元ロシア最強傭兵、祖国に棄てられて亡命したらトレセン学園のトレーナーになりました   作:武装田んぼ

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皆さまお久しぶりです。
この作品も連載開始からついに一年となりました。皆さまのご愛読に心から感謝申し上げます。
当初は一年以内に書き終える予定でしたがまだまだ続きそうです。もうしばらくお付き合いくださいませ。



第47話 揺れるトレセン学園

 

 

 アルセニーと再会した翌日。

 いつもより元気のないアルチョムはトレーナー室で頭を抱えながらパソコンで作業をしていた。

 

「トレーナー、おっはよー! って酒臭っ!」

 

 露骨に顔をしかめるテイオー。

 

「……あー、テイオーか……。おはよう。……そんなに匂うか……?」

「ウマ娘の鼻が利くことは知ってるでしょ? てか多分フツーに臭いよ?」

 

 アルチョムは現在絶賛二日酔い中だ。いくら酒に強いといえど限界はあるし、深夜まで飲んでいたせいでほとんど寝てない。が、そんな理由で欠勤しようものなら、たづなさんや樫本代理になんて言われるかわかったものではない。

 

 気合いと根性というなんの根拠もないものを頼りに、どうにか出勤した。なお、アルセニーの方はアルチョムの自室でひっくり返っている。

 

「……シャワーは浴びたし歯も磨いたぞ」

「ホントに? この距離でも酒臭いよ? トレーナーどんだけ飲んだのさ」

「……覚えてない」

「いくらなんでも飲み過ぎでしょ」

「……行方不明の戦友に四年ぶりに会ったんだぞ。……飲み明かすのは当然だろ」

「なら休めばいいじゃん。今日日曜だし」

「……もうトレーニングの予定入れちまったし、たづなと樫本にもそう伝えた以上休めない……。ぅぇ……」

 

 いくら二日酔いとはいえ上司を呼び捨てである。幸いテイオーしかその場にいなかったが、万が一聞かれようものなら二日酔いすら吹き飛ばすお叱りが待ち受けていたことであろう。

 

「ぁあ〜……、ダメだ……。テイオー、すまん……。やっぱり午前中は自主練にしてくれ……。メニューはこれだ……」

 

 そう言い、テイオーにタブレットを渡す。そのままヨロヨロとソファまで移動し、倒れるアルチョム。テイオーは渡されたタブレットの画面を見ていたが、倒れたアルチョムを見て近付く。

 

「トレーナー、大丈夫……?」

「……あぁ」

 

 普段の様子からは全く想像できない弱々しい声で返ってきた。この様子だとしばらく起きないだろう。テイオーはそのまま自主練に入った。

 

 

 

 お昼のチャイムが鳴り、テイオーは一旦トレーナー室に戻ってくる。

 

「お、戻ったかテイオー。さっきはすまなかったな」

 

 ある程度回復したのか、アルチョムはデスクワークをしていた。

 

「トレーナーもう大丈夫?」

「本調子じゃないが仕事はできる。午後のトレーニングは付き合うぞ」

「はーい。そういやアルセニーさんは?」

「まだ部屋でぶっ倒れてんじゃないか? ちょいと呼んでみるか」

 

 アルチョムはスマホを取り出し、アルセニーを呼び出す。しばらくすると彼が起きたのか、電話越しに何か聞こえてきた。それに対し、アルチョムはロシア語で返す。テイオーは二人の会話に聞き耳を立てるが何と言っているのかさっぱりだ。2分程の電話の後、アルチョムはスマホを机の上に置いた。

 

「準備したら来るってよ」

「トレーナーの言ってる言葉全然わかんなかった」

「ロシア語だからな。英語よりずっと複雑だぞ」

「ロシア語ってそんなに難しいの?」

「この前知ったんだが、世界的に見ても習得が難しい言語らしいな。生まれた時から使ってたからそんな風に思わなかったが」

「そういえば日本語も難しい言語だってこの前テレビでやってたよ。トレーナーよく勉強できたね」

「敬語は随分苦戦したが、会話は慣れだからな。ただ、書くのはまだまだ慣れない。漢字はさっぱりわからん」

 

