DIARY OF MERCENARIES: THUNDER RUNNERS 作:コルディアムに脳を焼かれた阿慈谷ヒフミ
孤立無援
OPERATION:PEACEKEEPER
July 11, 2020 0833
Place:South China Sea, USS Titan, CVN-76
目標達成済み
ルイス・“エレステナー”・コール少尉
コールサイン:センパー1
現在の契約先:アメリカ海軍
搭乗機:F/A-18E Super Hornet
「こちら空母タイタン航空管制センター、センパー1、着艦を許可」
日本から逃げて早2ヶ月。面倒事にはかなり巻き込まれたが、その度にパジェット空軍大将に助けられてきた。全くパジェット大将には頭が上がらない。
元々俺の名前はそこそこ知られていたこともあって、──同期曰く、ヤバいやつが日本のスクールにいる、という話で広まっていたらしい──来て早々アメリカ海軍との契約を成立させられて、こうして海軍機の演習相手をやれている。つくづく運がいいな、と思う。
航空管制センターに了解、と返して着艦作業に入る。ギアダウン、続いてフックダウン。スポイラーを展開し、エンジンスロットルを100%まで上げる。
残りの距離を航空管制センターから伝えられる。その距離が縮む度に手の汗も比例して出てくる。陸上の着陸とは違い、空母への着艦はかなり強引だ。その分リスクもある。余裕はわずか数百メートル。マッハで飛ぶ航空機からすれば、それはあまりに短すぎる。だからこそ、万が一のミスもないように、細かく着艦コースを修正する。これでも着艦支援ソフトウェアが導入されてかなり楽になった方で、前に着艦訓練やった時はいちいち修正しないといけなくて無駄に神経を使った。
自らの心を落ち着けるため、深呼吸をひとつする。...よし、少しは落ち着いた。
ゆっくり、確実に機体の高度を下げてゆく。機首を上に向かせると、下方への視界が完全に消失する。あとは勘だけがものを言う。
──接地。コンマ数秒後、機体のアレスティング・フックが空母のアレスティング・ワイヤーを捉えたのを感じる。ジェットコースターなんかとは比較にならない急減速に体が押し付けられる。
「ふぅ...今日の着艦も、何とか生き残ったな」
いつまで経っても、空母への着艦は慣れない。エンジンスロットルレバーを下げながら、あの世で見ているだろう神に乾杯。なんとか今日も死ぬことはなかった。
「酷い着艦だ、センパー1。それと、艦長が呼んでいる。早く行った方がいい」
管制に侮辱された。もはやいつもの事だから無視するとして、あとの言葉が引っかかった。──艦長。このCVN-76 USSタイタンの艦長は、ケリー・ピーターズ大佐。別に某海軍大尉みたいに艦橋をフライパスした訳じゃないし、呼び出し食らうようなことを仕出かした覚えは無いが。
「艦長が?了解、行ってくる」
甲板作業員のハンドサインや無線に従い、機体を駐機エリアまで持っていく。周囲の機体が通常カラーのASF-14が大半の中、赤と白と青の塗装のF/A-18Eというのはなかなか目立つ。にしてもスーパーホーネットも不遇だ。ドラ猫連中の後継として生み出されたのに、PMCがドラ猫を改良しちまったせいで、F-14の改良型、ASF-14が未だに甲板のほとんどを占めて、ほとんど仕事を果たせていない始末だ。F/A-18E/Fは、現状各航空団に一個飛行隊程度しか配備されていない。
機体を止めて整備兵にあとを任せ、艦橋へと向かう。
「お疲れ様です、少尉!」
艦橋の艦長室まで行く途中に出会った水兵に敬礼される。こちらも答礼する。にしても明らかに年上の水兵に敬礼されるの、違和感があるな。やはり軍隊というのにはどうにも慣れない。
「よぉエレステナー、今日も俺の部下相手に暴れ回ったんだってな?」
今度は後ろから。振り返ったところにいたのは、タイタン所属の第269戦闘攻撃飛行隊“カニバル・シャークス”の隊長──コールサイン、シャーク0-0──、ジェイミー・“セイバー”・コリンズ中佐だった。元、USSジョージ・H・W・ブッシュ所属。
「全く、今日こそは俺の秘蔵っ子たちを出したから勝てると思って大金賭けたのに、おめおめ勝ちやがって。1400ドルだぞ1400ドル」
「人の演習結果で賭けなんかしてる方が間違いなんですよ...」
「俺からしたら、ルーキーパイロットなのに、4機のトムキャットを1人で相手できる方がよっぽどおかしいけどな」
セイバー中佐は笑う。陸上ではカジノに行きまくって散財をしている、ともっぱらの噂だった。他人の演習結果で賭けをする士官、というのもなかなか変な話だが、そんな士官らしくないところや、それでいて決して低くない操縦技術、なによりこの人懐っこい笑いのせいでなかなか憎めない。実際、飛行隊メンバーにもよく慕われているのがこの海軍中佐の不思議なところだった。
「でだ、エレステナー。今暇か?暇だったら飲まないか」
「朝っぱらから軍規違反の酒飲みでもする気ですか...というか、この後艦長に会いに行かないといけないんで」
「別に酒じゃねぇっての。てか、ピーターズ大佐に会いに行くのか?そいつは悪い事をしたな」
「まぁ、大佐とは別に正規の部下でもないですし。自分が契約してるのはアメリカ海軍なんで、多少遅れるくらい大丈夫でしょう。飲みたいんなら、後で飲み行きましょ」
「はっ、なんだその理屈は」
また後で売店でな、と言い残して笑いながらコリンズ中佐は立ち去っていった。
「全く、まるで嵐のような人だな...」
艦橋を上がり、ピーターズ大佐のいる艦長室まで向かう。艦長室の前には水兵が2人警備していたが、自分の名前を伝えるとすぐ開けてくれた。
「失礼します。ルイス・コール少尉です、サー」
名前を告げると、机で書類に目を通していたピーターズ大佐はこちらに目をやった。座れ、と目で示されたので、ソファにかける。ソファにかけると、大佐も書類仕事を切り上げてこちらと向かい合う形で座った。
「突然の呼び出しすまない、コール少尉」
「いえ、問題ありませんキャプテン。ところで、俺を呼び出した理由とは一体」
「...その前に、一応聞いておきたいことがある。君は、中国で起きていることを知っているか」
「ええ...ニュースに出ているのを多少かじっている程度、ですが」
中国での大混乱はニュースでもよく出ている。現在の国家主席、王京松が引退の意向を示したことにより、中国では次期主席──つまり、人民共和国8代目指導者──を決定する選挙が開催される予定だった。大勢の予想では、民衆や一部地方幹部に支持された平和主義的なジン・ジエの当選が確定的だった。国際社会も歓迎した。王主席は、お世辞にも国際協調の流れに進んでいたとは言いがたかった分、国際協調を第一とするジン・ジエの当選は大半の人間にとって喜ばしい事だった。
幻想は、脆くも崩れ去った。選挙を目前とした日に、ジン・ジエは何者かに暗殺された。当初はジン・ジエの平和主義的方向性に反対する者が少なくないと言われる人民解放軍幹部、もしくは政敵による犯行かと噂されたが、数日後に人民解放軍海軍上将、チャン・ウェイ提督はアメリカの仕業と発表した。
ホワイトハウスはすぐに反論した。我々はジン・ジエを暗殺していない、やったのは恐らくジン・ジエに反対する何者かだろう、と。
これがまずかった。チャン提督はこれを根拠の無い妄言──尤も、チャン提督の言ったことにも根拠は全くなかったが──だと一蹴、全土へこのことを発表した。中国全土の民衆は反アメリカ感情を爆発させ各地で暴動を起こし、一方のチャン提督はこの暴動を理由に中国全土13億人に対する戒厳を発令、日本周辺における人民解放軍海軍艦艇の活動の活発化などが起き、米中関係はおよそ最悪極まりない状態となった。
「ここまで提督に自由にされている所を見るに、恐らく現時点では王京松主席は実権を喪失、ほとんどの実権をチャン提督が握っているでしょうね」
「なかなかやるな。およそニュースで流れていることは知っているか」
「ありがとうございます、キャプテン。それで、中国で起きていることと呼び出しになんの関係が」
中国で起きていること自分との関わりが見えてこない。一体なんだと言うのか。
「...2時間ほど前、中国沿岸部で第7艦隊隷下の第76任務部隊の一部部隊が特別任務に当たっていた。一時的に旗艦をブルーリッジからヴァルキリーに移してな」
ブルーリッジは第7艦隊、それに第76任務部隊の旗艦だ。わざわざそれを強襲揚陸艦ヴァルキリーに移すというのはどうにも変な話だが、生憎と海軍屋じゃない俺には何も分からない。大佐が話を続ける。
「作戦目標は上海に所在する要人2名、並びにエスコートを行うエージェントの回収。下手をすれば更に米中関係を悪化させ、最悪攻撃を受ける可能性があった。そのため、第7艦隊の旗艦機能の喪失を防ぐために
なるほど、危険な作戦で下手に旗艦を喪失する訳にはいかない。だからわざわざブルーリッジからヴァルキリーに移したわけだ。
「結果的にこの懸念は的中した。回収作戦中に中国軍が突如高高度核爆発を起こした。これによりEMPが発生、影響は千数百kmに渡る。現状、第76任務部隊のいずれの艦においても通信が機能しておらず、また、上海を中心とした中国沿岸部において大規模な停電が発生している。衛星画像もある」
そう言って、ピーターズ大佐は明かりが完全に消え失せた中国沿岸部の衛星画像を見せてきた。なるほど、確かに言っていることは確からしい。しかし、大体そんなことが起きたら何かしらの発信があるだろう。EMPで電子機器が不能になるにしろ、何かしらの手を使えば発信はできるはずだ。
「そりゃとんでもないことになりましたね...ですけど、そんな大事になったら今頃世界中で大騒ぎしているでしょう。少なくとも、そういう風になっていたらニュースサイトの通知がひっきりなしに来るはずですが、そんなことなってませんよ」
