元ロシア最強傭兵、祖国に棄てられて亡命したらトレセン学園のトレーナーになりました   作:武装田んぼ

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第11話 皐月賞

 

 

 4月下旬の良く晴れた暖かな日。

 ここ、中山競バ場は人でごった返していた。人々の目的はもちろん皐月賞。クラシック一冠目の栄光を手にするウマ娘の勇姿を見届けようと集まった人々の波を警備員が懸命に誘導している。そんな様子を横目に関係者用出入り口から入場するテイオーとアルチョム。

 

「いよいよだな」

「うん」

「そんな気負うな。テイオーの実力なら勝てる」

「大丈夫だよ。でもすっごいわくわくしてるんだ。あの時カイチョーが立った舞台に自分も立てるんだって!」

「ああ、そうだな」

 

 テイオーの様子は確かな自信に裏打ちされた興奮と憧れのシンボリルドルフと同じ舞台に立てるという期待が勝っているようだ。

 そんなテイオーの様子を見てアルチョムは少し安心する。これなら少なくとも緊張で実力が出せない、という事態は避けられそうだ。

 

 とはいえまだまだ課題は残る。この皐月賞に出走するウマ娘は皆粒ぞろいのウマ娘ばかりだ。テイオーと同じく、無敗記録を重ねてきた猛者も少なくない。今回、特にアルチョムが注視しているウマ娘はジークファイター。テイオーと同じく4戦4勝と無敗であり、さらに去年末のG1レースであるホープフルステークスで1着を獲った実力者だ。

 今回は2番人気となっているが、1番人気のテイオーとは僅差であり、油断はできない。

 

「そういやコイツ先行か……。テイオー、コイツのペースに呑まれるなよ?」

 

 ジークファイターの走る動画をタブレットに映しながらテイオーに言う。

 

「大丈夫! ペース作りのコツはトレーナーにたくさん習ったから!」

「おう、その調子だ。トレーニングで学んだことをレースで活かせ。テイオーならできる」

「うん! じゃあボクそろそろ着替えるね」

「あいよ、終わったら呼べよ」

 

 控室を出て、場内を歩いて回る。

 

「あ、アルチョムトレーナー!」

 

 後ろから元気な声で呼ばれ、振り返る。そこにいたのはキタサンブラックとサトノダイヤモンドだ。

 

「おう、君たちか。わざわざ応援に来てくれて感謝する」

「当たり前じゃないですか! 憧れのテイオーさんの一冠目なんです! 見逃したら一生後悔しますよ!」

 

 目を輝かせ、耳と尻尾を元気に振るキタサンブラック。

 

「だな。テイオーの勇姿、その目にしっかり焼き付けるんだ。そして目標にしろ。それは君の成長に繋がる」

「はい! もちろんです!」

「あら皆さま、ごきげんよう」

「マックイーンさん、お久しぶりです」

 

 2人と話していると、メジロマックイーンが声をかけてきた。どうやらチームシリウスも観戦に来たようだ。マックイーンの隣にいた相田トレーナーもアルチョムに話しかける。

 

「アルチョムさん、いよいよですね!」

「ええ。あとはテイオーを信じるだけです。やってくれる、勝ってくれる、と」

「あれだけトレーニングを積んで実戦を経験して来たんですから大丈夫ですよ」

「あなたに言われると安心します。おっと、テイオーから準備できたとメッセージが。一旦失礼します」

「では、私達は関係者席にいますので後ほど」

「はい」

 

 テイオーからのメッセージを確認し、控室に向かう。

 

「入るぞ、いいな?」

「いいよー」

 

 こっちを向くテイオー。イヤホンをして音楽を聴いているようだ。今までレース前にこのようなことはなかった。普段通り振る舞っているが、緊張はしているのだろう。ただ、だからといってそれを指摘するつもりはない。

 

「珍しいな。何聴いてるんだ?」

「心絵」

「確かテイオーのお気に入りの曲だったな」

「うん。この曲聴いているとボクは絶対に夢を叶えられる、叶えて見せる……! って気分にになるんだ」

 

 リズムに乗りながら身体を揺らすテイオー。お気に入りの歌を聴いて多少は緊張も解れてきたようだ。

 

