DIARY OF MERCENARIES: THUNDER RUNNERS   作:コルディアムに脳を焼かれた阿慈谷ヒフミ

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皆さんUAありがとうございます。3話目にして周りとの差に心を爆砕されかけてます。


MISSON3 WEST COAST

アメリカ西海岸

 

OPERATION:NONE

November 13, 2024 0922

Place: West Coast of the USA

 

目標:西海岸の飛行場に向かえ

 

アルヴィン・エドワード・ローバック少将

コールサイン:ヴァータス1-0

現在の所属:なし

搭乗車:10式戦車E型

 

 

夢を見ていた。えてして夢というものは、それが夢だとは知覚できないもののはずだが、俺にはこれが夢だということが分かった。20年くらい前になる、イラクでの治安維持作戦。あの、俺が見逃した子供。その子供は、RPGを持って仲間に刃向かった。5人、死んだ。4人は戦友。1人はあの子供だった。あの出来事は、未だ俺の頭の中を支配している。俺があの時やっていれば、と何度思ったことか。20年だ。20年の間、俺はたった一つの出来事に支配されている。もはや自分の良心とはなにか。そもそも良心とは?何も分からない。もう嫌だ。この夢さえ見なければ、俺は苦しみから解放される。なぜ解放されない?俺の中の何が俺を縛り付ける?

「──おい、──おい!──起きろ!ローバック、起きろ!」

ふっと、目が覚める。首が痛い。ヘルメットを被ったまま、ずっと上を向いて寝ていたせいか。首を起こし、左に目をやる。砲手ハッチから顔を出した男。

「...また、例の夢か。忘れられればいい、なんて無責任なことは言えんが」辛いな、と俺に同情を示すのは、砲手のジョセフ・スチュアート少佐。

いや、実際忘れられたらどれだけ楽か分からんとスチュアートに返す。首元の冷える感覚。手を当てると、案の定大量の汗が出ていた。アメリカ西海岸の冬空。青い空の中の白い雲は、太陽の僅かな光と暖かみを全て遮ってしまっていた。左から叩きつける海風と、高速走行による前から叩きつける風は、ただでさえ寒い冬に更なる寒さを叩きつける。こんなに寒いのによくもまぁ汗をかいたもんだと苦笑する。

「ドライバー、今の時速は」

「40マイル(時速約64km)」

ドライバーのサミュエル・マクミラン中尉が返す。なるほど、確かにそれなりのスピードは出ている。この調子だと1時間もしないうちに目的地(あの飛行場)に到着出来るか、と頭の中で計算をしてみる。

彼女たちは、と後ろを見てみる。4人ともしっかり落ちずに座っていた。戦車は定員以上乗せるスペースはないとはいえ、やはり女性に後部のエンジンルームの上に乗せるのは申し訳がない。寒空の下、吹き付ける風は...まぁ正面からのは砲塔で防げるだろうが、横風は如何ともし難い。

──ふと思い立った、トランスポーターを使わず戦車だけで数百kmを横断するという暴挙。足回りを強化していたのと、ちまちま整備していたおかげで履帯がやられたりはしていないのが幸いだが、まぁ重量50tクラスの鉄塊だ。いつイカれるか分からん。こんな所で立ち往生になったら話にならない。普通にトランスポーターを使うべきだったかもしれない、と自分に残っていた正常な思考が囁く。それを早く言って欲しかったんだよ、俺は。

そんな中出会った、4人の少女。ヒッチハイクしていたので訳を聞いたら、ある戦闘機パイロットに会いたいと。名前は何かと聞いて、俺は驚いた。

──ルイス・“エレステナー”・コール少佐。まさに自分たちが会いに行こうとしている相手だった。それを伝えると、まず驚いたような顔をして、次に乗せて欲しいとすごい剣幕で迫られた。つい乗せてしまったが、これが本当に彼女たちにとって最良の判断だったかは議論の余地があるだろう。

そも、彼女達の目的は何なのか。父親──もしくは母親──を殺された少女たちの復讐が目的か。実際、エレステナーの名前はよく知られている。復讐するにしてもやりやすいだろう。もしくは、単なる賞金稼ぎか。これくらいの年齢──見たところ、15から16に見えた──なら、そういうことを夢見ても(実際に行動に移すかどうかについては置いておき)おかしくない。俺はどちらも選ばないがな。あいつは地上戦訓練を受けている。加えて普段からいつでも戦闘態勢になってもいいようにアーマーを着込んだりライフルで武装してるようなやつだ。とても少女4人では一方的にボコられて終わりとしか思えない。

この考えは、どうやら間違っていたようだった。曰く、別に親を殺された訳でもないし、そもそも殺す気がある訳でもないと。殺意を隠している可能性はあるが、嘘をついているようには見えなかった。

あんな空飛ぶ兵隊に用があるなんて、どう考えても普通ではないが、まぁここで降ろすのも犯罪的行為なので、後のことは後で考えるべきだ、と自分を納得させつつ、一路飛行場へ足を進める。

