DIARY OF MERCENARIES: THUNDER RUNNERS   作:コルディアムに脳を焼かれた阿慈谷ヒフミ

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そろそろ第一章、FIRST CONTACTも終わりそうです
それはそうとついにエイブラムスの最新型発表されましたね 性癖にドンピシャです
そんなことより5000兆円を非課税でください


MISSON6 AIRFIELD LIFE

幕開け

 

OPERATION:NONE

November 13, 2024 1326

Place:Uncle Turner's Airfield(Airstrip One in USA)

 

アニマ4人の話を聞け

 

ルイス・“エレステナー”・コール少佐

 

よしOK。今の状態を整理しよう。今日、演習に出た後、更に複数機と交戦状態に入り、へとへとになって帰投したら理由もなしにローバック達が来ていた。そのローバック達はなぜか少女4人を連れていた。話を聞くと、どうも彼女らは俺が半年前に落としていた「アニマ」という、戦闘機そのものみたいな存在だった。なぜ4人がここに来たかというと、「自分たちを落としたパイロットを近くで見たいから」だと。

What the idiots(バカか てめぇらは)とでも言いたい。アホか。マクナイト軍曹がここにいたら間違いなく同意するだろう。

まぁ確かにPMC連中の間では暗黙の了解がある。

 

1.務めて交戦相手や契約先に感情は持ち込まない。

2.例え前に敵だったとしても所詮契約での関係でしかない。恨みっこなし、友軍とて同じ。

 

こういう了解はPMCがPMCらしくあるための、傭兵が幅を聞かせていた時代から存在するものを引き継いだものだと言える、らしい。俺は新参だから詳しくは知らん。だが彼女らは話に聞く限り正規軍にいたと言うじゃないか。愛国心に溢れた、気取った(1106連中などの一部を除いた)正規軍様がこんな精神性を持ち合わせているとは思えない。

 

「何バカこいてるんだ。正気か」

「あたしらは至って真面目だが?」

 

前言撤回、言いたいじゃなくて言ってやる。少々パワーアップして。

 

What the fuckin' idiots(とんだバカ共だな)

「てめぇ今なんつった!」

 

目の前のクロームオレンジの髪の少女──名前はジュラーブリクと言ったか──が机を越えて掴みかかろうとする。なるほど、感情的な性格らしい。残念、回避します。ソファの縁を起点にライフルを左手に掴みつつ、右手でソファを乗り越える。紅茶がこぼれた。スチュアートが豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔をしている。ただし向いている方向はこぼれている紅茶の方だった。スチュアートらしいと言えばらしい。この紅茶狂いのイギリス人め。他のアニマ3人は引きつった顔をしていた。

 

「その言葉を返したいのはむしろこっちだ。PMCでもあるまいに、なぜ自分達を落とした奴に会いに来れるんだ?あまつさえ近くで見たいだと?意味が分からねぇよ。そんなのをシラフで言えるなぞ、正規軍様所属の大バカじゃなかったらなんだと?」

「あのな、あたしらは、あたしらの空を飛ぶ力に誇りを持っていた。だからこそ、それを完膚なきまでに叩きのめしたあんたというのがなんなのか見に来たんだ。たった今のあんたの言ったのはあたしらの誇りを踏みにじったのと同義だ!それにあたしはidiot(バカ)じゃなくてidiots(バカ“共”)って言ったのを聞き逃さなかったぞ!あたし一人ならまだいい、他の3人もバカにされるのは聞き捨てならないんだよ!」

 

...ん???これは、もしかして俺が勘違いしていたパターンか??俺は正規軍所属の奴がPMCに謎のアコガレをしたと思っていたが、実際は単純な好奇心...ってコトか?だとしたらバカは俺じゃねぇか。というか俺は何ムキになってたんだ。アホか。

 

「...あー、その、なんだ。どうも俺が勘違いをこじらせて、謎にムキになってただけだったらしい。えと、すまん」

 

今度の豆鉄砲はスチュアートだけではなく全員に広がった。いや、豆鉄砲どころか120mm戦車砲をまともに食らった鳩みたいだった。その状態で生きている鳩がいるかは知らん。

 