 お手上げだ、と言いたげな顔で両手を上に向けて肩をすくめるアルチョム。

 基本的にメモするときはロシア語で、書類を書く際でも英語で書けるなら大抵は英語で済ましている。そもそもひらがなカタカナの二種類の文字がありながらそれに加えて漢字だ。最低限の漢字は覚えたが、アルチョムは半ば諦めている。彼の中では会話が成立すればそれでいいのだ。

 

「んで、昼飯は弁当か?」

「うん! 今日も作ってもらったんだ。トレーナーもいる?」

「大丈夫だ、なんか買ってくる」

 

 そう言いアルチョムは購買へ。いつも買ってるサラダサンドと惣菜パン、缶コーヒーを持って戻ってきた。そして昼食をとっていると、アルチョムのスマホが鳴る。どうやらアルセニーからのようだ。

 

「どうした?」

《校門で警備員に止められた。助けてくれ》 

「はいよ。ったく。悪いテイオー、アーシャを連れてくる」

「はーい」

 

 そう言い、トレーナー室を後にして校門へ。すると警備員に止められて困った顔のアルセニーが居た。セルゲイは警備員に説明して彼を校内に入れる。

 

「昨日はどうやって入ったんだ?」

 

 昨日再会した時、アルセニーは校門から少し入った広場でウマ娘に囲まれていた。なら校門を通過したであろう。不法侵入をしていなければの話だが。

 

「会釈したら通れたから、今日もそれで行こうとしたら止められた」

「なんで通したんだ」

 

 後で理事長に警備体制について話さなければ。そんなことを思いながら共にトレーナー室に向かう。

 

「ハロー! ミスターアルセニー!」

「コンニチハ、トウカイテイオーサン」

 

 テイオーの陽気な挨拶に、少し覚えた日本語で返すアルセニー。まだまだぎこちないが、初めはこんなもんだろう。

 

「で、アーシャ、飯はどうした?」

「お前の部屋にあったパンをいただいた。うまかったぞ」

「勝手に食いやがって。んで、これからどうすんだ?」

「ウマ娘ちゃんのトレーニング見学がしたい」

「受付で許可証取ってこい。アルチョムトレーナーの知り合いって言えば大丈夫だろ」

「あいよ」

 

 アルセニーはトレーナー室を後にし、校舎の方へ向かった。テイオーとセルゲイは昼食の片付けをしグラウンドへ。すると、キタサンブラックがいた。

 

「あ、キタちゃん!」

「テイオーさんこんにちは!」

「キタちゃんは自主練?」

「はい!」

「ならさ、ボクと一緒にトレーニングしない?」

「いいんですか?」

「トレーナー、いいでしょ?」

「ああ、構わん」

「では、お言葉に甘えてよろしくお願いします!」

 

 3人はグラウンドに設置された観客席の日陰に荷物を置き、トレーニングの準備を始める。すると、許可証を首から下げたアルセニーが現れた。

 

「おや、ウマ娘ちゃん増えたね」

「キタサンブラックだ。デビューはまだだが、素質は十分にある。これからが楽しみだよ」

「へぇ〜」

「アルチョムトレーナー、この人は知り合いの方ですか?」

「俺の古い知り合いのアルセニーだ。軍隊で同じ部隊だった」

「そうなんですね! 初めまして! 私キタサンブラックと言います!」

「あー、すまないキタサン。彼は日本語がわからない。英語で自己紹介できるか?」

 

 キタサンにセルゲイは自己紹介をさせる。英語での自己紹介に少し手こずっていたが、セルゲイのサポートにより無事終えることができた。そんなキタサンにアルセニーも自己紹介を行う。半分くらいセルゲイが通訳していたが。

 

「さて、トレーニングやるぞ。メニューはこれだ」

 

