元ロシア最強傭兵、祖国に棄てられて亡命したらトレセン学園のトレーナーになりました   作:武装田んぼ

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前話に引き続き、第19話の加筆編集したものになります。こちらは編集前と大きく内容が変わった部分はあまり無いため、最悪スルーしても問題ありません。

デモデキレバヨンデホシイナー


第20話 夏の終わり、夏の思い出

 

 

 8月も下旬に入ろうかというある日。

 トレセン学園近くの総合病院の出入口から出てくる2人。テイオーの足首はほとんど機能が回復し、歩いたり小走りぐらいなら問題ない。が、油断は禁物だ。特にウマ娘はそのパワー故に関節にかかる衝撃が人間の比にならないのはこれまでも言及してきた通りだ。現段階において、テイオーの足首はあくまでも機能回復が終わった段階であり、レースに耐えられる強度を取り戻すには先述した通りまだまだ時間がかかる。

 

「もう大丈夫じゃないの? トレーナー」

「さっき医者にダメって言われたばっかりだろ。下手に衝撃を与えてまた骨折なんかしたら二度と走れないぞ」

「うぅ……」

「ほら、はちみー買ってやるから、な?」

「わかった! ちゃんと安静にするね!」

 

 露骨に元気になるテイオーに呆れ気味のアルチョム。するとテイオーのスマホにLANEのメッセージが届く。

 

「あ、マヤノからだ」

 

マヤノ[やっほー! テイオーちゃん再来週の日曜日空いてる? 一緒にお台場行かない? トレーナーちゃんも来るからテイオーちゃんもアルチョムさん誘ってダブルデートいこー!]

 

「だってさ」

 

 スマホ画面を見せながら期待の眼差しでアルチョムを見るテイオー。

 

「予定を確認してからな」

 

 そう言ってアルチョムはスマホで予定を確認する。予定は無い。付き合ってやろう、そんな悪い話には聞こえない。もっとも、デートというより子連れの父親のような立ち回りになるであろうが。

 

「ああ、暇だ。待ち合わせとかはそっちに合わせるから適当に決めてくれ」

「やったー! トレーナーとデート!」

「デカい声で言うな! 周りの目を考えろ」

「あはは〜、トレーナーとお出かけなんて久しぶりだから楽しみでさ〜」

 

 瞳を輝かせて嬉しそうに耳と尻尾が動く。そんな様子を見ていると骨折直後の暗かったテイオーがここまで元気を取り戻してくれたことにアルチョムは心から安堵した。

 

 あの時のテイオーの様子はアルチョムにとってかなり辛いものだった。大切な担当が、苦しみ嘆いてる姿を見るのはかなり精神をもっていかれる。

 

 ふと、過去の自分でもここまでテイオーに感情移入ができたかどうか疑問になる。あの時も紛争に巻き込まれた難民の子供達を数えきれないぐらい見てきた。だが、ここまで精神をもっていかれた記憶は無い。

 あの時の自分が薄情だったのか、それとも対象がテイオーだからか。

 何にせよ、今の方が人間らしい感情を俺は持ち合わせている。

 

 それから10日程経ち、デート当日の日曜日。トレセン学園の校門前に現れたアルチョム。そこにはすでに3人が集まっていた。

 

 いつもはスポーツウェアの天野トレーナーも今日はバッチリとシャツとジーンズで決めてその爽やかさに拍車がかかっている。

 テイオーとマヤノもずいぶんと気合いを入れてきたようでテイオーはフリルのついた白のカジュアルブラウスにホットパンツが眩しいキュートな装いだ。マヤノはちょっと大人なブラックのシャツにオレンジのワンピースがよく似合っている。

 

「トレーナーさぁ、ボク達しっかりオシャレしてきたんだからもうちょっとさぁ……」

「シンプルでいいとは思うけどねぇ……」

 

 早速アルチョムのファッションチェックを始めるテイオーとマヤノ。

 オリーブドラブのTシャツにタンカラーのカーゴパンツという普段との差をあまり感じられない服装に2人は引っかかるようだ。テイオーはメガネをくいっと動かすような仕草をして眉をひそめる。マヤノは顎に手を当てて何か考えるような表情を浮かべた。