「その曲、俺も聴きたい。スピーカーで流せるか?」

「いいよ、ちょっと待って」

 

 テイオーらスマホを操作しイヤホンを外した。そして流れ始める曲。

 

 〝涙枯れるまで

 まだ出ぬ答え 追い続けて

 涙晴れるまで

 我がゆくえ 迷いながらも

 描きかけの今

 刻む 証 この手で〟

 

 テイオーは歌詞を口ずさみながら集中しているようだ。アルチョムはその様子を静かに見守る。この歌をちゃんと聴いた回数は少ないが、耳に入る歌詞は夢に向かってひた走るテイオーの姿と重なるものが多い。アルチョムもいつの間にか聴き入っていた。

 

「描きかけの今、刻む証この手で〜♪」

 

 曲を歌い切り、スマホをしまったテイオーはアルチョムを真っ直ぐに見る。その視線に気づいたアルチョムが尋ねた。

 

「どうだ、いけそうか?」

「うん、バッチリ! じゃあトレーナー、パパーッと勝ってくるから見逃しちゃだめだよ〜」

「誰が見逃すかよ、一生忘れられないぐらい目に焼き付けてやるつもりだ」

「それでこそボクのトレーナー! じゃあ行ってくるね!」

「おう! 楽しんでこい!」

 

 お互いの拳を突き合わせ、テイオーは元気にパドックへ向かう。そんな姿を見送り、アルチョムは関係者席に向かった。

 

「アルチョムさん、お疲れ様です」

 

 また声がかけられる。天野トレーナーだ。

 

「お疲れ様です。テイオーのレースを見に来てくれたのですね」

「はい、何か勉強になればと思いまして」

「アルチョムさん! テイオーちゃんはもうパドック?」

 

 隣に並んでいたマヤノが聞いてくる。

 

「ああ、今さっきパドックに向かったばかりだ」

「じゃあパドックの方行ってくるね! トレーナーちゃんは先に席に向かってていーよー!」

 

 パドックの方に駆けていくマヤノ。

 

「あ、ちょっと! 行っちゃった……」

「まあ、何かあったら連絡くれますよ」

「だといいんですが……」

「それに関係者席の場所は伝えているんでしょう?」

「はい、ちゃんと案内図まで見せました」

「じゃあ大丈夫でしょう。もしなんかあったらその時は自分も協力しますよ」

「ありがとうございます」

「席に向かいましょう。他のトレーナーも今日は来てます」

「誰が来てるんです?」

「シリウスの相田トレーナーと、リギルの東條トレーナーも見かけました。あ、あとあの口煩い樫本も」

「トレセンの中でもトップクラスのトレーナーばかりだ……。僕なんかがいていいんですか? そこ。っていうか樫本代理を呼び捨てなんて……」

「そう怖がらなくていいですよ。自分だってたかが二年目です。同じようなモンです。あと、樫本に関してはあっちから喧嘩ふっかけて来たんでね。そんな人間に礼儀正しくする道理は無いですよ」

「そう言われましても……」

 

 まだまだ不安な様子の天野トレーナー。そんな姿を見ているとほとんど緊張していない自分が異常なのかと思ってしまう。

 

 そんなこんなで関係者席に着く。どっかりと腰を据えるアルチョムと隣で入学式の新入生さながら、背筋を伸ばし、多少強張った表情の天野トレーナー。アルチョムは案の定、居合わせた樫本代理とガンを飛ばし合い、剣呑な空気が漂う。

 

「テイオーさんの実力、この目で見せてもらいますよ」

「おう、好きにしろ。一応言っておくが、テイオーの走りにケチつけたらタダで済むと思うなよ」

「ちょっと、アルチョムさん……!」

 

 天野トレーナーが宥める。アルチョムは笑いながらいつものことだ、と受け流した。困惑する天野トレーナーに対し、アルチョムは続ける。

 

「テイオーは自分の担当なんです。だから自分はテイオーの走り方をあれこれ指導しますし、テイオーが自分の指導に文句を言うのも構いません。そうやってお互いにベストを探っていくのですから。ただ、お互いがそうやって合意してるやり方に外野が文句つけるんじゃねぇって話です。そいつらが納得して周りに迷惑かけてなきゃそれでいいでしょう。だが樫本代理は違う。干渉してくる。だからこっちだってこうなるんです」