 セルゲイはタブレットを2人に見せ、トレーニング内容の説明を行う。その後、いつものようにドローンを飛ばし始めた。

 

「セリョージャ、ドローンなんか使うのか?」

「ああ。いろんな方向から走ってる様子を観察できるし、録画もできる。他にもいろいろと使えて便利だ」

「今のスポーツコーチってのはハイテクなんだな」

「使えそうなら使ってみる。何がどこで役に立つかは使ってみなきゃわからん」

「なるほどねぇ……」

 

 そんなセルゲイの言葉に意味深そうに納得するアルセニー。それから夕方まで、彼はセルゲイのトレーニングを見学していた。

 テイオー達の走りをしっかり観察し、適切なアドバイスをするセルゲイ。時にはテイオー達からの要望に耳を傾け、彼女達が退屈しないよう工夫を凝らすその姿を彼はその目に焼き付けていた。

 

 ……変わったな、セリョージャ。

 

 アンタがそこまで真面目に教育者になるなんて想像もできなかった。紛争地でしょっちゅう子供に怖がられていたアンタが、ウマ娘ちゃん達にそこまで懐かれるなんてよ。でも、それはアンタが真っ当に教育者として振る舞ってきた証拠なんだろうな。

 

 あのウマ娘ちゃん達はアンタの過去を知っているのか? さっきの自己紹介の時も、元アメリカ軍って偽れって言われたし、しゃべってないんだろうな。ま、それでいい。世の中には知らなくていいことだって山ほどあるからさ。

 

 そんなことを考えながら、ウマ娘達に振り回されるセルゲイを眺める。

 

 今のセリョージャ、随分と楽しそうじゃねぇか。常に警戒して、銃を構えていたあの頃には絶対見れなかった姿だ。

 

 ま、それもそうか。アイツは自ら望んで軍隊に来たんじゃない。銃を握ることがアイツにとって本望だったとは思えないからな。だが、それでもアンタは強かった。自分の居場所とチームを守るために、勇敢に戦っていた。

 

 ……アイツはもう銃を握れないだろうな。

 

 だが、それが悪いこととは思わない。今のセリョージャの方がよほど自分らしく振る舞っているように見える。むしろ羨ましいぐらいだ。

 

「……俺も転職するべきかぁ?」

 

 いつのまにかテイオーやキタサンだけでなく、他のウマ娘にもアドバイスや指導をしているセルゲイを見ながらふとつぶやくアルセニー。戦友の初めて見る姿。だが、それは彼が新しい人生を歩んでいる証拠でもある。そんな姿を見れた嬉しさを隠さずにはいられなかった。

 

 

 

 翌日。

 トレセン学園の校門の前に、4人が集まっていた。

 

「セリョージャ、世話になったな」

「またいつでも来い。酒をおいて待ってる」

「アルセニーさん、また日本に来てね!」

「今度は東京のいろんな場所、案内します!」

「嬉しいね。また日本に来る時を楽しみにしてるよ、愛しのウマ娘ちゃん達」

 

 3人の見送りにアルセニーはウィンクで返し、タクシーに乗り込んで窓から手を振る。

 

「「バイバーイ!」」

 

 走り去って行くタクシーが見えなくなるまで2人は元気に手を振っていた。

 

「ねぇトレーナー、アルセニーさんは次いつ来るの?」

「たぶん年末じゃねぇか? クリスマス休暇で来るかもな」

「じゃあ有マ観に来たりするんですかね?」

「近くなったら聞いてみよう。2人が会いたがっているって言えばすぐに飛んでくるだろうよ」

 

 4年ぶりに会えたかつての戦友。何度も苦楽を共にし、互いの背中を預けた男との再会はセルゲイにとってこの上ない喜びであり、彼自身、年末に会うのを既に楽しみにしていた。

 

 

 ────────────────────────

 

 

 あれから1週間程経った。

 アルセニーは無事トルコへ帰り、いつもの2人にいつもの日常が戻る。

 

「テイオー、合宿の書類は書いたか?」

「うんバッチリ!」

 

