CyberPunk-OVER the EDGE- 作:コーカサスカブトムシ
を晒しながらも初投稿です
ナイトシティにおける不成者たるサイバーパンクのギャング達。活動や縄張りなどはそれぞれのグループでまちまち。シックスストリートはみかじめを求めながらも自警団紛いの見回りを行い、アニマルズはその厳しい見た目に似合わず、いや寧ろそれを活かすようにコーポのボディーガードや雇われの警備員として営みへ入り込んでいる。飲食店やクラブなど、ギャングとされながらもそうした生業も兼ねて動く中で近隣の住民から信頼を得ている者もいた。
だがそれでも所詮ギャングはギャングだ。シェリフ気取りのシックスストリートもマッチポンプじみたやり口で住民を恫喝し、ギャングの中では比較的穏健派とされるヴァレンティーノズでさえ利益の為ならば人死を出す事も厭わない。蛇蝎の如く忌み嫌われるナイトシティの蛆虫ことスカベンジャーズなどは百害あって一利なしだ。
力を持たないその他大勢であるナイトシティの住民にとって、ギャングとは身近な存在でありつつ、それでもやはり恐ろしいものだ。一般人が使える程度の護身用拳銃などはインプラントの装甲に阻まれ、手足に仕組まれたサイバーウェアの蠢きは容易に命を奪う。
そんな中で住民達にスカベンジャーズと並んで特に畏怖される集団がいる。『赤目の髑髏蜘蛛』、メイルストロームはその構成員のほぼ全てが擬似的なサイバーサイコと呼ばれる程に破綻した人間性、残虐性からNCPDや他のギャング達との抗争も絶えず、また民間人へ多くの犠牲を出す筋金入りのろくでなし達だ。
「しっかし昨日のアマは久々に上玉だったなァ……あんだけのもんが拾えるとは思ってなかったけどよ」
「言うほどか? お前の好みは知らんが、別にそれほど別嬪って訳じゃなかっただろ」
朝起き、顔を洗い、食事を摂り、人を殺す。息をするように、日常の中に生業として組み込まれている程にメイルストロームの業は深い。『つい昨日』もそうだった。運び込まれたジョイトイを好き放題に弄び、しゃぶりつくす。生きている事を後悔させるかのように、生まれてきた事を間違いだったと思わせるように。何故そんな事をするのかと言われれば、楽しいのもそうだし、金になる。
「顔の話じゃねーよ! 俺が言ってんのは中身の事だ中身!」
「そんなピュアなタマかよ」
「だから違ぇって! 俺らのとこに回ってくるのなんかは大抵が底辺のゴミ屑みてぇな元から終わってる奴らだろ?」
「まぁ、それは……」
「美容系のインプラントにあのアマの性格から、元はそれなりの立場にはいた事ぐれぇお前にもわかんだろ」
「それなりに勝ち進んできて、デカいとこでオールイン。賭けには負けて逆戻りってとこか」
「落魄れたきたようなのを虐めんのは格別だからなァ……」
去年も、先月も、先週も、昨日もそうだった。その事に罪の意識など感じた事はないし、これからもそうしていくだろう。どれだけの人間の人生をたった数日の愉悦に消費しようと、それらを顧みる事はないだろう。
明日も、来週も、来月も、来年も。死ぬまで弱者を蹂躙し続けるつもりでいる、搾取するつもりでいる。
「趣味が悪いなお前も」
「こんな仕事してて趣味がどうこうなんて聖人ぶったこと言ってんじゃねーよ! お前も言ってやれよベルゴ! ……おいベルゴ?」
だがそんな彼らに、明日はやって来ない。
「ばがぁっ」
ベルゴと呼ばれた男からの返事が無いことを怪訝に思い、振り返る最中に破裂音と気の抜けた断末魔が聞こえ……遅れて銃声が響き渡った。部屋の中を色の付いた風が吹き荒ぶ。その残像の持ち主をメイルストロームのギャング達が顔面を抉ってまで埋め込んだ視覚インプラントが捉える事はない。
「サンディヴィスタンか! どこの鉄砲玉が……っ!」
ただ1人、いち早くそれに気づけた構成員だけが自身にも仕込んでいるサンディヴィスタンを起動させる。敵の速度を見てそれが通常使われる瞬時の加速ではなく、稼働時間を最大まで使用するタイプだと察してそれに倣う。
瞬間、周囲を置き去りにしてこのメイルストロームの拠点、発電所への襲撃者Vとギャングの1人だけの世界が広がる。だがサンディヴィスタン使い同士の決着というのはほんの一瞬だ。
迫る白銀の刃、受けるマンティスブレード。拮抗したのも束の間出力差で押し負けたギャングは自身のマンティスブレード諸共顔面に悟を叩き込まれる。
顔の半ばまでをかち割られた男を蹴り飛ばし、刀の血を払ったV。それに帯同しているモックスのテッキー、ジュディは怖気に震えながらもこの傭兵が味方で良かったと嘆息する。一応は自身も戦うつもりで来ていたのだがやはり本職は違うというか、正直Vという傭兵を仕事に失敗して追い込まれている木っ端と見くびっていた端があったので嬉しい誤算だった。
