DIARY OF MERCENARIES: THUNDER RUNNERS   作:コルディアムに脳を焼かれた阿慈谷ヒフミ

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前書きでなんか捻ったこと出来たらいいんですけどね
出来ません
悲しいね


MISSON8 PHANTOMS

亡霊に囚われた者

 

OPERATION:NONE

November 15, 2024 1621

Place:Port Angeles Central Mall

 

ケン・マイヤーズ刑事の話を聞け

 

ルイス・“エレステナー”コール少佐

 

 

「ロシア人だと?」

 

ロシア人の関与。俺には到底信じられなかった。2年前、俺はこの目でロシアが崩壊するまさにその瞬間を見た。もはや偉大なる母なるロシアの大地には、狂気に突き動かされたカルト国家の死体が、いくつかに分かれ残っているのみのはずだ。アメリカで大規模蜂起を起こす支援を行う能力は残されていないはず──

 

「ま、お前が信じられないのも無理はない。なんていったってお前はロシアを破壊した張本人の1人だからな。ただ、廃墟の元にただ野垂れ死ぬほどロシア人は弱くなかった、それだけの事だ」

「随分と回りくどい言い方をするな。もっと分かりやすく説明しろ」

 

俺の要求にマイヤーズは頷く。

 

「まずもって、お前たちPMCやウクライナ人がハッスルしまくったおかげで、ロシアは自壊を始めた。それは知っているな」

 

知らないはずがない。2022年に唐突に始まったウクライナ戦争。2020年の太平洋・インド洋事変において、ロシア軍は政府から責任を擦り付けられ酷く弱体化したにも関わらず発生した、大規模な軍事侵攻は世界に衝撃をもたらした。ウクライナは世界各国のPMCに参戦を要請した。あるものは十分な報酬に、あるものは正義感、またあるものはロシアへの復讐を誓い、参戦した。ロシアも募集を行いはしたが、ロシア側に参戦したところでまともな報酬を得られないことが分かると、一旦は応じたPMCもウクライナ軍についた、という話だった。結果として、複数の最新鋭兵器を保有するPMCは、弱体化したロシア軍を全力で殴り、黒海艦隊が壊滅、クリミアやドネツク・ルハンシクの制圧を決め手として、まずはカディロフのチェチェンが突然離反、続いて軍部隊が軍事国家の設立を宣言したり、シベリア方面で独立国家の宣言が相次ぎ、大統領のウラジーミル・レブコフの暗殺を皮切りに要人の国外脱出、暗殺が相次ぎ、ロシア連邦は完全に崩壊した。

 

「さすがだなエール。よくそこまで知ってるもんだ」

「知り合いの知り合いにGRUでロシアの崩壊を見届けたエージェントがいるもんでね。で、そのロシアの崩壊と今回の蜂起の関係は?」

「本題に入ろう。崩壊したロシアの死体には数え切れないほどの国家が残ったが、そのほとんどが外界から完全に途絶された、というのは知ってるか」

「ああ。一部は個人レベルで発信を続けているが、統治機構が滅んだことで統制が効かなくなり、もはやどの国家が存在しているんだかいないんだか、訳の分からん状態になってるとか」

「そうだ。だが、逆にこの状況を利用して、自らの、新たなロシア帝国を作り上げようとするものもいる」

「崩壊したところを利用して、他の分裂国家を吸収、ロシアの再現を試みるって訳か。外界から途絶してるから例え内部で何かをやってもそれが伝わる可能性は低い、と」

 

そういうことだ、とマイヤーズは頷く。本格的にTNOみたいな世界観になってきたな。

 

「外界から途絶しているとはいうが、だからといって外部国家も何もしない訳じゃあない。例えば我らがアメリカだと、CIAがエージェントを送り込み、現地で情報収集を行っている訳だが、その情報収集の中で、現ロシアの最大勢力が判明した」

「その名は」

「大ロシア国家連合体だ」

 

またロシアらしい大層な名前だ。

 