海岸沿いの道路は、もっと内陸の方に高速があることも相まってなのか、対向車が全くいない。1500馬力のエンジンと、モーターで構成されたハイブリッド・パワーパックがデカい音を鳴らしながら、重量50tの鉄塊と、3人の野郎、そして4人の少女を乗せて走っている光景。傍から見れば、終末世界を当てもなく旅しているようだな、と思う。俺にもこんな小説的な表現ができたのか──そんな自分に驚く。

親父はまぁそれなりに名が知られた小説家だが、俺には小説なんてものは全く似合わなかった。元々それほど学があったわけでもないのにのに、一方的に期待を負わさせられた。逃げるように入った海兵隊で、着実に昇進して、39歳で少将にこそなったが、そこまで行った途端、俺はなんのために海兵隊にいるのかが分からなくなった。また逃げるようにやめ、逃げるように3人だけのPMCを作り、訓練の相手をしつつ全米各地を飛んでいる。俺の人生のゴールは見えそうにない。

ゴールの無い人生、か。それはそれで面白いのかもな。

「どうした、ローバック。急だな」

おっと、俺の心の声がいつの間にか漏れていたらしい。なんでもない、少しこの後のことを考えていただけだ、と返す。

海岸沿いと言っても、断崖絶壁が続いていたが、気づいた時には砂浜がある所まで進んでいたようだった。もう、起きてから30分は経っていた。

ここまで来れば、飛行場まであと少しだ。

海側の風景は変わっていったが、陸側の風景は何も変わらん。延々と続く草っ原。時々、誰か住んでるんだかいないんだか分からんボロ家があるかと思えば、ガソリンスタンドがあり、比較的新しそうな家もあり。死ぬ前には、こんなとこで余生を過ごすのもまた、悪くないのかもしれない。

ふと上を見ると、点在していた雲は霧散して、青い空が視界いっぱいに広がるばかりとなった。あいつは、こんな空を命をベットしながら飛んでいる。そう思うと、パイロットというのは、とんでもない空バカな連中の集まりなのだと気づく。エレステナーに言ったら、きっと否定するどころか、全力で肯定するだろう。

メガソーラー。そういうには少し少ない気もするが、ソーラーパネルの群れと、小さな風車がいくつか、それに小さな建物と管制塔が見えてきた。

──ここだ。あいつのいる、あの飛行場。看板には“Airstrip One in USA”なんて書いてある。1984は俺も何度か読んだことがある。最初に読んだ時は全く訳が分からんかったが、今は少し、わかりそうだ。あいつも1984を読んだことがあるのだろうか、いや、大方Wikipediaで見てきたのがせいぜいだろう──

そう思っていた俺たちの耳に、バカデカいエンジン音が鳴り響く。うるさいことで知られるF/A-18E/Fのそれよりも遥かにでかい、そのエンジン音。音のする方に目を向けると、あいつの機体が滑走路のほうに出てきたのが分かった。主翼の青と赤は健在。もちろん胴体の銀色も。垂直尾翼の悪趣味なパーソナルマークは、あいつが無宗教の極みであることを示している。

銀色の大型戦闘機は、急加速を始める。エンジンノズルが上を向き、赤と青の混じった排気もそれに従う。わずかに数百メートル滑走した後、あいつは空にあがり、自由を手にした。脚を収めると同時に、更なる急上昇を行う。そのまま半回転すると、こちらの方へ向かい、飛び越して行った。俺も、スチュアートも、そして4人の少女も目が釘付けになっていた。高度、わずか数十メートルの低空を飛んでいった後、俺たちが来た方へ更に飛んでいき、別の航空機と合流し、海へと出ていった。

雄大な空を、自らの手で飛んでゆく。その様子は、俺に感嘆を抱かせた。一方の彼女らは、若干呆然としているようにも見えた。しかし、クロームオレンジの髪をした少女は、あいつの機体をどこか嬉しそうな目で見ていた。憧れの人、と言うやつなのだろうか。空を、命のやり取りをしながら飛ぶ。それは、確かに少年少女、いや、全ての人間にとって、憧れや畏怖の対象となるだろう。

人が届かない、本来いるべきでない場所に飛び込む。バベルの塔の話を思い出す。あまりに高くまで行き過ぎた人間たちは、神によってバラバラにされた。そんな禁忌にさえ飛び込むような話だ、空を飛ぶというのは。最も、あいつならたとえ神がいたとしても自分の自由のために神殺しでもしかねないか。

飛行場の正門に到着した。あいつはまだ居ない。勝手に入って怒られるのもなんだから、しばらく待つことにした。生憎と、周囲にものを買ったりできるところは無い。正門前で寒さに震えながら待つ他なかった。

