元ロシア最強傭兵、祖国に棄てられて亡命したらトレセン学園のトレーナーになりました   作:武装田んぼ

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更新が大変遅れたことを深くお詫び申し上げます。

転職や引っ越しが重なり中々時間が取れず、さらにはCoDMWⅡやBF2042にうつつを抜かしていたらこの結果になりました。申し訳ありません。

今週からはペースを復活させることができると思いますので、引き続き皆さまのご愛読を心からお願い申し上げます。



第12話 ダービーに向けて!

 

 

 クラシック一冠目を見事手にしたトウカイテイオー。次の目標はもちろん、日本ダービーだ。栄光あるダービーウマ娘目指してトレーニングといきたいところだが、その前に。

 アルチョムとテイオーは駅前の繁華街にいた。

 

「どれからやろっかなぁ〜、最近トレーニングばっかで全然遊べなかったからチョー楽しみなんだ!」

「だろうな。ま、今日は心ゆくまで遊べ」

 

 息抜きとしてテイオーはゲームセンターにやってきた。元気に跳ねながらゲームセンターに向かうテイオーと後ろからついていくアルチョム。ぱたぱたと歩いていくテイオーがふと、脚を止めた。辺りには生地の焼ける香ばしい匂いが漂っている。

 

「トレーナー! クレープ買っていい?」

「おう、好きにしろ」

「やったー! どれ買おうかなぁ〜」

 

 ゲームセンターの近くにこの前オープンしたクレープ屋があった。店の前にはクレープを買いに来たであろう学生が集まっている。

 テイオーもクレープ屋の前に置かれたメニューを見ながら目を輝かせていた。

 そこに寄ってきたウマ娘が一人。蒼い瞳と赤みがかった茶髪のショートヘアには、左右に特徴的な癖毛があり犬耳にも見える。右耳の桜飾りが綺麗なウマ娘、サクラチヨノオーだ。

 

「あれ、チヨノオーじゃん。クレープ買いに来たの?」

「あ、テイオーさん。はい、ここのクレープお気に入りなんです」

「へぇー、おすすめとかある?」

「そうですね……、抹茶やチョコですとか、レアチーズにんじんもいいですよ!」

「わぁ〜! どれも美味しそうで迷うなぁ……」

 

 メニュー表と睨めっこするテイオー。同じようにチヨノオーもメニューを見ながら迷っているようだ。するとテイオーの耳がぴくりと動き、指を差して店員に注文する。

 

「バターはちみークリームください!」

「あ、私もそれで!」

「1160円です」

「トレーナー、お願い」

「人を財布みたいに使いやがって……。あ、スマホ決済で」

「てかトレーナーはなんか頼まないの?」

「……失礼、カフェラテL追加で」

「1490円です」

 

 いつものように読み取り機にスマホをかざして決済を終える。しばらくしてクレープが手渡され、カフェラテも出てきた。キツネ色に焼けた生地にたっぷりのクリームと黄金色の蜂蜜が、アイスクリームにはシナモンパウダーがかけられた贅沢なクレープだ。テイオーとチヨノオーは仲良くそれにかぶりついた。

 

「美味しいですっ!」

「んまぁーい!」

 

 二人は耳をぴょこぴょこ動かし、頬についたクリームも気にせず夢中で食べている。なんとも微笑ましい光景だ。そんな二人を眺めながらカフェラテを飲むアルチョム。

 

「ったく、ガキじゃねぇんだからもうちょいキレイに食え」

 

 そんなアルチョムの忠告などどこ吹く風。あっという間に食べ終えた二人はクリームのついたお互いの顔を見てけたけた笑う。

 

「チヨノオーほっぺにクリームついてるよ!」

「テイオーさんだって人のこと言えませんよ!」

「うわ、めっちゃついてる!」

「さっさと拭け、中高生にもなってみっともない」

 

 呆れ顔のアルチョム。中高生といえどもまだまだ子供だ、なんて思いながらティッシュをテイオーに渡した。いそいそと二人は口元を拭いて、そのままゲームセンターに入っていく。アルチョムは後を追った。

 

「そういやチヨノオーがゲーセン来るの珍しいね。やりたいゲームとかあるの?」

「実はこの前マルゼンさんにドライブに誘われたんですけど、酷く車酔いしてしまったんです……。そしたらマルゼンさんにレースゲームで慣れてみたらと提案されまして」

「へぇー、レースゲームねぇ……」

 

 テイオーの目が光る。

 