「先程、君は王主席は実権を喪失したと言ったな。現状、中央軍司令部は核爆発と同時にチャン提督がクーデターを起こし、北京を掌握していると考えている。それに加えて元々発令されていた戒厳令、中国におけるインターネットの使用規制。チャン提督はこれらを最大限使い、重度の報道規制を敷いていると考えられる」
「まさか、本当にクーデターが起きるとは...まるで
「報道規制を行うことによって内部がどうなっているか全く分からないという違いはあるがな」
しかし驚いた。まさか中国で軍事クーデターが起きるとは。そしてチャン提督はそれを完全に隠し通している。厄介かつやり手の男だ。
「改めて本題に入ろう。君は現在、アメリカ海軍と契約を行っているが、その内容は実戦ではなく演習相手としての契約だ。現状、いつ有事が起きるか分からない。契約不履行を回避するため、君には早々に契約を切り上げてもらいたい。これは第7艦隊司令部の意思でもある。もちろん契約金はきちんと支払う。こちら側の都合だからな」
「要は、俺におめおめしっぽ巻いて逃げろと、そういう訳ですか」
「なかなかキツい言い方をするものだな。だが、君にとっても悪い提案ではあるまい」
確かに、悪い提案ではない。戦争が目前になったら逃げる、というのは多少居心地悪いが、早々に仕事を終えてよく、かつ金をきっちり支払ってもらえるときた。
「はぁ...分かりました。で、解除はいつですか」
「ありがとう。契約解除は明日だ。今日のうちに君の口座に契約金を支払っておくよう司令部に言っておく」
「ちゃんとUBSの口座に振り込んでおいてくださいよ」
艦長室を出て、艦橋を下り、居住区画へ向かう。目的地は売店。恐らくコリンズ中佐は今はもう飲み始めているだろう。
中国か。自分の頭の中にあるネットニュースの記事と、艦長の言っていたことを反芻する。対立を続けていた中国とアメリカが歩み寄ることができると思っていたが、そんな願いも儚く崩れ去った。
「人は過ちを繰り返す。人の本質は暴力にある、か。戦争屋が言うのも変な話だが、悲しいもんだな」
この世界に平和が訪れることは無いだろう。それこそ、人が欲を捨てて人ならぬ何かになるか、人が消えるか。そのどちらかにしか、争いのない世界はありえないだろう。と、分かったようなことを考えてみるが、世界がどうなるかなんぞ、俺には何も分かりやしない。ただ、今を楽しみ、時代の傍観者として生きていくんだろう。それでいい、俺に出来ることはその位だとも思う。
考え事をしながら進んでいると、いつの間にか居住区画に着いていた。空母はそれだけで1つの都市だ、と言われるように、内部に多くの都市機能が存在する。そのひとつが、今目の前にある郵便局だ。一応、俺にだって今住んでいるアンクル・ターナー飛行場の同居人がいるから、手紙を出す相手がいない訳じゃあない。だがそもそも俺に手紙を出す、という習慣がない以上、郵便局の世話になることはまず無い。
んでそんな海の大都市のもうひとつの機能が新聞印刷所。ここではいわゆる艦内新聞というのを発行している。俺自身はあまり新聞を見るほうじゃないから取ったことはあまりないが、1回買ってみた時にはクソくだらんことが書いてあった。なんでも、フォーチュンクッキーのおみくじに「ベッド」をつけるジョークがあるらしい。「あなたは明日、世界が変わるような体験をする、ベッドで」という風に。しかも、ちゃんと内容が繋がっていないといけないというルールがある。改めて思い出してみても、あまりにくだらん話だった。
そして礼拝所。俺は生憎と信心深い方ではない。というか無宗教。仮に信仰にすがっていたら、自機のパーソナルマークをミサイルや爆弾に囲まれた上、磔にされたキリストにはしない。
「お、来たかエレステナー!」
売店に着くと、案の定コリンズ中佐は既に飲み始めていた。手元にはドクターペッパー。テーブルには同じ柄の空き缶が3本転がっていた。
「ドクペ4本飲むとか正気ですか」
「飲んでみろ、効くぞ」
御免こうむる。中佐を無視して売店で何を買おうか物色する。とりあえずコーラは確定として、ついでに啄む何かが欲しい。空に上がっていたせいで朝飯を逃してしまった。一応今からでも食えるんだろうが、なんかもうそういう気になれない。
一通り物色した末、カシューナッツ1袋とコーラ1本に落ち着いた。テーブルに戻ると同時に中佐はドクペ5本目を買いに行った。こりゃ早死しそうだ。中佐のことを考えるのは諦め、カシューナッツの袋を開けて、ひとつずつ口に放り込んでいくことにする。いやぁ、この塩味がいいんだよなぁ。
「.....」
「どうしたんです中佐、飼い主に捨てられた猫みたいな顔して」
「...買いすぎって言われて5本目を買えなかった」
「5本ドクペはもうそれ異常者の域なんですよ」
「なーにが異常者だ、4本5本なんざまだウォーミングアップにすらならん」
「異常者ですね、お疲れ様でした」
おおよそ一般人とはかけ離れてるよ、この中佐。
「それで、ピーターズとは何を話してたんだ」
「ちょっと色々あって、明日には契約を切り上げることになりました」
「えぇっ、嘘だろ?こちとらまだ賭けの損害を回収できてないんだぞ」
驚くから何かと思ったらそれかい。やっぱりギャンブル厨だ。
「その調子だと、借金漬けになってそうですね。いくら背負ってるんです?」
「そこら辺は弁えてやってる。生憎と借金経験はゼロなんだよ」
「本当は?」
「本当だ」
ギャンブル厨の癖に弁えてるのか。何故か分からないけど腹が立ってきた。とりあえずコーラを飲む。
「そういえば、ずっと気になってたんですけど」
「ん、どうした」
「なんで中佐だけ搭乗機がF/A-18Eなんですか」
「簡単だ。ありゃ俺の叔父から貰った機体だからな」
...うん?どういうことだ?もしかして、コリンズ中佐って同業者?雇われ隊長?そうでも無いと、軍隊で自前の機体を持ってる事の説明がつかない。何を言ってるのか分かりかねている俺に、中佐は話を続ける。
「ま、エレステナーが不思議がるのも無理は無い。正規軍の軍人が自前の機体持ってるなんて変な話だもんな。順追って説明してくぞ」
そういうと、コリンズ中佐はポケットから1枚の金属片を取り出した。よく見るとそれはドッグタグだった。しかし、刻印を目を凝らして見てみると、PMC特有の識別番号が刻まれていた。
「俺は元々お前の同業者だったんだよ、エレステナー。今乗ってる機体は元々叔父がPMCやっててレガシーホーネット乗ってたのを更新するために買ったやつなんだが、色々あって買ってすぐ叔父がPMCを辞めちまった。で、ちょうどPMCスクール卒業してた俺が貰ったって訳だ。そんで、ある時の作戦で海軍と一緒にやった時に、ヘッドハンティングされてな。
こいつは驚いた。まさか中佐が元同業者だったとは。これなら納得いく。
「まさか中佐もPMCだったとは、驚きました。軍からPMCになるのはそこまで珍しい話じゃあないですが、その逆なんていくらもないんじゃないですかね」
「俺自身、聞いたこともない。PMCは軍であぶれた奴や軍に馴染めないやつの集まりだからなぁ...。こうして、1個中隊のボスやれてるのが不思議でならんさ」
「それは喧嘩を売ってるとみて?目の前にいる人間の仕事が何か、知らないわけじゃないでしょう」
「まさか、事実に過ぎないだろう?」
「それは、まあ」
実際、自分も規律で固められた軍には馴染まなさそうだったからこうしてPMCをやっている。コリンズ中佐の言うことは全く正確だった。
「んでさぁ、エレステナー」
「なんです中佐」
相変わらず中国の情報が出てこないネットニュースを漁りながら──この艦には試験的にスターリンクが装備されているので、洋上でもほかの船と違ってネットが使える──、カシューナッツを頬張っていた俺に中佐が話しかける。
「お前、『カティーナ』って知ってるか」
「オペレーション・カティーナなら」
「ゲームの方じゃねぇっての。そうじゃなくって、うちの隊のやつ」
「ええ、よく知ってますよ」
カレン・“カティーナ”・アンカー中尉。ASF-14の
更に面白いのが、彼女の好意に肝心の中佐は一切気づいていないらしい、ということだった。どうも中佐は一切女性経験がなく、他人に恋愛感情というものを異様なまでに持たないらしい、というのはこのタイタン内部ではよく知られた話だ。そんかコリンズ中佐が異性、それもカティーナのことを話すとは。彼女がここにいたらぶっ倒れるかもしれない。
「あいつってさ、俺のこと好きなのか」
「むしろなんで今まで気づいてなかったんですかねぇ!?」
ようやく気づいたかこの鈍感中佐。彼の言葉を聞いたらしい周囲の水兵もどよめいている。方々からあのセイバーが、だとか、気づくのが遅すぎるだろ、とか、挙句の果てにはついにセイバーの脳みそに欠陥が起きた、だとか散々な声が聞こえてくる。
「え、なんでお前らこんなどよめいてんの。何があった」
「「「あんたの事だポンコツ鈍感中佐!!!」」」
俺の声と売店の兄貴、それにどこかからの水兵の声がハモる。明らかに階級が下の3人からの強烈な罵倒にセイバーもあからさまに萎えている。言っとくが今のあんたに同情はしねぇぞ。
「つかなんですか、俺を飲みに誘ったのはこれを聞くためだけですか!?ほかの飛行隊メンバー誘えば良かったじゃないですか!馬鹿らしい!というか馬鹿!」
「いやぁ、飛行隊メンバーだともし外れてた時に本人の耳に入ったらあらぬ疑いをかけられる可能性が」
「飛行隊メンバーに話さなくたってこんな不特定多数がいるところじゃなんも変わらんでしょう!?」
「あ...」
今気づいた、という顔をセイバーはする。まさかこの男、こんなところで喋ったら結果的に他人にもバレるはずだ、結局飛行隊メンバーと話すのと何も変わらないという考えすら持ち合わせてなかったのか。
「あーもう馬鹿らしい!俺は部屋に戻ります!どうせ交代まであと何時間もありますし!さいなら!!」
これ以上売店スペースに居続けたら頭がおかしくなりそうだった。とりあえず部屋に戻ることにしよう...