 

「服なんてのは場違いじゃなきゃいいんだよ。オシャレはしたいヤツがすりゃあいい」

 

 ファッションなんて意識した覚えがない。そんなことより優先すべき事柄がアルチョムには多いのだ。それにそこまでヤバいセンスをしているとも思ってない。なら、今のままで問題はない。

 

「はぁ〜、これだからトレーナーは……」

「こういうところで雑だから幻滅されちゃうんだよ?」

「余計なお世話だ」

 

 そんなやりとりをしつつ、一行はお台場に向かう。最寄りの駅から私鉄で新宿を経由し地下鉄へ。そして次の乗り換え駅で都営線からメトロへ。網の目のように張り巡らされた地下鉄は慣れれば便利だが、適応できない者には下手なダンジョンよりも強敵となる。

 

「アルチョム先輩、よく迷いませんね……」

「ニューヨークの地下鉄も似たようなもんだからな。覚えちまえばあとは感覚でわかる」

 

 ニューヨークの地下鉄なんて言っているが、実際はモスクワの地下鉄なのは言うまでもない。そしてモスクワの地下鉄は東京の地下鉄に負けず劣らずの複雑さを誇る。

 

「天野トレーナーも東京に来て長いんだから慣れたんじゃないのか?」

「それが、大学生の時からあまり地下鉄を使わなかったもので。お恥ずかしながらまだ時々迷うんです。最近はマヤノのお陰であまり迷いませんが」

 

 照れ臭そうに笑う天野トレーナーの横でマヤノがドヤ顔で胸を張っていた。

 かくも複雑な地下鉄を乗り換え、豊洲でゆりかもめに乗り換え、降り立つはお台場海浜公園駅。夏の日差しに東京都心とレインボーブリッジが輝き、8月下旬の蒸し暑さが身体を包む。

 

「んで、どこ行くんだ?」

「「映画!」」

 

 テイオーとマヤノが声を揃えて言う。どうやら観たい映画があるようだ。手を繋ぎながら2人は映画館に向かう。それを追いかける天野トレーナーとアルチョム。来る前からわかっていたが、今日一日中あの2人に振り回されるのであろう。気分は子連れの父親だ。

 そんなこんなで映画館に到着する。そしてテイオーとマヤノはある映画のポスターを指差した。

 

「「これ観たい!」」

 

 それはアメリカ海軍の戦闘機パイロットを描いたアクション映画のポスターだった。前作から実に36年ぶりに続編が公開され、その完成度の高さから圧倒的好評を得ている。

 

「でもマヤノ、これ観るの2回目でしょ?」

「こういう映画は何回観ても面白いからいいの!」

「はぁ〜、ボクも試写会のイベント行きたかったなぁ……」

 

 どうやらマヤノは父親の仕事のツテで試写会イベントに招かれたらしく、一足先に観ていたようだ。

 

「マヤノったら、イベントのあとずーっと自慢してくるんだもん。早く観たくてたまらないよ!」

「ほらほら、早くチケット取るよ!」

 

 2人に急かされてアルチョムは券売機に向かう。大人券と中学生券を購入し、いざスクリーンへ。

 

 

 

「「はーいうぇーいとぅーざでんじゃーぞーん!」」

「「らーいでぃーんとぅーざでんじゃーぞーん!」」

 

 ノリノリでメインテーマを歌うマヤノとテイオー。両腕を広げて戦闘機のように駆け回っている。

 

「すっごいカッコよかったでしょ!」

「うんうん! ミサイルを交わしたり、敵の戦闘機に乗ったり!」

「そして最後は愛する人の場所へ帰る……」

「「ロマンよね〜」」 

 

 感想を言いながらうっとりとするテイオーとマヤノ。

 

