ザクIIを手に入れてから数日。
この間、俺はザクIIの性能を見極めるべく、ゲームセンターやスラム等でバトルに明け暮れていた。
ではここで、幾多ものバトルを経て導き出したザクIIの性能を発表しよう。
基本性能としては、以前使っていたウォーリアーよりも高く、操作性も扱いやすい。ただ反面、突出した箇所がなく、まさに凡庸とも言える。
ウォーリアーやムシャ、またある程度のカスタム機ならば、現状でも戦えるだろうが。最新鋭機や、一点物の試作機、更にハンドメイド型相手では、少々厳しいかもしれない。
という事で、この結果を受けて俺が導き出した結論、それは、格上相手にも戦えるように全面的な改良を行うというものであった。
思い返せば、以前使っていたウォーリアーはコアパーツの編成見直しやチューニング等は行っていたが、外観まで含めた改良を行うのは今回が初めてだ。
不安がない、と言えば噓になる。
だが、俺は前世でアマゾネスをフルスクラッチした経験もあるし、これまで雑誌やネットの動画等を見てパーツの製造方法の知識は一通り学んできた。
──だから、なんとでもなるはずだ!!
と、意気込んだのが一週間ほど前の事。
改良作業を始めるにあたり、方向性を決めぬまま作り始めると迷走するので、先ずは方向性を決めるとことから始まった。
と言っても、ザクIIは量産機を代表すると言っても過言ではない機体、故に、同機には様々な派生型が存在している。なので、それらを参考に、自分のバトルスタイルに見合った改良を行う、という方向性に決まった。
こうして方向性が決まれば、次は必要な部品や道具の調達だ。
と言っても、これもアキハバラに行けば必要な物は買い揃える事が出来たので、特に問題もなく調達する事が出来た。
そして、これらの段階を経て、遂にパーツ製造の作業を開始した訳だが……。
え? 進捗どうですかって?
んなもん駄目に決まってんだろうが此畜生!
作業を始める前、所詮LBXもプラモの延長線、だからパーツ作りなんて楽勝だ、なんて楽観視していたのは事実だ。
だが、実際に作業を始めると、それが甘い考えであったと痛感させられた。
プラモのように見えても、やはりLBXはれっきとした"ロボット"。単にパーツが嚙み合わないから削ったり貼ったりで済むものではなく、そこに配線問題も絡んでくる。
なので、配線が干渉しないように見直し、更に嚙み合わせを見て削ったり貼ったり、また全体のバランスを見て細かな修正を繰り返し繰り返し。
もうね、一週間程度で完了するものじゃないですよ。
「あー、づかれだぁ~」
しかし、確かに進捗は遅いものの、着実に出来上がっているという実感はある。
そうだ、まだ時間はあるんだ、焦る事はない、ゆっくり着実に仕上げていこう。
「あ~、首や肩がバキバキだ……」
それに、そろそろ俺自身も一息入れないと、ザクIIの改良が完成する前に俺自身が体を崩しかねない。
思い返せば、この一週間と言うもの、学校から帰れば食事と風呂とトイレ以外、ずーっと自室にこもって作業に没頭してたし、おまけに睡眠時間も可能な限り削ってたもんだから、日中は眠いのなんの。
という事で、明日は週末で丁度学校も休みだし、リフレッシュを兼ねて、久々に何処かに出かけてみるとするか。
翌日。
久々にスッキリとした朝を迎えた俺は、爽やかな朝を愛しの家族と分かち合い──。何だかミカが、最近の引きこもりの反動でおかしくなったのではと、俺の事を冷めた目で見ていた気がするがそれは気のせいという事にして。
支度を整えた俺は、爽やかに自宅を後にして、晴れやかな空の下、散策を始めるのであった。
「いや~、世界って、こんなにも美しく輝いていたんだなぁ!」
不思議だ、いつも見慣れていた筈の景色なのに、何だか今日はいつもよりも輝いて見える。
そんな感動を覚えつつ、足を運んだのはミソラ駅の周辺。
このまま町内を散策するのもいいし、電車で遠出するのも悪くない。さて、どうしたものか。
「ん?」
どちらにしようか、駅周辺を歩きながら考えていると、ふと、何処からか歓声の様な声が聞こえてきた。