部屋に着いてまず、飲みかけのコーラを冷蔵庫に突っ込み、スマホ片手にベッドに身を投げ出す。フライトスーツは適当にソファに脱ぎ捨てた。
「全く、セイバーって本当によく分からん人だ...」
大体カティーナもあんな変わり者中佐のどこが好きになったのだろうか。彼女自身も変わり者、ということなのだろうか。
「類は友を呼ぶ、ってか。ハハハ...」
誰に呼びかけるでもない、乾いた笑いをしながら、スマホの電源をつける。ニュースサイトを開いても、相変わらず中国の情報は流れてこない。また、アメリカ軍の中央司令部も第76任務部隊の通信途絶を発表してないらしく、見出しはどいつもこいつも誰が殺されただとか、ライフハックだとか、見栄えのしないものばかり映る。
「なんというか、不気味なんだよな。ここまで情報が出てこないと。訳を知ってても何かあるように思えちまう...。頼むから何も起きないでくれ...」
交代は1200。夜明け前から飛んでいたし、ここいらでひとつ寝といた方がいいだろう。目覚まし時計とスマホのダブルで、確実に起きれるようにセットしておく。
「そんじゃ、おやすみなさい...」
目をつぶり、眠りに落ちようとした。束の間の安寧を得ようとした俺を邪魔したのは、けたたましい警報音だった。
『総員、戦闘配置!繰り返す、総員戦闘配置!これは訓練ではない!』
───は?眠ろうとした俺の耳に、総員戦闘配置の命令を告げる声が聞こえる。
「うっそだろオイ!まさか中国人が仕掛けてきたのか!?」
外では慌ただしく水兵が走る音が聞こえる。一刻の猶予もない。急いで脱ぎ捨てたフライトスーツを着て、ヘルメットや耐Gスーツの受け取り場所までの最短ルートを思い浮かべる。
部屋を出ると、いち早く持ち場につかんと走る水兵で通路がいっぱいだった。
「どいてくれ水兵!俺は戦闘機に乗らんといけない!」
「こっちだって自分の持ち場があるんだ、あんたの都合ばっか優先できるか!」
正論砲を被弾。いや、ふざけてる場合じゃない。何とか水兵たちの間を縫うように進む。
何十分にも思える時間を走った末に、何とか耐Gスーツやヘルメットといった装備の受け取り場所に到着できた。
「ああエレステナー、来てくれたか!一刻の猶予もない、今すぐ上がってくれ!」
「それはいいが一体何があった!?急に戦闘配置とはただ事じゃないぞ!」
「詳しい話は飛行中に管制センターが追って通達する!いまは戦闘機を飛ばすことに集中しろ!」
そう言い、投げるように渡されたヘルメットとスーツ。アルメニア・ソビエト社会主義共和国とアメリカ、それにオーシアの国旗とパーソナルマーク、そしてデカデカと“YERESTENER”のTACネームが描かれたヘルメットは間違いなく俺のものだった。
投げ渡されたヘルメットは後にし、先に耐Gスーツを着る。着終わったらヘルメットを装着。あとは機体に乗れば万事OKだ。
「よしきた!それじゃ行ってくる!」
「くれぐれも死ぬなよ!」
受け渡し担当の声に押されながら、露天駐機してある愛機の所へ向かう。まずはキャットウォークへ出る。
「クソッタレ、なんだこれは...」
キャットウォークへ続くドアを開けた先には、タイタンの護衛に着いていた多くの駆逐艦が火をあげていたり、生きている駆逐艦もその主砲から最大速度での連射を繰り返しつつ、ミサイルを発射している光景が広がっていた。中には沈みかけているものもある。
「おいエレステナー、見とれてる場合じゃない!」
「クソっ、すまない!」
後続の航空兵に追い立てられる。キャットウォークを登り切ろうとした瞬間、一際大きな爆発音が響いた。場所は...航空甲板。今まさに俺が行こうとしていた場所だ。急いでキャットウォークを登りきると、そこには数機の航空機の残骸と発艦要員の死体が複数転がっていた。ブラスト・シールドも割れて飛び散らかっている。
「おい水兵、今何が起きた?!」
「発艦しようとした瞬間に小型爆弾が命中した!少なくとも第1、第2カタパルトの使用は不可能だろう!」
何とか生き残っていた水兵が語る。おいおい、
「クソ、第3と第4カタパルトは!?」
「見ての通り発艦作業中だったが、爆弾の破片を食らって発艦要員が使い物にならんくなった!発艦は困難だ!俺は発艦要員じゃないが、物陰にいたから助かったがな!」
なんてこった、これじゃタイタンはただのデカい鉄の箱だ!肝心の航空機が使えないんじゃ話にならん!
「おい水兵、ここからどうするんだ!?」
「俺は一旦艦橋に退避する!」
水兵がそう言った途端、ヘルメットを通しても鼓膜が割れるかと思うほどの轟音が響いた。耳をヘルメット越しに抑えながら、音のした方向を見る。艦橋だ。上部構造物からは破片が飛び散っている。
「なんてこった、艦橋にミサイルが着弾したらしい!場所は航空管制所!」
裏から着いてきていた航空兵が瞬時に状況を判断する。
「...こりゃ、本格的にマズイな...」
水兵の顔が酷く歪む。俺も同じ顔をしたい気分だ。
状況に絶望している中、遠目に小型艇が多数接近してきているのが見えた。
「おい、小型艇がいくつも突っ切ってくるぞ!」
「護衛の駆逐艦はどうなった!?」
護衛艦の方を見てみる。さっきよりも火を上げている艦が増えている。そうでない艦も、どこかしらに傷を負っているようだった。瞬間、未だ砲火をあげていた駆逐艦の1隻の艦橋が
「駆逐艦の艦橋が潰れた!」
「ありゃ対艦弾道ミサイルだ!」
ほかの生き残りの水兵が口々に驚きと恐怖に満ちた声を上げる。こうしている間にも小型艇はこちらに突っ込んでくる。機関砲を乱射しながら。まさか、連中タイタンに直接乗り込む気か!?
「おい、エレステナー何やってる!?」
「この状況ではどうせしばらく飛行機は使えねぇ!それに、あいつら多分この船に乗り込むぞ!自分の身を守る準備をしてくる!」
急いで元いたキャットウォークの方へ戻り、駆け下りる。瞬間、一際大きな衝撃と爆発音が響き渡る。バランスを崩したが、すんでのところで柵に寄りかかる。対艦ミサイルを被弾したか...!というか、もはや対艦ミサイルの接近警告すら出さないとは...もうこの船の指揮統制機能は崩壊しているとみていいだろう。
「クソ、あと少しで海に真っ逆さまだったぜ!」
艦内に戻る。既に大半の水兵は持ち場に着いているらしく、通路には誰もいなかった。
部屋に戻り、急いで私物の地上戦装備を広げる。フライトスーツとヘルメットは脱ぎ、防弾ヘルメットとMSVを身につけ、防弾プレートを挿入。耳には
装備を整えて部屋から出た瞬間、艦の下方で爆発音が聞こえた。もしかしたら、あの小型艇に乗った連中が艦の外装を爆破して侵入したかもしれない。
フル武装しておいて良かった、と思った束の間、艦内で銃声が響き渡る。これは連中が乗り込んだとみていいだろう。
さて、どうするか。このままこの鉄屑から脱出出来れば御の字だが、生憎とこの状況ではなかなか厳しい。とりあえず情報が欲しい。
「ダメージコントロールセンターに向かうか」
誰に言うでもなくつぶやき、自らの目標を確認する。目標が決まれば、あとは進むだけだ。ダメージコントロールセンターの場所を思い出しつつ、先へと足を進める。その間にも銃声が段々と近づいてきた。
「!?」
突然大きな揺れが艦を襲う。対艦ミサイルだとか爆弾を食らったとかそういうのでは無い、まるで何かに突っかかったかのような揺れだった。
(まさか、座礁したのか?)
