは良くても連コはダメってか。」

『行くぞ……人間!!』

 

その突進をバックステップで回避してからバーンナックルでその横っ面をぶっ叩く。しかし、まるで効いていない。俺も真正面から戦う事に腹をくくり、拳を構えたその時であった。石橋が戦いの余波に耐え切れなくなり崩壊が進む。

 

『ぐっ……橋が耐えられんとはッ!?』

「幸利!ハジメ!!お前らだけでも……ッ!?」

 

横目で見た光景。それは、爆風か何かに煽られてハジメの姿。幸利も喰らったには喰らった様だが、奈落には落ちていない。いや、それよりもだ。

 

「ハジメ!掴まれ!!」

 

俺も橋の外目掛けて飛び、ハジメの方に手を伸ばす。俺は三段ジャンプが出来る、まだ間に合う。と言うのに。

 

「駄目だ!来るんじゃない!!」

 

ハジメがそう叫び、手を伸ばす事はなかった。それに俺も助ける道を見出せず、橋の方に戻る事を余儀なくされた。

 

「クソ……清水、走れるか?」

「あぁ……何とか……」

 

ベヒモスは先程の崩落に巻き込まれて奈落へと落ちて行った。流石に死ぬ事はないだろうが、そうなるとハジメの事が心配だ。アイツはやはり頭が切れる奴だ。あそこで助けを拒んだのなら奈落に落ちても生きてる筈ではある。だがあの決定的な力量差を覆すのはどうしても無理がある。

 

「畜生……清水、あの魔法はベヒモスか?それとも誤射か?」

「後者だろうな。火属性の魔法……誰が撃った奴かは分からないけど、一つだけこっちに向かって撃たれた。」

「……見当はついた、が今は言わねえ。とにかくハジメの救出をどうやるかを考える……前に、ここを出ねぇとな。」

 

皆と合流した時、団長が白崎を気絶させていた所だった。そりゃそうだろう、想い人が死んだように見えたのだから錯乱もするだろう。

 

「……とにかく、出るぞ。帰るまで気を抜くなよ。」

 

オルクス大迷宮から脱出するまで、皆の間に沈黙が渦巻いていた。

 


 

「……団長、話があります。」

「北斗と清水か。夜更けだぞ、どうしたんだ?」

 

脱出した俺たちが王宮に帰った後、すぐにハジメのMIAが報告された。国王やイシュタルも含めて愕然としたが、それがハジメとしるや否や、誰もが安堵した、という体だった。俺はそれにブチギレかけた。それが悪人でないのなら悲しむべきことなのだ。ハジメもまた、体裁の上では味方であるのだから。

 

「……俺たちはこの国を、いや聖教教会を信用できない。だから、この国を出ていく。その報告に。」

「どうして俺にだけ伝える?俺もこの国の兵士だぞ?」

「あなた個人は信用できるからですよ。あなたとて信者、でも狂信的とは言わず人の心がある。」

「それはどうも、だがそれは聖教教会の批判とも取れるぞ?」

「実際批判みたいなもんだろ、剛?」

「まぁな。」

 

メルド団長の目にも少し鋭さが出る。だがそんな目で見られるのは承知の上、でなければこの理由を言う訳がない。

 

「ま、要するに方向性の違いってもんで喧嘩別れして出て行ったって報告しといてくださいって事です。」

「元々、俺たちもある程度したらこの国を出ていく予定だったんですし。」

「そうか……だがそうなると困るものだな。」

「知ったこっちゃないですし、んな事しても教皇は目の上の瘤が取れてすっきりするでしょうよ。」

「……ん?どういう事だ?」

「召喚された時、俺の方を睨んでましたのでね。遅かれ早かれ、追放されていたのは分かり切っていた事。なら俺らから出ていくまで。」

 

団長は納得しきれない様子、だが俺たちの言い分に筋を見出した様で頷いた。

 

「次に、これを当該の人物までお届けください。」

「これは?」

「遺書、って訳でもないですが置手紙ってやつですよ。それぞれ白崎、八重樫、中村、坂上、それとボケ口。」

「谷口な。」

「勝手に出ていくんですからね、これくらいしないと筋が通らんものですよ。」

「……分かった。健闘を祈る。」

 

団長は俺たちの覚悟を見据えた様だった。これで心置きなく出ていけるものだ。

 