「ボクのハンドル捌きについてこれるかな?」

「……私だってマルゼンさんの運転を目の前で見てきたんです……! ゲームだからって、負けません!」

 

 そう言うチヨノオーの目に闘志が宿った。

 

「じゃあこのワールドレーシングスーパーカーで勝負だ!」

「スーパーカー……! 受けて立ちます!」

 

 テイオーが指差す先に並んだ筐体。運転席を模したイスとハンドル、足元にはブレーキとアクセルが並び、本物さながらの運転が体験できる。

 

「へっへー、ワガハイちゃんのお出ましだぁー! 今日も新記録、出しちゃうモンネ!」

 

 意気揚々と筐体に座るテイオー。チヨノオーも隣の筐体に座り、二人とも準備ができた。

 コインを投入し車両を選んでからレーススタート。アクセルを全開にして飛ばしていくテイオーにチヨノオーも負けじと食らいつく。その目はレースさながらだ。

 

「なかなかやるね!」

「マルゼンさんの運転に比べたらこれぐらいっ……!」

 

 コースは急カーブに差し掛かる。テイオーは巧みなハンドル捌きで手足のように車を操る。

 

「ここのカーブはかなりキツいよ!」

「なんのこれしき……!」

「ウソ! そんなスピードで曲がるなんて!」

 

 驚くテイオー。チヨノオーは必死にハンドルを操っていた。テイオーと比べると少しぎこちないが、コースを通過するための最適なルートを確実に選び、アクセルとブレーキを丁寧に使い分けている。両者譲らぬまま、レースは終盤へ。

 

 ラストの直線。一番に飛び込んできたのはテイオーだ。ハイスピードでコースの真ん中を弾丸のように突っ切る。そんなテイオーを追いながらジリジリと距離を縮めるチヨノオー。

 だが、あと一歩及ばずテイオーに一着を譲る結果になった。

 

「やったぁー! ボクの勝ちだぁ!」

「くぅ、もう少しだったのに……!」

「でもびっくりしちゃった。あんな曲がり方初めてみたよ」

「あはは、あの時は無我夢中でとにかくテイオーさんに追いつくことだけ考えていたので……。でもなんかコツを掴めた気がします!」

「いいじゃんいいじゃん! ゲームでもレースでもなんか掴めたって瞬間、すっごいワクワクするよね!」

「はい、それにコツを掴むまであれこれ試行錯誤するのも楽しいです!」

「だよねだよね! じゃあさ、次なんのゲームやる?」

「ダンスゲームやりたいです! マルゼンさんの激マブなダンスを目指して……!」

「いいねいいね! ダンスだってボクは負けないぞー!」

 

 仲良くダンスゲームに駆けていく。

 

「ねえトレーナー! ボク達のダンス配信して!」

「なんで配信なんざする?」

「だってみんなにボクのダンス見てほしいもん。それにチヨノオーも一緒だし!」

「は、配信するんですか⁈ 上手く踊れるかなぁ……」

「いつも通りにやれば大丈夫大丈夫! ウイニングライブみたいなもんだって!」

「そうですね! じゃあアルチョムさん、お願いします」

「わかったわかった。とりあえず撮影始めるから、準備しろ」

「待ってね、今ウマトック開くから……」

 

 テイオーはスマホでウマトックを開き、配信フォームを開いてアルチョムに渡す。

 

「じゃあトレーナー! ボク達のこと、可愛くカッコよく撮ってね!」

 

 そう言い、ポーズを取るテイオー。隣でチヨノオーも手を振る。そんな2人をカメラに捉え、生配信が始まる。

 

「みんな久しぶり〜! 今日はチヨノオーと一緒にこのアメイジングダンスやっていくよー!」

「皆さんよろしくお願いします!」

 

 筐体の前に立ち、スマホに向かって手を振る。すると、瞬く間にいいねやコメントが画面に流れた。

 

「すげぇ反応だ。さすがG1ウマ娘と言ったところか」

 

 テイオーとチヨノオーはコインを投入しゲームスタート。いつものようにキレのある鮮やかなダンスを披露するテイオー。隣のチヨノオーも負けてない。そんなダンスに魅せられてか、視聴者はどんどん集まってくる。

 

「わお、同時視聴3000人超えたぜ」

 

 みるみる増えていく数字に興奮気味のアルチョム。2人が踊る筐体の周りにもダンスに魅せられたギャラリーが集まっていた。これで見物料取れたら今月の酒代ぐらいは稼げるんじゃないかなんて阿漕なことを考えるアルチョム。