「ねぇ、トレーナーはどうだった? 面白かったよね!」

「そうだな……。ぶっちゃけ、どうやってあんな山の上まであのクソ重いミサイル運んだんだ、とか、そもそもあのミサイルの射撃レーダーはどこにあるんだ、とか、核プラントの爆撃だってアメリカ軍ご自慢のF35なりB2なり使えばいいだろ、とか、そういうことを考えてたが、敵基地からF14盗んで飛んだ辺りからどうでも良くなった。映画ってのはああいうのでいい。面白ければ小難しいことなんてどうでもよくなる。俺も泥臭い歩兵なんかより戦闘機パイロットになるべきだった。でもあれだな、Su57にはもう少し粘って欲しかったな」

「……とりあえず面白かったんだね」

「ああ、面白い映画だったよ。ああいう生き様ってのはいいな。俺も出来る限り現場で生きて行きたいものだ」

 

 あれこれ語っているが、なんだかんだで気に入った。が、やはりロシア人的感覚と言うかなんというか。結局はアメリカのプロパガンダ映画じゃないか、なんて思う部分もあった。敵国の兵器も全部東側だ(F14を省く)。

 なんて考えたりするが、アルチョムからみても面白かったのは事実だ。やはり派手なアクション映画は観ていて爽快だ。

 

 映画を観た一行は次に隣のショッピングモールへ。そこには昭和の街並みを再現したフロアがあり、テイオーとマヤノはそこに向かった。

 

 どこか懐かしい雰囲気の漂うレトロフロア。だが、テイオーやマヤノからすれば懐かしさより、ある種の〝エモさ〟を感じるもののようだ。

 天野トレーナーもそんな〝エモさ〟に浸っていた。が、アルチョムにはよくわからない世界だ。

 

 昔の日本の風景といわれたところでアルチョムの脳内に浮かぶのは富士山を背景にサムライやニンジャが走り回っている情景だ。軽く検索してみるとどうやら彼の祖国がソビエトと呼ばれていた時代の日本だとわかり、ようやく理解がついた。どこの国でも昔を懐かしむ風潮は常にある。ロシアでもソ連時代を懐かしむ人間は少なくない。それが良いか悪いかは別の話だが。

 

「駄菓子屋だ!」

「お菓子たくさんある!」

「こんなおもちゃあったんだね!」

「テイオーちゃん見て! F14のグライダー!」

「カッコいい!」

 

 駄菓子屋のラインナップに興味津々の2人。狭い店内に所狭しと並ぶお菓子やおもちゃは大人が見てもなぜかワクワクしてしまう。

 

「……でもコンビニの方がいろいろあるね」

「そうだね、お菓子とおもちゃはたくさんあるけど……」

「シュークリームとかタピオカミルクティーないの?」

「シャーペンとかモバイルバッテリーもないね」

「これだから現代っ子は……」

 

 駄菓子屋という以上、そしてその雰囲気を壊さないためにコンビニのような利便性は無い。そこが魅力の一つでもあるのだが、コンビニに慣れた2人からすると物足りなく感じるようだ。天野トレーナーの悲しみにあふれた愚痴がこぼれた。

 聞く話によると彼の地元では古くからやってる駄菓子屋が地元住民の協力で営業を続けており、地元で暮らしていた時は妹とよく訪れたとのこと。昔懐かしの駄菓子屋の魅力を彼女たちにも伝えたかったが、その目論見は外れたようだ

 

「ゲームコーナーだって!」

「マヤノ、勝負しよ!」

「いいよ! マヤ負けないから!」

 

 昔懐かしのピンボールやモグラ叩き、インベーダーゲームなど、今日ではまず見ないゲームがたくさん並ぶ。まず2人が向かったのはモグラ叩き。2人仲良くハンマーを構えゲームスタート。軽快なハンマー捌きで次々とモグラを叩いていく。そして制限時間が終わり、表示されたスコアは平均より高めだ。

 

「すごいな。前にやったことあるのか?」

「今日が初めてだよ。前にウマチューブでプレイ動画みたことはあったけど」

「これ結構面白かったね! テイオーちゃんもう一回やろ!」

「オッケー!」

 

