元ロシア最強傭兵、祖国に棄てられて亡命したらトレセン学園のトレーナーになりました 作:武装田んぼ
皆さまお久しぶりです。武装田んぼです。
安月給でコキ使われていたのが嫌になり転職活動始めたらパワハラ食らいましてね。やいのやいのと揉めておりましたがだいぶ時間が経ってしまいました。
大変申し訳ありませんが更新ペースは戻せそうです。
三月上旬のある日。
いつもの二人に加え、キタサンブラックがトレーナー室におり、3人の前には先程届けられたダンボール箱が置かれていた。
「この中にボクのぱかプチが……!」
「早く開けてみましょう!」
「今開けるから落ち着け」
そう言い、アルチョムはカッターで箱を開封していく。すると、同封された手紙が出てきた。製作会社からのメッセージだろうか。アルチョムは先にそちらを読んでみる。
「トウカイテイオーさん並びに、アルチョムトレーナー殿へ。ぱかプチのオファーを快諾していただき誠に感謝いたします。元々……(以下略」
その手紙には、二人への感謝と今後の活躍を期待する内容が書かれていた。読み終えた手紙を折りたたみ、箱を開ける。
そこにはクッションとビニール袋に包まれて丁寧に梱包されたテイオーのぱかプチが入っていた。
「「おおーーっ!」」
それを見るなり、目を輝かせて感嘆の声を上げるテイオーとキタサン。早速テイオーは自分のぱかプチを箱から取り出した。青と白の勝負服姿のテイオーをモデルにしたぱかプチをテイオーは両手で持ち、自分の胸の前にもってくる。
「見て見て! ボクそっくりでしょ!」
ぱかプチの両腕をパタパタと動かしながら、はしゃぐテイオー。随分と上機嫌だ。
「ぱかプチのテイオーさんもカッコいいです!」
「ふっふーん、トーゼンでしょ? なんたってボクのぱかプチなんだからね!」
わいわいとぱかプチを見ながらはしゃぐ二人。
「俺にももう少し見せてくれ」
「はい、どーぞ」
アルチョムもそのぱかプチを手に取り、しげしげと眺める。
「思ったより作り込まれてるもんだな」
「ですよね! 特にこの辺とか!」
「すごいな。完全にコピーしてやがる」
「あとここも見てください」
「どれどれ……」
アルチョムとキタサンはテイオーのぱかプチを持ちながら何やら盛り上がっている。いくらぬいぐるみとはいえ、やはり自分とそっくりな姿であるぱかプチ。
年齢差はあるが異性であるアルチョムがずっと見ていると意識すると何故か恥ずかしさが込み上げてきたテイオー。
「もーっ、トレーナーさっきからいやらしー目で見過ぎ!」
そう言い、頬を少し赤らめたテイオーはアルチョムの手からぱかプチを奪う。
「おいおい、俺はただよく作り込まれてるなと感心していただけだ」
「ボクにはそう見えたの!」
「……はいはい、もう返すからいいだろ?」
アルチョムはほぼ無意識だったが、相手は年頃の少女だ。何か気に障るようなものがあったのだろう。そう考え、宥めるように話す。
「ところで、そのぱかプチはどこに置いておくんですか?」
テイオーが抱き抱えるぱかプチを見ながらキタサンが尋ねる。
「そういや考えてなかったな」
「んー、カイチョーに見せてから考える!」
そう言い、テイオーはぱかプチを持って生徒会室に行ってしまった。
その後、テイオーのぱかプチは生徒会長からの強い要望により、生徒会室に置かれることになる。テイオーはルドルフに自分のぱかプチを気に入ってもらえてかなりご満悦だが、アルチョムは職権濫用では? と小さな疑念を抱いてしまう。が、過去の経験から見ればまあ些細なことだ。むしろ普段大人びているルドルフの年相応な一面と言えるだろう。
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いつもの二人はトレーニングのため、グラウンドに向かっていた。すると、トレセンの制服が十着ほどハンガーにかけられて並べられた台車が業者の人に押されて二人の前を横切った。
「ごめんなさい通ります!」
「うわ、危ねぇ!」
慌てた様子で台車を押しながら、業者はエントランス奥の廊下へ向かっていった。
「トレセンの制服だったね」
「ったく、急いでんのはわかるがちゃんと前見やがれ」
そうぼやいた直後、台車がカーペットの段差に引っかかり派手に転倒してしまった。
「ほら見ろ。慌てるとロクなことがない」
呆れ顔のアルチョム。だが、隣にいたテイオーはすぐにそこへ駆け寄り、台車と共に転倒してしまった業者の女性に声をかけていた。
「大丈夫?」
「す、すいません……!」
スーツについた埃を払いながら申し訳なさそうに何度も頭を下げる女性。テイオーは女性にケガがないことを確認すると、台車を起こし、落ちた制服を拾い始めた。アルチョムも遅ればせながら制服をハンガーラックにかけていく。幸い、ビニール袋に包まれていた為か、制服に汚れた様子はなく、目立ったシワも見られなかった。
「んで、そちらは何用で来たんだ?」
「あ、あの、こちらに制服を卸している者です。本日は理事長様が話していた新しい制服の案をいくつか持って来たのですが、時間が遅れてまして……」
話によると、トレセン学園の制服のバリエーション案が完成し、今日秋川理事長にお披露目予定であるが、途中で渋滞に捕まってしまい、さらに広い敷地と建物が並ぶトレセン学園内で迷ってしまったとのこと。
「転職して初めての大仕事なのに失敗したらどうしよう……!」
「じゃあボクがこれ運んであげるよ!」
「そ、そんな……!」