座礁したらどうなるか、というのは正直詳しくないが、何か嫌な予感がした。ひとまずダメージコントロールセンターに向かって状況を確認するのが先決だろう。
向かう途中で、通路の先に敵兵が見えた。ちょうどいい退避スペースがあったので、そこに身を急いで隠す。顔を少し出して敵の様子を確認。一旦列が切れるまで待つことにする。1人、2人ときて、4人目で列が途切れた。ある程度連中が進んだだろうタイミングでスペースから飛び出し、急いで通路の奥まで進む。奥と言ってもせいぜい7,8メートルというところだが。
敵がいる通路まで飛び出て、連中の裏側に着く。最後尾が気づいたらしいが、こちらが1歩先。まず最後尾をやり、続いて流れで残りの3人も撃ち殺した。...フラッグパッチには中国国旗。やはり中国人の仕業か。とりあえず、工兵らしい奴からフラググレネードとスタングレネードを2つずつ拝借する。
ここからダメージコントロールセンターまで向かうには士官食堂を突っ切って行った方が早い。今いる場所から3ブロック先の所で右に行けば食堂だ。
食堂前までには中国兵は一人もいなかった。いざ食堂の扉を開けようとした時、中から中国語らしき声が聞こえてきた。あぶねぇ、あと少しで集中砲火を食らうところだった。
スタングレネードとフラググレネードを用意。フラグの方が起爆が数秒遅いので、先にフラグを投げた後にスタンを投げることにする。扉をゆっくり開けて、最初にフラグ。3秒ほど数えてスタングレネードを投げる。
中から2つの炸裂音が聞こえる。スタングレネードの炸裂音は人間の聴覚を奪うが、TCAPSがそれを影響ないくらいまでカットする。2000ドルはたいて買った価値あったってこった。
「オラァ中国人ども!俺様のお出ましだァ!」
食堂内には10人前後いたようだが、フラグで4人ほど吹き飛ばせたらしい。残った6人も視界と聴覚を奪われていた。悪いな、こっちも生存権を行使させてもらう。残った連中一人一人に丁寧に5.56mm APM弾を撃ち込んでいく。よし、全員始末完了。あとはキッチンの方を突っ切って少し行けばダメージコントロールセンター...のはずだったんだがなぁ。
「嘘だろぉ...」
ダメージコントロールセンターへの近道はキッチンの残骸で塞がれていた。こんなもの退けてたらいくら時間あっても足りやしない。
「しゃーない、少し遠回りになるが...」
士官食堂のもうひとつの入口。ここから航空機格納庫の整備スペースを通れば、キッチンから行くのに比べれば遠回りだが、それでも他のルートより早くダメージコントロールセンターへ着くことが出来る。
もうひとつの入口をゆっくり開け、ほかの中国兵が居ないことを確認する。そうして足を踏み出した瞬間、船が軋みながら傾いた。バランスを崩しそうになるが、何とか壁に手をついて耐えた。こりゃ長くは持たんな...。
各通路をクリアリングしつつ、整備スペースへ向かう。幸いなことに通路に中国兵はいなかった。整備スペースへの扉を開けると、そこには戦闘の傷跡が生々しく残っていた。航空甲板までがぶち抜かれ、曇り空が見える。また、“DO NOT DROP”と書かれた円筒状の何かが崩落しており、上の方には整備中のF/A-18Fがぶら下がっていた。スーパーホーネットの下にはこちらに背を向けた中国兵がいる。
─こいつは使えそうだ。SR-16のマグニファイアをスライドさせ、等倍のサイトを6倍サイトに早変わりさせる。狙うはF/A-18Fを吊り下げるロープの金具。セレクターをセミオートに切り替え、2発を素早く撃つ。
金具がスーパーホーネットを吊り下げていたロープを手放し、吊り下げられていたスーパーホーネットが中国兵の頭上から襲いかかる。
「うぉっと、あぶねぇ!」
落っこちたスーパーホーネットが、金属と金属を擦りあわせて火花でも散らしたのか、転がっていたドラム缶に火をつけた。大爆発。物陰に隠れて射撃していたおかげで助かった。全く、さっきからツイてるな。
しかし、生き残った中国兵がこちらに気づき、集中砲火を食らわしてきた。マズイな、これじゃ袋のネズミだ。
「当たるか分からんが...今はこれしかねぇか」
M67フラググレネードのピンを抜く。連中の大体の居場所を思い出し、そこへ投げつける。2秒ほど後に爆発音が聞こえ、同時に銃声も止んだ。恐る恐る顔を出してみる。...よし、掃討完了。
「なかなか呆気ないもんだな」
落っこちたスーパーホーネットの残骸と、火の手に注意しつつ、奥の扉まで抜ける。扉を抜けたら、ハッチH-22がある。そこを登って、まっすぐ2つ扉を開けた先がダメージコントロールセンターだ。
扉を抜け、ハッチH-22を登る。1つ目の扉を開け、続いて2つ目の扉へ向かう。ドアプレートには“DAMAGE CONTROL CENTER”の文字があった。目的地に到着。扉に耳をつけて物音がしないか確認する。機械の動作音は聞こえるが、中国兵らしき気配はしない。
油断大敵、ゆっくり扉を開ける。よし、誰もいない。完全に要員も逃げたな。
航海図やソナー、レーダーデータらしきものが表示されたモニターがあるが、全くもって何が書いてあるのか分からない。たた、艦の状況を分かりやすく示したモニターがあった。案の定、艦全体が真っ赤に表示されていた。どうも原子力機関も止まっているらしい。どうりでさっきから航行している感覚が無いわけだ。
「ん...?なんだこれ?」
机にメモが置いてあった。メモには「艦が渓谷の端で座礁!」と書かれていた。ソナーデータの表示されたモニターの方を見てみる。確かにタイタンの真下に海底渓谷らしき影がある。長さは...3kmってところか。しかしマズイな、こりゃいつ渓谷をずり落ちるか分かったもんじゃない。
「尚更、早く脱出の手段を確保しないといけない、か」
だがどうすれば──そう思った俺の耳に、軍用ブーツの走る音が聞こえる。恐らく複数。すぐさま身構える。SR-16は...一応リロードしておくか。
「動くなクソども!」
ドアが開いたと同時に威嚇する。相手は4人...待て、こいつらの顔、中国人には似ても似つかない。ドアを開けた奴のフラッグパッチは...アメリカ。
「誰だお前!」
4人のうちの一人、M249を持った黒人の男が声をあげる。
「いや待て、あんたらアメリカ人か?」
「ああそうだ、お前は?」
「俺もアメリカ人だ、日系のな」
自らもアメリカ人であることを明かし、銃を下ろす。相手も銃を下げた。
「良かった、さっきからクソな目にばっかり遭ってきたんだ!俺はルイス・“エレステナー”・コール、階級は少尉で戦闘機乗り!あんたらは?」
「トゥームストーン分隊。俺はキンブル・“アイリッシュ”・グレーブス、二等軍曹だ。それでこいつがレッカー。ダニエル・レッカー軍曹」
「おい海兵、仲良く自己紹介している場合じゃないぞ!」
初老の男が黒人の海兵──キンブル・“アイリッシュ”・グレーブス軍曹に声を上げる。
「そういうあんたは誰だよ!?」
「俺はコヴィック、タイタンの生存者の捜索とタイタンの受信した情報を入手しにヴァルキリーから来た!」
「ヴァルキリーって、あの通信が落ちた第76任務部隊のか?」
「ああそうだ。その口ぶりからして、俺たちに何があったかは知ってそうだな」
今まで黙っていた、白人の海兵らしき男が答える。
「そっちのあんたは?」
「パック。クレイトン・パコウスキ三等軍曹」
よし、とりあえず全員の名前は知れた。ヴァルキリーから派遣された味方、というのだけは間違いなさそうだ。そうしている間に、レッカー軍曹は航海レコーダーを取り出していた。あれが目的の情報か。
「この鉄クズともおさらばだな」
コヴィックがレッカー軍曹の手から航海レコーダーをひったくる。随分と扱いが雑だな。
「そろそろ時間だ!ヴァルキリーに戻るぞ」
アイリッシュが言う。さっきソナーで見たように、このデカブツはいつ沈んでもおかしくない。さっさとトンズラするに限る。ダメージコントロールセンターから先のCICへ進もうとした時、中国兵らしき声が向こうからしたのに気づいた。
「声が聞こえる」
「パック、あんたも聞こえたか」
「ああ。レッカー、3つ数えたら扉を開けてくれ」
レッカー軍曹が頷く。突入のためにフラグを用意。SR-16も弾は十分に入っている。セレクターはフルオート。俺は準備完了だ。
「よし、いくぞ。1、2、3!」
パックの合図に合わせ、レッカー軍曹が勢いよく扉を蹴り開けた。
「フラグを投げる!頭を下げろ!」
トゥームストーンの4人にグレネードを投げることを伝える。中国兵は...結構な人数が居る。とりあえず遠くの方に投げる。下手に巻き添えを生んでも意味は無い。
「合図してくれ、レッカー。奴らを仕留める」
パックがレッカーに言うと、すぐにレッカーは指で左の方をやるように指示した。
「よし、やってやろうぜ」
レッカーの合図にアイリッシュも従う。レッカーは右のコンソールパネルが並ぶ方からやるようだった。
「軍曹、レッカー軍曹!俺はあんたを援護する!」
俺の言葉に軍曹は僅かに頷いた。俺のSR-16は機関銃の如く連射に耐えられるようにカスタムしてるんだ、弾幕を張って援護するのが最善だろう。
レッカー軍曹がMk11を正確に撃ち込む中で、俺は5.56mm弾の弾幕を連中に浴びせていく。
左側も順調に掃討が進んでいるようだったが、こうして交戦している間にもタイタンはまた大きく揺れた。さっきよりも一際大きい。まだ渓谷からずり落ちた訳では無いようだったのが唯一の救いだった。だが、早く終わらせないと俺達も水底行きだ。戦闘機乗りが水底で死ぬなんぞたまったもんじゃない。
「コヴィック、1番近い出口は!?」
「そのまま直進しろ!」
パックの問いにコヴィックが答える。CICを抜けるまで、あと15mくらいってところか。残りの中国兵も少なくなってきた。
「そこをどけ、クソども!」
「そうだ、尻尾巻いて逃げやがれ!」
「臆病者はとっととお家に帰ろってな!」
アイリッシュとパックの挑発に俺も続く。中国兵が理解できるかは知らん。
最後の弾はレッカー軍曹が放った。Mk11から放たれた弾が最後の一兵を撃ち抜いた途端、全ての銃声が止んだ。
「クリア!」
「行け、行け!」
「ここを離れろ、走れ!」
CICはクリア。コヴィックとアイリッシュか走るよう追い立てる。言われなくとも、こんなデカブツからはさっさとヴァルキリーに逃げるに限る。
「レッカー軍曹、開けてくれ!」
俺の声にまた僅かに頷いたレッカー軍曹は、CICを抜ける扉を蹴りあけた。
「ちょっ、何が起きた!」
「うわあああ!一体何が...」
蹴りあけた瞬間、今までと比べて最上級の大きな揺れが俺たちを襲った。ちょうどタイミングよく向こうから来た中国兵諸共、バランスを崩してその場に転ぶ。
「クソッタレが!」
「その場に伏せろ!」
アイリッシュが悪態をつく。コヴィックの伏せる指示に反射的に従い、その場に伏せる。
次の瞬間、まるで突き上げられるような感覚が俺を襲う。目の前で、床と壁、天井が割れた。おいおい、まさかまさか...
