CyberPunk-OVER the EDGE-   作:コーカサスカブトムシ

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公式Vの腕パーツはマンティスブレードなようで、個人的にもマンティスブレードは大好きなんですがそれはそれとしてプロジェクタイルランチャーも使いてぇなぁという贅沢


燦々と、燃え上がれ

「……おいデイビッド、お前どうしたそれ」

『それ?』

『さみぃ時のチンポみてぇに縮んでやがんな。へろっへろのガキじゃねぇか』

『えっ、なっ、はあっ!?』

 

 納骨堂ではジョニーもデイビッドもそれぞれに気になる場所があったようで別行動をしていたんだが、ママ・ウェルズ達とも別れて合流した時には何故かデイビッドが……縮んでいた。

 サイバーパンクとしての風格を感じさせるマッシヴな義体は跡形もなく、引き締まってはいるものの先と比べれば貧相という感想も出る、あいつの顔に似合った身体に。恐らくはこれが本来のデイビッドなんだろうが、あれだけ『誤差』の出るインプラントを使い熟していたとなれば相当な訓練か、或いは天性の素質があったのだろう。

 

『何で……』

「RELICに刻まれたお前達のデータ、即ちお前達の外見はその記憶に基づいて構成されてるんだろう。墓地で何を見たのか知らないが、そこでお前の精神がその身体の頃に引き戻された……とかじゃないか?」

『そういや着替えもしてねぇままだったな。ジングウジのジャケットでもあるかね』

 

 ジョニーが呟くや否やあいつの身体を構成するホログラムが乱れ、簡素な防弾ベストとズボンのTheシルヴァーハンドといった外見から、上裸に仕立ての良いジャケット(こいつの言葉が本当ならジングウジ、ハイブランド物なのだろう)を羽織ってスカした髪型の姿へと変化を遂げた。

 

「まさか本当に着替えられるとはな、便利なもんだ。それはそうと様になってるのがむかついてくる」

『僻むんじゃねぇよ、俺とお前じゃ染み付いてるスター性が違うんだ』

「僻んでない。でだが……どうした? デイビッド」

『……』

 

 一言何か言えば二つ三つと揶揄を飛ばすジョニーを無視し、思い詰めるような顔をしたままのデイビッドへと向き直る。若いとは言え墓を見て自分が死んだ事に対して今更実感して、それでショックを受けたとでも言うほど柔じゃないだろう。

 この墓が、デイビッドの名を刻んだ徴があるという事自体に感じ入る物があったのか。当然の話だが、墓なんてものは弔ってくれる人間がいて初めて出来上がる物。なら一体誰がこの、アラサカタワーで大勢の死人を出しながら果てたサイバーサイコの墓を建てるって言うんだ?

 

「お前が、助けて逃した彼女(アウトプット)か」

『……あぁ。多分きっと、頭の中に過ったんだろうな。俺がこの姿だった頃はチームのみんなも生きてて、一番楽しかった時期で……何より彼女と初めて……』

「そうか」

『……』

 

 俺が死を彷徨っている中でRELICが追体験させたこいつらの記憶。二人の全てを見知った訳でもないが、どんな生き方をしていたのかは体験した身だ。デイビッドの記憶で特に色濃く、そして鮮烈に感じられたのは一人の少女への憧憬、親愛、博愛。

 俺だって年寄りって程じゃないが甘酸っぱさに胃がムカつきそうなくらいの物を見せつけられて、その上でこの末路(ナイトシティのレジェンド)だ。お互いがお互いに抱えていた感情は途方もない、言葉だけでは表せない物だった。ノスタルジーな気持ちになるのも無理はない。

 

『それとは話が変わるんだけどさ……っ、いや……』

「その子に、会いに行きたいのか」

『それもあるんだけど、さ……ううん。ある意味で俺たちは運命共同体だから、包み隠さずに言おうと思う』

『いいのか。テメェにとっちゃ、そいつは避けてぇ事なんじゃないのか』

 

 俺にはまだ何が何だかなのだが、どうやらジョニーには察しがついたらしい。男女関係の機敏においては流石と言うべきか、それとも単に拗れているだけなのか、だが話がスムーズに進みそうだからここは聞きに徹するとしよう。俺も記憶を見たとはいえその内心内情までもを見透かしたってわけじゃない。

 

『あぁ……だけど、ある意味この話はVや俺たちの現状をどうにかする手掛かりに大きく近づけるかもしれない……この話を聞いてどう思ってどうするかはV、お前が決めてくれ』

 

 

 

 

 墓地で立ち話(周りから見れば独り言を言ってるヤバい奴だ)というのもなんなのでバスに乗り、メガビルの自室に戻ってきた。一人暮らしには少し広々としていると思っていた部屋ではあるが、男三人となると多少むさ苦しいものもあるな。そんなくだらない事を考えて、俺はソファーに座り込んでデイビッドの話に耳を傾けた。

 

『まずだけど、俺やあの日に死んだ仲間の弔いをしてくれたのは俺の大事な人……』

『素直に彼女って言やあいいだろ』

『それは今はいいだろ! ったく、えー、彼女の名前はルーシー。ネットランナーで俺がサイバーパンクとしての世界に入ったのは、彼女の誘いからだったな……』

(俺で言う、ジャッキーに近いもんか。お前は……守れたんだな)

 

 自分の道の始まり、デイビッドがサイバーサイコと成り果てながらも確かな意志を持ってアラサカから救い出したルーシーという少女。デイビッドの記憶を追体験した後で思った事だが、何処かで見た覚えがある気がする。まだナイトシティで暮らしているのだろうか、アラサカの追跡もありそうなものだが豪胆なことだ。或いは墓守だろうか。

 