「いいっていいって! ほらこっちだよ!」
テイオーは台車を持つと、スイスイと動かしながらあっという間に理事長室に向かっていく。そして。
「理事長さーん! 制服持って来たよ!」
理事長室のドアを開けると、そこには秋川理事長とたづなさん、そしてシンボリルドルフにエアグルーヴがいた。
業者の女性は真っ先に秋川理事長の方へ行き、頭を下げて名刺を渡しつつ、何度も頭を下げるが、秋川理事長は君も制服も無事なら何も問題はないと優しく諭していた。
「あ! カイチョー!」
「おお、テイオーか。どうしたんだ?」
「なんか制服運んでる人いたから手伝ってたの。何かあるの?」
「うむ、トレセンの制服に新しいバリエーションを考えていてね。よければテイオーも見ていかないか?」
「いいの⁈ やったー!」
喜ぶテイオーの横で腕時計を見るアルチョム。トレーニングの予定は組み直すべきだろう。そう考え、タブレットをいじる。
そんなアルチョムを尻目に、テイオーは並べられた制服を見ていた。
まず出されたのはカーディガン。元々ブラウンとベージュ、クリームホワイトの三色だったが、それに加え、ダークグレー、グレー、ピンクなども追加してみてはどうかとなり、今日持って来たとのこと。
次にセーター。今までは紺色の一色のみであり、新たにブラウンとクリームホワイトを追加予定とのこと。
「かわいいなぁ! 早く着てみたい!」
「ジャージ姿だろうか」
「着替えてくる!」
「あっ、バカ! トレーニングだろ……、行っちまった」
肩をすくめ、呆れ顔のアルチョム。
しばらくして、制服姿のテイオーが戻ってきた。早速、ダークグレーのカーディガンに袖を通す。
「ねぇどう? かわいい? かわいいよね?」
両手をいわゆる萌え袖にしながら、アルチョムの前でポーズを取るテイオー。
「おぉ、似合ってるじゃないか」
「なんか反応地味」
「うるせぇ」
ルドルフとエアグルーヴもセーターを試着していた。
「おお、これは良いな」
「はい、それに前のより動きやすいです」
どうやら気に入ってもらえたようだ。業者の女性もホッとしたような顔を見せる。
「気に入っていただき何よりです」
「ん? これは?」
テイオーが手にした制服。上はいつものセーラー服だが、下はスラックスになっている。
「生徒からパンツスタイルの制服が欲しいと言う要望があってね。試しに作ってもらったんだ」
「へぇー! 早速試着しよっと!」
綺麗にかけられたスラックスを手に取るテイオー。サイズを確かめて尻尾の穴を確認する。
「トレーナーは出てって!」
「はいはい」
テイオーに追い出され、アルチョムは廊下へ。制服か。義務教育の時は行事やら何やらの時に着たような気はするがよく覚えてない。大体は私服だった。その私服もあまり質の良い物ではなかったのはよく覚えている。
まともに制服を着ていたのは軍に入ってからだった。普段は野戦服だが、お偉いさんが来た時やパレードの時は空挺軍の制服を着たもんだ。あの制服を着ると気が引き締まり、兵士としての覚悟や使命感を強く抱いた。俺はロシア軍の精鋭部隊たる空挺軍の兵士なんだぞ、と見せつけるように胸を張っていた。
そんなことを思い出すが、二度とあの制服に袖を通すことはないだろう。あってたまるか。
「トレーナー、もういいよー」
テイオーに呼ばれ、理事長室に戻るアルチョム。ドアを開けると、スラックスに着替えた3人がいた。
「どう? トレーナー?」
「水兵みたいでいいんじゃないか?」
「それってカッコいいって意味?」
「まあそんなところだ」
スラックススタイルを着たテイオー。キュートな印象を受けるスカートと違い、スラックスを履いた姿はスマートでカッコよく見える。ただ、アルチョムとしてはどうも水兵にしか見えない。まあトレセンの制服であるセーラー服は元々水兵が着ていた服であるし先祖返りというものかもしれない。
「これ動きやすいね!」
スラックスを履いたテイオーが元気に跳ね回る。スラックスとてやはり履くのはウマ娘。丈夫で動きやすい素材が使われているようだ。
「ボク、明日からこれ使いたいぐらい!」
「ありがとうございます! この素材は弊社開発部の長年の研究の賜でして、気に入っていただき大変恐縮です!」
嬉しそうに頭を下げる女性の担当者。
するとそんな様子を隣で見ていた秋川理事長は勢いよく扇子を広げ、笑顔で口を開いた。
「採用! 本日、そちらが持ってきた全ての案を新たな制服として採用するっ!」
「詳細は改めて事務の方からメールを送らせていただきます。ご確認をお願いしますね」
たづなさんはその隣で女性から受け取った書類に何か書き込みながら、事務的な話を進めた。
「あ、ありがとうございます! ありがとうございますっ!!」
何度も深いお辞儀をしながら秋川理事長の両手を握る女性。その顔に先程エントランスで台車を倒した時の絶望感は欠片も見られず、自分の仕事に達成感を覚え、強いハングリー精神と共に前へ進もうとする意志が伺えた。
そんな姿に、かつてトレーナーと言う職を目指した時の自分をふと重ねるアルチョム。
結局は仕事だ。所詮は明日の飯を食う為に必要なことでしかない。だが、それでもその仕事が世の為人の為になるなら、そしてそれで飯が食えるなら、それより素晴らしいことは無いだろう。彼女の姿はそんなことを考えさせられた。
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