元ロシア最強傭兵、祖国に棄てられて亡命したらトレセン学園のトレーナーになりました 作:武装田んぼ
書き溜めが尽きました。更新頻度がクッソ低下します。申し訳ありません。
5月中旬。ゴールデンウィークの直後から慌ただしく準備を始めて行われる春のファン感謝祭。ファン感謝祭と銘打っているが、模擬店などの出し物より競技や模擬レースなどが多く、どちらかと言えば体育祭に近い。
去年もなんだかんだでテイオーは生徒会のヘルプとして忙しなく動いていたが、アルチョムは勝手を知らないので他の教員と一緒に雑作業していた。今年もそうなるだろうと思いながらトレーナー室に向かっていると、テイオーがやってきた。
「トレーナー! カイチョーから今年も手伝ってほしいって言われたんだ!」
「へぇ、良かったな。がんばってこいよ」
いつものような対応だ。
「んでさ、トレーナーも来てくれない?」
「なんで」
「思ってた以上に大変なの! だからトレーナーも手伝ってくれる?」
そう言いながら上目遣いでこちらを見てくるテイオー。アルチョムはこれを断れる人間ではない。
「……ああわかった。先に他の先生に連絡することがあるから少し待ってろ」
そう言い、手短に連絡を済ませて廊下で待機していたテイオーの元へ。
「で、俺は何すりゃあいい?」
「とりあえず見て回って、困ってる人がいたら手伝う!」
「はいよ」
「あ! キタちゃんも呼ぼうっと!」
テイオーはスマホを取り出すと、キタサンブラックに電話する。すぐにキタサンが現れて駆け寄ってきた。
「生徒会の皆さんのお手伝いですね! わかりましたっ!」
「さすがキタちゃん!」
キタサンも加わり見回り開始。だが、案の定というかなんというか、テイオーとキタサンは思いっきり楽しんでいるようにも見える。そんな3人が最初に訪れたのは屋台コーナー。模擬店が並び、軽食などの販売を行なっている。
「いい匂いですね!」
「うんうん! お腹空いてくるよ!」
「見回りはどうした」
そんな会話を交わしながら歩いていると、困った顔のナイスネイチャがいた。
「おや、ナイスネイチャ君。どうやらお困りのようだね」
「あらテイオーじゃない。ところでなんなの今日のキャラは」
「おっほん! カイチョー代理であるぞ!」
「……はいはい、わかったわ。なら会長代理さん、我がチームカノープスの屋台が想像以上に盛況なのです。お客さんの誘導に困ってまして、力を貸してくれませんか?」
「うむ、了解した! んでさトレーナー、行列の誘導ってどうすりゃいいの?」
「おい会長代理」
屋台の前に行列が出来ているが、特に誘導もなく並んでいる為、後端が不明瞭かつ道を横断する形で形成されている。まずは列をどこに伸ばすかだ。アルチョムはテイオーとキタサンに指示し、列を道の端に寄せて一定人数で折り返し蛇行させる。あまり伸ばすと隣の屋台の邪魔になってしまうのだ。また、ネイチャにはポールパーテーションを持ってきてもらい、簡単な誘導路を作る。これでだいぶ改善された。
「いや〜、助かりました〜」
整理された列を見ながらマチカネタンホイザが感心したように言う。
「トレーナーこういうのやったことあるの?」
「昔中東で難民を相手にした時にいろいろあってな」
「へぇ〜」
中東では戦禍を逃れるため、故郷を追われた難民を嫌というほど相手にしてきた。無秩序に集まった群衆は動きが予想できない。だからこそ、場合によっては銃を突きつけて並ばせる。そんな経験を思い出した。幸い、今は銃を用いずとも群衆の整理ができる。ありがたいことだ。
チームカノープスの問題を解決し、生徒会代理としての務めを果たしたテイオー。3人はまた、見回りを始める。
「カノープスの屋台で売ってたもつ煮美味しいね!」
「味がしっかり染みてて、本当に美味しいです! 父さん母さん、お弟子さんのみんなにも食べさせてあげたいなぁ」
ネイチャ達からお礼としてもつ煮をもらった3人。よく煮込まれた具は舌の上でとろけるほど柔らかく、ちょうど良く染み込んだ出汁の旨味を味わえば箸が止まらなくなる。