「勢力範囲はヨーロッパ・ロシア地域の大半やウラル山脈を中心としている。かつての経済機構の残りを利用して、勢力拡大の基盤を作ろうとしている、という話だ」

「勢力範囲だけならまるで初期のロシア帝国だな」

 

まぁ、やってることもロシア帝国とそう変わらんからな、とマイヤーズは言う。

 

「連合体と名乗ってはいるが、その実態はモスクワの中央集権国家。恐怖を基盤にした政治とロシアの再統一、そして西側とウクライナへの復讐を国家目標としている。国家の首領たる大ロシア国家統一委員長は元FSBの某局長、ステパン・ザカエフ」

「もうそれオムスクじゃねぇか」

 

多分ザカエフとかいう野郎はヤゾフあたりの生まれ変わりだろう。

 

「...オムスクがなんだか知らんが、ともかく、ロシアが崩壊した後も、ロシアの狂気は未だ引き継がれている、ということだ」

「全く悲しい話だ。あの広大な国家は、そうでもしないと維持できないジンクスがあるのか」

「まぁそれは否定できない。で、だ。この国は現在、ロシア連邦の遺産を使って、兵器の再生産を行っている。ひとつは他のロシア国家への侵攻、もうひとつは密輸だ」

 

武器の密輸。密輸をして一体何をする気なのだろうか。疑問にマイヤーズは答える。

 

「そうだな、まず1つ目は資金の獲得。さっき言ったようにロシア国家は大半が他国家との関係が絶たれている。大ロシア国家連合体も例外じゃない。だからこうでもしないと外貨獲得が難しいんだ。そして、もうひとつが扇動目標の戦力増強だ」

「つまり、どういうことだ」

「いいか、現在連邦警察とFBIはこの蜂起を大ロシア国家連合体が各勢力を唆して起きたものだと見ている。輸出入記録の調査はあまり出来ていないが、少なくとも6件、重機扱いでT-62やT-72が密輸されていることが判明している。輸出元はキューバだが、さらにその大元を辿った先は大ロシア国家連合体だ」

「つまり、ロシア人共は政府に対して反抗の意志を持った連中を唆し、さらに武器提供を行うことでアメリカ国内で混乱を引き起こそうとしている、と」

「そういうことだ。正確に言えば、元々反抗の意思を持った訳では無い連中を反抗勢力にするよう、思想を染め上げることもしているらしいが」

「こんな大規模に工作したら、どこかでボロが出そうなのに、よくやるわ」

「本当だな。連邦時代からは考えられないほど鮮やかにやっている」

 

復讐の意思は、ここまで人を突き動かすのか。あまりのことに少し恐怖を覚えた。

 

「もっとも、連中も完全に成功した訳では無い。お前、2日前に太平洋で空戦しただろ」

「なんでただの警官のお前がそれを知ってるんだ」

「ジュリアンからタレコミをもらった。それに、沿岸警備隊がとっ捕まえた脱出したパイロットの尋問も行ったからな。せっかくだから教えるが、あの大編隊は今回の抵抗勢力の主戦力、アメリカ解放同盟軍に雇われていたらしい。連中がきたと同時に、いくつかのレーダーサイトがやられていたこと、パイロットの証言から鑑みるに、おそらく航空戦力で複数地点を攻撃した後、地上で大規模反乱を起こす予定だったんだろう」

「だが、ちょうど俺たちがいた」

「そうだ。お前が連中を殲滅したことで計画は一時中断したらしい。もっとも、止めるまでには至らなかったがな」

 

力不足。その言葉が俺の頭をよぎった。連邦警察でさえ防げないのに、何自分の力を過信している、とでも言えれば楽なんだが。どうにも、自分自身に能力以上を求めてしまうのは変わらない。

 

「...ーい...おーい!エレステナー!どこいったー!」

 

ジュラーブリクの声。俺を探し回ってるのか。

 

