ポケモンに翻弄される現代社会、あるいはのうてんきミュウツー   作:ミュー(なきごえ)

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連続で掲示板するのもどうかと思って挟みました


第4話 のんきなミュウツーと受け入れる世界

 どーも、専用工作機の調整が終わったのでボール作りから解放されたミュウツーです。

 元となるぼんぐりが全部同じ形なわけじゃないから私が作った方が品質は良いんだけど、大量生産は正義なのよ。

 おかげで多少自由な時間ができた。

 ミュウツーの身体の地頭がめっちゃ良いおかげでポケモン世界由来の植物の仕分けもスラスラ終わったし、思い出すのも一発だしね。

 聞いた話だと、各国政府にモンスターボールの製法の公開が終わったらしく、これから本格的にポケモンとの共生が始まるだろう。

 一般人にもボールが出回るのはいつになるのかなー、でもそしたら悪の組織みたいなのも出てくるのかなー。

 まあ正直、悪の組織がポケモンで悪事を働くのは相当難しいだろうけど。

 自衛隊のキャタピーがトランセルに進化した時に緊急で呼び出されて他の捕獲されたポケモンとも触れ合って分かったが、ポケモンは賢くて優しい。

 その上、森で人が遭難していたらきのみを分けてあげるくらいに良識があるのだ。

 縄張りや仲間を守るためには凶暴にもなるが、たとえボールでポケモンを捕まえても悪事をさせる前に言う事を聞かないだろう。

 ”主人の為なら悪事もする”というのは相当な信頼関係が必要なのだ。

 ……まあ中にはあくポケモンとか言う良識のネジが外れた奴も居るんですけどね。

 でもそれを新しくポケモンを利用しようという犯罪組織が使うのは難しいんじゃないかな、どれがそうなのか分かんないだろうし。

 私にできることはボールを所持してる人たちのところに定期的に視察に行って、テレパシーで悪事を企んでないか頭を覗くくらいだ。

 プライバシー? しゅ、守秘義務は守るから……

 

 

 

 

 

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 日本政府から各国に謎の生物”ポケモン”の捕獲と馴致に使われる『モンスターボール』なる道具の製法と現物が提供されたが、一部の国、特に日本の隣国であるC国は窮していた。

 C国は広大な国土と人口を誇る屈指の大国の一つだが、大陸におけるモンスターボールの原料『ぼんぐり』の自生数は少ない。

 他の未確認植物と同じで1日程度で結実する成長速度には目を瞠るものがあるが、現在のところ植樹したぼんぐりが上手く成長した例は報告されていないのだ。

 代わりに総称して『きのみ』と呼ばれるらしい果実の木は多数自生が確認されているが、その味は甘味を呈するものが少なく、苦味・辛味・渋味・酸味が強く食用に堪えないものがほとんど。

 膨大な国内需要、そして輸出大国としてボールを輸入に頼ることの是非など頭を悩ませる要因は多い。

 更に国父の肖像が飾られた旧王朝の城の門に龍にも似たポケモン*1が現れたことで、反政府勢力が散発的な行動を起こしつつある。

 すぐさま軍が鎮圧したものの、死骸が見つからなかったのは日本政府の言う”存在を縮小して隠れた”ということなのだろう。

 ただでさえ、鎮圧時に火を吐いたり暴れたりしたので怪我人も出ているのに……成果がないのは士気にも関わる。

 情報部の調べではT自治区の修行僧たちがボール無しに一部のポケモン*2と友好関係を築いているとの報告もある。

 独立しようと蜂起などしなければいいが……

 国内での出現数も考えれば、排除などもう机上の空論だ。

 うまく利用できれば、その力は国力の増加に大きく寄与することだろう。

 問題はそれの前提を整えることなのだが……

 C国高官たちの悩みは尽きない。

 

 

 

 

 

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 世界に冠たる大国である自負のあるA国では、先進的なポケモン研究と『きのみ』の効果検証が始まっていた。

