ポケモンに翻弄される現代社会、あるいはのうてんきミュウツー 作:ミュー(なきごえ)
もし続くとしても番外編な形で書きたいところを書き、不定期になると思います。
長らくお付き合いありがとうございました。
「ぐすっ……ママぁ、どこぉ……?」
ある日の街角。
母親とはぐれた女の子が、涙目になりながら辺りを見回している。
本当はその場から動かないのがベストなのだが、不安に駆られた女の子は母を探してふらふらと移動していく。
しかし、目当ての母親は一向に見えず、元の場所へ戻る道も分からない。
押しつぶされそうな不安に、女の子はただお気に入りのホシガリスのぬいぐるみを強く抱きしめていた。
《おやおや、悲しむ思念が聞こえると思ったら迷子ですか》
「え……?」
女の子の頭の中に直接響く声、思わず振り返るとそこにはこちらを見ている者が居た。
大まかには人の姿をしているが、頭髪に見えるところや腕は薄い緑色をしていて、白い肌とふわりと広がるスカートのような部分は一体化している。
遠目で見れば白いワンピースを着た女性にも見えただろうが、近くで見ればそれが人間とは違うことは女の子にも分かった。
「ポケモンさん……」
《ええ、そうですよ。さあ、貴方のお母さんを探してあげましょう》
ポケモンの目が不思議な輝きを放ち、胸にある赤い部分から何らかのエネルギーの波が辺りに広がる姿は幻想的で、泣いていた女の子もつい見惚れてしまう。
輝きが収まると、ポケモンは一つ頷き女の子に手を差し伸べた。
《さあ、お母さんのところに行きましょう。こっちですよ》
「う、うん……!」
ポケモンは女の子の腕を引き、スルスルと人ごみを通り抜けていく。
そしてあっけないほど簡単に女の子を探す母親のもとに辿り着いた。
安堵して互いに駆け寄り喜び合う母娘、母親はしきりに頭を下げてポケモンに感謝を伝えたが、ポケモンは”お気になさらず”と鷹揚に答えた。
「ありがとね! ポケモンのおねーちゃん!」
《お、おね……!? ボクはこれでも……いや、いいです。もう迷子にならないようにするんですよ》
「うん!」
なぜか女の子に礼を言われた後、不思議としょんぼりした様子で去っていったことが母親の印象に残っていた。
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この世界に突然現れたポケモンという命、しかし現在では彼らとの共生は当たり前のこととなっている。
農業、林業、畜産、漁業などの一次産業においてポケモンが関わっていないことはなく、電子産業においてもポリゴンやポリゴン2、ロトムとの協力により業務形態は大きく変わった。
高速演算が可能なメタグロスや、直接プログラムのコードを調整してくれるポリゴン系統、電気製品に入り込み性能を強化するロトムはこの世界の技術をポケモン世界に近づけるのに大いに貢献したのだ。
出現当時は大きな脅威であったポケモンの扱いも、尊重すべき隣人という立場を確立し、トレーナー制度、関連法整備の完了をもってポケモンはこの世界に根付いたと言っていい。
そんな折に、私の夢にかの創造神アルセウスが出てきた。
かつて聞いた貫禄あふれる美●明宏ボイスで”人とポケモンは調和を成した。架け橋たる其方は見事役目を果たした”と褒め(?)られて照れ臭いやらだったけど、疑問が一つ生まれた。
『役目を果たした私は元の世界に戻されるのか?』ということだ。
この機を逃したら言う機会なんてないから、すぐにこのめちゃくちゃいい声の創造神に問いかけると思ってもみない返答をされた。
いわく、”其方は私が選んだ人間の精神の写しをその身体に込めたもの。戻る世界などない”とのこと。
えぇ……私コピーだったん? それをミュウのコピーの身体に入れるとか皮肉が強すぎん?? まあ正直楽しんでたところあるからあまり不満無いけど*1。
LEGENDSアルセウスの感想では邪神とか言われてた*2もんね、神様こちらの都合考えない、知ってた。
そんな褒められたのか裏切られたのか分からない夢を見た数日後、私のサイコパワーの出力が目に見えて落ちた。
不調にしてもおかしかったので専門の病院で精密検査を受けたんだけど、全身の細胞単位でガタがきているそうだ。
ミュウツーはもともと戦闘能力を高めるための調整をして生み出された。
元となったミュウは無限の生命力を秘めているとまで言われていたが、どうやらサイコパワーの出力上昇のためにそこらへんは犠牲にされたらしい。
つまり今回のは不調でもなんでもなくミュウツーの身体自体の限界、寿命なのだ。
お医者さんからはここまで不調なく保ったのが奇跡的と言われたので、創造神の加護はあったんだなぁと思ってみたり。
ここのところは身体に負担をかけないようにサイコパワーの使用を避けて、安静にする生活が続いている。
頃合い、だろうか。
昔とは違う意味で外に出られなくなった私の代わりに、外で迷子を助けた話をしてくれるサーナイトくんちゃんに、考えていたことを話した。
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《ねぇ、本当にやるんですか? わざわざこんなことしなくたって……》
《どちらにせよ、遅かれ早かれだ。それにどうせなら、君たちに送ってもらいたい》
《……》
ずいぶん前に見た夢のことを気にしてるわけじゃないけど、ミュウツーの身体である以上”はかいのいでんし”は取り出せるだろう。
生きてる間は良いけど、死んだ後に遺体がどうなるかはちょっと分からない。
なら、今のうちに手が届かないところにやっておこうってわけで。
《急ぐ必要、無いと思う。なんなら私たちが墓守をする》
《フーディン、気持ちは嬉しいが、それとて君たちが居なくなった後は分からないのは理解しているだろう?》
《……》
私が成長を手伝ったポケモンたち。
そのサイコパワーでマイクロブラックホールを作り、私の身体ごと消し去る。
サーナイトが生み出し、フーディンが閉じ、ヤドランが周囲を保護する。
高レベルのエスパーポケモン三体が揃っているからこそできる荒業だ。
《おわかれ~や~なの~》
《もうそろそろテレパシーも限界になる。悲しいが、お別れなんだ》
《……や~》
全幅の了解は取れなかったが、渋々でも協力してくれた彼らはミュウツーになってから得た真の友だろう。
サーナイトくんちゃんがサイコパワーを集中し、重力場が歪み始める。
ヤドランちゃんが周囲を守ってくれるおかげで、影響があるのは私だけだ。
最期のなけなしのサイコパワーで、彼らに”ふしぎなまもり”をかける。そう長続きはしないだろうけど。
どうか、彼らとこの世界のポケモンたちが人々と永く平和に歩めますように……!
《──────という夢だった》
いつぞやの破滅的な夢以来、定期的に夢の内容を聴取されるんだよねぇ。
個人的には夢日記みたいでちょっと嫌なんだけれど。
昨日の夢は研究員さんのツボに刺さったらしく、『げっ”じでぞん”な”ごどざぜま”ぜん”がら”!』とボロ泣きである。
まあまあ泣きやみなよ、キルリアくんちゃんたちがめちゃくちゃ不審そうな顔でこっち見てるから。
たかが夢なんだから、そんなに真に受けなくても……
まあポケモンと人間の完全な共生もまだまだ道半ば、たとえ正夢でもまだまだ寿命まで時間はある。
それまでせいぜい面白おかしく楽しんで、おいしいものを食べながら頑張るだけだ。
……それはさすがに”のうてんき”すぎかな?