「おっと、お嬢さんがお呼びらしいな、エール。行ってこい」

「ああ。久しぶりに会えて良かった、マイヤーズ。また会えるか」

「きっと。一通り終わったら飯でも食いに行こう」

「そりゃいい。ニューヨークに美味いチキン屋がある。『モリナーズ・ホット・ポケッツ』って言うんだが」

「ほう?是非案内をお願いしたいな」

 

マイヤーズとの約束を破らないようにしないとな。なんとか、この騒乱も生き延びてみよう。

 

 

 

「エレステナー!」

 

俺を見つけたジュラーブリクが駆け寄ってくる。

 

「急にいなくなったから探し回ったぞ!どこいってたんだ?」

「まぁ、いわゆる野暮用ってやつだ」

 

はぁ、とジュラーブリクは言うが、顔は明らかに納得してなさそうだった。そりゃそうだ、野暮用って言って本当に野暮用だった試しが古今東西今まであったかと聞かれれば、間違いなくそれは無い。

 

「...ベルクト達にはファントムが付いて行った。あたしらも行こう」

「行くっつっても、どこに運ばれたんだか分かるのか?少なくとも数百人は負傷したはずだから、受け入れる病院も分散してるはずだろ」

「とりあえず、近くのところに行ってみようぜ」

「分からない、と」

 

まぁ分かるはずがないか。この近くの病院と言えば、オリンピック記念病院か。

 

「この近くの病院なら、多分オリンピック記念病院だな。向かうぞ」

 

ピックアップに2人で乗りつける。ここまで来て、はと気付く。

 

「...買った食いもんとか、向こうに置いてきちまった」

「...あー...」

 

ジュラーブリクが忘れてた、といわんばかりの顔をする。俺も同じだ。とりあえずモールの入口を...規制線が張られております、お疲れ様でした!

 

「はは...まぁ、1300ドルくらいなら取り返し付くから...」

「お...おう...なんかすまんな...」

 

PMCやってて良かったぜ、全く。やってなかったら自己破産ルート卍だった。

 

「あっちょっと待って!」

 

走り出そうとした時、若い警官が車に寄ってくる。

 

「まだ事情をお聞きしていないので、しばらくお待ちいただけますか」

 

やっぱりサツは庶民の敵だ。ふと横を見ると、ジュラーブリクもあからさまに嫌そうな顔をしていた。そりゃそうだよな。

 

「あ、お隣のお嬢さんもお願いします!」

 

ジュラーブリクが全力で殴りかかろうとするのを必死で止めた。警官には地雷原に踏み込まないよう、ご協力をお願いしたい。

 

 

「はぁ...」

「....」

他人の話を聞く、とかいって1時間近く待たされた挙句、さらに40分ほど、しつこく話を聞かれた。もう外は完全に闇に染まっている。俺は疲れたし、ジュラーブリクは疲れと苛立ちで物凄く不機嫌な顔をしている。

 

「...行こうか」

 

黙ってジュラーブリクは頷く。すまないな、本当に。サツはやはり害悪ほかならない。

 

ここから記念病院まではそう遠くない。にも関わらず、ジュラーブリクは完全に寝てしまった。そりゃ、あんなひでぇことがあった後だ。眠くもなる。

 

──ロシア人の関与、か。俺はここ数年、2度、いや3度もロシア人の関わった戦争に絡んできた。もはやロシアにこんなことをする力は残されていない──崩壊前でさえ、そんな力があったかは疑問符がつくが──と思っていた。

 

それに、気になるのはロシアだけじゃない。マイヤーズはギャングや州兵、ミリシア(民兵)まで関わっていると言っていた。かなり思想汚染が広まっている上に、蜘蛛の巣のようなネットワークが広まっていることは間違いないだろう。ロシア人だけで出来るとは思えず、かと言って「アメリカ解放同盟軍」とやらにそんな力があるとも思えない。他の何者かの関与が疑われる。少なくとも、ジン・ジエ率いる中国に、そんなことをする意味は無いだろう。では一体誰が。これだけの大規模蜂起を起こせるだけの実力、資金を持つ者。とても分かりそうにない。

