CyberPunk-OVER the EDGE-   作:コーカサスカブトムシ

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本作を進行するにあたって、ここからサイバーパンク2077本編のシナリオと大きく乖離していきます。個人的な考えのもと取り入れるストーリーとそうでないものがごっちゃになっていくのでご了承を
少し短いですが投稿していきます


再起

 けたたましく鳴り響く歓声、喝采。天地を引き裂くように掻き鳴らされるギターの旋律が会場のボルテージを再現なく引き上げていき、その熱量はピークを一秒毎に更新していく。

 誰もが胸に秘めている怒り。不平や格差、欺瞞に満ちた政に日々悪化していく暮らしと削られていく尊厳。漠然と、漫然とした想いは社会的強者たるコーポにぶつけることも出来ず、ただ燻るだけの火種となる。

 だがこの音楽が、このmemeこそがその着火剤として火をつけ、起爆剤として爆ぜ狂う。悦び、哀しみ、猛り、愉しみ、魂の感情を発露させるように、激しさに火の粉さえ散るようなシャウトがマイクへと叩きつけられる。

 

Never Fade Away!(決して消え去りはしない)

 

 

 

 誰もがその振る舞いに目を奪われる、彗星の如き残光と共に走り抜ける新進気鋭。ただひたすらに堂々と、圧倒的な実力で他を捩じ伏せる。身体を多種多様なサイバーウェアに埋め尽くし、恐れを知らず死地へ身を投じる事を厭わない生粋のサイバーパンク。

 しかし驕る事なく、つけあがる事なく仕事の報酬は組んだ相手へ均等に。定めた流儀を曲げる事なく、ナイトシティのしきたりに真っ向反発する不羈奔放のエッジランナー。

 そして何より深い愛と夢に殉じたその生き様は、少なくない者の脳に鮮烈に焼き付けられる。

 

「君が君の夢を叶えてほしい。それが、俺の夢だ!」

 

 

 

 夢を見た。アラサカタワーに突撃し、その半ばで凶弾に斃れた男の夢を。

 

 夢を見た。アラサカタワーに突撃し、愛する者を救いながらも命を落とした男の夢を。

 

 

 

「っはあっ!? はっ、はっ……はっ」

 

 鼻がひん曲がり、まるごとインプラントを換装してもらいたいような悪臭と共に目が覚めた。荒い息を落ち着けようとするに伴って鼻腔を汚染ガスが突き抜ける。大仕事明けの目覚めにしては最悪だ。

 

「夢じゃ、ないよな……そうだよな」

 

 空は薄くぼんやりと青白む明け方のようで、少し首を傾ければ今もなお煌々と照明の輝くナイトシティが見てとれた。街を織りなす摩天楼は相も変わらず聳え立ち、その上空を飛び回る広告船とここからでも聞こえる車の音。サブロウ・アラサカが死のうとも、ジャッキー・ウェルズが死のうとも、あの街が眠る事はない。

 

「ジャッキー……」

 

 自分はこうして奇跡的な蘇生を果たした訳だが、あいつもそうなっていてはくれないだろうか……なんてどうしようもない考えが浮かぶ。脳天に弾丸を撃ち込まれこそしたが当たり所が良く出血が少なかった、というところだろうか。ジャッキーは、どう足掻いても助からない出血量だった。

 それにしても街へ戻りたいところだが、ここはどこだろう。街の眺めからして郊外ではあるがそう遠くない……バッドランズのゴミ捨て場か。デクスとしては知らぬ存ぜぬを貫きたい立場だろう、俺をここに放り捨てたってあたりだろうか。……バグとあの護衛とも同衾だったらしい、刺激的な3Pだな。

 

「ぐっ、が……おおおっ……」

 

 上半身を起き上がらせると節々からパキパキと音が鳴る。随分と寝心地の悪いベッドだったようだ、レビューには星0を付けてやる。バグにぶち込まれたハックの影響は完全に抜けているようだが、脳天に銃弾が埋まり込んでいるのには変わりない。初めて酒を飲んで、調子に乗って飲みまくった次の日の二日酔いばりに目眩と頭痛が酷い。

 特に頭痛が酷いが……受けた負傷を思えばまだマシな方だろう。寧ろどうしてなんの治療も無く今こうして意識を取り戻しているのか不思議なまである。一体何が起きているのか、兎に角今は……バスでも拾ってヴィクの診療所に転がり込むのが先決だろうか。

 それにしても、なんだか妙な気分だ。今あの夜からどれだけの時間が経っているのかはわからないが、変な夢を見たのもあって時間の感覚が狂っているように感じる。

 

「マンティスは……まぁ使えるか。ヴィクに点検してもらわないとな……」

 

 ジャッキーのヌエは……デラマンでコヨーテ・コホに送る前にあいつの懐に戻した。組んでから初の報酬で買ったアイツのお気に入りで……遺品のようなものだしな。モーテルに持ち込んだレキシントンとリバティは……デクスめ、諸々を纏めて捨てて行きやがったな。死体の下敷きになってるじゃないか。

 

「いや、思ったよりも……キツイか、まだデラマンが、呼べればいいが……っぐ」

 

