「ボンクレー様――。」
船員達が海面を見つめあたりを見渡すも、ボンちゃんの姿は見えない。
レミも船の周りを見渡すと、後ろを付いてきてきていたレミの船もいなくなっていた。
ルルーの視力は良く霧でも問題なくあたりを見渡すことが出来る。
おそらくはぐれたのでは無く、事前の打ち合わせ通りボンちゃんの船と違う場所からアラバスタに上陸するためにわざと離れたのだろう。
「おい。向こうに麦わら帽子をかぶった海賊旗の海賊船にボンクレー様らしき人影があるぞ。」
双眼鏡で海面を捜索していた船員が、指を指しながら叫ぶ。
目をこらして見ると、かすかに船らしき影が見える。
「よぉし。全速前進。」
船員達は安堵の声とともにオールを手にキビキビと働き出す。
監視員の話が本当であるなら、海に落ちたボンクレー様は麦わらの海賊に助けられたようだ。
気がかりなのは、麦わらの海賊に心当たりがあることだ。
麦わらの海賊の船長は、アーロンパークでわっちをぶっ飛ばしてくれた男だ。
ほとんど同じタイミングでグランドラインに入ったのだ。
間違いなく、麦わら帽子の海賊旗は麦わらのルフィだろう。
麦わらの海賊にアラバスタまで王女ビビを護衛しているとイガラムから聞いている。
ローグタウンで取り逃がしてから、次見つけたときは必ず捕まえてやると思っていたが、今回は同じアラバスタ王国陣営で戦うことになるし今回は諦めるしか無いだろう。
それに、今一番の問題は、敵同士であるMr.2と王女ビビが一緒の船にいることだ。
Mr.2の1人で海賊団の相手が勤まるとは思えないが、隙を見てビビを暗殺することくらいは出来るだろう。
麦わらのルフィはどうでもいいが、王女が殺されては、わっちがイガラムに合わせる顔がない。
麦わらの海賊船が近づいてきたが船の中の状況がよく分からない、戦闘音は聞こえないが、怒号が聞こえてくる。
まずそうれすね。
ローグタウンで対立したわっちが行っても余計な騒ぎになる可能性が高いが、王女が殺されてはいけない。
ボンちゃんがこれから国盗りをする王女の顔を知らない方が不自然だ。
一刻でも早く行くべきだと判断したレミは、大きく助走を取るために甲板を下がる。
麦わらの海賊戦まで目測20m。
そろそろ、飛び越えれそうな距離だ。
「どけるれす。」
レミが、声を掛けると、船員達が振り返る。
「えっ?ニューイヤーさん何を?」
レミが走り始めた瞬間、戸惑った顔を向ける。
普通の人では20mも飛べない。
当然の反応れすね。
でも、わっちは普通じゃ無いれすよ。
船の手すりに足を掛け大きく飛び出す。
ボンちゃんは、甲板で両手を水平に右側に伸ばし腰を低くして構えている。
対する船の乗組員は、何人か見覚えのある人がいる。
まだ、騒ぎにはなっていないようだが、これから起こらない保証にはならないれすね。
ボンちゃんには気絶してもらいましょう。
「ボンちゃーん。」
着地失敗に見せかけるために、直前で声を出しボンちゃんに突っ込むレミ。
「その声は、ニューイヤーちゃっ、グボラハァァァァ。」
ボンちゃんが、レミの声を聞きとっさに振りかえったところにレミの膝が入る。
ボンちゃんは、全く受け身をとれていないが、レミは問題ない。
2人もつれて転がっているわずかな間に、ボンちゃんを絞め落とす。
ボンちゃんが気絶したことを確認してから、立ち上がる。
よし、計画通りれす。
「ボンちゃんを助けてくれてありがとうれす。」
まずはお礼を言ってから、相手の出方をうかがうれすね。
「げぇぇー。ローグタウンの時の賞金稼ぎ。」
船長である麦わらのルフィーが心底嫌そうな顔をしながら叫んでくる。
「お前、海賊になったのか?」
海賊狩りのゾロが声を掛けてくる。
「わっちは、あんたと違って、海賊になんかならないれすよ。縁あって、一緒にいるだけれす。」
「お前、また俺を捕まえに来たのか?」
「そうする予定れしたが、今回は見逃すれす。」
船を見渡すと、女性が2人。
本当に王女かどうか分からないれすね。
外を見ると、ボンちゃんの船がすぐそこまで来ている。
「ボンクレー様――。」
今にも、船に乗り込んできそうな勢いをしている乗組員たちが声を上げている。