 

「2020年の騒乱は、ロシアを思いとどませることは出来ず、2022年は復讐心を練り上げただけ、か。いやはや」

 

この事件に対する思考の海に浸かっていた俺を引き戻したのは、ジュラーブリクだった。

 

「はぁ...はぁ...う..うう..ん...」

 

息が荒い。悪夢でも見ているのか。

 

「おい、おい、大丈夫か」

 

車を路肩によせ、ジュラーブリクの体を揺らして起こすことを試みる。3度ほど揺らして、ジュラーブリクは起きたようだった。物凄く汗をかいている。

 

「エ..エレステナー?」

「うなされてたぞ、大丈夫か。ていうかすごく汗かいてるな...」

 

飲むか、とまだ開けていない水のボトルを差し出す。受け取ると、物凄い勢いで飲み干した。

 

「...随分な事だったな。何見てたんだ」

「...襲われた時、あんたが真っ先に死んで、ほかの3人もバタバタ死んでいく夢。あたしの頭に銃が突きつけられて、死ぬっていう瞬間に、あんたが叩き起してくれた」

 

そいつはまた。なかなか精神的に来る夢を見せられたもんだ。

 

少し落ち着いたらしいジュラーブリクは、なぁ、とこちらを向いて言ってきた。

 

「ちょっと、あたしを抱きしめてくれないか」

「...随分と酔狂なことを。それはなぜ」

「...不安なんだよ。いつか、あの夢みたいに、半年かけて探し出したあんたを失ったり、あの3人も失ったりするんじゃないかって。あたしらしくないけどさ。あんたが確かにいるって分かれば、少しは楽になりそうなんだよ」

 

大胆で、乙女チックなことを存外言うもんだな、と少し感心した。まぁ、レディの頼みとあれば、聞く他ない。ジュラーブリクに、少しこっちに寄ってくれと手招きし、来たところを、つとめて優しく抱きしめる。

 

「...足りないんだが。もっと強くしろ」

 

オーダーには答えきれなかったらしい。言われた通り、少し力を強くすると、安心したかのように、ジュラーブリクの体に入っていた力が抜けていくのが分かった。

 

「...なんでだろうな。あんたの図体がでかいせいか、思ったよりも安心出来る」

「そりゃどーも」

 

どれくらい抱きしめていただろうか。しばらく経ったあと、突然彼女は言葉を発した。

 

「なぁ。これからさ、あたしのことジュラって呼んでくれないか」

「そいつは、仲良いのしか使わない愛称じゃなかったのか」

「あたしはあんたの事もっとよく知りたいし、あんたのことは結構気に入ってるんだぞ」

「たった3日で、随分と評価するもんだな」

「3日と半年、だ」

 

ジュラーブリクの訂正に思わず笑ってしまう。そうか、俺を探して大西洋を渡り、半年かけて探したんだもんな。半年の間にも、どこかしらで俺のことは耳にしただろう。

 

「んじゃ、改めてよろしくな、ジュラ」

「こっちこそ。あんたとは長い付き合いになりそうだ」

「間違いないな」

 

彼女の顔に笑顔が戻る。もう大丈夫だろう。

 

「さーて、俺たちを待ってるだろう連中がいる。行くとするか」

 

アクセルを踏み、路肩から車線へ戻る。向かう先はオリンピック記念病院。

 

「2人とも、無事だといいが」

「あんたがしっかり処置したんだ、大丈夫だろ」

 

だといいが、と返しておく。彼女の言葉は、自らを安心させるためでもあっただろうか。無論、自分はやることをきちんとやった。後は医者と天に祈る他ない。

 

 

例の病院は、日本の病院とは違い、アメリカによくある背の低い病院だった。駐車場に停め、駆け足で受付まで向かう。

 

「すみません、パクファとベルクトっていう人、運び込まれてませんか」

 