「なっ、てめ……」
「襲撃者だ! 上の階の奴らはなにして……」
「残念だが、お前達で最後だ」
冷酷に告げられた死刑宣告を聞き取ると共に宙を舞う視界。身体が動かせず鈍い違和感に包まれ、ゴロリと転がったメイルストロームのギャングが見たのは血飛沫を首元から上げる、頭の無い自分の姿だった。
「まさかナイトシティのレジェンドがついてて何が1番助かったかなんて、BDの知識とはなぁ」
『う、うるせぇな……実際口ばっかりのこいつよりはタメになってるからいいだろ』
『はっ、ひでぇ言いようだな』
「事実じゃないか」
エヴリンの行方を探しにクラウドやらジグジグストーリートやらを盥回しにされていた俺達だったが、メイルストロームの連中が撮影しているゴア系BDの収録場所に彼女が連れられたという情報を得てからは早かった。BDオタクのデイビッド君が該当する作品を知っていたらしい、エッジランナーとして鳴らしたレジェンドの癖になんで活躍がコミックのギーグみたいな内容なんだ。
約束だったのでジュディも連れて廃棄されたアロヨの発電所へ向かい、たまっているメイルストロームの連中もナマスにしての救出だった。日が浅かったお陰かエヴリンもしばらく目は覚さないだろうが命に関わる大事という程ではない。
『だけど、あいつらの嬲り方は助けられた後でも自殺するってヤツが多い。なるべく家を空けないように……買い物するにしても、落ち着くまでは通販の方がいいと思う。出来たらジュディに伝えてくれ』
『そいつもBDの知識か?』
『いや、母さんが病院で働いてたからさ……つっても医者とかではないんだけど。そういう被害者がいるって……』
「何がどう繋がるかわからないもんだな、さてエヴリンが目を覚ますまでにどうするかだが……」
デイビッドの進言をそのままジュディに伝え、彼女のアパートを出た俺達は一先ず屋台で酒と焼き鳥を摘んでいた。ぬるいセンツォンに……もそもそした食感のツクネだ。酒はまだいいが肉の方はなんとも言い難い、味を求めてきた訳じゃないが……妥協せずにちゃんとした店に行けば良かっただろうか。
「……探すか? お前の彼女」
『い、いいのかよ』
「いいのかも何も、エヴリンに次いでRELICを何とか出来そうなのは今手元にあるカードの中じゃそのルーシーだろ」
『それにしたってどうやって探すかだよなぁ、アラサカからも隠れてる女がデイビッドくんはデータになって生きてるから会ってくださーい! なんて信じてノコノコ出てくる訳がねえ』
ルーシーという女が腕利きのランナーでもあるのなら、カメラに映らない程度の事は当たり前だろう。そもそも隠れているのかアラサカに捕えられているのかも現状定かではないし、捕まってなかったとしても普通に考えると街を出ているような気もする。薄い望みではあるんだがな……
『なんなら電話でも掛けてみたらどうだ』
「番号なんて変えてるに決まってるだろ。やるだけやっても損じゃないが……デイビッド、お前覚えてるか?」
『それで繋がったら繋がったで逆にちょっと心配だけどな』
酒等の代金を支払い、川沿いのベンチに腰掛けて教えて貰ったホロの番号に通信を掛ける。コールが一回、二回、三回、四回……駄目で元々だったが当然電話が繋がる事は無かった。
そうなると地道に聞き込みでもするのがいいんだろうが、俺一人の情報網なんてたかが知れているしランナーの知り合いもいない。バグも死んだ事だしな、そうなると頼るべきはフィクサーになるんだろうが……親指で自己アピールをしてくるヒゲ面が鬱陶しすぎる。
ジョニーが俺の代わりに動いてくれるのならアフターライフのローグなんかが助けになってくれるかもしれないが、腐れ外道とは言わずも人間的にアレな面があるコイツにハンドルを握らせるのはまだ憚られる。
『オイオイこれでもお前の助けになってやりたいんだぜ? 見ろよこの穢れない目を』
『せめてサングラス外せよ』
「肝心の目自体はなんでつぶらなんだよコイツ」
だがそれもやむなしか? ヴィクターも切羽詰まって爆発寸前とまでは言っていなかったが、俺のタイムリミットは確かに存在している。まさか変わってる間に俺達ごとくたばるなんて真似まではしないだろうから一時の恥くらいで済むだろうが……あ?
『仕方ないからエヴリンが起きるまではお前に来てる仕事をしててもいいかもしれないな。さっきの発電所でも、結構良い動きだったから……なんならサイバーウェアが違えばすぐ俺くらいにも』
「く、か……らだが」
『ランナーか!? カメラ……も無いならすぐ近くに────』
【この番号を知ってる奴なんて限られてるし、今はどっちかわからないからこの程度で済ませてあげるけど……誰から聞いた? それだけ答えて】
瀕死になりながら、せめてある程度原作ママなところは端折りつつ書いた方がいいよねパパ……