「……なるほど、アルチョムさんの話も一理あります」

「ご理解いただけたようで何よりです。まあただ相手はあれでも上司ですからね。クビにならない程度には従いますよ」

 

 皮肉っぽく言うアルチョム。この対立はまだまだ長引きそうだ。

 

 

 ────────────────────────

 

 

 地下バ道にて。

 出走前のウマ娘たちがターフに向かって歩いている。ある者は祈るように、ある者はただ前を見据えて、ある者はゆっくり深呼吸しながら、一歩一歩踏み締めるようにターフへ、晴れ舞台へ向かっていく。

 そんな中、威風堂々とその歩みを進めるウマ娘、トウカイテイオーだ。自信に満ち、覚悟を決めた表情はここにいるウマ娘の誰よりも精悍かつ端麗で、その姿はかつてのシンボリルドルフを彷彿とさせる。

 

「テイオーちゃーん!」

 

 そんなテイオーに元気に駆け寄っていくウマ娘。マヤノトップガンだ。

 

「マヤノ!」

「テイオーちゃんいよいよだね!」

「うん! もうわくわくが止まらないよ!」

「あれだけトレーニングしてきたんだからテイオーちゃんなら絶対勝てるよ!」

「当たり前じゃん、ボクを誰だと思ってるの? 無敵のテイオー様だぞ!」

 

 自信満々に胸を張り、ポーズを決めるテイオー。

 

「じゃあ無敵のテイオーちゃん、とびっきりのレースでマヤ達をわくわくどきどきさせてね! ユーコピー?」

「アイコピー!」

 

 マヤノに敬礼したテイオーはまるで飛び立つ戦闘機のように駆けていく。親友の晴れ舞台は間近だ。

 

 

 

 ターフに出たテイオー。観客席から歓声が上がり、それに応えるように手を振る。この歓声が全部自分のものになる、そう考えると興奮が止まらない。

 

 カイチョーが獲ったクラシック一冠目。それは目の前まで来た。手を伸ばせば届きそうな距離まで。だが油断はできない。ほんの僅かな油断が、些細な慢心が、その距離をいくらでも遠ざけてしまう。そうなればカイチョーを超えるなんて夢のまた夢だ。

 だからこそ、もう一度気を引き締めてターフを睨む。

 

 わかってる。皐月は第一歩に過ぎない。だけど、その第一歩を疎かにすれば二歩目、三歩目には続かない。だから絶対に負けられない。もちろん負ける気なんてこれっぽっちも無い。

 

 

 なんたってボクは、

 

 最強無敵のトウカイテイオーだから! 

 

 

 闘志が燃えたぎり、テイオーの蒼い瞳に紅蓮の炎が宿る。

 かつてカイチョーがここに立った時はどんな気分だったのだろう? 緊張していた? いや、カイチョーが緊張していたなんて想像できない。きっと今のボクみたいに燃える闘志と共に覚悟を決めてターフを見据えていたに違いない。

 関係者席の方を見る。トレーナーがこっちを見て頷いた。好きに走ってこい、そう言われた気がした。

 

 ウマ娘達がゲートに入る。テイオーも8番枠に入り、ゲートが開くその瞬間を待つ。

 

 今でも鮮明に思い出す、カイチョーの皐月賞。あの走りに見せられたテイオーはただひたすらカイチョーを目標にしてきた。それは今も変わらない。

 でもあの時と違うのはカイチョーに並ぶウマ娘になるのではなく、カイチョーすら認める最強のウマ娘になること。でもそれはボク一人で達成できることじゃ無い。いつもボクを全力でサポートしてくれるトレーナーがいるから、今ここに立てている。

 

 だから、今ここでボクは一冠目を手にするんだ! 

 

《ゲートイン完了、準備が整いました》

 

 いよいよだ……! 