受付の看護婦はそれを聞き、驚いたような顔をした。

 

「ああ、パクファさんとベルクトさんですか。特徴的な髪色をしていたのでよく覚えていますよ。ちょうどこの病院に運び込まれています。それはそうと、あなた方は」

「2人の同居人みたいなもんです。少し見舞いに」

 

そう言うと、看護婦はベルクトとパクファがいるという病室を教えてくれた。

 

 

「失礼するぜ、エレステナーの登場だ」

 

2人がいる病室は病院の端っこの方にある、2人が入院できる病室だった。手前にいたのはパクファで、もう起きてファントムと話をしていた。ベルクトはと言えば奥のベッドでスヤスヤ寝ていた。

 

「...!」

 

パクファがこっちに気付くと、顔を赤くしてそっぽ向いてしまった。その後もおーい、とか何度か話しかけてみるが、あっち向いたままで、たまに身悶えするくらいで、全く口を聞かない。近くにいたファントムにどういう訳か聞いてみる。

 

「なぁファントム、パクファはなんで口聞こうとしないんだ?」

「ああ、それは」

「だ、ダメー!」

「お、おい、安静にした方がいいんじゃないのか」

 

たった今まで黙っていたパクファが、唐突に布団を蹴っ飛ばし、ファントムの口を塞ごうとする。このまま黙っていたところでファントムにゲロられると思ったのか、赤い顔のまま話し始めた。

 

「...わたしが倒れた時、エレステナーが処置したじゃないですか。そ、その時に私の...その、下着を見られたり、キスされたり...こういうのって、責任取ってもらうもの、なんですよね...?」

 

呆れた。まさかここまで初心だとは思わなかった。ジュラは顔が見たこともないマヌケ面しているし、ファントムは何を言っているんだという顔をしている。おい、貴様は全部知ってるんじゃなかったのか。

 

「なぁジュラ、パクファっていわゆる見た目は大人、頭脳は子供ってやつか」

「そうだけど、正直あたし自身ここまでだとは...」

 

姉貴分のジュラに言われるんじゃ終わりだろ、この人。

 

「じ、じゃあ、これからよろしくお願いします?」

 

パクファがこっちを向き直す。やめろ、それはとんだ勘違いというか、認識違いだ。

訂正しようとしたとき、奥から別な視線を感じた。空気になっていたベルクトだった。

 

「べ、ベルクトサン....」

「あ、起きましたか」

 

ベルクトが起きたのは良いが、問題はその目だった。こちらをトゲのような目線で見つめている。おい、俺には何かあんたに対してマズいことをした覚えはないぞ。

 

「...ない」

「え?」

「...まだ撫でてもらってないのに、他の人に乗り換え、ですか」

 

んんん???

 

「それってどういう」

「私にそうするのって、そういう気があるからじゃないんですか」

「ただの無知に続いて今度は恋愛小説の読みすぎかよォ!」

 

なんてこった、連続で面倒事に巻き込まれるとは。叫びたくもなるがな。パクファが無知なのは、まぁ、いいとして。ベルクトが恋愛小説が趣味というのは聞いていたが、あまりに読みすぎてこじらせたのか?それとも寝起きで突拍子もないこと言っているだけ...?

 

「よーし御二方、いいから俺の話を聞けー?」

 

 

 

「つまり、別に、その、下着見たりキスしたりで責任取る、なんてことは特にないし、そもそも救命という意味だけであって」

「わ、私に関してはただの勘違い...ってことですか!?」

「そうなるなぁ」

 

とりあえず両名への説明は完了。分かって貰えたみたいで結構。

 

「うう...」

「は、恥ずかしさで爆発しそうです...」

 

2人とも悶えている。パクファに関しては周期的に枕をベッドに叩きつけている。うーん、少し悪いことしちまったかもしれない。ここらで退散した方がいいか。

 

「んじゃ、俺はちと退散させてもらいまーす」

「あ、待ってください!」

 

ベルクトに呼び止められる。一体なんだってんだ。

 

「...勘違いはしましたけど、私は結構、エレステナーのこと、好きですよ」

 

そうとだけ言うと、ベッドに潜り込んで出てこなくなってしまった。これは、告白になるのか??突然過ぎない??