「話をしている時間が無いようれすね。ボンちゃんは、連れて帰るれす。ここでは話せないので、ある国の護衛隊長からの手紙を渡していくれす。では。」
レミは、イガラムから預かっている手紙をちらつかせながら、ボンちゃんを担ごうとするが身長差がありすぎて担げず、右足をつかんで引き釣りながら、船の端まで行く。
「おい。護衛隊長って。」
「ん?護衛隊長ってだれだ?ウソップ知ってるか?」
「すまん、チョッパー俺も知らない。おい、ルフィ、ゾロ、ナミ誰だか知っているのか?」
「知ってるもなにも、ウイスキーピークでその人…。」
ほうほう。この反応で、確信に変わったれすね。
護衛隊長を知っているということは、この船に王女がいる。
話を聞いたときの反応からして、王女ビビは青髪の女性れすかね。
反応が悪ければ、この手紙はもって帰ろうかと思っていたれすが、おいていきましょう。
「必要なことは、ここに書いてあるれす。じっくり読むれすよ。」
レミは、そう言うと、ビビに手紙を渡す。
「では、わっちはこれで帰るれす。」
そろそろ、ボンちゃんが、目覚めるかもしれない。
ボンちゃんを両手でしっかり抱え船に飛び移る準備をする。
ボンちゃんの船はもう併走しており、乗組員達のボンクレー様コールが鳴り止まない。
「おい。教えろよ。ちくわのおっさん、生きてるのか?」
外野のうるさい声の中、麦わらのルフィーの声がはっきりと聞こえる。
いろいろ聞きたいことはあったと思うれすが、イガラムの安否に気を掛けるとは。
わっちの友人を気に掛けてくれるのは悪い気がしない。
レミは、親指を立ててサムズアップして、出て行った。
「ビビ。その手紙本当にあのイガラムからなの?」
ビビは、震えならが手紙を読む。
「えぇ。間違いないわ。この筆跡はイガラムのもので間違いない。それに、おかまオフィサーエージェントのMr.2だったみたい。」
「「「えぇぇぇぇ。」」」
「おいおい、騒いだりしてどうしたんだ。」
部屋の中で料理をしていたサンジが出てきて、一味が全員そろった。
手紙に書かれていることをビビが仲間に説明する。
「なるほどなぁ、アーロンパークで出会った賞金稼ぎのレミちゃんがアラバスタ王国からのスパイとしてバロックワークスに潜入してクロコダイルの首を討ち取るってことか。なら今回は仲間ってことだな。なら俺たちは、反乱を止めればいわけだ。」
「おいおい、クソコック。そいつはローグタウンでルフィを襲った奴だぞ。信用しきっていいのか?」
「あぁん。クソマリモなんか言ったか?」
「おだまり、話が進まないでしょうが。」
ナミが、喧嘩し始めそうなサンジとゾロを拳で黙らせる。
「俺は、信じるぞ。だが、クロコダイルをぶっ飛ばすのはこの俺だ。」
「おいおい、ルフィ。アーロンパークでのこと忘れたのか。このキャプテンウソップとその賞金稼ぎの連携でアーロンをもう少しのところまで追い詰めていたのに、横やりを入れたのはお前なんだぜ。今回は、そのレミって賞金稼ぎにクロコダイルの首を譲ったらどうだ。」
「えぇ、ウソップ。あの賞金稼ぎと共闘したことがあるのか?」
チョッパーがキラキラした目でウソップを見つめる。
「あぁ。そうなんだぜ。ナミの故郷を支配していた海賊をおれと賞金稼ぎのレミであと一歩まで追い詰めたんだけど、ルフィのやつが横取りしたんだよ。それで、怒った賞金稼ぎがルフィの首を狙ってローグタウンで戦ったんだよ。」
「おめぇは、ほとんどなにもしてないだろうが。」
「ウソップワゴームで生まれた好きで形勢が決まったんだぞ。」
「うぉぉぉ。ウソップすげー。」
「でも、マネマネの能力ってやっかいね。」
「いや、むしろここであいつと出会えてラッキーだ。これで、対策が打てる。」
ボンちゃんの船の甲板には、船員達が集まって、ボンちゃんが無事に帰ってきたことに歓喜している。
「まったく、騒がしいれすね。」
「あら、そろそろなれてきたんじゃないの。それにしても、ニューイヤーちゃん。あなた、強いじゃない。ゼロちゃんからスカウトされるだけはあるわね。」
「わっちをなめてもらっては困るれすよ。」
ボンちゃんは、立ち上がって船員達に指示を出す。
「あんたたち、アラバスタはもうすぐよ。いつもの場所に船を止めて、スパイダーズカフェへ向かうわよん。」