 そんなアルチョムを尻目に2人は一曲目を終えた。フィニッシュと同時にポーズを決める2人。そんな2人に歓声が上がる。

 

「チヨノオー! もう一曲やっちゃう?」

「もちろんです!」

 

 二曲目を選び、ダンススタート。息のピッタリあった鮮やかなダンスはギャラリーはもちろん、アルチョムすら魅了する。ふと画面の端に目をやると、同時視聴者数が4000を超えた。

 

「伊達にウイニングライブやってないな、完璧な踊りだ。俺にはできん」

 

 そして2人はポーズを決めてフィニッシュ。ギャラリーから拍手が上がる。

 

「やったー! 見て見て、全国最高記録更新! これがボクの実力さ!」

「私も今までで最高得点です! 激マブなダンスに近づけました!」

 

 配信画面にも賞賛のコメントやいいねがとめどなくついていく。

 

「じゃあみんなー、今日はここまで! 観てくれてありがとう! 次の配信も楽しみにしててね!」

「皆さん、見てくださってありがとうございした! またどこかでお会いしましょう!」

「「またねー!」」

 

 2人がスマホに向かって手を振る。その様子を確認してからアルチョムは配信フォームを閉じた。

 

「これでいいか?」

「うんバッチリ! ありがと」

「配信するなとは言わんが、あまり変なことするなよ」

「変なことって?」

「炎上しそうなヤツ全般」

「わかってるよそんなこと。先生にもエアグルーヴにもたくさん言われたし……」

「わかってんならいい」

 

 SNSというモノに対し、あまり良い印象の無いアルチョム。現役からPMC時代にかけて使ったことはあったが、それはほぼプロパガンダの為だった。

 友軍の作戦行動を正当化するためにあることないこと書き連ね、ネットの海に放流する。内容の真偽ではなく、センセーショナルな投稿をしてひたすら拡散を目的としたものだ。フェイクだろうが拡散した者勝ち。投稿の一つひとつが弾丸となり、世論を引っ掻き回すのだ。

 

 西側だって似たようなことしてるんだからなんか言われようが知ったことじゃない。そんな事情を目の当たりにしてきた彼がSNSに良い印象を抱く訳が無かった。

 

「ねぇ、チヨノオー! プリクラ撮らない?」

「はい、撮りましょう!」

 

 そんなことを思い出すアルチョムと裏腹に、2人ははしゃぎながらプリクラコーナーに向かう。

 

「ホント、あの元気は一体どこから出てくるんだか」

 

 2人の様子を眺めながら近くのベンチに座り、缶コーヒーを飲む。

 

「チヨノオー変な顔〜!」

「テイオーさんだって何なんですかこの顔!」

 

 現像されたプリクラを見ながらはしゃぐ2人。

 

「もう一回撮ろ!」

「はい!」

「あ! トレーナーも撮る?」

「なんで俺が。写真写り悪いからやらん」

「大丈夫ですよ! 盛ればイケメンになりますって!」

「そうそう、ちょっと悪かったって修正できるし!」

 

 結局撮ることになった。何枚か撮り、筐体脇のタッチパネルで加工してから現像されたプリクラを手に取る2人。

 

「なんか指名手配犯みたい」

「これだけ盛っても目つきの悪さが変わらないってすごいですね」

「ほんそれ、加工が負けた」

「加工が負けたんじゃない、俺が加工に勝ったんだ」

「謎にポジティブですね」

「だから言ったろ、写真写り悪いって」

「写真写り悪いってレベルじゃない気がする……」

「んで、もう満足か? 満足ならトレセンに戻るぞ」

「まだまだ! チヨノオー、シューティングやろ!」

「いいですね! マルゼンさんに教わったコツがあるんです! それを披露してみせます!」

「……まあいい、まだ時間はあるから楽しめ」

 

 駆けていく2人を追うアルチョム。テイオーの息抜きはもう少し続きそうだ。

 

 

 ────────────────────────

 

 

 日本ダービーまであと10日と迫った頃。いつもの2人はいつものようにグラウンドにいた。

 

「テイオー、今日の模擬レース相手は誰だと思う?」

「スペちゃん!」

「なんでわかった」

「昨日スペちゃんから明日は模擬レースよろしくお願いしますってライン来たし」

「言うなって伝えたはずだが……。まあいい。テイオーも知ってると思うが、スペシャルウィークは一昨年のダービーを制した。ハッキリ言うが、現状において実力はスペシャルウィークの方が上だ。今日のレースで全く歯が立たなかったら、ダービーは無理だと思え。厳しく聞こえるだろうが、現実を踏まえてトレーニングに反映しなければ成長は望めない。いいな?」