その声が気になった俺は、声のする方へと足を進めていく。
「こっちか?」
まるで声に誘われるように、俺は人気のない細い路地を進んでいく。
やがて、細い路地を抜けた先に待っていたのは、俺にとってはどこか懐かしさを感じさせる、レトロな雰囲気漂う裏路地であった。
「はえ~、駅の近くにこんな場所があったとはな」
地元にまだ知らぬ場所があった事に驚きと感動を覚えつつも、俺はそんな路地裏の一角から聞こえてくる声の方へと足を進め続けた。
「ここ、か」
程なく、俺は声の発信源である建物の前で足を止めた。
出入り口の上部に取り付けられた看板、そこに黒く大きな文字で書かれた遊技場の文字。
店先から店内を覗くと、射的やパチンコ台等、まるでここだけ時の流れが止まっているかのような錯覚に陥る程、レトロな空間が広がっていた。
この懐かしさが新鮮で感動するとは思うが、歓声を上げる程熱狂するものがあるとは、とても思えない。
「ん~。でも、確かにここから聞こえるよな」
しかし、耳を澄ませれば、確かにこの店の奥から歓声が聞こえてくる。
「……行くか」
深呼吸をして、意を決した俺は、店内へと足を踏み入れる。
店内に足を踏み入れた俺は、営業中にも関わらず人気のない店内を歩き、声の聞こえる店の奥へと進んでいく。
そして、店の奥に進んだ俺は、歓声が上がるその理由を目にし、目を見開いた。
「な、ここは!?」
店の奥に存在していたのは、先ほどのレトロな空間と同じ建物内とは思えぬ程、近代的な空間。
360度、壁一面に設置された巨大スクリーン。そこには、今し方中央のステージで行われているLBXバトルの様子が大迫力に映し出されている。
そして、巨大スクリーンのバトルを観戦している数多くの観戦客が、バトルの内容に一喜一憂していた。
「ここは、一体……」
「何だいあんた、新顔かい?」
あまりの変化に俺が呆気に取られていると、ふと、誰かが声をかけてくる。
声の方へと視線を向けると、そこには、観客席に座る小さな女の子の姿があった。
「丁度いい、今日は気分がいいから、アタイがここがどんな場所か説明してやるよ」
すると、女の子はここがどの様な場所かを説明し始めた。
曰く、ここはお行儀の良いストリートバトルじゃ満足できない連中のたまり場で、ここでのバトルは基本、LBXの破壊も厭わぬアンリミテッドレギュレーション一択。
まさに、ブルーキャッツの地下にある地下闘技場のような場所という事だ。
「という訳だ、分かったか?」
「あぁ、大体は……。所で、"お嬢ちゃん"」
「っ!」
「いくら刺激を求めたいと言っても、君みたいな小さな子が、こういう危ない場所に一人で来ちゃ危ないよ」
説明を受けてこの場所がどういう所かを理解した所で、俺はふと、気になっていた事を口にした。
すると、彼女は体を小刻みに震えさせたかと思った、次の瞬間。
「アタイはもう小学"六"年生だ! 子ども扱いするな!」
彼女は驚きのカミングアウトを行った。
いや、小学六年生はまだ子供って……え、ミカよりも年上、俺と一つしか違わない、だと!?
どう見てもミカより年下、小学校低学年ほどに見えるが。
「ほら、これが証拠だ!」
どうやら俺が子ども扱いした事が癪に障った様だ。
彼女はポケットから一枚のカードを取り出すと、俺に提示してみせた。
そのカードは所謂学生証であり、在学している学校名と学年、そして彼女の氏名が記載されていた。
貼られた顔写真は確かに彼女本人だし、認印等、何処からどう見ても、玩具なんかじゃなく本物だなこれは。
確かに、彼女は小学六年生で間違いない様だ。
だが、驚くべきは彼女の実年齢と体格の不一致などではない、彼女の名前。
そう、学生証に記載されている名、その名は、
そうだ、原作において郷田が率いていたゴウダ三人衆の一人で、郷田が卒業した後はミソラ二中の番長の座を引き継いだ、あの矢沢 リコだ。
確かに見返せば、原作とは違いセミロングながらも、あの綺麗な金髪。それにあの目を引く赤い特攻服ではないにせよ、あの幼女体型は、間違いない。
まさか、こんな所で、またもや原作キャラクターに出会う事となるとは。