子供の頃は時間が進むのが遅い、なんて大人になって感じてたが、あえて言おう! あれは間違いだったと。
何故なら、時が経つのはあっという間だと、再び子供に戻った俺が感じているのだから。
いや、でも待てよ。もしかして、体は子供でも、心は大人だから、結局時が経つのは早いって感じてるだけなのでは……。
ま、どっちでもいいか。
という訳で、おっす、おら三影 カイト。今年の春からミソラ第二中学校に通ってる、ピカピカの中学一年生だ。
因みに学校生活の方は、ま、頭脳は大人だからな、中学生の授業なんて余裕余裕──。と、言い切りたい所だが、なかなかどうして、色々と学び直しております、はい。
そんな環境の変化を語った所で、実はもう一つ、俺の私生活に劇的な変化をもたらす出来事が起こった事を報告しよう。
それが、念願のLBXを手に入れた、というものだ。
いやー、思い返せば苦節幾年、本当に、この日が来るのをどれ程心待ちにした事か。
というのも、原作でも描かれていた通り、販売開始から暫くしてLBXの事故に関する様々な事例が取り沙汰されるようになり、結果、LBXは一時販売中止。
強化ダンボールの開発・発表と、その技術を応用したLBX専用のバトルフィールド、Dキューブの開発で、数年前からLBXは再び販売を再開したのだが……。
俺の両親も含め、世間ではまだLBXは危険な玩具って認識も少なからず残ってる訳で、そんな状況で両親を説得するのには本当に骨が折れた。
だが、時に情熱的に時に優しく丁寧に、根気強く説得を続けた結果、学業を決しておろそかにしない、なんて条件も飲まされたが、中学の入学祝に自分だけのLBXを買ってもらえたという訳だ。
そうそう、気になる俺の愛機となった機体はというと、生みの親にして業界のトップを走るタイニーオービット社製の戦士型LBX、ウォーリアーだ。
一応、候補の中には前世でもフルスクラッチした、同社製の女戦士型のLBXアマゾネスも入っていたのだが、どこぞのメダルで動くロボットのように女性型のパーツってお高かったのよねぇ。
という訳で、お値段的にも性能的にもちょうどいいウォーリアーに決定した次第です。
こうして、今年の春からめでたくLBXデビューを果たした俺。
とは言え、実はこれでもデビューは遅い方なのだ。何故なら、クラスメイトの大半は、販売再開時にデビューを果たしているのだから。
因みに、クラスメイトに早期デビューの秘訣を聞いた所、テストを頑張ったりお手伝いを頑張ったご褒美だという。
こんな事ならもう少し勉学に勤しんでおけばよかったと、それを聞いた時に後悔した事はここだけの秘密だ。
にしても、本当にLBXの人気、えげつないよ。
今やその人気は飛ぶ鳥を落とす勢いで、日本を飛び出して世界レベル、しかもなんと今年から、アルテミスと呼ばれる世界大会が開催される事となり、第一回大会がギリシャのアテネで開催される。
ま、自分の手で意のままに動かせるロボットとか、熱中しない訳ないよなぁ。
かくいう俺も、まだデビューして日は浅いものの、時間を見つけては対戦相手を探す程、LBXバトルがしたくて仕方がないのだ。
この気持ち、まさしく愛だ!!