日本の学校行事というのはこんなモノを売るのかとカルチャーショックを受けるアルチョム。日本に来て早4年。まだまだ日本には知らないことがある。
「美味しかったね、キタちゃん!」
「はい! おかわりを貰いたいぐらいです!」
「おかわりもいいけど、今度は甘いものも食べたくない?」
「いいですね!」
もつ煮を平らげたテイオーが目をつけたのはクレープの屋台。甘い匂いを漂わせるその屋台にも甘味に誘惑された人だかりが出来ていた。
そんな人だかりの中に見慣れた二人が。マックイーンと相田トレーナーだ。松葉杖で歩くマックイーンを優しく介抱しながら、仲良く回っていたようだ。
「あ! マックイーンじゃん、どしたの?」
「あらテイオーさん。相田トレーナーからせっかくの感謝祭なのだから一緒に楽しもうと言われまして。先程からいろいろ一緒に見ておりましたの」
「へぇ〜、もしかしてデートってやつ?」
「そ、そういうものではありませんわ!」
いたずらな笑みを浮かべながら耳打ちするテイオーに、頬を赤らめながら否定するマックイーン。
この前マックイーンと一緒に温泉行ったとき、マックイーンも相田トレーナーに特別な感情を抱いていることをテイオーは聞いていたようだ。そんなマックイーンをテイオーはいつもの調子でからかう。
そんな恋バナ(?)に花を咲かせていると、クレープ屋台の方からキタサンの絶望したような声が聞こえてきた。
「ええっ! もうハニーアイスクレープの材料無いんですか⁈」
そんな声を聞いたテイオー。自分が生徒会代理という立場であることを思い出したのか、クレープ屋台のウマ娘に話しかける。
「おっほん! お困りのようだね?」
「テイオーさん、そのキャラは何者ですの?」
「あ、テイオーちゃん、あのね、クレープの材料が無くなっちゃいそうなの。こんな売れるなんて思ってなかったから……」
クレープ屋台でエプロンをつけた芦毛のウマ娘、バイトアルヒクマが困り果てた顔で言う。
「誰かに買い出しに行ってもらおうと考えたんだけど、みんな忙しくてそれどころじゃないのよ」
その後ろから生地作りに忙殺されているタクティカルワンが言った。
「よし! ならカイチョー代理たるボク達が買い出しに行ってこよう!」
「ホント? ありがとう、お礼は絶対するから! あ、あとこれお金!」
嬉しそうに尻尾を動かしながらバイトアルヒクマはかわいいがま口財布をテイオーに手渡す。
「ごめんねテイオーちゃん、すっごい助かるよ!」
「カイチョー代理に任せなさい! パパーッと行ってくるよ!」
「待っててくださいね! すぐに買ってきます!」
「おいマジかよ」
元気にトレセンを飛び出した二人を追って、アルチョムもトレセンを出る。
テイオー達はトレセンから最寄りのスーパーマーケットへと向かった。緑のメインカラーに若葉をイメージしたロゴ。どこにでもある平均的なスーパー。テイオー達はショッピングカートの上下にカゴを乗せ、頼まれたメモを見ながら店内を動き回る。
「えーっと、薄力粉に牛乳と砂糖と卵とバターだから……」
商品棚に陳列された薄力粉を次々とカゴに入れるテイオー。キタサンは砂糖の袋を段ボール箱ごと持ってきてカゴに入れた。その光景を隣で見ていたバイト店員が勘弁してくれと言いたげな顔でバックヤードに向かっていく。
「じゃあ次は牛乳と卵だね」
卵コーナーから卵パックを次々とカゴに入れているとカット台車に牛乳やヨーグルトなどの乳製品を乗せた店員が前からやって来た。
「牛乳もらいますね!」
キタサンが店員に一言断り、牛乳パックが1ダース入ったクレートをカット台車から直接取る。
「牛乳それで足りる?」
「もう一個貰います? でも余ったらどうするんですか?」
「足りなくなるよりマシだよ。それにみんな牛乳好きだからすぐなくなるって」
「そうですね。店員さん、もう一つもらいます。あ、バターもください!」