「えぇと...あたしもそんな風に素直に謝られると...その、反応に困るんだが」

「自分が悪いと認めたらすぐ謝るのが俺の美学なんだよ」

「にしたって早く謝りすぎじゃあねぇかおい」

 

マックはお前は素直すぎる、とでも言いたいんだろうか。だとしたら言うが、俺は素直じゃないぞ。それに謝るのは早ければ早いほどいい。自分が悪いってわかってるんならな。下手に言い逃れようとしたって拗れるだけだ。

 

「ま、まぁ...エレステナー...というか、ルイスさんも謝ったことですし....」

「おう...そうだな...あたしも少しキレすぎたかもしれない」

 

アルビノのアニマ──ベルクト、Su-47のアニマらしい──がジュラーブリクに促す。おそらくこれで和解...ってことか?雰囲気は最悪だが。そしてスチュアートはどこからか取り出したタオルで紅茶を...ってオイ!?あいつこの前輸入したばっかの高級今治タオル使ってやがる!ふざけんじゃねぇ、確かにそこら辺に放ったらかしにしといた俺も悪いけどさぁ...

 

「ミスター・スチュアート、そのタオルが何か分かっておいでで?」

「ボロ雑巾」

「お前絶対これが何か分かってるだろ」

 

このクズ野郎、ろくでなしのBri'ish(イギリス野郎)と思いつくだけの罵詈雑言をかけるが意に介さず拭いている。少し手と足を動かせば止められるんだろうが、もはやそんな気すら起きなかった。ソファの縁に顔をうずくめる。ゴーグルが目の周りに食い込んで痛い。ちくしょう、1枚4桁するやつだぞ。

 

「ああ哀れエレステナー、もはや動けなくなってしまったとは情けない。周りに笑われておるぞ」

「うるせぇゲームオタク」

 

マクミランに笑われる。こいつがゲームオタクってのはつい最近知った。頼むからゲームの改変文を作って朗読するくらいならあのクソッタレガンナーを止めてくれ。

ふと顔を上げるとアニマ4人も笑いを堪えていた。ジュラーブリク、お前が暴れなければこうならなかったのに。どいつもこいつも人の不幸を笑いおって。いつか返ってくるぞ、と思いながら、また柔らかいソファの縁に顔を沈め、ゴーグルの痕を顔につけた。

俺がバカって言わなければこんな目にあってない、と俺の中のなにかが囁く。やめてくれ、その言葉は俺に効く。

 

いつまでも顔を沈めている訳には行かないという訳で、とりあえず顔を上げてソファに戻る。タオルに関しては、まぁ後で洗濯機に放り込んどけばいいだろう。ウン。

 

「...で、これからどうする。俺の事を近くで見てみたいとは言っていたが、近くで見るっつっても、具体的にはどういうことだ」

 

彼女たちは俺の事を近くで見たいと言っていたが、それが何を意味するのか。抽象的過ぎて俺の脳みそでは処理できなかった。

 

「うーん、言ってしまうならば密着取材、みたいなものですかねー」

「密着取材?」

 

俺の疑問に答えたのは、動きにくそうなメイド服のSu-57──もっとも彼女に計画名のPAK FAとなぜか訂正されたが──のアニマ、パクファだった。にしても密着取材?それはつまり、俺の生活の隅々を見るってことか?何もそこまでする必要はないと思うけどな。

 

「密着取材っていっても、あんたらを落とした俺の腕が見たいってならそこまでする必要はないし、なによりその間どこにいる気だ」

 

生憎とこの飛行場の周りにはホテルやアパートとかの住む場所はない。そもそもこの世界にいた訳では無い以上、帰る場所がある訳でもない。考えていると、彼女らは何を言っているんだと言う顔をしてこっちを見ていた。

 

「バカなこと言うんだな、あんたは」

「?」

「密着取材っていうんならここにいるに決まってるんだろ」

 

?????????

何言ってるんだこの人。いや人ではないらしいけど。このアンクル・ターナー飛行場に居座ると?正気か??