 銃を回収し、立ち上がろうとしたそばから力が入り切らずにぶっ倒れた。それを何度か繰り返し、漸く立ち上がれるようになった頃には今度は疲労困憊だった。無理もない、昏倒していただけで身体は休まった訳でも癒えた訳でもないんだからな。といってこんな掃き溜めで終わってやる訳にはいかない。

 ふらつきながらも道、とは言えないような比較的ゴミの少ない箇所を縫うようにして歩いて行き、収集車用の通路まで辿り着いたところで一息ついた。匂いはいまだに酷いままではあるが、ここからはまだ歩くのにマシではある。

 

「……車の音、ゴミ捨てか? こんな早くに、いやまさか」

 

 起動出来た強化腱で跳ね飛び、近くの潜伏しやすそうなゴミの側に身を潜める。帰ったら人工肺もクリーニングしてもらわないとな。そうするうちに車のエンジン音は徐々に近づいてくる、どう聞いてもそれは底辺労働者が仕事に使うゴミ収集車のそれなんかではない。勝ち組の人間が乗り回すような高級車のそれだ。

 

(……デクス、可哀想に。結局とっつかまったの……っ、あいつは、サブロウの近衛! 間抜けめ、真犯人はすぐ側にいたぞ)

 

 車から降りて来たのは変わらず肥満体の癖に何処か窶れているように見えるデクスと、紺碧プラザでサブロウの護衛としてAVから共に降りて来た男だった。こんなバッドランズの僻地まで部下も使わず直々にやってくるとは、随分と真面目な事だ。

 デクスはその巨体を引き摺るように先程まで俺が眠っていた辺りに進んでいく。恐らく身柄を確保させようとあの護衛が連行したのだろうが、残念ながら俺はそこにはいない。この後の事を考えると、あの時は殺意に満ち満ちていたが哀れにさえ思えて来た。

 

「な、そんな! 嘘だ! 俺は間違いなく此処に……」

「話が違うようだな」

「待ってくれ、話をさせてく……そうだ! 俺はサブロウ暗殺の真犯人を知っているんだ! サブロウ・アラサカは……」

「知っている」

 

 パァン、と乾いた銃声と共に一つの命が刈り取られた。ナイトシティでは一端の大物フィクサーとして扱われた男も、コーポが相手では風の前の塵に同じってところか。報復は自分でしてやりたかったところだが……本命は『別』にいるから良いとしよう。

 しかし……フム、サブロウ暗殺の真犯人をコイツは知っていると言いやがった。それはつまり俺では無く、『ヨリノブ・アラサカ』こそがサブロウに手を掛けたのだと……まぁ当然か。締め殺されたんだからな、ジャパン風に言うなら吉川線だったか? 絞殺された痕くらいあれだけの手練れなら一目でわかるだろう。

 とするとコイツの目的は、主君の敵討ちってところか? 俺を証人にヨリノブを弾劾する為に、わざわざ自分でやって来たのはその為か。それにしたって、死体からじゃどうしようもないだろうに……俺が『こうなる事』を知っていたのか?

 

「おい、さっさと出てこい」

「……」

「鎌を掛けている訳ではないぞ」

「……」

 

 この呼び掛けに応えるべきかどうか。それは間違いなく、『俺の今後』を左右する事になる。予備心臓なんて高級クロームは入れられない俺が蘇生した理由として一つ思い当たる物がある。任務遂行にあたって俺のソケットに入れた2本のチップ、Relicだ。

 それを開発したのは当然アラサカな訳で……先程状態を確認してみようとチップを排出させようとしたが、つっかえている訳でもないのに出来なかった。俺の身体に何かが起きているんだろう、それを調べるならばコイツの声には乗るべきなんだろうが……

 

『オイ、気が違ってもそんな誘いに乗るもんじゃねぇぞ。アラサカ、ましてやサブロウの飼い犬なんぞとまともなやり取りが出来る訳がねぇ』

『それに関しては俺も同感だ。アラサカなんて自分達以外の事は、良くてもたまに餌やる野良犬扱いだぞ』

 

「まさか、近親にしかまともに作動しないと聞いていたが……どちらかが起動したのか? そうなると、最早此処には……」

 

 なんだこれ。俺の目と耳がイカれていないんなら、目の前にアビエイターを掛けたヒゲ面と、童顔に似合わないムキムキの義体を着けたガキがいる。それなりの声量で喋ってんのにあの元護衛には聞こえていないようだし……やっぱり何処かしらかイカれちまったんだろうか。

 

「アラサカ様……サブロウ様暗殺の犯人は、どうやら例のチップを挿入していたようで……はい、はい? サブロウ様を殺めた盗人を放置など……っ、はっ、わかりました。すぐに戻ります」

 

『丁度いい、あのヒゲも帰ってくみてぇだしな。おいお前、タバコ持ってねぇか? ヤニが吸いたくて堪まんねぇ』

『俺、タバコ苦手だからやめてほしいんだけどな』

『あぁ? 誰に向かって上から言ってやがんだチェリーボーイが』

『なっ……俺だって、それぐらいは……』

 

 ……誰か、この状況を説明して出来ることなら助けてくれないか。




どちらかと言えば話しかけられたから話し出すVとデイビッド、そこにポジショントークで捩じ込むジョニー。兎に角Vの脳内は休まる事を知らなくなる
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