「なぁ、嬢さん方。ひとつ聞きたいことがあるんだが」

待っている間、何もしないことに耐えられなかった俺は、ここに来るまでずっと抱いていた疑問を、彼女達に聞くことにした。

なんだ、というクロームオレンジの髪の少女の応答を聞き、質問をぶつける。

「なぜ、あのパイロットに会いに来た?あんたらは一体何者だ?」

そう聞いた途端、彼女は少し苦い顔をした。...あまり、聞いてはいけない事だったのだろうか。

「ま、話したくないなら話す必要は無い。俺たちは会って2日も経ってないからな」

デリカシーがなかった、と謝る。

「いや、別に話してもいいんだが...あたしは少し、苦い経験があるんだよ、あのパイロットには」

苦い経験。となると、あいつに落とされた的なところか。いや待て。そうなると、こんな少女とあいつが戦ったということになる。到底考えられない。

「あんたらは、あたしらの事をなんだと思ってる?」

唐突な質問。何か、と聞かれても、ただのヒッチハイク中の少女としか言いようがない。スチュアートも同じだったらしい。

「何って言っても、ただのヒッチハイカーじゃないのか」

いや、と彼女は首を振る。じゃあなんだというのか。

「私たちは、人間ではありません。正確には戦闘機の自動操縦装置、アニマと呼ばれています」

アニマ。アニマと言えば、ラテン語で魂と言うんだったか。マクミランだけはなんでもないように受け答えているが、一方のスチュアートと俺は、先程まで受け答えをしていた少女とは異なる、この緑の髪をした少女の言っていることが理解出来なかった。自動操縦装置だと?どこからどう見ても人間の少女としか言いようがない。まさか、クスリをキメているんじゃあるまいな。こんな若くしてヤクの常習犯となり、妄想に取り憑かれるなぞ、あまりにむごくて見るに堪えん。

「...ま、何言ってるか分からんよな。一応自動操縦装置扱いにはなっているが、その実態はいわゆるアーティフィシャル・ヒューマン(人造人間)ってところだ」

「分かってなさそうなローバックとスチュアートのために言うと、要は航空機の操縦という機能に特化させた人造人間、ってところだろ」

妙に腹立つ物言いをするマクミランに、クロームオレンジの少女は頷く。マクミラン、俺がお前より本来遥かに上の階級にあるということを忘れてないか。いやまあPMCに階級はそれほど関係ないが。だとしても、なぁ。

「...あー、まぁ、なんだ。まさかとは思うが、あんたらはエレステナーと交戦して、落とされた。だから、自分を落としたのが誰なのか、探しに来たとか、そんなんじゃないよな?」

もはや彼女達がエレステナーと交戦していない、という可能性は自分の中では非常に低かったが、一方でこんな少女達が戦っていた、ということを受け入れられない俺もいた。

「そのまさか。あたしらは、あの銀色のパイロット──ルイス・“エレステナー”・コール少佐に落とされたんだよ」

案の定だったか。俺は天を仰ぐ。にわかには信じ難いが、この少女たちはあの男、エレステナーと戦ったということらしい。

話を進めてみる。曰く、彼女達は本来この世界の住人では無いらしい。さっきから人造人間がどうのこうの言っていた以上、もはや驚くことでもないように思えてしまう自分の感覚は、間違いなく機能不全をきたしているだろう。また、元いた世界では人間ではまともに渡りあえない、「ザイ」と呼ばれる存在が暴れ回っていたらしい。それに対応するために生み出されたのがまさに彼女たち(アニマ)であり、また彼女が搭乗することで一般パイロットとは段違いの能力を発揮する機体(ドーター)とよばれるものもあったらしい。この世界に飛ばされるにあたって彼女らはそのドーターに乗り付けていたらしい。

「本来、あたし達を相手するのは1機だけだとしても、厳しいはずなんだ。それこそ一個小隊じゃまともに戦えないレベルでな。だからあたしらはあいつ(エレステナー)に驚いたんだ。たった1機で、あたしら4機を落としてのけるような腕前のあいつを」

そう言って、彼女──名前はジュラーブリクといった──は、エレステナーが飛んで行った海の方へ目を向ける。そういえば、かなり長い間話し込んでいた。体感では20分程度だと思っていたが、実際は40分くらい経っていたらしい。

──こりゃ、演習に出ていった感じだな。暫くは戻って来なさそうだぞ。

俺の考えは、ただでさえ寒さに凍えている俺の身に、更なる寒さを与えたようだった。ストアでもありゃいいんだが、この近くにストアができることはたとえ100年経ってもないだろう、と確信してしまっている自分が悔しかった。青い空は、どこまでも続いていた。

 

 




兵器解説
SR-16 LMG
エレステナーの装備する、資本主義と自由を体現した限界カスタムAR-15。
SR-16をベースに、16インチヘビーバレルの装備、アジャスタブルガスブロックの装着、放熱性に優れた、肉抜きの多いM-LOKハンドガードに換装、油圧リコイルバッファーの装備を行った。
マガジンは基本的にSurefire MAG 5-60 60連発マガジンを使用、OKC リトラクタブル・バヨネットを銃剣として装備、光学サイトはAIMPOINT COMP M5に6倍マグニファイア、マズルデバイスにはSilencerCoのOMEGA 300を使う。銃弾はイスラエル製の5.56mm APM弾を装填する。
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