 

「普通密着取材つっても、取材対象の家に居座る訳じゃないぞ」

「まずもって、あたしらは確かにあたしらを落としたあんたの腕も気になる。だけど、それ以上にあんたという人間が何なのか気になるんだよ。そのためには、日頃の生活からして見ているのが1番だろ?」

「監視生活か?」

 

それとも囚人か。ここを第1106戦闘航空団の本拠地とでも勘違いしてるのかもしれない。

 

「それともあれか、まさかあたしらを外に放り出す気じゃねぇだろうな?最近のここら辺は寒いって聞くぞ。あたしらが凍死したり、餓死したらどう責任を取るんだ?」

「いつから保護者になったんだよ俺は」

 

保護者ってお前、あたしらをガキ扱いすんのかと言ってきたが、違うそうじゃない。なんで押しかけ女房如く急にやってきた連中の世話を焼かないといけない。そんな責任俺にはないぞ。

 

「別にさ、こーんな広い建物があるんだから、5人住むくらいなら苦労しないだろ?」

「まぁ住人4人増えても問題ないくらいには部屋はあるが」

 

というか根本的に認識が異なる。ここに元々住んでるのは俺1人じゃない。もう1人いるんだが。俺の一存では決められねぇって。というか普通に嫌だ。嫌な予感しかしない。

 

「エレステナー、とりあえずの整備はしてきたぞ。いつも通り手間かけさせやがって」

 

廊下の方から、初老に入りかけたおっさんがやってくる。おっと、タイミングよく来たな。マイケル・ターナー退役少尉。アンクル・ターナー飛行場のヌシであり、同居人であり、整備士であり、調達担当で、F-2D乗り。要はマッコイ爺グレードアップ版。

 

「おっと、これはこれはアルヴィン・エドワード・ローバック少将閣下。久しぶりですねぇ。戦車の整備は専門外ですが、どんな用事で?」

「その閣下呼びはやめてくれ、ターナー。あんたの方が年上だし、海兵だった時は世話になったんだ、呼ばれるのはなんかこそばゆい」

 

ではミスター・ローバックとでも呼ばせていただきます、とターナーは返した。ローバック、完全に諦めた。ターナーもやめないか。

一方のジュラーブリクは唐突に現れたこの熟練整備兵の乱入にポカンとしていた。

 

「紹介しよう、こちらはこのアンクル・ターナー飛行場のラスボス、マイケル・ターナー少尉だ。俺の同居人。冴えないおっさんだと思うだろ?残念、整備や戦闘、部品の調達まで何でもござれのスグレモノでございます」

「まるで人を物かのように...」

 

ターナーが抗議する。実際パッと見では記憶に残らないくらい冴えないおっさんだからしゃーない。俺は事実を言っているだけだ、つとめてな。

 

「で、そちらのお嬢様方は?」

「ああ、半年前にドイツ内戦やってただろ?詳しいことは省くが、この4人はどうもその時に俺が落としたパイロットらしい」

 

どうも俺に会いたいからここまではるばる来たんだと、と言うと、先程の戦車兵連中みたく、ターナーはこっちを見てにやついた。おっさんにやられると腹立つな。

 

「随分モテるじゃあないかエレステナー。俺の若い頃を思い出すぜ」

「ほざけ。嫌われていたの間違いだろ」

「言ってくれるじゃないか、ええ?」

「な、なぁ。あたし達を置いてきぼりにしてないか」

 

ターナーと漫才していたら、ジュラーブリクから置いていくなと抗議が来た。おっとすまねぇ。

 

「で、だ。ターナー、この4名様方はここで共同生活をお望みのようだが」

 

そこまで言うと、ターナーは口笛を吹いた。お手本みたいな口笛、俺には吹けないぜちくしょう。

 

「そいつはまた、変わったことを言うもんだ」

 

よしいいぞターナー。このまま断るんだ。アンクル・ターナーのヌシよ、きっぱりとした態度で望むんだ。この友人、エレステナーのためにも頼むぜ

 

「まぁでも、いいんじゃないか。エレステナーを見るってのもまた、いい学びになるだろう。生憎と部屋には困っていない」

 

おいおいおい待て待て。何をぼさいてるんだこのハゲジジイ。ハゲじゃねぇけど。いやハゲかどうかは今重要じゃない。今、いいんじゃないかと言ったな?嘘だろ?むさ苦しいハゲジジイと一般通過航空兵と年端も行かぬ少女4人が同じ屋根の下だって?冗談じゃない。俺の自由な生活が侵害される。合衆国憲法違反で連邦最高裁判所に訴えてもいいレベルだ。もう2A(修正2条)以外内容忘れたけどな!それともあれか、このおっさんはまさかあんなことやこんなことをする気か。もしそうだとしたら軽蔑するぞオラァ!