 

 ゲートの先に広がるターフを睨む。そしてゲートは開かれた。

 

《各ウマ娘、一斉にスタートしました!》

 

 一斉にウマ娘が飛び出す。テイオーも良いスタートを切った。

 流れに乗りつつ、周囲を確認する。今回のレースはフルゲートの18人出走。今まで経験してきたレースの倍の人数だ。だが、それぐらいで尻込むようなテイオーではない。むしろボクが1番だと言わんばかりに意気込んでいる。

 

 テイオーは位置取りのために先団の後方へつこうとするが、目の前に一人割り込んできた。ジークファイターだ。

 

 こっちを読んできた⁈

 

 少し動揺するが、落ち着いてポジションを探し、うまく入り込む。これぐらいは想定の範囲内だ。しかし、ここで割り込んできたと言うことは、ラストスパートの時も同じような動きを繰り出すかも知れない。そうなると厄介だ。

 

 割り込まれる前に逃げるか、パワーで押し切るか。今ここで判断はできない。常に状況を把握し、臨機応変に対応するのがベストだが、そう易々とできれば苦労しない。とにかく今は、ジークファイターのペースに呑まれないよう、自分のペースをしっかりと維持して、スタミナの温存を図る。

 

 大丈夫、レースが予想通り運ぶなんてあり得ない。この前のウオッカを思い出せ! これぐらいでボクを止められると思うな! 

 

《現在、8番トウカイテイオーは六番手、15番ジークファイターは四番手となっております。どうでしょう、この展開?》

《両者脚を溜めてますね。これからどう仕掛けて来るのか注目です》

《おっと、11番ムーンアーヴィング、現在一番手ですが落ち着かない様子》

《ちょっと掛かっているかもしれません。まだまだレースは続きますから冷静さを取り戻したいところです》

 

 ハナを進むムーンアーヴィングが、少し焦った様子で前へ前へと突き進んでいく。よほどスタミナに自信があるのか、それとも実況の言う通り掛かってしまったか。

 

 多分あの子は途中でスタミナが切れる。そしたらスピードが落ちて前を塞がれるかも……。

 

 周りを軽く確認してからハナのムーンアーヴィングを観察する。スピードが落ちる気配はないがどうやら掛かっているようだ。スタミナ切れは時間の問題だろう。

 

 しばらくはこのポジションで様子見! 

 

 テイオーは序盤から中盤で積極的に仕掛けるつもりは無かった。レースが大きく動くのは終盤ゆえ、仕掛けても空振りに終わる可能性もある。そうなれば貴重なスタミナの浪費で終わってしまう。また、アルチョムも中盤までは冷静に状況を把握して有利なポジション取りに専念すべきとテイオーに教えていた。

 

 すると、ムーンアーヴィングのペースが落ちてきた。それと交代するように前に出始めたのは9番、バイトアルヒクマだ。掛かっているというよりは、先団から距離を取りたいために前に出たように見える。

 

《現在一番手は9番バイトアルヒクマ、それに続き二番手は4番……8番トウカイテイオーは五番手でレースを進めています》

《レースの流れを冷静に読んでいます。いつ仕掛けるか目が離せません》

 

 レースは直線を抜けて第三コーナーに入る。周りのウマ娘達の中にはスパートをかけ始める子もいる。

 

 まだダメ、もう少しすればチャンスが来る! 

 

 はやる気持ちをグッと堪えて、チャンスを窺う。先団は未だ固まったままだ。抜け出すのは難しいだろう。より冷静に、より集中して、感覚を研ぎ澄ませて……。

 

 流れる景色と共にウマ娘達は最終コーナーに入る。ここからどう動くか。判断を誤ればターフの上で涙をこぼすことになる。テイオーは先団の様子を確認しつつ、右斜め前を走るジークファイターを注視した。

 

 先団が動き始めた! アイツが動く前にボクが動く! 

 

 先団の隙間を捉えたテイオー。脚に力を込め、強く地面を踏み込んだ。

 

 無敵のテイオー伝説は……! 

 

 ターフが抉れ、一気に踏み出したテイオー。視界を流れる景色を、耳に届く歓声を、自分の鼓動を、周りのウマ娘の息遣いを、研ぎ澄まされた感覚がまるで手に取るようにそれらを把握する。

 

 ここからスタートだっ!! 

 

 先団の隙間を鮮やかに抜け出したテイオー。そのままぐんぐんと前に加速していく。

 レースは最終コーナーを抜け、最後の直線に入る。前を走る逃げウマ娘は引き離そうとスピードを上げるが、テイオーはみるみる距離を縮め、あっという間に追い抜かした。

 

 これがテイオー様の実力だ! 

