ポケモンに翻弄される現代社会、あるいはのうてんきミュウツー   作:ミュー(なきごえ)

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今話は、優しい世界を求める場合は見る必要はあんまりありません。


閑話 破壊の落とし子、落日の夢

 

 一体、なんでこうなってしまったのだろう。

 

 かつてビルだった建築物の残骸を利用して作られた防壁を眺めながら一人ごちる。

 いまや、世界中で繁栄していた人類の文明の火は消えかけ、急場しのぎの防壁の中でなんとか都市機能を延命しながら暮らしていた。

 昼夜問わず狂乱するポケモンたちの襲撃に怯えながら、まだ狂っていないポケモンの力を借りてギリギリで生きている。

 そうなってしまった原因は……ある意味では私自身だ。

 

 某国が、人間に協力的な圧倒的強さのポケモンとしてミュウツー()のクローンを生み出して使役しようと考えた。

 もちろん、当時の科学技術でポケモンというとんでも生物のクローンを作るのは夢物語。

 ゆえに、同じくポケモンの力をもってその計画は進められた。

 へんしんポケモン”メタモン”。

 全てのポケモンの因子を持つという幻のポケモン”ミュウ”の他で、唯一『へんしん』のわざを使うことのできるポケモン。

 クローンの培養槽はおおよそ62匹のメタモンを犠牲にして、調えられた。

 私の知らない間に採取された体組織を元にクローンは順調に育ち、大きな問題もなく完成した。

 ……問題があるとするのなら、クローンには私の精神は無く、ただ純粋なる破壊衝動のみであった事だろう。

 

『はかいのいでんし』、ミュウツー()を構成する因子であり、ポケモンの攻撃性を格段に高める代わりに正気を奪う。

 かつてポケモンの世界で” 体はつくれても優しい心をつくることはできなかった”と評されたそれでできたクローンは、研究所を、某国の街を、目につくもの全てを破壊せんとする衝動を持って世界に生まれ落ちた。

 破壊衝動のままに行動する”彼”は時に自らも傷つけたが、圧倒的な”じこさいせい”能力をも持ち合わせていたが為に傷だらけになりながら暴れ続ける。

 その体液にも高い濃度の『はかいのいでんし』が含まれており、”彼”が暴れた地域のポケモンは暴走をはじめ、多くの都市が暴れるポケモンたちによって灰燼へと帰した。

 

 私も止めようとしたが……私が強いサイコパワーを使おうとすると、”共鳴”した”彼”──────便宜上、私と区別するために同種ではあるが『ミュウスリー』と呼ばれている──────を誘引してしまうから、結果的に被害は減らせなかった。

 この街が今も何とか小康状態を保っているのは私の他に3匹の強力なポケモンが居るからだ。

 ミュウスリーを引き寄せない為に私が使える能力は制限され、戦闘には金属の装甲と銃火器などの武装を併用せねばならない。

 ”アーマードミュウツー”にしても物騒だな、と思うのは、現実逃避からだろうか。

 

《すまないな、貴重な武装なのに》

 

 前の戦闘で壊してしまった右腕の装備を整備していた技師に礼を言うと、申し訳なさそうに返される。

 

「いえ、守護者殿の安全が第一ですから。……言いにくいのですが、補給は今回で最後になります。弾薬の備蓄が底をつきました」

 

《そうか……よく今までもった、というべきか》

 

 以前は城塞化した工業地帯で弾薬も生産されていたが、狂乱したポケモンが放った”マグニチュード10”によって壊滅して久しい。

 装備の新調もできず食い合わせで騙しながら来たが……ついに弾切れか、来るものが来たということだな。

 

《最終作戦の前に補給ができただけで十分だ。……今まで世話になったな》

 

「これが、戦えない私のできる職務ですから」

 

 そう言う技師の片足は義足だ。

 原因を聞いたことはないが、このご時世だ。ポケモンが関わっていないことはあるまい。

 あるいは私に恨みをぶつけてもおかしくないのに、真摯に接してくれたことには感謝しかない。

 技師は退出前に”最終作戦前に三賢の方々もお見えになるそうですよ”と伝えてくれた。

 ”三賢”か、彼らも偉くなったものだ。

 

 

 

《ボクらと一緒にフーディンも顔を出したがっていたんですが……散発的な襲撃があって指揮所を離れられないそうです》

 

 そうテレパシーで告げるのは、サーナイト。

 相棒のフーディンは指揮所の要だから、襲撃があるなら来れないのも仕方ない。

 彼ならその頭脳で、通常の襲撃程度なら捌いてしまえるだろう。

 

《みぎて~、だいじょうぶ~?》

 

 心配してくれるのはヤドラン。

 普段、最前線に出て皆の盾になる役割をしている彼女の方が心配されるべきだと思うが。

 

《最終作戦が成功したらすぐに戻ってきてくださいよ! ボクは本当は後方要員なんですから!》

 

《げんきがいちばん~、だ~よ~》

 

《ああ、どう転んでも、次が最後の戦いだ》

 

 最終作戦では私がサイコパワーを全開にして、逆にミュウスリーをおびき出す。

 戦闘の間、激化するだろう他ポケモンの襲撃を防ぐのが彼らの役目だ。

 配置につくまでの時間はそう長くない。

 サーナイトは言いたい事を言ったらさっさと持ち場へ向かったが、ヤドランは残ってジッと私を見つめていた。

 

《もしかして~、おわかれ~?》

 

《……ッ!》

 

 ……ズルいなぁ、一番鈍いようで、一番鋭い。

 ”内緒だよ? ”と伝えると、《かなしいの~》とテレパシーで答えながら彼女も持ち場へ向かう。

 

 最終作戦、ミュウスリーと私がガチでやり合って何とか体力を減らした瞬間を狙い、特製のボールに一瞬でいいから奴を捕らえる。

 奴が本能で存在を縮小したら、”サイコブレイク”で物理的にボールごと消滅させるのだ。

 もし作戦が成功したら、生き残った人間の守護者としての私にもケリが付けられる。

『はかいのいでんし』は元々私由来のもの。

 私が居る限り、いつでも状況は今に逆戻りしてしまう。

 

 かつて、人とポケモンの架け橋を目指した者として、人とポケモンの間を引き裂く私の因果を、断ち切らなければならないのだ……! 

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

《……という夢を見たんだ》

 

「……(白目)」

 

 エスパータイプのポケモンが見る夢を研究しているというので、最近見たやたらリアルな夢について話したら白目をむいてしまった。

 ごめんて、私がそういう風に思ってるわけじゃないんだって。

 

 

 後日、警護がしばらく厳重になったりやたら優しく接されたりした。

 いや、だから夢なんだって、あくまで夢の話なんだよ!? 

 

 どっとはらい。

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