 

「ほ、本当にいいんですか?」

 

うん、本当に良くないね、ミス・ベルクト。全く良くない。何で嬉しそうなの?脳みそが何者かに侵略されている?目を覚ましてください。侵略されるのは性癖だけで十分です。

 

「まぁ断ってもあんたら4人は行くあてがあるとは思えない。根拠はないがな。それなのに放りだすのは紳士としての心に欠ける。この飛行場の持ち主の俺が言うんだ、安心して欲しい」

 

なーにが紳士だバカタレ。フェイクニュースもいいとこだ。それに、ここの持ち主なのは確かにそうだが、同居人の俺の事を忘れられるのは困る。俺の意見を述べる自由をくれ。

 

「おーいハゲジジイ、同居人の俺の意見も」

「封殺」

 

死ね死に損ない。今こそ死ぬ時だ。あんたは奥さんいたから女性の扱いには慣れてるだろうが、こちとら女性経験ZEROだぞ、ZERO。フラメンコギターの名曲ではないが。マジで勘弁してくれ。

 

「よし、これで決まりだな!」

 

ジュラーブリクが言うと、脳みそが絶賛破壊工作中の俺に近づいてきて、手を出す。やめろ、笑うな。満面の笑みやめろ。泣くぞ。ゴーグルが涙で満たされるぞ。よく見なくても戦車兵もハゲジジイも笑ってやがる。お前ら全員2014年にイランで死んどけば良かったのに。PLRめ、俺はお前らを一生憎むぞ。

 

 

 

「よろしくな、エレステナー!」

 

 

 

「ハハッ...俺...これからどうなっちまうんだ...俺の自由な生活が...」

 

そう言うと、ジュラーブリクは不服な顔をした。俺がしてぇよ。

 

 

 

 

「はァ...仕方ない...映画でも観るか...」

 

無能な味方かと言えるかすら怪しい存在により、絶望的戦況に叩き込まれました、どうもルイス・コール少佐だクソッタレ。

世の中とは不条理なものだが、ここまで不条理でなくてもいいだろう。あゝ悲しみ。そんな訳で、悲しみを紛らわせんと映画を観ることを決心した。

 

「おっ、映画か!何見るんだ?」

 

やめろジュラーブリク。さっきから無駄に調子づきやがって。しばらく顔を突き合わせたくない。これも天命かと坂本龍馬とかだったら受け入れたんだろうが、生憎俺はルイス・コールだ。受け入れられません。いつか受け入れざるを得ないだろうが。あゝ無情。

さて、映画を観ると決めたは良いが何を観るべきか。普段なら他にいる連中の事も考えて選ぶが今の俺にそんな配慮はない。持っている一通りの映画のDVDを収めたファイルを開いてみる。まるで映画好きみたいな風に言っているが、残念、俺はそこまで見ない。こうなったらマーヴェリックでも観るか?

 

「なぁエレステナー、これなんかどうだ」

 

マクミランが指さしたのは、恋愛アニメーション映画だった。あれだ、隕石落ちるヤツ。

 

「もう8年も前か、そう思うと懐かしいな」

 

公開当初の熱狂は今でも思い出される。俺の出身地の近くも聖地になってたっけか。

 

「こういう恋愛系の映画も観るんですか?」

 

意外だった、と言わんばかりの顔でベルクトが覗いてくる。別にそういう訳では無い。

 

「ん、別にそういう訳じゃない。なんか流行ってたから乗っかった、それだけ」

 

まぁ難しいことは考えずに見ようぜ、とスチュアートがデッキにDVDをセットする。せっかく映画観るんなら何か欲しいな。あいにくとポップコーンマシンは持ち合わせていない。だが、ドリンクサーバーならある。確かまだコーラが残ってたはずだ。