「「まじかよ...」」
アイリッシュとパックが呆然と言う。俺もだ、全く信じられたもんじゃない。割れた床と壁、天井はこちらとあちらに艦体を分断した。これが意味することは──
「キールから船が真っ二つに割れた...?」
「どうなってんだ?」
「船が真っ二つに割れるぞ!」
「クソッタレが!」
レッカー軍曹以外の全員が思い思いの言葉を発する。
「アイリッシュ、なぁアイリッシュ...」
「有り得ねぇよパック、こんなの有り得ねぇ」
真っ二つに破断されたタイタンの船体の前部が持ち上がる。全員が呆然と見上げる中、持ち上がった前部船体が突然こちらへと襲いかかる──
「また来るぞ、アイリッシュ」
「どうすりゃいいんだ?」
「分からん、もう何も分からん...」
「ちょっと待て、うわ!」
「どうなってる...!」
数万トンの鉄の塊が水面に叩きつけられ、後方船体にいた俺たちにもその余波が押し寄せる。波の振動によろけた俺たちを水飛沫が襲う。目の前には朝の戦争の光景が広がっていた。護衛の駆逐艦が傾斜している。
「おい、立て!跳ぶぞ!跳べ!」
「行くぞ、ほら!」
コヴィックが割れた前部船体へ跳ぶように促す。パックとレッカーもそれに従い、下へと跳んでいった。ここから下までは...おいおい、こりゃ2、3メートルくらいあるんじゃねぇか!?
「おいマジか、嘘だろ!?」
「アイリッシュ、まさかあんた」
「高いところだ、俺には無理だ!」
「奇遇だな海兵、俺もだ!」
「戦闘機乗りが高所恐怖症だと!?ジョークを言うのも時と場を考えろ!」
「ええいうるさい!生身で跳ぶのと飛行機で飛ぶのじゃ話が違うんだ!」
「何をやってる海兵、それに航空兵!生き残りたければさっさと跳べ!」
俺とアイリッシュが死と隣り合わせの漫才をしていたらコヴィックの堪忍袋の緒がブチ切れた。仕方ねぇ、こうなったら落っこちて死ぬか生きるか、二つに一つだ。助走を付けて前部船体へ飛び出す。
「クソッタレ!」
「頼む、生き残れ俺!」
着地姿勢。だが、上手くとるのには失敗した。甲板に叩き付けられてクソ痛い。何とか骨が折れたりとかはしてないのが唯一の救いか。隣を見ると、アイリッシュも何とか生き残っているようだった。落ちた銃を拾う。
「コンタクト、敵だ!」
コヴィックの声が響く。6倍マグニファイアをスライドさせたままのSR-16を覗くと、航空甲板には多数の中国兵がいた。発艦要員の死体はもうなかった。恐らく艦が傾斜した時に海に投げ出されでもしたんだろう...
「落ち着け!気を付けろ、全員死ぬな!これは命令だ!」
コヴィックが声を上げる。いいねぇ、高圧的な上司かと思ったが、こういうのが言えるのは大抵良い奴だ。
「ラジャー、コヴィック!」
コヴィックに返答し、SR-16を敵に向ける。射撃しようとした途端、デカい物音がした。右を見ると、F/A-18Eが傾いた航空甲板を──
「っておい!ありゃ俺の機体じゃねぇか!」
なんてこった、発艦準備でパーキングブレーキを解除したままにしてたせいか俺の愛機が航空甲板を転がっていってるじゃねぇか。ああ、翼をもいで、脚を折りながら中国兵諸共海中へ...。表面の銀色の塗装が跳ね返す太陽光は命の最後の輝きか...。
「ああ、たった数ヶ月前に買ったばかりの俺の機体が...」
「買った?まさかPMCか航空兵?いや、そんなことはどうでもいい!動かなければ死ぬぞ!」
呆然とその場に膝立ちした俺にコヴィックが声をかけ、手を引っ張っていく。ああ、もうなんでもいいや。中国兵が来なけりゃこんなことにはならなかったのに...
「気を付けろ、敵部隊が接近中!」
コヴィックの声を聞き、改めて6倍サイトを覗く。それなりの距離に、複数の中国兵が固まっていた。
「絶対許さねぇ」
セレクターをセミオートに切り替え。1人でも多く足止めするために胴体や足を狙う。足止めを食らった中国兵へ、今度は頭に弾をお見舞いする。クズ共め、お前らの物語はこれで終わりだ。新手にまた弾をぶち込もうとしたとき、飛翔体が空気を切る音が聞こえる。
「うぉっと、あぶねぇ!爆死するとこだったぜ!」
後ろの方で爆発音。飛翔体の正体はグレネード弾だった。風を切ってきた音から
「クソッタレのグレネードランチャー持ちを片付けた!」
「よくやった航空兵!」
とりあえずの周囲は掃討出来たらしい。
「航空兵がグレネードランチャー射手を排除した、周囲の敵もほぼ居ない!前進しろ!」
コヴィックの声に合わせ、前進する。第1カタパルトのブラスト・シールドに向かおうと見当をつけたが、途中で中国兵の弾が隣を掠めた。ここは無理に行く必要は無いと判断し、剥げた飛行甲板に身を寄せる。
サイトと銃、そして僅かに顔を出し、索敵。駐機スペースの端の方に中国兵が2人いたので排除する。
「トゥームストーン、そっちはどれくらい敵を排除した!?」
「こっちはほとんど制圧した!また前進しよう!」
パック達の方も制圧に成功したらしい。また走り出し、第1カタパルトのブラスト・シールドに前進。今度は成功した。顔を出し、前方に複数の中国兵がいることを確認。数は...7、8人ってところか。うちの3人と2人はそれぞれ同じようなところに固まっている。よく見ると、3人が固まっているところにはドラム缶が転がっていた。──面白い、こいつは使えそうだ。ドラム缶に3発ほど弾を撃ち込むと、大爆発を起こして3人全員彼方へ吹き飛ばしていった。
「イヤッホー!ざまぁみやがれ!」
「やったなエレステナー!」
パックに褒められた。それほどでもない。残りを掃討する。2人はオスプレイの残骸に隠れていたので、フラグを投げる。綺麗に決まり、2人を吹き飛ばした。残りは3人...だったが。
「レッカーが仕留めた!甲板はクリア!」
既にトゥームストーンがやっていた。よし、とガッツポーズがしたくなった。面倒な甲板戦も制した。
「下に戦闘艇があるぞ!」
「今度は船をパクるのかよ!?」
コヴィックが不穏なことを言う。甲板の端まで向かうと、金玉が縮みそうな高さがある海面に、1隻の戦闘艇があった。..おいおい、まさかまさか。
「脱出するにはこれしかない!船へ跳ぶぞ!それが出口だ!」
「冗談だろコヴィック!?」
良くない良くない、こんな高さ跳んだら死ぬ、絶対死ぬ──
「って何やってんだ!?」
まずコヴィックが、続いてパックとレッカーが水面に飛び込んで行った。正気かトゥームストーン!?