そして牛乳をさらにもう1クレート、無塩バターを段ボールごと台車から取り、カゴに入れる。店員はその様子をまるで山賊に襲われた行商人のような顔で見ていた。そんな店員にアルチョムは頭を下げて断りを入れる。
「じゃあこれでクレープの材料はオッケーだね」
「次はハチミツとアイスクリームですね」
「あとフルーツ缶も買わなきゃ」
メモを見ながらテイオーとキタサンは冷凍食品コーナーへ。
「あ、トレーナーはハチミツたくさん持ってきて!」
「たくさんってどれぐらいだよ」
「とにかくたくさん!」
買い占めろとでもいうのか。アルチョムは言われるがまま、ジャム・ハチミツコーナーへ。陳列棚にずらりと並ぶハチミツ。
「どれ買えばいい……?」
種類が豊富なのは素晴らしいが、そのぶん値段もピンキリだ。あんまり安いのはどうかと思うが、高級品は手が出しづらい。とりあえず目についたハチミツを手に取った。ウクライナ産ひまわりハチミツ。安くはないが高くもない。
「これでいいな」
ハチミツのボトルを6本ほど抱えてテイオー達の元へ戻る。
「これでいいか?」
「うん。カゴに入れといて」
薄力粉、砂糖、牛乳、バターが既に山積みになっているカゴ。流石にこれに入れるのは無理だ。仕方なく、アルチョムは新たなカゴを持ってきてそれにハチミツを入れた。テイオー達はアイスコーナーから大容量アイスクリームをいくつもカゴにいれ、キタサンがフルーツ缶をまた段ボールごと持ってきた。
「これでオッケー!」
そうして山積みのカゴを四つ、2台のカートを使ってレジに向かった。
その日、大学生の田辺君はいつものようにバイトをしていた。普段は総菜部門での作業だが、レジ部門に急病で休んだ人が出てしまい、代打として彼はレジに立っていた。どうせいつも通りにレジ打っていれば終わるだろう。そんな浅はかなことを考えながら彼は5番レジに立っていた。だが、田辺君の前に現れた2人のウマ娘が彼の浅はかな予想を瓦解させる。山積みのカゴ四つをカウンターに置き、元気にお会計お願いしまーす、と声をかけてきた。彼はその瞬間、急病で休んだパートのおばちゃんと自分の運の悪さを恨んだ。
俺が一体何をしたというのだ。
なぜ俺の場所にこのウマ娘達は来たんだ?
だが、店員という立場でそれを口にすることは許されない。ただ黙って精算を行うことしか許されないのだ。
気の遠くなるような時間がかかった。その間、ウマ娘2人はずっとスマホをいじってるし、その後ろにはクッソいかつい外国人が睨むような目でこちらを見ている。
一体何なんだ。今の状況は。
ようやく会計を終え、その金額は2万円を超えた。アホみたいに重いカゴに15枚ほどレジ袋をねじ込んでカートに乗せ、タッチパネルを操作してセミセルフレジに会計を表示させる。ここまでくるとレジ袋代だけで75円だ。
一瞬このバイトを辞めようかとも考えたが、最近入ってきた女子高校生の後輩のことが脳裏に浮かぶ。
少なくともその後輩が辞めるまで彼はバイトを続けるだろう。
アホみたいに重いレジ袋を抱えるテイオーとキタサン。アルチョムですらやっとの重さのレジ袋を抱えてテイオー達はトレセンを目指す。
てくてくと先を急ぐテイオー達を見ていると、つくづくウマ娘達のパワーというものが桁外れなんだと関心する。
そんなこんなで終えた買い出し。
「クマちゃーん、戻ったよー!」
「テイオーちゃんにキタちゃん! ありがとう! 本当に助かったよ!」
まるで救世主が現れたかのような表情を見せるバイトアルヒクマ。テイオー達のおかげでクレープの品切れと言う危機は避けられた。
「テイオーちゃん、キタちゃん、はいこれ! 今回のお礼ね。あと生徒会の人たちにもテイオーちゃん達のおかげですっごい助かったって言っておくね!」
そして手渡された千円札とハニーアイスクレープ。
「おっほん! またいつでも頼るとよいぞよ〜!」
報酬ももらいご満悦のテイオー。クレープを食べながら一旦休憩。
「いや〜、よかったですね。クレープ品切れにならなくて」