 

「お、おう...とりあえず、多分明日も来るんでまた...ジュラとファントムはどうする」

「ここに居たって仕方ありません。帰りますか」

「さすがに病院に泊まる訳にもいかんしな」

 

ファントムとジュラを連れて外に出る。腕時計は午後5時26分。冷たい風が俺たち3人に叩きつける。いい加減寒いったらない。

 

「ここからどうするんですか?」

「このまま帰りたいとこだが、その前に飯でも食ってくか」

「どこ行くんだ?」

「うーん、Chick-fil-Aなんかが良いと思うが」

「ちっくふぃれぃ?」

「美味いチキン屋のチェーン。もっとも、こんな乱射事件起きたあとじゃ店じまいしてるかもしれんが」

 

とりあえず2人を車に乗せ、スマホにナビ案内をさせる。1番近い店はそこまで遠くない。5分そこらで着く位置にあった。が──

 

「あちゃー。案の定閉まってるか」

「悪い予想ほど当たるものですよ」

 

案の定、予定より遥かに早く店じまいしていた。ほかの飯屋はないか──周囲を探ってみても、明かりは付いていれどどれも民家の明かりばかり。飯屋の明かりはなし!俺たちは終わりだ──そんなことを思っていたが、ふと、知り合いがトルティーヤ屋をここ、ポート・エンジェルスでやっていたのを思い出す。記憶が正しければこの通りの路地裏でやっていたはず。

 

2人を連れて、路地裏に向かう。アメリカの夜の路地裏は何があるか分かったもんじゃないが、まぁその時はきっとどうにかなる、うん。

 

「よし、運がいい。あいつは店を閉めてなかった」

「ここは?」

「俺の知り合いの元PMCがやってるトルティーヤ屋」

 

店のドアを開けると、久しぶりに嗅いだ美味い匂いが鼻に飛び込んでくる。店は閑散としており、俺たちと店のマスター──ジェイコブ・“ジェイ”・パーシヴァル大尉──以外に誰もいなかった。

 

「おっと、こいつは予想外の客が来たな。ここまで来たんなら連絡しろ、エレステナー」

「悪ぃなジェイ。元々飯をここで食うつもりはなかったんだが」

「ほう、それは喧嘩を売ってるのか?」

「まさか、ただの事実に過ぎねぇ」

 

話をしている中、ジェイは後ろの2人に気付いたようだった。彼女らは、と聞くので同居人だと答えると、お前もモテたもんだな、とからかわれた。

 

「まさか、俺がモテるなんてそんなの天変地異が起こって地球と月の位置が変わるくらいないと有り得ねぇ」

「相変わらず恋愛に関しては可哀想な奴だな...」

「付き合った彼女、3人全員が1ヶ月で寝取られりゃそうもなる」

「えぇ...」

「3人全員が1ヶ月...一体何をどうしたらそうなんだよ...」

 

ファントムとジュラに呆れられる。仕方ねーだろ、どうせ俺は真性包茎のインポ野郎だちくしょう。

 

「ま、お前が女周りでどうなろうと知ったことじゃない。何食う」

「俺は普通のやつとコーラ」

「了解。お2人さんは」

「よく分からないのでエレステナーと同じで」

「あたしも」

 

適当に座っとけ、と言われたので、店の真ん中の、一番デカいテーブル席に陣取る。

 

飯が来るまでネットニュースでも見るか、とニュースサイトを開く。

見出しは予想以上だった。1ドル76円まで下落、一部州兵が虐殺事件を引き起こしたり、南部地域では制圧に出た連邦軍部隊が逆に押し返される、挙句の果てには一部放送局がジャックされた上、ワシントン D.C.からは一切の情報が届かない、なんていう怪情報まで出回っていた。なんとか外国からの情報が出ているだけマシか...