「...残るは俺たちだけらしい、アイリッシュ」
「ああクソッタレ、こんなことしないといけねぇのかよ!?」
「あーもう仕方ない!死ぬか生きるか、二つに一つだ!」
SR-16をベルトに吊り下げ、マガジンポーチを閉める。これで何が落としたりはしない...はずだ。
「俺は死なねぇ!跳んでやる!」
「クソ!うおおおおお!」
俺に引き続きアイリッシュが跳ぶ。段々と近づく水面。加速するスピード。俺は大丈夫だ、俺は大丈夫だ──
「ぷはぁ!」
水面に飛び込んだ時はクソ痛かったが、何とか生き残ることには成功した。必死で水面まで泳いだ先には、戦闘艇があった。先に乗っていたコヴィックとパックが見える。後から跳んだはずのアイリッシュも先にいた。戦闘艇まで泳ぐと、アイリッシュに引っ張り上げられた。
「どうした。クソ、最悪だ」
「全くだよアイリッシュ...」
「行くぞ、ヴァルキリーが危ない!」
「少尉!レッカー軍曹が操縦する、少尉は船の武装を使え!」
「何言ってんだコヴィック!俺は中国人の使う兵器のことなんて知らねぇぞ!」
「コンソールに何か書いてあるはずだ!日系なら漢字くらい読めるだろ!」
日系だからって漢字が読めても中国語読めるわけじゃねぇ、と反論するが、いいから行け、と船室に押し込まれる。左席にはレッカー軍曹。ああもう、やるしかねぇか。コンソールは見たところ既に起動しているようで、パネルには船室上部のウェポンステーションのサイトからの映像が映し出されていた。適当にトリガーの付いたグリップを動かすと、サイトと共に武装が回転した。よし、これなら何とかなりそうだ。
「エンジンをかけろ!帰艦するぞ!」
コヴィックの声にレッカー軍曹は応え、船を動かす。同時に、船が攻撃を受けた。攻撃方向は...左後方。グリップを左に回し、武装を旋回させる。同型の戦闘艇が2隻、こちらを攻撃していた。
「巡視艇が来るぞ!」
「クソッタレ、2隻でかからねぇとやれねぇのか!?いいぜやってやる!」
サイトの照準を敵船に合わせ、トリガーを引く。25mm機関砲が次々着弾、1隻目を吹き飛ばした。
「いいぞ!」
「急げ!まだ距離があるぞ!」
2隻目にも続けてサイトを合わせる。いつの間にか相手はこちらを追い抜かしていた。さっきと同じく、照準を合わせて25mmを食らわせる。また同じように破壊された。照準の先にはちょうどヴァルキリーが見えた。タイタンの横を、護衛の駆逐艦一隻と共にタイタンの動いていた先とは逆の方へ全速力で航行していると見える。追いつくのは難儀しそうだ。ふとタイタンを見ると、前部船体は完全に海中に没し、後方船体も崩落を始めていた。
「命中!」
「頼むぞレッカー!手遅れになる前にたどり着くんだ!」
レッカー軍曹のエンジンスロットルを握る手に更に力が籠る。俺もグリップを左右に動かして敵を探す。
「敵ボート発見!9時方向!」
パックが敵ボートの存在を知らせる。25mmを向けると、ガトリングを積んた小型ボート3隻がこちらに接近していた。いささかオーバーキルすぎる気もしたが、25mmを食らわせる。すばしっこかったが、さすがに戦闘艇よりは脆く、素早く沈められた。後ろにいる3人もガトリングや手持ちの銃で応戦しているらしく、現に残りの2隻を破壊していた。
「やるなトゥームストーン!助かった!」
「お互い様だ少尉!」
パックと声をかけ合う。これで一旦は落ち着いたか──と思っていた俺が間違いだった。さらに遠く、数隻の小型ボートがまた来た。この距離を、揺れる海面上で機関砲で落とすのは無理がある。何がほかの武装はないか──
「ん?なんだこれ?」
手元のコンソールのスイッチに『25mm』と『反坦克导弹』と書かれていたものがあった。そのスイッチは、今は25mmに入っていた。
「もしかして対戦車ミサイルか?」
試しにスイッチを『反坦克导弹』にセットし、照準を敵ボートに向けると、数秒後にビープ音がなり、何故か英語で『LOCKED ON』とパネルに表示された。
「ハハッ、こいつは大当たりだ!」
トリガーを引くと、対戦車ミサイルが発射され、敵のボートに命中、爆散した。やったぜ、こいつはいいもんを手に入れた。使い所は考える必要がありそうだが。
改めて敵ボートに目を向けると、もう25mmで十分やれる距離に入っていた。射撃し、2隻を潰した。その瞬間、後方から機関砲の射撃音が聞こえた。
「マズい、機銃掃射だ!」
「なんだって!?」
ほんの1秒もしないうちに、ジェット機が上空を飛び去る音が聞こえ、次には向こうへと飛んでいくQ-5攻撃機とF-35Bが視界に飛び込んだ。
「トゥームストーン、大丈夫か!?」
「なんとかな!だが、攻撃は1回だけでは終わらせてはくれないらしい!」
「クソ、また機銃掃射が来るぞ!」
飛び去ったQ-5が再度旋回、こちらに飛び込んでくる。
「ヤバい!ヤバい!クソッタレ!」
パックが叫ぶ。クソ、生憎この25mmは低発射速度の機関砲らしい。まともに当てられるかどうか──
その瞬間、こちらに飛び込んでいたQ-5に、ガンポッドを取り付けていたF-35Bが射撃を加え、Q-5を撃墜していった。F-35Bはそのまま海面スレスレを飛び去る。俺にとっちゃこの無名のF-35B乗りがどんなパイロットよりもエースにしか思えない。
しかし、機銃掃射の危険が過ぎ去っても海の上の危険が過ぎ去った訳では無い。また小型ボートがやってきた。
「クソ、まだ来んのか!てめぇらはゴキブリか何かかよ!?」
左側からまた2隻が接近。25mmで撃破すると、今度は右側から戦闘艇が2隻やってきた。最初の1隻は25mmで、もう1隻は少し距離があったので、対戦車ミサイルで吹き飛ばす。これで対戦車ミサイルはゼロ。あとは25mmだけだ。
「道を開けろ!トゥームストーンが通るぞ!」
「急げ!スピードを上げろ!」
既にヴァルキリーとの距離はかなり近くなっていた。相変わらず生き残りの駆逐艦1隻と全速航行を続けている。
「少尉、気を付けろ!左方向より3隻!」
左に武装を旋回させると、3隻の戦闘艇が接近していた。
「クソ、これならまだ対戦車ミサイルは温存しておくべきだったな!」
ないものねだりしても仕方ない。25mmを向け、一隻目を破壊。続く2隻はごくごく接近して航行していた。片割れを撃破すると、もう1隻も爆発に巻き込まれてエンジンがやられたのか、航行を停止。ただの的になったもう1隻も25mmで爆破していく。
「ヤバい!」
パックが叫ぶ。何事かとヴァルキリーを見ると、既に攻撃ヘリに近づかれていた。防空がまともに仕事しなくなってねぇか?これじゃあ戦闘機や攻撃機が来たら終わりだぞ。
「あれじゃバラバラにされちまうぞ!」
「だったらスピードを上げろ!まだ終わってない!レッカー軍曹!」
コヴィックの催促にレッカーの顔が歪む。既に出せるだけ出している、とでも言いたげだった。
「また来るぞ!戦闘艇が3隻!右だ!」
全くとんだブラック企業だ、と舌打ちする。最接近していたやつから順番に25mmで爆殺していく。もう残りの機関砲弾も多くない。
「ヴァルキリーまで急げ、レッカー!奴らを振り切るんだ!」
「中国軍が乗り込むぞ!」
そりゃあタイタンでの前科があるし、何よりヘリにさえここまで接近されちゃあそりゃ乗り込まれるわな。
「ヤバい、敵のヘリだ!」
噂をすればなんとやら、さっきヴァルキリーに近づいていた攻撃ヘリがこっちに気づいて向かってきた。
「クソッタレ、当たれ!」
念じながら攻撃ヘリにありったけの25mmをぶち込む。数発被弾しても落ちず、それどころかロケット弾をしきりに撃ち込んでくる。さすが空の戦車だ、攻撃ヘリ野郎め。
「いい加減落ちろ!人の手を煩わさせるな!」
叫んだ瞬間、25mmがヘリのローターに命中、揚力を失ったヘリは海中へ没した。
「おい、駆逐艦が沈むぞ!」
アイリッシュの声に、パネルから目を離して窓から左を見る。対艦ミサイルを被弾したのか、駆逐艦が右に大きく傾斜していた。おいおい、ヴァルキリーは本当に生き残れんのか!?
「もうヴァルキリーまで近い!全速を出せ!」
「デッキが開いてるぞ!ギャリソンは何を考えてるんだ?」
「ギャリソンの指示じゃない!とにかく急げ!」
ギャリソン──恐らく、ヴァルキリーの艦長だろう──の指示じゃないってことは、中国軍はもう中枢部分をほぼ制圧しかかってるってことか?だとしたらかなりマズい。早くヴァルキリーに到達しないと...
レッカー軍曹がヴァルキリーのウェルドックに進入した瞬間、戦闘艇が傾いた。まずいまずい、壁に激突するぞ!