 もう一度プレイする2人。天性の才能というものであろうか。ほぼ初見で平均以上のスコアを出すのはそうそうできることではない。そんな感心を抱きつつ、アルチョムもハンマーを手に取り、コインを投入する。

 

「お、トレーナーもやる気だね。お手並み拝見と行こうじゃん」

 

 ボクに敵うかな? と言わんばかりの目でこちらを見るテイオー。トレーナーとしての威厳をかけていざスタート。

 穴から顔を出すモグラをハンマーで殴る。最初はのんびりとしたペースだが、あっという間に追いつかなくなる。それでもどうにかハンマーを振り回し、制限時間終了。表示されたスコアは平均レベルだった。

 

「……やるねぇ、ボクには敵わなかったみたいだけど」

「今のは小手調べだ。敵の出方を探っただけだよ」

 

 それっぽい言い訳をして再びコインを投入。もう一度プレイするもスコアは思うように伸びなかった。その後も何度か挑戦したが、小銭が尽きたので試合終了。結局テイオーの記録を抜けずに終わった。

 

「俺はハンマーなんて原始的な武器は使ったことがない。これでも健闘した方だ」

「大人気ない言い訳だなぁ」

「黙ってろ」

「じゃあUFOキャッチャーやろ!」

「あいよ」

 

 次に向かうはUFOキャッチャー。最近流行りのキャラクターのぬいぐるみが並べられている。

 

「このちびかわのヤツほしい!」

「どれ、やってみるか」

 

 両替してきたコインを投入し、ゲームスタート。イマイチ感度の悪い操作ボタンに苦戦しながらもアームをぬいぐるみの上まで持ってきた。が、あまりにもやる気を感じさせない情けない掴みでぬいぐるみはするりとアームから抜け落ちた。

 

「あれ確実に掴んだだろ」

「そういうもんだよ?」

「次だ、次!」

 

 再びコインを投入するアルチョム。トレーナーとして、大人としての威信をかけて挑む。が、そんな姿を嘲笑うかのようにぬいぐるみはアームから抜け落ちた。

 

「コツは掴んだ」

「ホント?」

 

 強がるアルチョム。初めはドローンの操作に慣れてるんだから、すぐにコツを掴めると踏んでいたがそんなことはなく、想像以上の苦戦を強いられていた。

 

「最初からボクがやればよかったね」

「得意なら先に言ってくれよ」

「だってトレーナーやりたそうにしてたし」

「ここまで散財するなんて思わなかった」

 

 結局、痺れを切らしたテイオーが自力でぬいぐるみをとった。

 その後、再び寄った駄菓子屋で大人買いしたり、ファンシーショップを見たり、屋台グルメをお腹いっぱい楽しんだりでお台場を満喫した一行。気付けば空は茜色のグラデーションに染まっていた。

 

「おっと、そろそろトレセンに戻るぞ。門限があるだろ」

「えー、もうそんな時間?」

「まだまだ遊びたーい」

「子供みたいなこと言うんじゃねぇ。遅くなるとフジキセキが心配するだろ」

「ねえ、もう少しだけ海見てきていい?」

「ああ、いいぞ」

「わかった。マヤノ、行こ!」

 

 テイオーはそう言うとマヤノの手を引いてテラスに立つ。夕日に照らされたレインボーブリッジと東京都心が一日の終わりを彩っている。

 

「あのねマヤノ、プレゼントあるんだ」

「え、ホント⁈」

「うん、ボクが松葉杖使ってた時、ずっと手伝ってくれたじゃん? そのお返し」

「そんなのいいのに。でもちょー嬉しいかも!」

「はい、これ」

「開けていい?」

「うん!」

 

 マヤノに小包を手渡すテイオー。マヤノは包装を丁寧に解いて桃色の綺麗な箱を開けた。バラとひまわりがつけられたラグジュアリー品のような耳飾りが箱の中で輝く。

 

「テイオーちゃん……、これ……!」

「マヤノ、前に欲しいって言ってたでしょ!」

「うん! 大人っぽくていいなぁ〜ってずっと欲しかったの! テイオーちゃんありがと!」

 

 そう言うとマヤノはテイオーに抱きついた。困ったように笑うテイオー。その笑顔は夕日よりも眩しかった。

 良かった、マヤノとっても喜んでくれた! 