「うん、わかった」

「別にテイオーを追い詰めるつもりで言ったんじゃない。現状を見極めて、確実にスキルアップを狙うと言ってるんだ。それに、スペシャルウィークの方が実力は上と言ったが、決して埋められない差ではない。あとはテイオーが、今までのトレーニングで学んだことをどこまで活かせるかだ。楽に勝てる相手ではない。だが、決して勝てない相手でもない。それを頭にいれて走れ。テイオーならできる」

「わかった、スペちゃん相手でもやってやる!」

「おう、その調子だ」

 

 タブレットにスペシャルウィークのトレーニング映像を流しながら、テイオーに説明するアルチョム。テイオーはタブレットの映像を真剣に観ていた。

 

「すいませ〜ん、遅れました〜!」

 

 そんな2人の元にぱたぱたと小走りで近づいてくるウマ娘。スペシャルウィーク本人の登場だ。

 

「安心しろ、時間通りだ」

「ボク達も今来たトコロだよ」

「あ、ならよかったです」

「んで、今日は伝えた通りテイオーとレースしてもらう。トレーニングだが、手は抜かなくていい。本番と同じように走ってくれ。沖野からも許可を取ってる。頼んだぞ」

「はい、わかりました!」

「テイオー、さっき言った通りだ。全力でいけ。いいな?」

「もちろん!」

「よし、準備しろ。出来たらすぐにスタートだ!」

 

 テイオーとスペシャルウィークがターフの上に並び、軽くストレッチする。その間、アルチョムはドローンをチェックして起動した。

 

「どうだ、いけるか?」

「オッケー!」

「はい、いつでも!」

「よし……、ヨーイ! ……スタート!」

 

 アルチョムの掛け声と共に飛び出す2人。お互いに一定の距離をとりながらターフを駆け抜ける。

 

「……まただ。また前の走り方に戻ってやがる」

 

 ドローンでテイオーの走りを見ながらぼやくアルチョム。何度も指導してきたが、多少の改善はされても結局それまでと大差ない走り方に戻ってしまう。このままでは遅かれ早かれ故障に繋がる。

 だが、それと同時にこの走り方がテイオーの実力を最も発揮できるのも事実だ。長所は活かしたい。しかし、活かせば活かすほど時限爆弾の猶予は無くなっていく。

 

 無論、アルチョムだってただ見てるだけではない。負荷を分散する力の入れ方や、トレーニング後のケアなどの指導を徹底しているが、それがその場凌ぎでしか無いことはアルチョムが一番理解していた。

 

「……どうしたものか」

 

 腕を組んで悩みながら、ターフを駆けるテイオーを見る。スペシャルウィークの少し前を走りながら、うまくペースを維持していた。

 

「今のところは上手くやれてるな。あとは最後のスパートでどう動くか……」

 

 走り方に関してはダービーの後に改めて指導しよう。そう考えて、今は動き方やスパートのタイミングなどに注力することにした。ダービーまで爆弾が爆発しないことを祈るしかない。

 

 第3コーナーに差し掛かる2人。テイオーはしっかりペースを維持しつつ、タイミングを窺う。まもなく最終コーナーに入り、スペシャルウィークが動いた。テイオーを外回りで追い抜かしハナに出る。

 直後、テイオーもスパートを掛け、一気にスピードを上げた。両者譲らず直線を駆ける。追い抜いては抜き返し、これが模擬レースであることを忘れてしまうほどの接戦だ。

 

 そのままほぼ同時にゴール板を駆け抜けた2人。判定はドローンの映像で確認する。

 

「勝者スペシャルウィーク。ハナ差だがな」

「うぅ、勝ったと思ったのに」

「でもハナ差ですよ! 正直、負けたかもって思いましたもん!」

「ねぇスペちゃん、もう一度やろ! 次は絶対に勝つから!」

「受けて立ちます!」

「よし、なら準備しろ」

 

 再びレースの準備に取り掛かる2人。そこへまた1人ウマ娘が現れた。サイレンススズカだ。

 

「2人が走ってるの見てたら居ても立っても居られなくなって……。私も参加してよろしいですか?」

「ああ構わん。むしろ大歓迎だ。いつもの大逃げを見せてくれ」

「はい、喜んで」

「おい! テイオー、スペシャルウィーク、次はサイレンススズカも走るぞ。置いてかれるなよ?」

「スズカさんも走るんですか⁈はい、ぜひ一緒に!」

「いいよ! 誰が来たって次は負けないモンネ!」

 

