推し。
一昔前は一部の界隈で好きなアイドルやキャラクターを褒める言葉として使われていたが、今では一般でも広く使われ、人だけでなくモノなども対象となっている。
実際、推し活なんて言葉まで生まれる程、この言葉は一般的となった。
人の数だけ推しがいる。当然、俺にも推しはいる。
これまで見てきた作品の数だけ推しはいるが、一人挙げるとすれば、"ダンボール戦機"と呼ばれるメディアミックス作品に登場する、
青いリボンにツインテールが特徴的で、寡黙な雰囲気を醸し出す少女。立ち位置的には主人公の同級生という、所謂サブキャラだ。
メディアミックス作品の為、ゲーム・アニメの両方に彼女は登場している。
しかし、ゲーム無印版では序盤に多少活躍するだけで、後半はほぼ皆無。マイナーチェンジ並びに移植版では仲間に出来るが、条件がクリア後の為、ストーリー的には無印とほぼ変わらず。
続編のWでは、エンディング前に仲間に出来るが、やっぱりストーリー的にはほぼ絡まず。更に続編のウォーズでは対戦相手として登場するのみ。
アニメの方は、第二話から登場するが、構成の都合等で、ゲームのようにイベントバトルをする事がない。
それでも、中盤辺りまではちらほらと登場シーンもあったが、やはり終盤になると出番がなく。
アニメ版の続編となるW並びにウォーズに至っては、最早空気。
と、公式での扱いは恵まれているとは言い難いが、そんな彼女を俺は推している。
その証拠に、作中で使用していた彼女の愛機、LBXアマゾネス。商品化されていない同機をフルスクラッチした。当然、彼女のパーソナルカラーである青に塗装した。
因みに、完成したアマゾネスは、一番思い入れのある機体の為、コレクションケースのセンターに飾っている。
数ある推しの中でも、劇中で使用しているアイテムをフルスクラッチして再現する程熱を入れたのは、思えば彼女だけではないだろうか。
それ程、俺は三影 ミカというキャラに惹かれていたのだ。
さて、ここからが本題だが、そんな推しキャラがある日、目が覚めたら自分の"妹"になってたとしたら、皆さんはどんな反応をするだろうか。
嬉しさのあまり小躍りする、涙を流す、とりあえず頬をつねる。反応は人それぞれだろう。
で、肝心の俺の場合はと言えば。
いつものように目が覚めたら、知らない部屋、知らない両親、そして、原作よりも幼い姿の三影 ミカ。
そして気がつけば、存在しない筈の記憶が次から次へと湧き出し、俺はその情報量の多さ故に脳内処理が追い付かず熱を出して寝込んでしまった。
ぐっすりと一晩寝て、あくる日目が覚めても、やっぱり世界は変わらなかった。
そこで漸く、俺は自分が置かれている状況を理解した。俺は、ダンボール戦機の世界に、三影 ミカの"兄"として転生したのだと。
さて、俺がこの世界に誕生した経緯を振り返った所で、改めて自己紹介させてもらおう。
俺の名は、
あ? 今紅顔の美少年は言い過ぎだろって思った奴、後でちょっと校舎裏にツラ貸せよ。OHANASI、しようぜ。
「にーに、どうしたの?」
おっといかんいかん、隣に
ここは、必殺お兄ちゃんスマイルで心を清めなければ。
「んー、何でもないよ」
ふぅ、心の毒が浄化されたぜ。
と、そうだ。折角なので、ここで脳内紳士の諸君に我が
ご存知、三影 ミカ。今はまだ幼稚園児ながら、単語ごとに区切って片言で話す、あの独特の口調は既に健在だ。
また、原作同様に青いものが好きらしく、今日もお気に入りの青いリボンの髪飾りを付けている。
なお、まだツインテールが出来る程ミカの髪は伸びていないが、ショートヘアのミカも……、いい!
因みに、幼稚園児ながら既に原作のような大人びた雰囲気を感じさせるものの、やはり年相応の一面もあり、特にこの間一緒にプリンを食べた時に見せたあの天真爛漫な笑顔の威力と言ったらもう、熱血と必中をかけたサン・アタック並で──。
おっと、いかんいかん、話が脱線してしまった、閑話休題。
「にーに、何、見てるの?」
「ん? ミカは相変わらず可愛いなって思ってさ」
あ~、照れる表情もまた可愛いなぁ。
あぁ、こんな愛らしい妹と、手を繋いで夕食のコロッケを買いに行けるなんて、俺はなんて幸せ者なんだ。
こうして、改めて幸せを噛みしめる事暫く。
俺とミカは、俺達家族の住む町、ミソラタウン内にある商店街、ミソラ商店街に到着した。
夕食の買い出しで溢れる人々の間を縫うように進み、俺とミカは目的の精肉店に辿り着く。
あぁ、店内から漂う揚げ物の匂いが腹の虫を刺激する。
「おじさん、コロッケ下さい!」
「ください」
「お、兄妹二人で仲良くお使いかい? 偉いねぇ。ちょっと待ってな。……、はい、コロッケお待ち! それと、お使い頑張った二人に、コロッケ一個づつ、おまけしといたよ!」
「ありがとうございます!」
「ます」
恰幅の良い精肉店の店主の屈託のない笑顔に見送られながら、目的の物を入手した俺とミカは、帰路につく。
揚げ物の匂いで食欲を掻き立てられたのはミカも同じようで、早く帰って出来立てのコロッケを食べたいね、何てミカと話しながら歩いていると、ふと、とある店舗が目に入った。
それは、原作で主人公たちが足繁く通っていた模型店、始まりの場所とも言うべき、キタジマ模型店だ。
「あ……」
そんなキタジマ模型店の店先に置かれた看板。
そこに書かれていた新商品情報に、俺は目を奪われた。
次世代型ホビー用小型ロボット、
この世界の根幹とも言うべき存在、それが遂に、満を持して登場する。
その文言を目にした時、俺は、この世界の運命の歯車が動き出すのを感じ取った。
(いよいよ、始まる、のか……)
転生したと言っても、チートのチの字も貰ってない俺というイレギュラーが、何処まで物語に関わる事になるのかは分からない。
だが、備えあれば憂いなしとも言うし、備えておくに越したことはないだろう。
と言っても、今はまだLBXも発売されてないし、何より、発売されても今の俺の年齢じゃ、両親の許しも出ないだろうな。
何より、予定価格の数字には目を見張る。ゲームなんかじゃ主人公がほいほいとパーツを買ってたが、ホビーとはいえLBXって
ま、価格については流行して生産体制が強化されれば下がっていくだろうから、そこまで問題でもないけど。
という訳で、暫くは、先駆者さん達が頑張って出回るであろうバトル動画等の情報を使って、LBXを手に入れた時の為のシミュレーションだな。
「にーに、どうしたの?」
「ん? 何でもない。さ、早く帰ろっか、コロッケが冷めちゃうもんな!」
「うん!」
そう、まだ物語は動き出したばかり、本格的に動き出すまでにはまだ幾ばくかの猶予がある。
ならば今はただ、
お久しぶりでございます。
心身は健康そのものなのですが、モチベーションの方が夏の暑さでバテてしまいまして……。
とりあえず、モチベーションの回復を図りつつ、新作の投稿です。
更新は不定期となりますが、今後とも、よろしくお願いいたします。