「そうだね、キタちゃんのおかげだよ」
「ええっ、私はテイオーさんの手伝いをしただけですよ!」
「だってキタちゃんがいなかったらあんなに買えないもん。ボクだけじゃなくて、キタちゃんもトレーナーもいたから、できたことだからね」
そう言い、テイオーはキタサンとアルチョムを見る。例えウマ娘とて、一人でできることは少ない。が、2人ならば、できることは大きく増え、そこにアルチョムのような経験豊富な大人が加わればその可能性は無限大だ。
「さすがテイオーさんです!」
「さて、そろそろ見回りの再開だよ!」
「はい! バリバリ行きましょう!」
休憩を終えまた見回りへ。3人は次にグラウンドの方へ向かった。そこにいたのはリトルココン。テイオーは彼女に話しかける。
「リトルココン久しぶり!」
「ん、テイオー? アンタ何してるの?」
「カイチョー代理としての見回りだよ! 困ったことがあったら言ってね!」
「ならちょうどよかったわ。障害物レースに出場できるトレーナー探しているの。誰かいる?」
「トレーナー! 出番だよ!」
「マジかよ」
トレーナー障害物レース。一昔前、あるウマ娘の提案から始まったこの競技。担当トレーナーの太り気味な体型を心配したあるウマ娘が、痩せさせる為に提案したと言う。トレーナー想いの良いウマ娘である。当初はただの200メートル徒競走であったが、面白そうだからという理由でハードルや平均台やネット潜り、挙げ句の果てには早押しクイズが追加され、今では10種類の障害を超えて一位を目指す1000メートル障害物レースと変貌した。
新兵訓練ですらここまでやらんぞ。なんて思うアルチョム。既に17人のトレーナーがエントリーしており、あと1人だけ足りないようだ。
「別に17人で走りゃいいだろ。俺が出る必要あるか?」
なんて愚痴をこぼすアルチョムにテイオーはこう聞く。
「トレーナーもしかして自信ないの?」
「……どこで出走登録すりゃあいい? 俺が戦場で培った実力を見せてやる」
その瞬間アルチョムの目の色が変わり、ただでさえ威圧感を放つ目つきがより険しくなる。
サクッと出走登録を済ませ、集合場所へ。アルチョムが現れると、周りのトレーナー達の表情が強張る。そこにいた誰もが彼のただならぬオーラを感じたのだ。
《出走登録をしたトレーナーの皆さんはスタート位置へ移動してください》
そして集まったトレーナー達。自らの実力に自信を持った猛者達だ。そしてスタートラインに置かれたゲートに入る。ウマ娘達と同じようにスタートするのだ。
《さあ、ゲートが開きました! 全トレーナー綺麗なスタート!》
「ハァ、ハァ……、ハッ! 見たかァ! これが、ゼェ……、俺の実力だァ!! Ура!!」
息を切らしながら、ゴールで右手を突き上げるアルチョム。ほぼ全ての障害物をフィジカルでゴリ押し、見事勝利を掴んだ。
「トレーナーすごーい!」
「カッコよかったですよー!」
そんな2人の黄色い声援に笑顔で返すアルチョム。
「トレーナーやるじゃん!」
「当たり前だ。あんなん戦場に比べたら屁でもねぇ」
《出走トレーナーの皆様、お疲れ様でした。上位5名のトレーナー方、ウイニングライブがありますので、集合場所にお集まりください》
予想外のアナウンスが流れた。
「は⁈」
「トレーナー、いってらっしゃい!」
「ウイニングライブも頑張ってください!」
「ちょっと待て、話が違う」
「トレーナー勝ったじゃん」
「そうです! ウイニングライブは勝った人の特権なんですよ?」
「負けて悔しい思いをした人達の前でそんなこと言える?」
「好き勝手に言いやがってチクショウ」
全力で断わろうとしたアルチョムだが、テイオーとキタサンにより阻止される。
「罰ゲームじゃねぇかこれ」
その後のウイニングライブで披露されたアルチョムのダンスはある意味で伝説となった。
その後も手伝っているのか楽しんでいるのかよくわからないまま、テイオー達に振り回されながら感謝祭は閉場時間となる。