 

「NATO軍は政府からの要請がない以上、鎮圧には参加できない、と。国連の緊急総会でも肝心のアメリカ代表が本国からの指令が届かず、まともな話し合いにすらならなかった、ねぇ」

 

地獄かここは。呑気に飯を食ってられる場合じゃあない気がしてきた。でも空腹には抗えない。

 

色んなニュースを漁っているうちに、ジェイが手にトルティーヤとコーラのジョッキを持ってやってきた。不思議なのは、それがどう考えても、何度見直しても4人分だということだが。

 

「発注した素材が有り余ってたんでな。どうせ誰も来ないだろうし、せっかくだからお前らと食うことにする」

「商売意識あんのかお前よォ」

「あったらこんな所に開業していない」

 

大体リピーターなんてお前含めたかつてのエクスカリバー隊メンバーくらいだぞ、と言う。エクスカリバー隊、懐かしいねぇ。

 

「エクスカリバー隊ってなんだ?」

「正式名称、ウクライナ空軍第30外国人特殊航空旅団第2369特殊航空連隊。2年前のウクライナ戦争の、全機がステルス機乗りのPMCで構成された特別部隊だ」

 

ウクライナ戦争。そのワードに、ジュラは少し悲しそうな顔をした。そうか、彼女はロシアを愛している。だからこそ、今の崩壊したロシアも、言ってしまえばそうなる原因となったウクライナ戦争も、彼女には辛いワードなんだろう。ジェイもその顔に何か察したのだろう、話題を変えるように、そうだ、と声を上げた。

 

「エレステナー、お前って2022年の戦争以外にも、その前の戦争にも参加しただろ?」

「太平洋・インド洋事変だな。あん時は大変だった」

「何でも、世界を救ったなんて言うじゃないか。せっかくだし聞かせてくれよ」

「なんだそれ、あたしも気になるぞ」

 

そうか、ターナー以外に俺の参加したあの戦いのことは話していない。せっかくだし、ジェイやジュラ、それにファントムへ話してもいいかもしれない。一口コーラを飲み、話す準備をする。

 

「かなりの長話になるぞ」

「ありゃ4年前、2020年の夏。俺は色々あって日本から逃げ出した後、アメリカ海軍に雇われてたんだ。内容はアグレッサー役。自慢じゃないが、その時から俺の腕は各国に知られてた」

「...だけどな、あんなことになるなんて、思ってもなかったんだよ」




次回からバトルフィールド4の話になってきます。原作のBF4とは一部改変が行われますので、どうか何卒

人物紹介
ローランド・ギャリソン大佐
アメリカ海軍大佐で、ワスプ級強襲揚陸艦2番艦、USS ヴァルキリー(LHD-2)の艦長。過去の作戦において、息子を失ったことから、CIAエージェントのラズロ・ウィスラー・コヴィックには複雑な感情を持っている。初老の男性だが、豊富な知識と経験、頭の回転の速さは彼を優秀な艦長たらしめている。

兵器紹介
F-15 ASE Super Eagle
F-15 ActiveとF-15SEの要素を統合した、次世代のF-15。世界中のPMCパイロットの運用するF-15向けに開発された。小型化し、機関砲の搭載に対応したカナード翼や、垂直尾翼をより外側に傾ける、機体下部のスリム化などの外装の変更により、ステルス性と機動性を向上させた。また、CWPのほか、ステルスウェポンポッドの統合により、最大で16発のミサイル搭載を可能としたほか、ステルス性が不要な場合はストライクイーグルとしての運用も可能。エンジン推力を向上させるため、F-15に最適化されたF9-IHI-100エンジンを搭載。スーパークルーズを可能とした。また、FLIR/IRSTも追加で標準装備されたほか、EA-18G用の物を改修したEWポッドの運用能力も追加された。
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