 

 最終直線を弾丸のように疾走していくテイオー。あとはこのままゴール板を駆け抜けるだけだ。しかし、そこへ食いつこうとするウマ娘がものすごい勢いで追い上げてきた。ジークファイターだ。

 

《8番トウカイテイオー、ハナを進む! そこに15番ジークファイター、食らいつく! トウカイテイオー逃げ切るか、ジークファイターが差すか!》

 

 テイオーは振り返ることなく、ただただ前へ突き進んだ。後ろを確認する暇があるなら前に進むべきだ。

 そんなテイオーの背後に追いつけ追い越せと上がって来たジークファイター。獲物を狙うチーターのようにテイオーに迫り、半バ身まで差を縮める。

 

《ゴールまであと200メートル! ジークファイター迫る、トウカイテイオー逃げる、皐月の栄冠はどちらが獲るのか!》

 

 大興奮の実況と観客。みんながボクを注目している。みんながボクに期待している。だからこそ、ボクは全力で走れる。

 テイオーにとって、期待はパワーだった。トレーナーが、マヤノが、マックイーンが、キタちゃんが、みんなの期待があるから、テイオーはターフに全力をぶつける。

 

 ボクはみんなの前でカイチョーを超えるウマ娘になるんだ! こんなところで負けるもんか! 

 

 燃えたぎる闘争心がテイオーの脚をさらに加速させる。ただひたすら前を見て、ゴールを見て、目標を見て。

 

 

 ボクが一番だっ! 

 

 

《トウカイテイオー、今1着でゴールイン! クラシック三冠の一つ目をトウカイテイオーが手に入れました!》

 

 

 

 半バ身まで迫ったジークファイター。しかし、そこからテイオーはさらに加速し、そのまま1 1/2バ身まで引き離してゴールした。

 

「よくやったぞテイオー!」

 

 関係者席から身を乗り出しで大声で歓声を上げるアルチョム。大きく腕を振り回して全身で喜びを表現する。

 

「さすがテイオーだ! アイツはやっぱ天才だよ! 最強のウマ娘だ! Whoooooooo!!」

 

 口笛を吹いて、ハイテンションで喜ぶアルチョム。

 

「テイオー! 最高の走りだった!」

「でしょでしょ! ボク、ちょーがんばったんだよ!」

「ああ! ちょーがんばった最強のウマ娘だ!」

 

 関係者席からターフに飛び出してテイオーを褒めちぎるアルチョム。

 

「テイオーちゃんすごーい! マヤ、テイオーちゃんの走り見てたらどきどきしちゃった」

「ありがとうマヤノ!」

「おめでとうございます、テイオーさん。あなたの走り、私も見惚れてしまいました」

「ありがとうマックイーン、次も見てて」

「テイオーさん、カッコよかったです! 最後のスパートはもう最後でした!」

「えへへー、キタちゃんありがとう!」

 

 テイオーの観戦に駆けつけたウマ娘達もその勝利を祝福する。

 

「ほらテイオー、応援してくれた観客達にお礼してこい」

「うん!」

 

 テイオーは観客席の前に立ち、人差し指を立ててポーズを決める。かつてシンボリルドルフが皐月賞を制した時と同じポーズをとって見せた。

 割れんばかりの歓声と万雷の拍手がテイオーの勝利を讃える。

 クラシック三冠の一つ目、皐月賞。テイオーはそこに勝者として名前を刻んだ。

 

 会場を大歓声が包む中、アルチョムは一人空を見上げていた。

 俺は今、大切な教え子の夢を叶えようとしている。テイオーが夢を叶えられればそれは俺の過去の清算になるかも知れない。あの時の難民達への僅かでも罪滅ぼしになるかも知れない。流して来た血の償いになるかも知れない。

 

 アルチョムは人知れずそんなことを考えながら、歓声と拍手を浴びるテイオーを眺めた。

 

 







誤字脱字などございましたらご報告願います。

今回、話中にて以下の楽曲の引用いたしました。

心絵 2004年 日本
アーティスト ロードオブメジャー
作詞・作曲 北川賢一

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