ポケモンに翻弄される現代社会、あるいはのうてんきミュウツー 作:ミュー(なきごえ)
どーも、ミュウツーです。
ウチに派遣されてきたエスパータイプのポケモンたちは基本的には人との交流の学習に来ているのだが、サイコパワーの成長のためにも定期的な戦闘訓練が課されている。
通常は警察とか自衛隊とかSPが持ってるポケモンとの試合だが、マンネリになるといけないと思い、10回に1回くらいは私が受け持つことにした。
もちろん本気でやりはしない、怪我しちゃ元も子もないしね。
ケーシィは攻撃手段が無いのでテレポートでとにかく避ける訓練、ヤドンは機敏に動けないので”ねんりき”で押し合う訓練、消去法で普通の戦闘訓練ができるのはラルトスだけである。
先手はラルトスに譲っているので、彼が攻撃しないと始まらないのだが、開始前にテレパシーで何度も念を押してくる。
《いいですか! 本当に手加減してくださいよ! ボクはか弱いんですからね!?》
《安心しろ、みねうちだ》*1
《サイコパワーのどこにみねがあるんですかぁーっ!》
みね? ……そんなもの、ウチにはないよ。言いたかっただけです。
まあサイコパワーの出力はめちゃくちゃ絞ってるから、たぶんレベルにして10くらいまで。
《くぅっ、こうなったら!》
覚悟を決めたラルトスが飛び出すと、その姿がぶれて無数の残像が現れる。
”かげぶんしん”か、前回の訓練では”さいみんじゅつ”で終わらせようとして”しんぴのまもり”に阻まれたから回避率を上げに来たんだね。
《どうですか! これならどれが本物のボクか分からないでしょう。あとは制限時間まで逃げれば……》
でも残念、”スピードスター”どーん!
《ぎゃわ────っ!?》
星形の光を受けて分身に紛れていたラルトスが吹っ飛ぶ。
…………やっば、この技はサイコパワー関係なかったわ。
救護班! 救護班──っ!
▼▲▼
訓練終了後、”げんきのかけら”で復活したものの、頬を膨らませてご立腹の
そう、今回の訓練の成果でついにラルトスは進化したのだ! ……あまり喜ぶと感情を読めるキルリアの機嫌が底の底に下がるのでほどほどにしておこう。
”きずぐすり”をつけて包帯を巻いているからそのうち治るだろうが、軟膏状のきずぐすりの欠点として効き始めは効果がじんわりとした感じなんだよね。
そういうわけで、現在私は不機嫌なキルリアに指先をちゅうちゅう吸われています。
……いや、別にやましい事じゃなくてね。直接的な生命エネルギーの補充として”ドレインキッス”を受けているんです。
”すいとる”や”メガドレイン”のような吸収回復攻撃わざは、体液とかを啜ってるわけではなく生命エネルギーを奪うのが主目的のようで。
もちろん”きゅうけつ”とかはより効率的に生命エネルギーを吸うために嚙みついているので痛みが半端ないだろうが、”ドレインキッス”くらいなら体力差もあるし許容範囲内である。
ただ、絵面が非常にヤバイ。
女の子っぽい姿のキルリア(性別:♂)に指先を吸わせているミュウツー(性別:ふめい)とそれを見守る護衛の人たち(ほとんど男)とか……地獄かな?
なんというか……すごく気まずい。
思わず護衛の人たちに視線で助けを求めるが、秒で視線をそらされた。
くっ、味方はいないのか……!
奇妙な居心地の悪さからの救世主はのっそりとやってきた。
《みんな~おわった~~?》
《あ、ヤドンちゃん。終わりましたよ》
一気に緩む空気、ヤドンはいい意味で空気を壊してくれるから助かる。
キルリアも同期の中ではケーシィよりヤドンと仲がいいので機嫌が和らいだようだ。
《ゆびなめて~どうしたの~?》
《ミュウツーさんに傷つけられたので、その分返してもらってるだけですよ》
《わたしも~じぶんのしっぽのさきなめるのすき~~あまい~の~》
訓練を思い出してキルリアの機嫌がまた下がりかけるが、それに気づかないヤドンが幸せそうな顔で話すのでキルリアも毒気を抜かれている。
彼女はマイペースだけど、それが逆に助かるなぁ。
キルリアの機嫌が多少戻ったのを見計らい、私は戦闘訓練場からの撤収を告げた。
それから5日後……
《……あれ~ラルトスちゃん~~せがのびた~~?》
《え、今になってそれ言います?》
……うん、どんかんさも含めて個性だからね!