CyberPunk-OVER the EDGE- 作:コーカサスカブトムシ
ガチだよ
アプデスマッシャーがあまりにもカッコ良すぎて強くなってくれ過ぎてて嬉しさが溢れて描けよ描けよと思いながらずっと削ってはこうじゃないと思いながらの初投稿です
昨日のRELIC関連の説明もあって、今眠りに落ちたら二度と目を醒ませないんじゃないか……そんな不安もあったが無事に意識は覚醒し、いつも通りの天井が視界に飛び込んで来た。欠伸をしながら上体を起こす、デイビッドの姿もジョニーの姿もない。良かった、RELICなんて無かったんだな。
『おはようV。しっかしなんか変な感じだったな。こうして寝て起きるって事をしてるつもりなのに自分の身体が無いなんてな……何処で寝てるかが曖昧だった』
『折角生き返ったってのに寝ちゃ起きてばっかだな。つまんねぇのはお前のツラだけにしとけよV』
勿論そんな事はなく、刺激的なモーニングコールに眠気はさっぱり消し飛んだ。寝たのが11時で起きたのは7時、健康的で文化的な生活って奴だな。ジョニーのホログラムに中指を立てつつ洗面台へ向かって顔を洗う。
目覚めは良く顔もサッパリした、後はここに豪勢なブレックファーストでもあれば言う事はないんだが、残念ながら朝食の候補は部屋に備え付けられたSCSMから買えるブリトーしかない。
「兎に角飯でも食おう。空きっ腹にブリトーが病み上がりの身体には悪そうだが」
『この50年でナイトシティの飯事情はどれだけ変わったのかねぇ』
『金持ちのロッカーが満足いくとは思えないけどな』
『おいおい、これでも俺は貧困層に寄り添う庶民派だぜ? 朝は安物のシリアルで済ませてんだよ』
『そうなのか?』
「どうせ夜はシャンパンにステーキだろ」
正解、と指で丸を作るジョニー。ムカつくなこいつ、もう暫くは禁煙させてやろう。ハムとチーズのブリトーを購入し、インスタントのコーヒーを淹れる。今更だが……俺がタバコを吸ったところでジョニーもタバコを吸った事になるのか? 視覚や聴覚に味覚……五感はどのようにして働いているのだろう。
「デイビッド、お前今俺の後ろって見えるか?」
『えぇ? いやそりゃ見えるけど……どうした』
「RELICはどういう仕組みなんだろうって気になってな。今のお前には実体も無いから景色を見る目もそれを受け取る脳もない訳だろ? なのにお前は俺が視界に写してない背後の光景が見えてる」
『……うっわ気にしたら怖くなってきた。本当にどうなってんだこれ』
不可思議な現象ではあるが、もしかしたらという心当たりはある。紺碧で盗みの仕事をする準備としてリジーズバーでも見たブレインダンス捜査の応用……本人は自覚していなくても脳はある程度周囲の情報を認識して読み取っており、それを活かしたペントハウスの偵察……デイビッド達の視界に広がっているのは俺の記憶の中の世界なのかもしれない。ただの憶測に過ぎないが。
思えばあの時エヴリンが口にしたシャンパンの味も体感出来ていた。BDだからそれは当たり前と言えば当たり前なのだが……ブリトーに口をつけ、流し込むようにコーヒーを啜る。一食数エディーとしない底辺飯は紺碧の待機時間で口にしたルームサービスのそれらを遥かに下回っているが、これも中々どうして嫌いじゃ無い。ちらとデイビッドとジョニーを見れば二人もこの味を感じているようなリアクションだった。とするとやっぱりBDのようなものなのかもしれない。
とするとその方面に詳しいジュディと……依頼主でもあるエヴリンにまず聴き込みに向かうのが先決だろうか。デクスも死に、エヴリン自身も身元が無事であるかはわからないが、闇雲にあたるよりはマシだろう。
『気味が悪いな……』
『まぁまぁだな。だが身体に悪い味がするぜ、そのままの意味でな』
俺の朝食が2人にも共有されたのか、突如広がったのだろう合成食の味わいに揃って顔を顰めた。2020年代よりも発展したケミカルフードはジョニーにとってもそう悪い物ではなさげだが、それが人体の節々を汚していく代物である事は瞭然だったようだ。
「お前らも現状に思う所があるだろうし、俺もRELICの解決に動き出したいところではあるが……俺のチューマの、相棒の葬式を済ませてくる。行動はその後にさせてくれ」
『……おう』
『ああ、わかった』
着替えを済ませたVに俺とジョニーはそう言い伝えられた。まだそう長い時間接した訳ではないけど、この隣人となったサイバーパンクは何処か抜けてるまである人の良さを併せ持っていて、ロッカーボーイの方はどうにもムカつく自己中野郎だけど本人なりの一線がある事がわかった。
今もそうだ。さっきまでは口喧しくVに難癖をつけてたのが一転して大人しく返事をしたし、その分狙い目が俺の方に向いた。向こうからは同じアラサカ憎しのテロリストとして、何より動機も似たようなのだったから関心を持たれたんだろう。
『俺達はVから何処まで離れてられんのか、気になるよな』
『それは、そうだな。俺達の会話も遠かったら聞こえてないみたいだし』
メガビルのエレベーターに向かってズカズカ歩いていくVを見送る。このなんとも言えない異臭に色んな国の言葉の混ざった喧騒、本当に自分が死んでいるとは思えない程リアルで鮮明に感じられるこの光景。
サントのメガビルに住んでいた時は毎日目にしていたそれもVとの距離が遠ざかるに連れて徐々にノイズを伴い始め、しまいには弾き出されるようにVが乗っているエレベーターにまで飛ばされていた。
『おおっと』