適当なコップを選び、サーバーにセットする。顔を近づけて、弾ける炭酸を顔で感じていたなぁ、とふと子供の頃を思い出す。

コーラを入れてソファに戻ると、もう既に始まっていた。てかこいつら部屋暗くしないのか。暗くした方が雰囲気出るだろ。

スイッチをいじって電気を全て落とし、カーテンを引くと、部屋は漆黒に包まれた。目に悪かろうが関係ない。戦闘機乗りとしてのモラルは元々そこまで持ち合わせていない。

 

 

 

「いやー、終わったな」

1時間半の時間があっという間に過ぎていった。当時観た時は、あまり内容が理解できなかったっけか。その後何ヶ月か経ってやっと噛み砕けたのを覚えている。

というか、隣が妙に静かだ。カーテンを開け、電気を点けると、4人のアニマ全員が泣いていた。ベルクトは目を覆っていた。おい、そこまでじゃねぇだろ。大体泣くような映画かよこれ。俺はそうは思わない。

それを見てローバックが若干引いている。流石にそれは可哀想だ、やめてやれ。

 

「おいおい...そこまで泣くかよ...」

「ううっ...だってよ...死ぬ運命だったのを変えたって...感動しないわけないだろ...」

 

うーん、そういうものなのか。というかジュラーブリクがこんな泣くとは思わなかった。もっとこう、冷笑的な感じかと思っていた。なんなら途中でイラついてデッキを叩き割るとかするかと思った。ごめん嘘。流石にそこまでは思っていないが、こういうのに影響されやすいのはやはり意外だった。

 

ひとしきり泣き終えたところで、とりあえずドリンクサーバーに残っていたゲロ甘い、人工甘味料が入りまくってそうなオレンジジュースを出した。多分MREのやつの方が飲みやすい。もっといいのあっただろうって?実際何も考えずに出した。少しでも考えてたら多分出さない。

 

「なんだこれ!?めちゃくちゃくどくて飲みにくい...」

「もはや一種の暴力ですね...」

 

すまん、マジで。俺は心の中で謝った。口に出さなかったのに特に理由はない。俺の美学に反してるだろって?うるさい、人間は所詮都合のいいように物事を扱う生き物だ。

 

「さて、と」

 

ターナーが場を変えるように言葉を発する。

 

「ミスター・ローバック、本日も泊まられる感じで?」

「すまない、頼めるか」

「お安い御用です」

 

ローバックら戦車兵はここに泊まっていくらしい。実際ここ来たら泊まるのがいつもの事だ。

──泊まっていく。そういえば、あの4人もこれからここで暮らしていくんだよな。色々とここの勝手を知ってもらう必要がありそうだ。

 

「なぁターナー、これからあの4人もここに住むんなら色々勝手知ってもらわんといけなくないか」

「おっ、エレステナーもあたしらがいるのに抵抗なくなったか?」

「諦めたともいう」

「まぁそう言うな、エレステナー。そうだな、たしかにここに住むんなら色々知ってもらわんと困りそうだ。エレステナー、案内を頼む」

 

俺はもう諦めることにした。出来るものならターナーに押し付けたかったが、もうそれも面倒だ。仕方ない、案内するか。

 

 

 

「んじゃまぁ、玄関とリビングの位置はもう分かってるとして、まずは風呂だな」

 

ついてこい、と促す。この無駄に広い建物は、今のところ使用しているのはほんの極わずか、右端の部分しか使っていない。左の方は適当に物を並べて閉鎖してある。やったのはターナーだが、曰く「広すぎてもどうも落ち着かん」らしい。

リビングから廊下に出て、少し行くと右端の階段にすぐぶち当たるが、その手前に風呂がある。元々大浴場だったものをモダンに改造したやつで、かなり高かった。いやぁ、PMCは1回の契約で沢山金が貰えるから良い。

 

「わぁ、脱衣場からして広いですねぇ」

「こんなのをたった2人で使ってたとは、贅沢だな」

「まるで温泉みたいです...」

「廊下とは雰囲気がかなり違いますね」

 