 3人がスタート位置に着く。アルチョムはいつも通りドローンを飛ばして準備完了だ。

 

「ヨーイ……、スタート!」

 

 アルチョムの号令と共に3人が飛び出した。ハナを切って進むのは言わずもがな、サイレンススズカ。それを追うテイオーと後ろにスペシャルウィーク。スズカは3バ身リードで進む。

 

「どうです、ウチのスペとスズカは?」

 

 沖野トレーナーがやってきた。

 

「流石としか言いようがない。やはり一筋縄じゃ行かないな」

「そう言ってくれると嬉しいね。でも、あの2人にここまで食いつくテイオーも中々のもんだぜ」

「あれこれトレーニングは積んできた。それに皐月だって勝ったからな」

 

 少し自慢気に言うアルチョム。その目にはテイオーと共に重ねてきた努力が映っていた。テイオーの素質は素晴らしいものだ。しかし、その素質はテイオー1人では活かせなかったであろう。アルチョムの指導とテイオーの努力。それゆえの皐月賞の結果だ。偶然やまぐれではない、実力での勝利だ。

 

 模擬レースであろうと本気で走る3人。相変わらずスズカが先頭で逃げる。第3コーナーに差し掛かるタイミングで、スペシャルウィークが仕掛けた。が、フェイントだ。テイオーは動揺したものの、すぐに態勢を立て直し、スペシャルウィークの前に出て牽制する。

 

「スペのフェイントを交わすとは……、やるな」

「実戦のおかげでだいぶ慣れたようだ。さすがテイオー」

 

 最終コーナーを駆け抜け、最後の直線に入る。さあ勝負時だ。

 スズカはぐんぐんペースを上げてさらに逃げる。が、テイオーも負けてない。スズカに食らいつく。

 

「いいぞテイオー。残りのスタミナ全部ぶつけてやれ」

 

 スペシャルウィークも追い上げてきた。相変わらず凄まじい末脚だ。ひたすら逃げるスズカ、迫るテイオー、追い上げるスペシャルウィーク。

 

「さあて、誰が勝つかわからなくなってきたぞ」

 

 テイオーはジリジリとスズカとの差を縮めるがあと一歩及ばない。そこに並ぶスペシャルウィーク。スペシャルウィークもスズカに追いつけ追い越せと前を目指すが、思うように脚が伸びない様子だ。

 

 そのまま勝負がついた。一着は最後まで逃げ切ったスズカ。二着に今度はテイオーが入り、スペシャルウィークが三着になった。

 

「す、スズカさんやっぱり速いですね……」

「あともう少しだったのに……」

 

 悔しがるテイオーとスペシャルウィーク。一方でスズカは勝ったことより全力で走れた喜びや達成感に浸っているようだ。

 

「スズカさん、自分の世界に入ってますね……」

「でもなんかすっごい嬉しそう」

「惜しかったな、テイオー」

「あ、トレーナー。うん、あともう一歩だったのに」

「だがよくやった。正直、想像以上の走りだった」

「ホント⁈やった!」

「ただ、それと同時に次の課題も見つかったな」

「うーん、最後の追い込みとか?」

「ああ。スペシャルウィークの時もスズカの時も、あともう一歩で勝てたような状況だったろ。だが、本番であともう一歩は通じない。それはわかるな?」

「うん」

「そこをダービーまで重点的にやっていこう。スペシャルウィーク、サイレンススズカ、すまないがもう少し協力を頼みたい。できるか?」

「はい、もちろんです!」

「私でよければ喜んで」

「よし、休憩がてらドローンの映像を観るぞ。何か見えてくるかもしれない」

 

 アルチョムはタブレットを操作してドローンが撮影した映像を再生する。3人の走りを見ながらあれこれ意見を交換して、テイオーのトレーニングに反映していきダービーに臨むのだ。

 

 

 

 そんな様子をグラウンドの端から見る人影。樫本代理だ。隣には金髪のウマ娘が立っている。

 

「次の日本ダービー……、テイオーさんの実力を見せてもらいます。リトルココン、あれがトウカイテイオーです。よく見ておきなさい」

「あんなラジコン遊びと仲良しこよしで勝てるワケ……」

 

 樫本代理の隣に立つウマ娘、リトルココンは小さく呟いた。

 

 






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