 同盟国・日本を通して、史上初めて人間と意思疎通したポケモン”ミュウツー”からもたらされた知識。

 身体の硬直・まひに効果がある『クラボのみ』と複合的な毒の症状に効果がある『モモンのみ』から研究は始まった。

 動物実験の段階で効果は極大、『ありえない』としかいえない程の効果が計測された。

 故意に遺伝子異常を起こした下半身不随マウスは元気にケージを走り回り、致死量の毒と混合したきのみ飼料を平気で食べてピンピンしている。

 ポケモンの出現によって世界は変わったが、この成果が世に出ればまた一段世界が変わるのは明白であった。

 それと同時に研究する化学者たちは困惑する。

 効果の反応メカニズムが全く分からないのだ。

 どの成分が効果をもたらしているかが分からない、体内でどんな反応が起きているのかが分からない、反応後生成物ですら見つからない。

 解毒のプロセスに至っては、『きれいサッパリ消え去った』としか言いようがないほどだ。

 解明のカギと目されているのは、工業地帯で捕獲され研究機関に連れてこられた紫の泥状のポケモン*3

 ヘドロや産業廃棄物を食料とし、それらで容易に誘引できるため飼育には困らないが、体組織の採取には安全を期して必ず化学防護服の着用が義務付けられている。

 あまり過激な方法は存在の縮小による脱走を招くだけなので、嫌がらない程度、わずかなサンプルの採取に留まっているが成果はある。

 このポケモンは他の生物にとって毒性の高いものを好んで食すが、それに『モモンのみ』を混ぜて食べさせても毒性をまとったその身体が消えてなくなったりはしない。

 有害物質を食べるこの生物……生物? 

 とにかく、このポケモンの身体できのみの効果が解明できれば大きく研究が進歩するのは間違いない。

 その時にこそA国は世界で最も偉大な評価を得るに違いないのだ。

 研究員たちの実験は続く……

 

 

 

 

 

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「おお、よしよし。ちょっと前歯が伸びてきてるな。ほらネズ、かじる用の木材」

 

「コラッ、ラターッ♪」

 

「……」

 

「ああ、イモスケ。そんな怒るなって」

 

 自衛隊某駐屯地にて、自室でポケモンとたわむれる隊員。

 ポケモンに指示を出し、従わせるには強い信頼関係が必要との上からのお達しの為、このようなことができる時間も用意されている。

 この隊員は手持ちにキャタピーから進化したトランセルとその後捕まえたコラッタがいるが、このような隊員は少なくない。

 逃げやすいとりポケモンを持つ隊員はごく一部、大半は既定のロードマップに従い毒針を持たないむしポケモンから始めている。

 2匹目にどのポケモンを選ぶのかは捕獲する地によって大きく異なり、コラッタであったり、オタチであったり、ジグザグマであったりする。

 中でもコラッタは餌につられやすく捕獲が容易なため、たまに現れる電気を放つ黄色いネズミポケモンと違い人気だった。

 

 この隊員のように捕まえたポケモンに名前をつける者は意外に少ない。

 それはイモムシやネズミの姿をしていてもポケモンは賢いので、文脈から自分を呼んでいるかどうか判断できるからである。

 作戦行動中に呼びやすいこともあって個別の名前を付けない者も多いが、ポケモンたちに不満はないようだ。

 自然界の中では個別の名前を持たない彼らにとって、そこら辺はどうでもいい話なのか。

 名前を付ける派に言わせれば、”愛が足りない”とのことだが。

 

「ほーら、こしょこしょこしょー」

 

「ラタラターッ♪」

 

「……」

 

 トランセルの冷たい視線を受けても、ヘソ天になったコラッタをくすぐれるこの隊員は、確かに”愛に溢れている”と言えるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 それらはほんの一部ではあるが、ポケモンの存在は徐々に世界へ受け入れられていく……

 

*1
ジジーロン

*2
アサナン・チャーレム

*3
ベトベター

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