一通りの撤収作業を終えてトレーナー室に戻る。テイオーはルドルフから呼ばれたようで先に2人で戻っていた。
「今日はいろいろ手伝ってくれて感謝する。ご苦労だったな」
「そんなことないですよ! 私はお助けキタちゃんですから当然です!」
胸をどんと叩いてお任せくださいと言わんばかりの笑顔を見せるキタサン。テイオーもキタサンも、いざというときの行動力は目を見張るものがある。だが、同時に後先を考えないという点も共通だ。最近の様子を見ていると、これからキタサンもトレーニングなどで指導する場合が増えるかもしれない。やはりここは指導者たる自分がどうにか導く必要があるだろう。
「どうしました? 私の顔に何かついてます?」
そんなことを考えながらキタサンを見ているとキョトンとした顔で尋ねてきた。
「いや、キタサンとテイオーの共通点を考えていてな。キタサンもテイオーと同じでいざという時の行動力は素晴らしい」
「ありがとうございます! お節介になるかもって思っても結局体が動いちゃうんです。その方が後悔しない気がしますから!」
「それは素晴らしいことだ。ただ傍観するだけのヤツなんざいてもいなくても変わらない。ちゃんと行動して、誰かのためになりたいという気持ちは大切にしろ。それはいつか必ず、自分を助ける」
「はい!」
「だがもう一つ言わせてくれ。これはテイオーにも言ったことだが、後先考えずに行動するのは避けるべきだ。行動するなとは言わない。ただ、行動する前にどのような行動がどのような結果をもたらすか、それを考えて欲しい。そうすれば、的確な行動とより良い結果を得られるだろうからな」
「なるほど……、勉強になります!」
そんな会話をしていると、テイオーが戻ってきた。
「カイチョーにめっちゃ褒められちゃった!」
上機嫌なテイオー。
「よし、戻ったか。じゃあ明日の予定を話すぞ」
「トレーナーもっと褒めてよ〜」
「何回褒められたら気が済むんだ」
「ボクは褒められて伸びるタイプだからね!」
「はいはい、流石はテイオーだ」
「心がこもってない。やり直し」
「おい勘弁してくれ」
「じゃあはちみー買って!」
生徒会室。
「会長、撤収作業はほぼ終了しました」
エアグルーヴがタブレットを見ながらルドルフに報告する。
「うむ、ご苦労だった」
「会長の采配のおかげです。それに、テイオーも今日はよく動いてくれました」
「そうだな。テイオーはよくがんばってくれたよ。いろんな場所から感謝の言葉が届いている」
「今日ばかりはテイオーのことを叱れません」
「もう少し優しくしてもいいんじゃないか?」
「会長は甘やかし過ぎです。貴女がテイオーに何か注意している場面を私は見たことがありません」
「うぅむ、努力しよう……」
エアグルーヴからの小言にばつの悪そうな顔をするルドルフ。自分の立場を考えればエアグルーヴの言うことはもっともだ。
「ところでエアグルーヴよ。来年で私たちは卒業だな」
「そうですね」
「次の生徒会長、誰を選ぶべきだと考える?」
「……候補はいますが、決めるとなると難しいですね」
「その中にテイオーはいるか?」
「一応いますが……。まさか……?」
「安心しろエアグルーヴ。別に決めたワケじゃない。ただ、今日の働きを見ていると素質は十分だと思っただけだ」
「会長の言いたいことはわかりますが、ここはやはり生徒の総意で決めるべきです」
「もちろんその通りさ。ちょっとそう感じただけだよ」
そう言うとルドルフは窓から夕日に照らされたグラウンドを眺める。撤収作業を終えたウマ娘達がちらほらと見え、青春の思い出を作っている。
その中にテイオーとキタサン、アルチョムがいた。どうやら彼にはちみーを奢ってもらったようで、テイオーとキタサンが嬉しそうにしている。そんな3人の姿をルドルフはいつまでも見守っていた。
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