CyberPunk-OVER the EDGE-   作:コーカサスカブトムシ

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この作品には独自の解釈、それによって独自の展開が含まれています。大凡は本編通りの進行になります。御了承ください
前回多くの評価や応援の感想ありがとうございました、これからも特に感想などくれるとありがたいです
どうかナイトシティの魅力溢れる世界を表現出来るよう頑張っていきます


粉砕者

 ジャッキーとVがそれぞれ酒をやったあと、デクスのボディーガードが彼らを呼びに姿を現した。導かれるまま彼の後ろへ、デクス用のブースへと足を運ぶ。途中、ジャッキーが屈強な体格のガードに幾らか会話を振っていたが全て雑にあしらわれていた。

 その一方的なやり取りに呆れた顔をしつつもVは今回の仕事、その目標物である『Relic』に関して情報を整理していく。盗んで渡してしまえばそれまでかもしれないが、仕事をするブツに対して無知であり関心を持たないというのもプロを目指す者のする事ではない。もっとも依頼人であるエヴリンと直接話し、聞き出せた事以外に碌な情報源は無かったのだが。

 

 『Relic』、日本のメガコーポ【アラサカ】が極秘で開発を進めているというチップ。依頼人であるエヴリンや、企業が発信しているコラムなどから伺うところによれば、そのチップに人間の記憶や精神、記憶痕跡というものをコピーして保存する事によってその情報を元に本人を再現。それをインストールすることで疑似的な人格とコミュニケーションが、声を聞くことが、姿を見ることが出来るようになるという……いわば偽りの不死を実現するものだそうな。

 結局肉体を持っていた本人は死ぬのだから、そのチップに記憶があるといってもAIのようなものではないのか。スワンプマンとかいうのになるんじゃないかとVは思わなくもないが、金持ちの連中なんぞ自分の中にでも故人が生きていればそれで良いんだろうと得心する。

 

「エクセルシオールで頼む、支払いはいつも通り現ナマで。じゃあな」

 

 ブースの中へ入るジャッキーとV。中には既にデクスとT-バグ*1がソファーに腰掛けており、二人の到着を待っていた。デクスの方はまた何処かへと連絡を取っていたようなので、二人とも軽く会釈をするのみに留めて腰掛ける。

 

「ようこそ、ミスターV」

「ついにファミリー全員が揃ったな」

「ある意味、はじめまして」

 

 坊主頭にダイバースーツのような装い、ネットランナーのT-バグが『初対面』のVへ冗談めかして挨拶する。彼らは同じチームとして幾度も仕事をした中ではあるが、裏方であるランナーのバグが直接Vと会うのはこれが初めての事であった。

 

「あぁ、はじめまして。そんなジョークが言えるタイプとは知らなかったな」

「えぇ、そしてもう最後になるでしょうけど」

「え? どういうことだ?」

「この仕事が終わったら足を洗うつもりなのよ。家を買って、過去ともさっぱり決別してね」

「マジかよ……」

「取り掛かる前から今後のことか、まぁ気概としてはそれくらいじゃないとな」

 

 あっけらかんとすまし顔で言い放ったバグにVもジャッキーも面食らった様子ではあるが、そこは仕事に対するスタンスの違いだろう。ジャッキーとVは鉄火場でお互い背中を預け合う関係であり、ナイトシティに拠点を持っていなかったVはジャッキーとその母と屋根を同じくした程の仲でもある。そこいらのギャングが軽い気持ちで呼び合う物ではない、本当の意味でのチューマ(兄弟)だ。

 だがバグとV達の関係は馴れ合いを求めない、ただ力を貸し合う仕事仲間以上のものではない。ただそうなるとこれから先の仕事は面倒になるな、と二人は顔を見合わせた。そんな三人のやり取りを値踏みするような目で見ていたデクスは、区切りが付いたタイミングで本題の方へと話の舵を切り換える。

 

「フラットヘッドはしっかり持ってきたか?」

「あぁ、そこにある」

「そこに?」

 

 Vとジャッキーはあらかじめデクスから委託されていた仕事があった。今回の紺碧プラザからのRelic窃盗、プラザ内の警備システムを突破する為の装備として蜘蛛型の小型軍事兵器『フラッドヘッド』の入手。