 トレセン学園夏合宿。去年は骨折の治療やらリハビリやらで行けなかったが、今年は万全の状態で臨める。そのためか、テイオーも随分と張り切っている。

 

「去年行けなかった分、今年は遊びまくるぞー!」

「遊びに行くんじゃねぇからなテイオー」

「……もぉー、わかってるよぉ」

「さて、書類を出してくるからよこせ」

「ボクも一緒に行く」

「はいよ」

 

 そんな訳で2人は書類を提出しに、理事長室へ。しかし、理事長室から聞こえてきたのは怒号だった。

 

「断固ッ! 反対ッ! 我々トレセン学園は、そのような法案は決して認めぬ!!」

 

 何事かと理事長室に入る2人。そこには、秋川理事長とたづなさん、樫本代理、そしてシンボリルドルフがいた。そして壁にかけられたモニターに映るのはあの光武理事長だ。

 

「何事で?」

「カイチョー、何かあったの?」

 

 まずは状況の把握からだ。するとたづなさんが説明してくれた。

 どうやらURAとのオンライン会議で、ウマ娘のレースである競バの公営賭博化の議題が出され、URAとしては賛成であるとのことだが、秋川理事長は断固反対とのこと。トレセン学園としては例え公営とて、生徒を賭博に巻き込むわけにはいかない。さらに、過去の事例から考えれば到底容認できる話ではないとの話だ。

 

 しかし、URA側は国庫への還元や、経済的貢献云々を理由に賭博化を推し進めたい様子で、その溝は埋まりそうにない。

 

 ……クソ共が。

 アルチョムの脳内に真っ先に浮かんだ感想だ。あのオリガルヒめ、子供を賭博に巻き込んで何を考えてる? アルチョムは光武理事長が映るモニターを睨んだ。

 

《おや、誰かと思えば去年の秋天で騒いだ担当ペアか。いいか? 今回君たちが出る幕はない。引っ込んでなさい》

 

 テイオーが春シニア三冠を達成したのは彼も知っているだろう。しかし、彼が言い出したのは秋天での騒動だ。テイオー達の活躍により、マックイーンは降着にならずに済んだあのことを出してくる辺り、どうやら光武理事長はそれを余程根に持っているようだ。

 

「これはこれは、我らが光武理事長殿。また貴方のツラを拝めたことを光栄に思います。未成年を利用してまで懐を肥やそうとするその姿勢には感服いたします」

 

 そんな光武理事長の言葉に皮肉たっぷりで返すアルチョム。こう言う時の彼は饒舌だ。

 

《何を言いだすかと思えば、私を利己主義者のように言いおって……。いいか? 私は日本のためにこの法案に賛成しておるのだ。貴様のような外人風情が、我が国の政治に口を出すんじゃない》

「俺はもう4年も日本で暮らして税金まで払ってんだ。それにトレーナーとしての立場もある。意見を言うぐらい良いだろ?」

《貴様がいくら日本で暮らそうが税金を納めようが、日本人でない以上口を出す権利はない。〝郷に入っては郷に従え〟ということわざを知らんのかね》

「知った上で言ってる。その〝郷〟ってのは意見を表明する自由すらないと言うのか?」

 

 一見、冷静に振る舞ってるアルチョムだが、その内心に煮えたぎるような怒りがあるのは誰の目にも明らかだ。

 

「アルチョムトレーナー、君の言いたいことは痛いほどわかる。だが、それは我々も同じだ。だからこそ、我々に任せてほしい」

 

 そんなアルチョムを宥めるようにルドルフが口を開く。ルドルフ自身、この法案に関しては反対であるし、アルチョムが怒りを露わにするのもよくわかるが、ここで感情に振り回されるべきではない。

 

「ねぇカイチョー、賭博化ってことは、ボク達のレースで賭けをするって話?」

「ああそうだ」

「でもそれって昔大事件になったんでしょ? たしかヤクザが襲撃したとかどうとか」

《公営だよ。国が管理するんだ。問題は起きない》

 