4人が思い思いの感想を言う。廊下は全く手をつけていないから、なんというか古い病院みたいな感じがするのに比べれば、まぁ大浴場は随分と様変わりしたような印象を受けるだろう。一応ドライヤーかけるためのコンセントとかも複数つけたりしてあるので、まぁ実際温泉みたいなもんではある。だが驚くのはここからだ。曇りガラスのドアを思いっきり開ける。

 

「わぁ...!」

「すげぇ、こんなのに毎日入ってるのか!」

 

パクファとジュラーブリクが感嘆の声を上げる。他のふたりも驚いていた。

 

ただの集団生活を送る寮とは話が違う、広い浴場。日本の風呂を再現することを試み、まずタイルから全面を木に張り替えた。シャワーなども新しいやつに変えたり、小物として桶を置いたりしている。

 

「風呂は心の洗濯だって、誰かが言ってたように、風呂ってのは大切なもんだ。せっかく金も有り余ってたから、思いっきり改造してやった」

 

俺は女風呂というのを見たことはないが、まぁ間違いなく不足はないだろう。きっと満足行くはずだ。

 

「でも、こんな広いと掃除大変ですよね?」

「まぁな。空き時間に2人で何とかやってる。面倒臭い時は湯を張らんこともあるな」

 

まぁこんな広いとそりゃ大変大変。元々掃除なんぞ得意な人間じゃないので尚更。願わくば、彼女らにも手伝ってもらえば...というのは、些か虫が良すぎるってもんか。

 

「んじゃ次は部屋だな」

 

風呂から出て、階段を登って上へ上がる。俺とターナーの部屋以外にも、来客用とかに10部屋ほど残してある。一通りの家具はとりあえず揃えてある。うちの一部屋を参考として見てもらうか。

中にはベッドと机、椅子の他に何も乗せていないテレビ台とクローゼット、それに窓にカーテン。そんなもんだ。空きスペースは十分にあるが。

 

「なんというか...さっきのに比べると質素というか...」

「これでも壁紙とかは張り替えたりしたんだぞ」

 

ベルクトが言うことはまぁごもっともだが、来客用だから仕方ない。そのうち好きにカスタマイズして欲しい。...って金がねぇから出来ねぇか。

 

「まーなんだ、部屋は適当に好きなの選んでくれ。カスタマイズしたら言ってくれ、金は出せるだけ出す」

「いいのか?あたしら居候みたいなもんなのに、そこまでしてもらって」

「まー人の好意は貰っとけ貰っとけ。跳ね返してもいいことはないぞ」

 

さて、とりあえずこんなもんか。管制塔とか武器庫の場所は...まぁ別にいいか。関わることも当分ないだろうし。最後にトイレの場所だけ伝えておいて、別れた。

 

「はてさて、この先どうなります事やら...ってか」

 

異世界から飛ばされた4人。謎の成り行きで共同生活を送ることになったが、一体俺に何が待ち受けるんだか。とりあえず、やることも無いので俺は部屋に突撃して寝ることにした。




兵器解説
F-2C/D スーパー・ヴァイパー
F-2A/Bヴァイパーゼロの改修型、F-2スーパー改の制式採用型。コンフォーマルタンクの設置やアビオニクスの改修など、スーパー改の改修内容をそのまま適応している。例に漏れず輸出対応で、顧客に合わせて様々な改造が行われている。C型は基本となるはずだった複座型だが、ごく一部のB型から改造されたのみに留まった一方、単座のD型は多くのA型より改修され、むしろこちらが主力となっている。本機の輸出に応じた台湾やオーストラリアなど、多数の国家やPMCで本改修仕様が採用されている。

T-14-120
共通戦闘プラットフォーム「アルマータ」の構成車両、T-14の輸出版。主砲の高圧120mm 44〜55口径砲への換装やRWSの12.7mm×99mm対応化、同軸機銃を2A72の30×173mm対応砲への変更を行った車両であり、その高い防御力は健在。試作車がウクライナ戦争末期に精鋭戦車兵に渡されたが、ウクライナに投入されて以降の動向は不明。噂では、同戦車兵がT-14-120をパクって脱走し、PMC化したとも言われている。ロシア連邦が崩壊したため、同戦車兵の追及はほぼ不可能と化している。
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