 元々デクスが大企業『ミリテク』のコンボイを襲い、物資を強奪したギャング組織『メイルストローム』から購入したものではあるのだが、引き渡しの前にメイルストロームのトップが変わりその取り引きもパーに。それを手に入れる為にミリテクを交えて一悶着あったのだが、それはまた別の話。

 

「これでどうだ?」

「ふむ、話通りのようだな」

 

 フラットヘッドには隠密潜入用に光学迷彩が搭載されており、事前に起動されていたそれはVの合図と共に透明化したままブースへ潜入。収納用ケースの前でその迷彩を解くと、デクスは感心したように葉巻の煙を吐いた。デモンストレーションとしては十分なものだろう。

 

「しかしいいブースだ。防音か?」

「ジャッキー……」

「まぁまぁ、その通りだミスターウェルズ。デリケートな話をするからな」

 

 肥え太った巨体をソファーに沈ませ、再び一服したデクスは掌に一つのチップを踊らせた。どうやらその中に今回の仕事のプランが記されているらしい。受け取ったVとジャッキーは首元のポートへそれを挿入し、視界に広がる概要と映像に意識を集中させる。

 その作戦自体はシンプルなものだった。ナイトシティの超高級ホテル『紺碧プラザ』、そこにコーポに扮して偽名を使ったVとジャッキーがハイクラスタクシー『デラマン』に乗って正面から入り込む。内部に持ち込んだフラッドヘッドでサブネット*2に侵入。その後はRelicの所持者であるヨリノブ・アラサカのペントハウスに侵入し、そこで保管されているブツを回収。隠密行動を心掛け、犠牲者も犯行の目撃者も無しに終わらせるのが予定だ。

 

「バグが常時無線で援護する、何か質問はあるか?」

「偽名とは言うが、誰を名乗ればいいんだ?」

「よろしく、ラモン・『ヴィ』クトリノ、そしてハリー・コン『ウェル』」

「どうして人ってやつは偽名に元の名前の名残を残したくなるんだろうな」

 

 ラモンとハリーを名乗ってプラザへ入る二人は武器取り引き、ビジネスの話でアラサカの防衛担当と合流する……という体で宿泊することになっている。軍事兵器であるフラッドヘッドはホテルの警備に引っ掛かってしまうが、これを商材と偽って持ち込む事にしたようだ。中々筋は通った話だが、ホテル側からその防衛担当に連絡が行ってしまうと面倒だなと嘆息するV。そこはアドリブの効かせようだが、こういうのは案外ジャッキーが得意なので丸投げすることにしよう。

 

「さてと、仕事の話はこんなところだな。報酬は俺が70、お前達が30だ」

「30%!? 聞き間違いかデクス! いくらなんでもそれじゃあ実行に移る俺達の報酬が少な過ぎる!」

 

 そして報酬の話となる。待ちかねていた話題に顔が緩んでいたジャッキーだったがそれも一瞬の事、デクスから告げられた取り分の割合に声を荒げて非難を飛ばす。フィクサーと傭兵の力関係というものは、やはりフィクサーの方が強い物である。

 報酬の配分などはフィクサーの指先一つで決められる物であり、傭兵側がそれを呑めないというのならまた別の相手に頼むだけ……とまでは簡単にいかないが、決定権を持つのは絶対的にフィクサーの方だ。特にデクスはフィクサーの中でも力を持っている存在だ、彼にこうだと言われて突っ掛かれる者もそうはいない。

 

「タクシーや紺碧の部屋の手筈、作戦のセッティング、その費用まで出してるのは俺だぞ。それに新米の取り分は3割と決めている」

 

 ジャッキーにとってはそうではないが、Vとしては別に金額は重要な問題ではない。勿論貰えるに越したことはないが莫大な額であることは既に約束されている。だがそれでも実行犯になる自分達の割合がここまで少ないというのは、こいつらはこの程度だと無礼られているという解釈が出来る。高みを目指してエッジを攻めているVにとり、それは納得出来ない事でもあったし……何より本当に『割に合わない』

 

「おい待てよデクス、ジャッキーに便乗する訳じゃないが俺はバグと紺碧内のBDを見た。その話は聞いてないのか?」

「ああ聞いているぞ、そこからバグの意見を主体に侵入の手筈を」

「だったら知ってる筈だろ。ヨリノブの護衛についてるのはただの警備員なんかじゃない……バグ、BDのデータって残ってないか?」

「え、えぇ。一応保管はしてるけど……今出すわ」

 