と、
今年からアルテミスが始まるという事は、原作で主人公たちが出場したのが第三回大会だから、逆算して、原作本編が始まるまでに残された時間はあと二年という事になる。
長い様で短い二年間。何処まで腕を磨けるかは分からないが、やれることはやるつもりだ。
「じゃ、当番の人は掃除をよろしくって事で」
「起立、気をつけ、礼!」
おっと、なんて決意表明していたら本日の授業も無事に全て終了し、楽しい放課後ライフが幕を開けた。
「じゃぁな三影、また明日」
「またね~、三影くん」
「またなー」
掃除当番や特に理由もなく居残るクラスメイトと別れの挨拶を交わし終えた所で、数少ない荷物を手早くバッグに詰め、俺は教室を後にする。
いやー、前世よりも時代が進んだ恩恵で、紙の教科書やノートが必須ではなくなり、必要な荷物の量が減ったのは本当に有難いな。
「よし、行くか!」
下駄箱で靴を履き替え気合を入れた所で、学校を後にしその足で俺が向かったのは、最近行きつけの場所であるゲームセンター。
と言っても、クレーンやレース系などのゲームを遊ぶために足を運んだのではない。
ここには近年のLBXブームの流れを受け、LBXバトル用のスペースが設けられている。俺はそこで、色々なプレイヤーとバトルをするべく足を運んだという訳だ。
「さてと、いるかな……」
ゲームセンターに足を踏み入れると、早速LBXバトル用のスペースに足を運んで対戦相手を物色し始める。
すると、丁度俺と同じように対戦相手を探していそうな同学年と思しき男の子を見つけた。
「「!」」
刹那、俺はその子と目が合った。
目と目が合ったらバトル、常識だよなぁ。
互いに示し合わせたかのように、自然とスペース内に設置されたDキューブの前に移動する。
「レギュレーションは?」
「スタンダード」
「OK」
LBXバトルにおける戦闘ルール、レギュレーションを決めると、互いの愛機を取り出し、Dキューブ内に投下する。
「ウォーリアー、発進!」
「いけ、ムシャ!」
二つの機影が、Dキューブ内に広がる草原に降り立つ。
ほぉ、相手の機体はサイバーランス社製の武者型LBX、ムシャか。
装備は斬馬刀。成程、相手にとって不足はない。
「いくぞ!」
ムシャの基本性能はウォーリアーと大差ない。勿論、プレイヤーのカスタマイズとチューニングで、LBXの性能は飛躍的に向上する事もあるが、今回の相手はそうではないと俺は踏んだ。
なので、ここはこちらから仕掛けさせてもらう。
銃やハンマーなど、色々な武器を試した結果、一番しっくりきた、片手剣のブロードソードと小型の盾のライトバックラー。
その二つを装備した俺のウォーリアーは、機動力に重きを置いたチューニングと相まって、軽快に草原を駆ける。
と、相手のムシャ、斬馬刀を構え直して迎撃の構えを見せる。
しかし、スタート地点から動くことなく迎撃の構えとは、それは悪手と言うものだよ、少年!
「とりゃぁ!!」
「何!?」
互いの間合いに入り、ムシャが装備した斬馬刀を振り上げた、次の瞬間。
ウォーリアーは、ムシャ目掛けてスライディングキックを繰り出した。
おそらく、相手は俺がライトバックラーで受け止めると踏んでいたのだろう。まさかのスライディングキックに驚き対応が遅れ、ムシャが見事に転倒する。
「もらった!」
好機到来とばかりに、ウォーリアーがブロードソードを振るうも、相手もしぶとく、咄嗟に斬馬刀で受け止める。
しかし、無理な体勢でいつまでも受け止められる訳もなく。
やがて斬馬刀は、ブロードソードの一閃により弾き飛ばされる。
「いまこそ必殺の天空中心剣──、じゃなかった! 必殺ファンクション!!」
〈アタックファンクション、ソードサイクロン〉
刹那、高速回転するウォーリアーが斬撃の渦を巻き起こし、ムシャはその渦の中に飲み込まれる。
やがて、装甲中傷だらけとなったムシャが地面に叩きつけられると、ブレイクオーバーを知らせる青白い光を放つ。
その瞬間、俺の
「っしゃぁ!」
「負けちまった……」
「でも、君もいい動きしてたぜ。バトル、ありがとうな!」
「いや、こちらこそ、応じてくれてありがとう!」
バトルが終われば、LBXを愛する者同士、固い握手を交わす。まさにノーサイドの精神ですわ。
こうして、バトルを終えて対戦相手と別れた俺は、ふと現在時刻を確認する。
ふむ……、この時間なら、まだもう一戦位できるな。
となると、また新たな対戦相手を探さないと。
「おい、そこのお前!」
という事で、再び物色を始めた矢先、不意に、誰かに声をかけられる。
一体誰だ? 声のした方へと振り返り、そこで俺が目にしたのは──。
「……え」
素肌に長ラン、下駄を履いて木刀を所持という、どう考えても一世紀ほど時代がズレてる、そんな格好をしている人物。
どう見ても関わり合いになりたくない人物だが、生憎と、俺はこの人物の事をよく知っている。
この人物こそ、後に"地獄の破壊神"の異名で学校内で恐れられ、我が
にしても、何故、郷田の奴がここに? いやそれよりも、どうして俺に声をかけてきた?
俺は郷田に目を付けられるようなことは何もやってない筈……、だぞ。
「ちょっと俺と付き合え!」
えっ、ヤダ、強引っ!
刹那、有無を言わさぬ気配を前に、俺は従うしかなかった。