「ふんばれ!」
「クソ野郎共、ゲートを閉めやがったぞ!」
完全に戦闘艇は横転したらしい。外から聞こえる声から、アイリッシュが少なくとも生きていることは分かった。さっきから痛い目にばっか遭ってやがる。
「いてて...軍曹、大丈夫か...?」
軍曹の方を見る。特に怪我とかはなさそうだった。先に船室から出て、軍曹の手を引いて外に引っ張り出す。
「全員無事か?」
「俺とレッカーは無事だ...他は?」
「なんとかな。五体満足でいるのが不思議だ」
パックが言う。外にいた3人の方は潰されててもおかしくないのに、よく生きてるな。さすが海兵、レベルが違う。
しかし戦いはまた続く。すぐに銃声が聞こえてきた。また銃撃戦かよ、勘弁してくれ...。
「俺たちの家が...」
「必ず後悔させてやる」
他の3人は先に射撃態勢に入っていた。軍曹と共に続く。
「海兵、敵兵の数は!?」
「中国兵が5人くらいだ!」
SR-16をベルトから外し、射撃態勢に移る。物陰に隠れながら、銃声が途切れるのを待つ。途切れたらすぐ射撃、まずは1名ダウン。
「急げ、手遅れになる前にギャリソンの所へ向かうぞ!」
「奴らをぶっ殺せ!」
コヴィックの声にアイリッシュが続く。続いてもう1人やろうとしたが、そいつは別の一般海兵が始末した。残りの3人もトゥームストーンが片付けた。これで終わりか、と思ったが、まだ隠れていたのがいたらしい。
「全く、少しは落ち着かせてくれ!」
遠くの奴にはとりあえずグレネードをデリバリーする。近くの奴には鉛玉を食らわせる。飯の代わりに金属でも食っとけ、バカ野郎共。
俺が2人始末したところで、トゥームストーンも残りをやってくれたようだった。やはり海兵、なかなかやる。
「トゥームストーン!奴ら、船中にいるぞ!皆殺しにする気だ!」
生き残っていた2人の海兵のうちの片方が言う。
「ギャリソンはどうした!?」
「10分前にブリッジとの通信が途絶えた。チャンの部下が回線を遮断したんだろう」
チャン。あの中国海軍野郎。やっぱりあいつが全ての元凶だったか。
「クソッタレ!ギャリソンと一緒にいた連中はどうした?男と女だ」
「男と女?」
「中国人夫婦だ!」
「中国人は船中にいる」
「クソ。ブリッジに向かう。行くぞ!」
車両甲板のドアへコヴィックが向かう。そっちがブリッジへの近道らしい。
「ブリッジへ向かう。先導しろ、レッカー!」
「気をつけろ。誰が敵か分からんぞ」
レッカー軍曹が言われた通りに先導する。ていうか、中国人が船中だと?一体どういうことだ。
「なぁ、中国人が船中にいると言ったな。まさか中国兵じゃあるまいし、一体何がこのヴァルキリーに起きたんだ?」
「いろいろあったんだよ。特に知る必要も無い」
「そいつは気になるな、パコウスキ軍曹。階級差の暴力を食らわせてやろうか?」
「ナンセンスだな少尉。そういうのは今どき似合わねぇよ」
パックに言い返される。俺に知る権利はねぇと、そうですか。まぁ、きっとおいおい知ることになるだろう。
「聞こえるか?前方にヘリだ!」
階段をふたつ上ると、前方から確かにローターの音が聞こえてきた。次の瞬間、ガトリングの発射音が聞こえる。レッカー軍曹がキャットウォークに出ると、海兵2人が戦死していた。
「コマンドブリッジを叩こうとしている!」
「クソ、ギャリソンがいるぞ!」
ヘリボーンをブリッジに仕掛けようってか。また大胆なことを...
「ブリッジをやられる前に落とせ!」
「了解だ。レッカー、スティンガーであのヘリを落とせ!」
「補給物資がある。スティンガーを取ってこい」
レッカー軍曹がスティンガーを取りに行く。...1人より2人の方がいいだろう。スティンガーが使えるか分からないが、俺も取りに行くか。
「おい何やってる航空兵!」
「1人より2人のほうがいい!」
「足でまといになる気か!」
「そんときゃヘリの的にでもなるだけだ!」
軍曹に続き補給物資を確認する。...便利なものがあった。カールグスタフM4。海兵隊が採用した新型無反動砲。美味しいことに、閉鎖空間の使用に最適化されたHEAT 655CS弾がある。M4は訓練こそ受けてないが、撃ち方は最近ある筋から教えて貰った。これなら足でまといにはなるまい。ついでに手榴弾と30発マガジンも拝借していくか。
「あのヘリを見ろ」
「ターゲット、真正面」
レッカー軍曹と共にキャットウォークに出ると、新手のヘリが2機やってきていた。距離測定。97m。
「ロックするまで待ったら、ぶちかませ」
パックが言うより早く、レッカーはロックを済ませ、1機に対してスティンガーを叩き込んだ。
「無反動砲だって使えねぇ訳じゃあない。ほらよ!」
もう1機の動く位置を予想してカールグスタフを叩き込む。8.4cm弾がヘリに吸い込まれるように命中した。
「やったぜ!」
「航空兵正気か!?」
「よくやったエレステナー!」
またパックに褒められた。今回はさすがにそれほどでもある。
「進め!ギャリソンを探すぞ!」
コヴィックの無線越しの呼び掛けに気づく。気づいたら俺とレッカー以外の3人は先に行っていた。カールグスタフを背負う。
「行くぞ、軍曹」
軍曹と共に先へと急ぐ。他の3人と合流し、ドアを開けた先はハンガー。オスプレイが駐機している中、銃撃戦が起こっていた。
「制圧しろ!」
アイリッシュが声を上げる。言うより早くレッカーは撃ち始めていたが。俺達も続く。視界には2人。1人をやると、もう1人もレッカーが片付けた。視界から敵が消えたことを確認し、右側の作業車両の後ろにつく。
作業車両から顔を出すと、オスプレイの近くに中国兵が3人いた。固まっていた2人にはさっき拝借したグレネードを投げ込む。もう1人はリーンして撃ち殺した。ポジションを移し、ちょうど左横にあったトーイングカーに滑り込む。
「トゥームストーン、残りは!」
「確認できない!」
「よし、前進してブリッジに向かうぞ!」
ブリッジに向かおうとした瞬間、航空機用のエレベーターの方から物音がした。何事かと見ると、中国兵が4人ほど増援でやってきた。あークソ、まだ戦争すんのかよ!?
「新手が4人!」
「ヴァルキリーを取り戻せ!」
こちらにやってきた1人は射殺。他のにもとりあえずグレネードを投げておく。トゥームストーンも順調に連中をやっていたが、またエレベーターの方から物音がしたかと思ったら、今度はリペリングして増援が来た。どんだけ死体を増やせば気が済むんだ?
リペリング中の敵を2人やったが、それ以外には逃げられた。すぐに逃げたやつから集中砲火を浴びせられる。
「こっちは身動き出来ない!トゥームストーン、やってくれ!」
「ラジャー!少尉はそこに隠れてろ!」
まるでおんぶだっこされている気分だがこの際仕方ない。ここは4人に任せよう。
「いいぞ、もう掃討した!」
数分にも思える銃撃戦の末、トゥームストーンが敵の掃討を報告してきた。
「悪かった、トゥームストーン」
「お互い様ってものだ」
「進め!ギャリソンを探すぞ!」
先導するレッカー軍曹が、奥の方のドアに向かう。ドアには
「診療室を抜けられるぞ」
「開けるんだ、レッカー」
アイリッシュが言う。ヴァルキリーの構造には詳しくない。ここが近道なら通るのみ。パックの言葉に従ったレッカーがドアの前につき、勢いよく開ける。階段を上ると、診療室らしき部屋の中で、女性と中国兵2人が取っ組み合いをしていた。おいおい、さすがに無謀すぎないか!?
「ハンナが危ない!」
「クソ、早く診療室へ!」
「ドアが開かない!」
「ドアを破れ!」
「ああ!クソ!パック、お前行け!」
アイリッシュの言葉にパックが応じ、ドアを蹴り破ろうと何度も足で蹴り飛ばす。しかし、ドアはうんともすんとも言わない。一方の診療室内は、驚くべきことに、片方の中国兵は既に伸びていた。もう片方も、女性が顎を蹴り飛ばし、2人目もノックアウトした。なんてこった、本職よりも格闘できるじゃあないか。何者だ。
「開け...この!」
何度もドアを蹴り破ろうとトライしていたパックが、ようやくドアを開けることに成功した。中にいた女性が肩で息をしている。しかし、女性ってのは恐ろしいもんだ。いやぁクレイジークレイジー。
「彼女、戦えるのか」
「あいつはどこだ!?」
パックが驚いたように言うが、コヴィックは気にもせず、『あいつ』とやらの居場所を聞いた。もしかして、彼女とその『あいつ』がコヴィックが言っていた中国人夫婦なのだろうか。
「彼はギャリソンが連れていった」
「そばを離れたのか!?」
「私のことは知られてないのに戦えばよかったの?自分を守るしか無かった。彼の居場所なら、指令室のギャリソンに聞けばいい。あなたがね」
「まずいぞハンナ!コマンドデッキとは通信出来ない。まずここから出よう。トゥームストーン、それにエレステナー、行くぞ!」
「後に続く」
知られていた、だとかギャリソンが連れていった、だとか意味のわからないことの連発で混乱を禁じ得ない。一体何が起きている?