 テイオーとルドルフに口を挟む光武理事長。彼曰く、国の厳格な管理の下行われるため、反社会的組織などは完全に排除される。また、賭博で得られた利益はウマ娘達に必ず還元されるとの話だ。

 だが、そんな彼の話を信じる人間はこの部屋にはいなかった。モニターであれこれ語る彼に対し、樫本代理が発言する。

 

「そのように説明されたところで、過去に失敗した例は少なくありません。欧米でも同じような事件が起きたことをご存知無いのですか?」

《だからこそ厳格に国が管理するのだ。過去の事例を踏まえてな》

「その賭博で儲けた金はどう使うつもりだ?」

 

 淡々と語る光武理事長に疑いの眼差し向けるアルチョム。

 

《防衛予算が増額されるのは知っておるだろう。もちろん防衛予算だけでなく、少子化対策や新型感染症対策にも使われる。そして、トレセン学園への助成金にもな》

 

 昨今の情勢を考えれば妥当な使い道と言えよう。だが、それらの割合がどれだけなのかは明言せず、彼は説明を続けた。

 

《我が国の国債も、毎年増える一方だ。しかし、これ以上の増税は国民の負担となる。それを避けるためには、新たな財源が必要なのだ》

 

 彼の話は筋が通っているようにも思える。だが、それは見方を変えれば財政のしわ寄せがウマ娘達にくるということだ。そのせいでリスクを被らなければならないと言うのは彼女達からすれば理不尽極まりない話である。

 

「どう考えても、ウマ娘達が被るリスクと釣り合いません。この法案は廃案にすべきです」

 

 樫本代理が反論する。それに続いて、ルドルフも口を開いた。

 

「財源が必要なのはわかります。ですが、なぜリスクを背負わせてまで我々ウマ娘に担わさせるのですか?」

《全国のトレセン学園に支給される助成金の総額は君たちもよく知っているだろう。あれだけの国庫をつぎ込んでおいて、そちらからの見返りはいくらだ? いつまでも金食い虫を養う余裕などないのだよ》

 

 この発言を聞いた時、ルドルフの耳が強く後ろに絞られていた。ウマ娘特有の怒り表現だ。だが、先に口を開いたのはアルチョムだった。

 

「金食い虫だと⁈ テメェは自分の立場をわかって言ってんのか、あぁ⁈」

 

 理事長室に轟く怒号。モニターを睨み付ける眼の瞳孔が開き、ただでさえ威圧的な目つきは猛獣さえ殺せそうな鋭さを放つ。

 

「落ち着いてよトレーナー!」

「落ち着きたまえ、アルチョム君!」

 

 声を荒げたアルチョムに対し、テイオーと秋川理事長が止めに入る。

 

「ここで感情的になっては相手の思う壺だ! こういう時こそ冷静に振る舞うべきだろう」

「……失礼しました」

《全く、秋川理事長殿も躾がなっとらんな。感情的に噛み付くようではただの狂犬ではないか》

 

 その言葉を聞いたアルチョムは今にもモニターを叩き割りそうな衝動を必死に抑えながら、そこに映る光武理事長を睨みつける。その手に握られた書類は既にクシャクシャだ。だが、テイオーの隣でモニターを見るルドルフも同じような気持ちだった。

 ウマ娘達の学び舎たるトレセン学園を金食い虫と切り捨てる態度は、URAというレースや催しを管轄する組織のトップとして不適切と言わざるを得ない。

 

 だが、現理事長が内閣特命担当大臣(よりによってウマ娘共同参画担当である!)と懇意である以上、そしてこの会議がクローズドな場である以上、これを世間にリークするのは難しい。この男はそれをわかった上でそう発言したのだ。その姑息さにルドルフは強い怒りを覚えた。

 

 その後もしばらく会議が続いたが、議論は平行線を辿り交渉は決裂した。そしてその決裂は官僚、ひいては政府との全面対決を意味するものだった。

 

 






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