 想定に無い展開にデクスは苛立ちを隠さず眉間に皺を寄せたが、それと同時に見落としや不備があって困るのは自分だと溜飲を下げる。バグが持ち帰った情報を元にプランを組み立てはしたが、傭兵であるVとランナーであるバグとでは認識に違いがあったかもしれない。ブースに備え付けられたモニターに接続し、ヨリノブのスイートルームを撮影していた映像を映し出す。

 

「で、何が問題だったのか教えてもらいたいなミスターV」

「言わなくてもすぐわかるし、一瞬だけだ。だが……話し合いで話題に上がらなかったのが不思議だったぞ」

 

 モニターに映像が、依頼主であるエヴリンがヨリノブの『お友達』として彼の部屋に赴いた時の映像が映し出される。エレベーターは階層をどんどん上がっていき、最上階にまで達したところで……ガシャリガシャリと、重厚で異質な足音が扉越しに聞こえた。

 

【ふん、宅配便のご到着か】

 

「なっ……!?」

「嘘だろ!?」

「え、どうしたのジャッキ……デクスも、この警備もかなりの重装備ではあるけど……」

「そのリアクションだと、情報の精査だけでBDの映像自体を確認した訳じゃなさそうだな。ご覧の通りだ、俺もジャッキーもそこいらのハッスルやコーポの警備くらいなら散らかしてやれる、いざという時にはな。ヨリノブが外出中の犯行になるわけだが、あいつがいきなり紺碧に戻ってこないって保証もない。そうなったとき俺達二人は、これと鉢合わせる事になる」

 

 エレベーターの扉が開き、紅眼の死神が姿を現した。底冷えするような機械音声がスピーカー越しに耳膜を震わせる。害される理由もなく安全である、ただすれ違っただけのエヴリンはそれだけで恐怖に視線を揺らし、入れ違うようにエレベーターに乗ったそれから目が離せなかった。扉が閉まり、下の階へと降りていく。

 Vはその時点で映像を切る、訴えるべき問題はたったこれだけだ。だがこの男の存在が……この男と関わらなければないというのがどれほどのリスクになるのか、Vもジャッキーもデクスも、例外なく戦慄していた。

 

「おいバグ……これは、どういうことだ」

「ごめんなさいデクス、黙ってた訳じゃないんだけど……」

「あー、その、なんだデクス。誰にだって情報不足って事はあるだろ? 現に俺だって知らな、というかV! なんで教えといてくれなかった!」

 

 この2077年のナイトシティにおいて、サイバーウェアによる人体改造を施している人間など珍しくもない。だがそんなナイトシティにおいても、全身の96%を機械へと取り替えているその存在は異端にして異質だ。黒光する鋼鉄の身体に備え付けられた装備は、その全てが軍用のハイグレードクローム。何も知らぬ者がこの姿を見たとして、果たしてどれだけの人間が彼を人間だなどと思うだろうか。

 

「ホロで伝えたら絶対うるさい事になると思って……まあ結果は同じだったが」

「まさか、まさか……あの『アダム・スマッシャー』が、ヨリノブのガードだとはな……!」

 

 

 

 

 

 掛かりもしないホロに、私は毎日、ずっとこうしてコールしている。あの時のように、いつの間にか彼が隣に来てくれるんじゃないか、そんな馬鹿げた希望を抱いて。

*1
ジャッキーとVの仕事仲間

*2
特定のグループのみで使えるネットワーク、警備網。紺碧プラザのサブネットがターゲットの部屋にある防犯装置と繋がっている為それを除外する




独自展開
ジャッキーとVがスマッシャーの存在を認識しながら依頼に臨む

正直なんでバグもVもBD見た時にスマッシャーになんの言及もしなかったのかが不思議だったんですよね。この作品ではVはそれをデクスとの交渉材料として黙っておき、バグはランナーであってソロではないのでスマッシャーの詳しい容姿を知らなかった……と言う事にしています。いやそれはあり得ないだろと自分も思うのですが、じゃあなんで本編ではノーリアクションだったんだって考えると……
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