「お前には驚かされるぜ」
アイリッシュが呆れたように言う。彼女が戦えていたこともあるだろうが、間違いなくそれ以外にも驚かされたことがあるんだろう。全く、このハンナという女性は何者なんだ。
診療室の扉を開けると、外から激しい銃撃戦の音が聞こえた。スロープを登った先は航空甲板だった。海兵が既に交戦していたが、それに加わろうとした瞬間、爆発の衝撃波で甲板に体が叩きつけられた。海兵たちは爆発に巻き込まれて戦死していた。クソ、あと少し前に出てたら肉片になってたな。
「注意しろ。いいな」
コヴィックが声にかける。前を見ると、考えたくもない数の中国兵が甲板を埋めつくしていた。
「わァ!この世の終わりみたいな中国人の群れだワ!!」
「落ち着け航空兵!冷静さを失うな!」
危ない、あと少しで異常者になるとこだった。
「クソ、ブリッジに行かないと」
「先にいけ、レッカー!」
パックの指示にレッカーが頷き、他に先んじて前進する。軍曹の援護に回るために、軍曹のすぐ後ろから制圧射撃を加える。当たれば御の字だ。
「危ない、軍曹!」
制圧射撃を加えていると、レッカーに向けてグレネードを投げようとしていた奴を視認した。急いでそいつに弾丸の雨を降らせる。握られていたグレネードはその場で数秒後に爆発、他の中国兵も巻き込む。
「確認!船尾クリア!」
パックの声が響く。よしよし、窮地は脱したか。早くブリッジに向かった方がいいな。
「ブリッジはこの上だ」
コヴィックが言う。ブリッジの構造物にかかるハシゴにはオスプレイか何かの残骸がかかっていた。1人でどかすには少し厳しそうだな...。
「チクショー!」
案の定、1人でどうにかしようとしていたコヴィックが残骸に力を加えているが、ビクともしない。
「1人じゃ無理だ!レッカー、手を貸してくれ」
レッカーはすぐに駆け寄り、コヴィックと共に残骸をどかす。何度かの試行の後、なんとかどかすことに成功した。これで艦橋までの道は開けた。
「よし」
先にコヴィックが艦橋へと上る。登っている間は無防備なので周囲を警戒...していた時。
「危ない!敵のヘリだ!」
パックが叫ぶ。ローターの音のする方を見ると、攻撃ヘリが機関砲を艦橋に掃射していた。まずいまずい、このままだとコヴィックも巻き込まれる──
「コヴィック、降りろ!」
コヴィックに向かって叫ぶ。が、一足遅く、機関砲の爆風に巻き込まれたコヴィックが甲板に落ちた。
「クソッタレが!」
急いで背中に背負ったカールグスタフを取り出すが、それよりも先に20mm ファランクスが攻撃ヘリを叩き落とした。
「敵のヘリ、撃破!」
「ヨッシャー!ヴァルキリーを舐めんなよ!」
アイリッシュが歓喜の声を上げるが、それどころでは無い。急いでコヴィックの方へレッカーと共に駆け寄る。コヴィックはまだ意識はあったが、酷く出血していた。
救急キットを取り出してなんとかしようとした時、またもやローター音が聞こえてきた。
「来るぞ!空からだ!」
「マズイな」
「兵員輸送機だ!兵を降ろす前に片付けて!」
「あのクソッタレどもを、コマンドブリッジに行かせるなよ!」
ハンナの言葉にレッカー軍曹はスティンガーを取り出す。俺もカールグスタフをぶちかますとするか。
「了解した!ハンナ、コヴィックの面倒を見てくれ!」
「分かった!」
コヴィックの事はハンナに見てもらおう。俺の相手はクソヘリ野郎だ。甲板上の補給物資から8.4cm砲弾を1発装填、2発を予備で持っていく。
「レッカー軍曹、俺は軍曹のミスった時のカバーに回る!」
軍曹の近くに立ち、カールグスタフを構える。
「ヘリが来たぞ!」
アイリッシュの言葉を聞くが早く、レッカーはスティンガーの発射準備を整える。発射された対空ミサイルは輸送ヘリに着弾、火を吹いて、中国兵を振り落としながら甲板へ突っ込んで爆散した。
「キル確認!やったな!」
しかし1機だけでは終わらせてくれないらしい。また1機襲来してきた。今度もレッカー軍曹はすぐさまスティンガーを放ったが、当たりどころが良かったのか未だ飛んでいた。ホバリングして兵を降ろそうとしている。
「ボーナスチャンス!吹っ飛べ!」
こういう時こそ俺の出番だ。コックピット目掛けて8.4cm HEAT弾を叩き込む。すぐにバランスを崩し、甲板へと落っこちて行った。
「ってオイ!今度は2機かよクソッタレが!」
今度は2機一緒にやってきた。急いで装填、外すとカバーが面倒なので当てられる位置までしっかり引きつける。一方のレッカーはスティンガーが在庫切れ、補給物資の方まで走っていった。
「間に合え!」
ホバリングした瞬間を逃さず、8.4cm HEAT弾を撃ち込む。今度はキャビンに命中、空中で爆発四散した。
「ああ、マズイ!敵兵が降下を始めた!」
パックが叫ぶ。見ると、もう1機は既に降下を始めていた。クソ、こっちはこっちですぐに撃てる状態じゃない、もう手遅れ──そう思った瞬間、一際大きな炸裂するような音が聞こえた。次の瞬間、ヘリがバランスを失い、ローターで降下中の中国兵を切り裂きながら甲板へと墜落していった。
「うへぇ、グロ...」
「レッカー!間に合ったな!」
炸裂音はレッカーのスティンガーの発射音だった。神様仏様レッカー様、私はあなたを拝みます。
「今ので最後だ!」
「急げ、コヴィックの所へ戻ろう」
アイリッシュ、パック、レッカーの3人と共にコヴィックが倒れている所まで向かう。ハンナが処置しているが、出血は抑えられていないようだった。
「はぁ...クソ...チクショウ...!」
コヴィックが荒い息をしながら毒づく。こりゃ、まずいかもしれんなぁ...。
「マズイな!」
パックが言う。素人目から見ても、コヴィックが大丈夫では無いことは分かった。
「レッカー軍曹!恐らく、全てここにある。持って行け。コードはギャリソンが...」
「チャンは...お前たちを捕らえに来る。騒ぎの中心だからな...」
モルヒネをパックに打たれながら、コヴィックは言葉を振り絞る。
「いいか、奴の、生死を確かめろ。海兵、ギャリソンに彼女と航空兵を信じるよう、伝えるんだ」
「ありがとう」
「ありがとう、コヴィック」
コヴィックからの信頼は得られていたらしい。だが、今ここで必要なのは俺への信頼なんかじゃない...
「レッカー!レッカー!隊を率いろ!行け、行け!」
それが最期の言葉だった。コヴィックはそのまま甲板に身を任せ、二度と動くことはなかった。
「クソ...コヴィック...ありがとう。たった1時間も一緒に居られなかったが...あんたは最高の戦士だ」
コヴィックに十字を切る。無宗教の俺がやるのも変だが、今はこれがコヴィックにできる唯一の弔いだった。
「...行こうぜ。さあ、行くぞ」
「俺がポイントに立つ」
アイリッシュが立ち上がって言う。パックは一足先にハシゴを上っていった。
「どうするよ?ブリッジでギャリソンを探すか?」
アイリッシュがレッカーの肩を叩き、話しかける。レッカーは頷き、アイリッシュが持っていたレコーダーを受け取る。
「指揮官らしくなってきたぜ」
アイリッシュがレッカーに、肩を持ちながら言う。本来のトゥームストーンのリーダーはレッカーだった、ということなんだろうか。何があったかは、知る由もないが。
「クソ!」
アイリッシュが毒づいた。コヴィックの死に、アイリッシュもまた動揺しているようだった。
艦橋まで、順番に上がっていく。俺は1番最後に上がった。最先鋒のパックはコマンドブリッジへの扉で待っていた。
「レッカー、行け!」
パックの言葉に従い、レッカーがドアを蹴り開ける。コマンドブリッジ内部には複数の中国兵が居た。
「コヴィックの仇だ!」
手当り次第に目に入った奴に撃っていく。3人いた中国兵はすぐに掃討された。コマンドブリッジはクリア。床を見ると、他の中国兵の死体も転がっていた。
ハンナがコマンドブリッジの扉の前につく。
「キャプテン・ギャリソン、ブリッジはクリア」
そう言うと、扉からグロック18Cを持った初老の男性が姿を現した。彼こそがヴァルキリー艦長、ローランド・ギャリソン大佐だった。
「彼は無事?」
「大丈夫だ。エージェント・コヴィックは?」
「...死にました」
「クソッタレが。君たちのおかげでヴァルキリーはまだ浮いている。...手負いの軍艦だが」
そう言うと、狭いブリッジの窓から海の方へ目をやった。
「遠くまで来たもんだな。敵の水域だ。こんな最悪の状況だ。君たちが居てくれて助かったよ。レッカー軍曹、15分後にブリーフィングを行うぞ。トゥームストーンを率いろ。それと、ルイス・コール少尉だったか。任せたいことがある。君の話は聞いている、ブリーフィングに来てくれ」
「ラジャー、キャプテン・ギャリソン」
世界観解説
民間軍事会社における階級
民間軍事会社における階級は、退役軍人は退役時の階級を、非退役軍人、つまり最初からPMC専業の者は最初の契約先で任官された階級から始まる。その後の昇進は各契約先で行われ、それを次の契約先でも引き継ぐ。給与や特権も基本その階級に合わせられ、正規軍人とその立場は同一である。
面倒なのはPMCの代表の方が、社員よりも階級が低くなる場合であり、この場合は代表の階級を昇進させることになるが、仮にその結果士官や将官になることが求められた場合、名目上の階級を昇進させた上で教育を受ける必要がある。
兵器(?)解説
IHI F9
IHI製の高出力戦闘機用エンジン。高い汎用性により、およそ世界中のほぼ全ての戦闘機のエンジンベイに適応するサイズのバージョンが用意されており、ハイエンドな戦闘機改修プランでは大抵本エンジンへの換装が含まれている。排熱処理やエアインテークの問題に合わせ、わざと推力を低下させたり、機体特性に合わせたチューニングにも対応している。現状では世界で最も売れている航空機用エンジンのひとつとなっている。