 テイオーはマヤノの満面の笑みを見て嬉しくなる。

 骨折により自由に動けない間、マヤノはずっとテイオーをサポートしてくれていた。それがどれほどテイオーにとって支えとなり、そして励みになったか。正直なところこんな耳飾りだけじゃ全然足りないぐらいだ。でも、今のテイオーに用意できるのはこれぐらいしかない。

 それにマヤノにとっては元気なボクが一番のプレゼントであり恩返しなのだろうから。

 そうなればちゃんとターフに戻って、いつかはマヤノと勝負しよう。

 テイオーはそう思い、マヤノの笑顔を見た。

 

「早速つけてみるね!」

 

 耳飾りをつけるマヤノ。バラとひまわりの暖色がマヤノの髪色によく似合っている。

 

「どう? 大人っぽくなった?」

「ちょー似合ってるよ、マヤノ! カイチョーみたいにキレイだね!」

「ふっふーん! マヤノ、もっと魅力的になっちゃった! トレーナーちゃんもこれでイチコロだね!」

 

 手鏡で自分の姿を見たマヤノ。嬉しそうにその場でクルリと回る。

 テイオーちゃんありがと! でもね、マヤはプレゼントより元気なテイオーちゃんが戻ってきてくれたのが一番嬉しいんだよ。

 そう思ったが口にはしない。テイオーちゃんだってそんなことわかっているだろうから。

 だから今は元気なテイオーちゃんと一緒に全力ではしゃぐんだ。二人にとって一生忘れられない思い出にしたいから! 

 

 トレーナーの元に戻ってくる2人。天野トレーナーは早速、マヤノの耳飾りに気づいたようだ。

 

「かわいい耳飾りだね。テイオーさんから貰ったのかい?」

「そうなの! ちょーかわいくて、ちょー大人っぽいでしょ!」

「うん、マヤノにとっても似合ってるよ。テイオーさん、ありがとうございます。ほらマヤノ、大切にするんだぞ」

「うん、宝物にするよ! テイオーちゃん大好き!」

 

 そう言ったマヤノはテイオーに再び抱きついて、今度は頬にキスをした。

 びっくりして固まるテイオーと全身で嬉しさを表現するマヤノ。

 

「あれ、テイオーちゃんびっくりし過ぎだよ〜!」

「だ、だって……」

「それとも唇の方がよかった?」

 

 いたずらな笑みを浮かべてテイオーに迫るマヤノ。こんな小悪魔なテクニックは一体どこで覚えたのやら。そんなマヤノに迫られたテイオーの顔が少し赤くなる。

 

「マ、マヤノ、さすがにそれは……」

「なぁ〜んてね☆」

「もぉ〜、マヤノー!」

 

 そう言ってテイオーもころころと笑った。ふと、テイオーはこうやってマヤノの笑い合う時間をかけがえのないものだと感じる。

 ボクってホントに幸せ者だな。マヤノにトレーナーに、みんなに。ボクができることはまだまだ少ないけど、せめてボクの想いはちゃんと伝えよう。

 そしてマヤノを真っ直ぐに見つめて心からの感謝を伝えた。

 

「マヤノ、いつもありがと。これからもよろしくね」

 

 不意を突かれたマヤノ。今度はマヤノの方が赤くなる。

 テイオーちゃんったらいきなりなんだから! マヤをドキっとさせちゃうなんて……! 

 テイオーの透き通るような蒼い瞳で真っ直ぐに見つめられたマヤノ。その時のテイオーはまるで王子様のようなカッコよさを身にまとっていた。

 でも、感謝しているのはこちらも同じだ。だからマヤノも同じようにテイオーに伝える。

 

「こっちこそありがとう!」

 

 夏の終わりにより固い絆で結ばれた二人のウマ娘は、茜色の穏やかな海と空と共に夏の終わりを彩っていた。

 

 






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