ポケモンに翻弄される現代社会、あるいはのうてんきミュウツー 作:ミュー(なきごえ)
洞窟の外に出てみて思った、ヒスイ地方じゃないじゃんね。
ビルも普通にあるし、線路や道路もある。
森や林のあちこちにはポケモンの姿はあるが、外を行きかう人の姿が無い。
あまり気は進まないが、エスパータイプのテレパシー能力で周辺の意識を読んで情報を集めてみた。
ありゃー……『LEGENDS アルセウス』じゃなくて『G●TE』とかそっちの現代パニック系ですねこれは。
1週間ほど前にポケモンたちが突如出現、現在政府から厳戒態勢で不要不急の外出自粛が指示されている。
そして何より、この世界の人間には”ポケモンの知識がない”のだ。
アルセウスも人間以外の生き物を全部ポケモンに置き換えるとかしてないのが唯一の救いか。
ポケ食はいろいろと意見が分かれるところだからな……
何はともあれ、こうなれば早急に『偉い人』にポケモンについて伝えなくては!
……というわけで、最寄りの市役所に入ってアポイント取ろうとしたら、そりゃあ大パニックよ。
最初の反応は、街に降りてきたクマみたいだった(白目)
私がミュウツーでテレパシー使えなかったら詰んでたんじゃね?
そこからは市役所の人が上手いこと偉い人に連絡を取ってくれて、トントン拍子で詳しい話をするための場所へ案内された。
思った以上にスピーディに事が運んで、市役所の方々には感謝しかない。
……偉い人を待ってる間に気が付いたけど、もしかして私の態度でポケモンも推し量られちゃう?
ただでさえ特性が『きんちょうかん』になりそうな感じなのに……
私は劇場版、私は劇場版、私は劇場版……よし落ち着いた*1。
とにかくポケモンについて良いところを伝えるんだ!
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日本の内閣総理大臣、田頭 聡。
任期2年目に入って、このような大事件が起きたことでほぼ眠れない日々を過ごしている。
世界中で突如現れた大量の謎の生き物。
日本もまた例外ではなく、各地で謎の生物との遭遇報告が相次いでいた。
幸いにも彼らは攻撃性の低い個体が多く、攻撃的な個体も縄張りの外まで追いかけてきたりすることは少ない。
それでも不幸な事故を防ぐため、警察・消防・自衛隊は各地で奮闘、生物学者たちは少しでも情報を集めようと必死に動いていた。
そんな中にT県知事から政府に挙げられた報告。
”謎の生物”側から人間への知性的接触の報だった。
信じがたいことに、謎の生物は『精神感応』……いわゆるテレパシーで現地の人々に意思を伝えてきたとのことである。
遭遇報告書では物理法則的に不可解なものも居るとのことだったが……テレパシーまでとは恐れ入る。
恐怖がないとは言わないが、相手は理性的にこちらと接触を図ろうとしていて、情報は今まさに我々が喉から手が出るほど欲しいものだ。
官房長官は自分が応対するというが、今後この応対が基準になるかもしれないことも考えれば正式な会談とする方がいい。
──────そうして行われた謎の生物と人間との、歴史的会談。
向かい合うように席に座った相手は大まかには人型ではあったが、3本しかない指・存在感を持つ尻尾・角のようにも見える頭の突起などやはり人間ではないことをまざまざと見せつけていた。
最初の挨拶で初めて相手の名が『ミュウツー』ということと、頭の中に直接響くテレパシーを知った。
会談で真っ先に出たのはやはり”貴方たちは何者なのか、なぜ突然現れたのか”ということだった。
前者に対する答えは明瞭で《私たちはポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれていた生き物だ》というもの。
後者への答えはやや不明瞭で、”正確にはわからないが”と文言が前に付いた上で《ポケモンの世界とこの世界が混ざってしまったのだろう》とのことだった。
世界が、混ざる。
理解の範疇を超えた現象を軽く語るミュウツーに”原因に心当たりがあるのか、戻す方法は考え付くか”という問いが出たが、彼は想定していたようですぐに答えてくれた。
《原因はポケモン世界の宇宙の創造神”アルセウス”のみが知るだろう。戻す方法もアルセウスなら知るだろうが、会うには手順を踏む必要がある》
初めはポケモンたちの宗教観を持って回った言い方をしているのかと思ったが、『宇宙の創造神と会う方法』の手順が確立しているとなると話が違う。
”貴方の世界には神が実在するのか”という問いは《ポケモン世界では伝説に残る強力なポケモンが神と呼ばれている》との答えに押し黙ることになる。
つまり今の騒動は、あちらの世界の”宇宙を創った”と言われるほど強力なポケモンとやらが関わっているかもしれないらしい。
すぐに”そのポケモンと会う方法を教えてほしい”と言ったが、《元の世界の特別な場所で行う必要があるため、この世界のどこでやればいいのかわからない》と光明は消えた。
そうなると、我々はまずポケモンとは何かを知らなければならない。
幸いなことに、ミュウツーは聞かれることほぼすべてに時折考えながらも答えてくれた。
だが、結果はどうだ?
ミュウツーのようにテレパシーや念力を使える者のみならず、火を吐く者、電気を発する者、毒を生成する者など危険性には枚挙に暇がない。
その上、体力の限界が来ると存在を縮小して消えるように隙間に隠れるから殺すことは至難、だと?
駆除もできない危険生物が山ほど…………眩暈がする思いだ。
唯一の対抗策は、ミュウツーが作ったという『モンスターボール』だろう。
一連の騒動と同時に生えたという謎の植物の一つ、向こうの世界で『ぼんぐり』と呼ばれた木の実を加工した道具。
これを弱らせたり、力を認めさせたポケモンに投げれば、存在を縮小して内部に入らせて、持ち主との主従関係を刷り込むことができるらしい。
刷り込みは最低限であって無条件で従うほどではないらしいが、危険生物を制御する方法があるのは朗報だ。
有効な対策が見つかり会議室が喜びに沸く中で、一人の官僚がおずおずと口にした”それはあなたも捕らえる可能性があるのでは? ”という言葉に場が沈黙する。
《なんだ、捕まえたいのか?》とからかうように言うミュウツーに一同が首を横に振る。
彼の情報が無くては社会の混乱は終息の兆しも見えなかった。
その恩を仇で返すのは、さすがに人の道に外れよう。
それでもこの問いが出るのは止められなかった。
「貴方はなぜ他のポケモンと違い、こうして助けてくれるのですか?」
それに対する答えは、一筋の光明と、どの世界でも変わらぬ人の業を感じさせた。
《私は、