「ヨリノブ・アラサカ氏は事件についてこのようにコメントしており……」
備え付けのモニターからは紺碧プラザで起きたサブロウの死をいまだに取り沙汰しており、それを無機質な目で見るVの感情は窺い知れない。ともすれば急に現れた俺とジョニーの存在にも気がついていないようだった。
キロシが人工物だから、なんてそんな子供の理屈みたいな話じゃない。無の感情というには色んな物が渦巻いていて、かと言って温かみからは遠いような、怒っているのか悲しんでいるかもわからないようなこの顔で、こいつは兄弟の葬式に行くんだって言う。
葬式、結局母さんの遺骨……どうしてやる事もできなかった。走り続けて、進み続けていた筈なのに結局のところ俺は、ずっと立ち止まってもいたんだと思う。そう言えばピラルにメインに、ドリオに対しても葬式なんかしなかったな、仕事仲間の仲って言えばそれまでだったのかもしれないけど……いや、それは……
『ルーシーとは何処まで行った? ああもうイッちまったって感じかぁ? かあーっ全く俺だって狙ってたってのによぉーっ!』
『あんたのパンチもちょっとはマシになってきたじゃないか。続けてりゃあいつかは突っ込んでくる車だってピンボールみたいにぶっ飛ばせる』
『取り分に合った仕事は熟せるようになってきたが、銃の扱いばっかはまだまだ赤ん坊ってところだな!』
受け入れられなかったんだろう。もうあいつらが死んでしまって、二度と喋りも触れ合いも出来ないんだって事が。俺が死んでから一年、日がそう経って無いのもあってか俺の死に様はこの街で伝説とも呼ばれる物になったらしい。
現役の時も、俺達のチームがナイトシティのサイバーパンクとして上の方にいるって自覚はあった。だけどそれと比べれば遥かに低いところにいて、アフターライフにも入ったばっかりだっていうのにVは……
『強い、んだな』
「───何か、言ってたか?」
『っ、ああいや全然!? 忘れてくれ』
つい口に、Vにも聞こえるような言葉として出てしまった。ふいと此方を向いたVの目は先ほどとは違って、まぁ普通のそれになってたんだけど気まずさはひとしお。Vの後ろから茶化してくるような表情を見せて来るロッカーボーイの顔だけがひたすら気掛かりだった。
「俺はよく、初めてジャッキーと会った時の事を思い出す。頭に銃を向けられた。それがあいつとの出会いだ」
「そこに警官がやってきて、俺たちは叩きのめされた。半分は俺のせいで、半分はあいつのせい。一緒に大慌てで逃げ出したっけ……」
「その三十分後にはママ・ウェルズの店で夕飯を食べてて、俺たちには意外と共通点が多い事がわかった。生き方のな」
「それから、俺たちは酒を飲み交わして誓ったんだ。二人でこの街の、ナイトシティの天辺にまで登り詰めてやろうって」
「ナイトシティ1の大馬鹿野郎、ナイトシティの葬式の常套句だ。どいつもこいつも死んでばかりで、そんなに死んだやつが凄いならそれこそアダム・スマッシャーはなんなんだって話になる。負け犬の遠吠えだろう」
「それを踏まえた上でジャッキー・ウェルズ、あいつは死んだのか? どうやって死んだ? どうして死んだ? いいや、いいや、あいつは死んでなんかいない」
「俺がいる。あいつが一緒に登り詰めてやろうと誓った俺が、あいつの想いを背負った俺がいる」
「これから先も俺の歩みはあいつと共にある。だからチューマ、楽しみに見ててくれよな。お前の生かした俺が、生きてやる」
「そしていつか伝説になるんだよ。俺たち二人がな」
「意外と静かにしててくれたな」
『あんまり見くびんなよ。俺だって多少は空気が読める、時もある』
『少なくとも自分の流儀に沿ってるところではなんだろうな』
コヨーテ・コホでの告別を終えた俺はママ・ウェルズ、そしてミスティと一緒にノースオークの納骨堂に足を運んだ。メガビルで言付けはしたもののジョニーの方からは揶揄われる事も覚悟してたんだが、思いの外聞き分けがよかった……がその実はデイビッドが言った通りなんだろう。多分こんな場じゃなけりゃ普通に喧しそうだ。
この納骨堂ばかりじゃ、銃弾が飴玉みたいに転がるナイトシティでも争うやつの方が総スカンされる。どんな勢力のギャングでも、ここに来る以上は……まぁその不文律もわからないような奴は葬式も納骨もしないって話ではある。
「それにしてもV、随分カッコいい事言ってたんじゃない?」
「忘れてくれ、ちょっと感極まったんだよ」
「それでも、私としては嬉しいわよV。でもだからってあの子の想いに引き摺られたり、あの子の為に生きる事はないんだからね。きっと彼だってそう思ってる筈だわ」
「わかってるよママ・ウェルズ。あれは俺なりの決意表明でもあるんだ……俺は絶対に、日和も甘えもしないってな」
RELICの解決法を見つける、スマッシャーの借りを返す、ナイトシティのレジェンドになる。方向性は別々なようで、存外アラサカ絡みでレジェンドの打破ともなれば道は近いところにあるだろう。今の俺の命は依然風前の灯かもしれないが、高みを目指して……ああ、派手に『生きて』やるとも。
『てめぇの墓碑を見るハメになるとはな。ジョセフ・ジョースターかよ俺は』
『そうか……そうか……君は、今も……!』
細々とアプデが来たりな2077でしたが、本当にエッジランナーズが与えた影響の方も凄いんだなぁと思ったり……実はデイビッドがわりと受け身な性格だと解釈してて突っ込ませどころを考えたりと色々あったりしました。
大変お待たせしていましたが楽しんでいただけたなら幸いです