『ルーシーは凄いネットランナーでさ。プロトタイプの規格外品って言うサンディヴィスタンを使ってた俺のクローム耐性にアラサカが目をつけてたんだけど、それを辿られないようにアラサカのランナーを狩ってたり、兎に角ランナーとして彼女が力になってくれればRELICの事も調べがつくかもしれない』

「本当か!?」

『……オルト』

 

 紺碧で戦ったアラサカの部隊達は確かに強かったが、アラサカというとどちらかと言えば諜報面やランナーの方が恐ろしいという印象を抱いている。もちろんスマッシャーの存在を抜きにしてだが、そんなアラサカを相手に……デイビッドの事件性からして肝入りの企画だったであろう情報を遮断しランナー狩りをしていたとなれば、その実力は凄まじいに違いない。

 デイビッドの言う通り、RELICの詳細自体は機密とはいえ一般にその存在を公表する段階にまで来ているくらいの品物だ。そんなランナー、ルーシーの存在があればこのRELICに関する仕様なり取り外し方なりも判明するかもしれない。

 

「とすると、今はそのルーシーを探すのが一番か?」

『だけど、なんだ。彼女は元々アラサカのモルモットにされてて、そこを抜け出した身で……会いたいって気持ちもV達の力にしたい、なって欲しいって気持ちもあるけど、巻き込みたくないって気持ちもある』

「せっかく助け出したんだもんな。その気持ちは俺でもわかる」

 

 ただその懸念も仕方がないものではあると思う。デイビッドは本来死んだ筈の存在で、今こうして俺の命を脅かす事にはなっているが元はと言えばアラサカの仕業だ。自分の命よりも大切なアウトプットをまた危険に晒すのと俺の命で言えば、天秤が向こうに傾くのは自然だろう。

 デイビッドがデイビッドとしてルーシーに関わろうと言うからにはRELICの話をしない訳にもいかず、ただ完全にその線は無しとするには未練がまるでないでも無い。二律背反というのか、俺としてもここで死ぬ訳にはいかないが死者の純粋な想いまで踏み躙れる程クズにはなれない。

 

『墓建てた時にゃ無事でも今もそうとは限らねぇだろ。探すだけ無駄にはならねぇんじゃねぇのか? 行方不明になってりゃとっくにこの街から消えてるか、アラサカにとっ捕まってこの世から消えてるかだ』

「ジョニー……!」

 

 二人して悩んでいる中、口火を切ったのはそれまで静観していたロッカーボーイ。事もあろうにこいつと来れば無神経極まりない……思わず手も出そうになるがホログラムだ、やるだけ無駄だろう。ただ意外な事に、デイビッドは素直にその言葉を受け止めていた。

 

『いや、実際そうだV。あいつらがルーシーをただで放っておいてくれるかもわからない。無事ならそれを保ちたいし、もしまたアラサカが彼女に手を出してるって言うなら助けたい……けど、今の俺にはそんな力も無い』

「デイビッド……」

『だから、V。お前も傭兵だろうから言葉のお願いじゃなく、こういう形で依頼させてもらう。俺が生きてた頃の繋がり、凍結されてなければ口座とか保管してたサイバーウェア、そういった物を提供する。だからルーシーを探して……それで』

『もしお前がスマッシャーとやり合う事になりゃ、そいつは自然とアラサカとの戦争になる。昔の話にかまけてられるほどの余裕は無くなるだろうな。結果的にこいつの彼女も守れて、てめぇの命綱にも渡りがつく』

 

 途中で言葉に詰まったデイビッドだったが、それに付け足すようにジョニーが続けた。想いに同情出来るか、自分の道の途中かは別としてタダでデイビッドの頼みに乗るのもあいつが言う通り傭兵としては無しだ。だがこういった通りに事が運べば、俺個人にとっても充分アリな話になる。

 

「ジョニーお前さっきの、わざとか?」

『なんのこったよ。とにかくうじうじだらだら足踏みしてたって何も始まらねぇって話だ』

「素直じゃない奴だな……ああだがわかったデイビッド。彼女の方も、アラサカから隠れるってなればネズミみたいに落ち着かない生活の筈だ。派手に花火を上げて安心させてやろう」

『あ、ありがとうV!』

「だが今すぐにじゃなく先にこのチップ、RELICを盗み出す依頼を出して来たエヴリンと話だけはしたい。勿論そこで取り出せるって話が出たら、その時は少しそれを遅らせてもらう……最も、彼女とは音信不通になってるからな。スムーズにはいきそうにない」

 

 デクスを介した紺碧での仕事、その元の依頼人であるエヴリンとはホテルで指示を仰いだ時から連絡がつかないままだ。デクスのツテでアラサカの手が回ったのかそれ以外かはわからないが、望みの薄めな線とはいえそちらの件を先に片付ける。デイビッドもそれに納得してくれた。

 

『はっ、ちょいとばかり実績は足りねぇがマシな目つきにはなって来たな。立ち上がれよ、サムライ。この街に火をつけるぞ』

『何お前が仕切ってんだよ』

 

 夜空には幾つもの星々が燦然と輝いている。『星』は天高く煌びやかに輝いて、しかし数多く存在する名前も覚えられないようなものでしかない。俺は星なんて目指さない、俺が目指すのは『太陽』の如き存在。

 

「いいじゃないか、やってやろう」

 

 テーブルに置いていたセンツォンを瓶ごと呷る。デイビッドはそうでもなかったが、ジョニーのリアクションからして酒の好みは似てるのかもな。保管庫から銃と刀を取り出してホルダーにセットし、音楽アプリからChippin' Inを掛ける。

 

さぁ、仕事の時間だ。




間隔の空いた投稿にも関わらず多くの感想ありがとうございます
滅茶苦茶嬉しいから是非ドンドン送って来てくれよなチューマ
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