「では、我々は今日、闇夜に紛れて消えるとします。また会える事を……いや、会った時は敵にでもなってるかも知れないですからね。」

「そうならない事を祈るよ。幸運を。」

 

俺と清水は、団長の部屋を出た。王宮の警備は確かに厳しいもの、だが俺たちは顔パスで出入りが出来る。荷物を王宮の外にぶん投げてから正面から出た。警邏に止められない為でもある。

 

「さてと。食料買い漁って潜るとしますかね。」

「つか、腐らねぇか?」

「いやいや、俺に考えがある。食料が尽きた時の保険ではあるがな。」

「嫌な予感しかしねぇ……」

 

無論、命の危険もある代物ではあるが。

 


 

そうこうして50層まで来た俺たち。ステータスも中々のものになったが、ここで食糧が尽きた。

 

「で、考えって何だよ?」

「俺の“決闘者の戦場”の中じゃ回復しまくれるってのを使うんだよ。」

「は?」

「端的に言うとな、魔物の肉を敵役に使ってそこで魔物の肉を食う。」

「猛毒やろがい!?」

「でも肉である以上、毒も回復しちまえば問題ない筈だ。まず俺から試す、スペース連打、よろしく頼むぜ。」

 

偽りの決闘が始まる。この肉を食う為だけに使うのは些か大事すぎる気はするが、まぁ利用できるもんはするだけだ。

 

「さて、頂きます……」

 

食う。がクソ辛い以外、今は何も起こらない。遅効性の毒みたいなものか、と思った瞬間。

 

「ぐっ…………あがああぁ!!?」

「ヤベェ……減り早過ぎる!?つかヤバい、スペースしても毒消えねぇ、どうなってやがる!?」

 

ライフバーが未だに減り続けていると言う事はこれは並の毒ではない。既に毒草を用いた回復実験は行っているのだ。と、なると……

 

「この結界のルール……以上の技術って事か?」

「おい!手ェ休めるなぁ!!」

 

その声にハッとした幸利は直ぐにスペースを連打する。ひたすらに叩き続けて1ラウンド。肉体へのダメージは痛覚のみにフィードバックされる。その間、身体中の至る所が作り変えられる感覚に苛まれ、筋肉がボコボコと隆起したり陥没したりを繰り返す。だが俺は耐えきった。

 

「ッはぁ……ど、どうにかなったな……」

「1ラウンド設定で助かった……って事で良いのかな?」

「あぁ。だが何だこの毒は?スペース連打してたろ?」

「それでも毒は消えなかった、何なんだこれ?」

「どういう事だマジで……」

 

で、俺は改めてステータスプレートを確認した。のだが……

 

「え、待て待て待て。」

「どうした?」

「ステータスがヤバい事なっとる……」

 

=============================

 

北斗剛 17歳 男 レベル:47

 

 

天職:MUGEN

HP:1000

ATK: 100

DEF:100

ゲージ:50

 

技能:無限の可能性[+ゲージ自動回復][+条件ゲージ回復][+性能変更][+カラー変更]・決闘者の戦場・気配感知・魔力感知・言語理解・魔力操作

 

=============================

 

「どういう事だ……」

「俺に訊くなよ。」

 

普通のステータスプレートと全く違う、というかもう分からねぇ。体力がHPに、魔力がゲージになったのは分かるがATKとDEFまさか統合されたか?魔法も物理も両方同じ値にでもなったのか?

 

「……つか性能変更ってなんだ?」

「それよりもカラー変更ってのが気になる……あ、まさかと思うんだけどさ。」

「何だ?」

「カラー変更って、ギルティギアのアレじゃない?」

「あ?金カラーとかのアレか?」

「そうそう、ああいう強化されたキャラ使えるってやつ。」

「それヤベェな。まぁそれは置いといて、だ。性能変更……」

 

おもむろにキーボードを引っ張る。ライフバーがない状態のディスプレイには何も映し出されていない。

 

「……これで行けるか?」

 

windows+Rキーを押す。すると、一つのタブが表示される。しかしそれはコマンドプロンプトでも何でもない。

 

「“性能変更”……ヤベェ、これとんでもねぇ代物だ。」

「だな……ヒデェやこれ。」

 

そこに映し出されていたのは、俺たちのステータス。俺は手始めに体力の欄を書き換える事にした……

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