船を海岸に止めて、一部の船員がアラバスタへと降り立つ。
「あんた達は、あちし達と一緒にスパイダーズカフェ近くまで付いてきてもらうわ。残りのメンバーはいつも通り食料の調達を行ってその後は、船で待機よ。」
ボンちゃんが仲間に指示を出している。
しばらくボンちゃんとともに行動をしているレミは、普段はおちゃらけているボンちゃんが、船長らしく指示を出したり仲間に愛情をもって接していることを知った。
ボンちゃんとは敵として接することになるが、嫌いになれないレミがいた。
ルルーやジョージは、上手くアラバスタへ上陸で来たれしょうか。
特にルルーは心配れすね。
砂漠には初めて来たレミだが、思っていた以上に乾燥している。
レミですらターバンとストールポンチョを着て暑さをしのがないとすぐに熱中症で動けなくなりそうだ。
半魚人のルルーにとって乾燥は天敵だ、レミたちよりさらに過酷な環境だろう。
ジョージがいるから常時保湿は出来るだろうが、それでも気になってしまう。
ボンちゃんの指示も終わり、そろそろ出発しそうですね。
スパイダーズカフェまで付いてきてくれる人たちがなぜか準備運動をしている。
なんだか、嫌な予感がするれすね。
それに、ボンちゃんは外装をまとっていないいつもの格好だ。
まさか、いつも通りの服装で砂漠を移動するつもりなのだろうか。
「オラァ。お前達、歯ぁ食いしばって付いてきなさいやぁぁ。」
ボンちゃんが叫ぶと、付き人たちがボンちゃんの後ろに一列に並ぶ。
「ニューイヤーさん、早く俺の後ろに並んでください。」
最後尾の人が俺の後ろに並ぶように促してくる。
嫌な予感が的中した瞬間だった。
どうやらこの人達はリトルガーデンで出会ったときのように、ステップを踏みながらこの砂漠の中を突き進んでいくようだ。
どう考えても自殺行為れすね。
いずれ敵になるがここまで一緒に冒険してきた中だ、これくらいの助言はいいだろう。
「ボンちゃん、そんな格好で砂漠を移動すると熱中症で倒れるれすよ。」
「チッチッチッ。ニューイヤーちゃん分かってないわね。おかまがこれぐらいの暑さに負けるわけないでしょうが。気合い入れていくわよ。さぁ。ニューイヤーちゃんも早く列に加わって。」
おかまになると、無敵になるのでしょうか。
いや、深く考えるのはやめるれす。
レミは、おかまに常識が通用しないことを知った。
「いや。わっち、おかまじゃないし。普通について行くれす。」
「ニューイヤーさん、おなべでも気にしないです。さぁ、遠慮無くどうぞ。」
最後尾にいる、星形のサングラスをつけた船員が手を差し伸べてくる。
どうして、おかまじゃないとおなべになるのだろうか。
この人達の世界では、性別はおかまかおなべしかいないのだろうか。
「いや、普通に嫌れす。それにわっちは女れす。」
「んんなぁ。これまで、あちし達と一緒に旅を続けてきておかまの良さが分からないって言うの。後でおかまの強さに気づいて列に入れてくれって言っても入れてあげないからねぇぇん。後悔しても知らないわよん。」
「分かったから。さっさと行くれすよ。」
せっかく、気を利かせて服装に付いて注意したのに、なんだかわっちがおかしな服装をしているみたいじゃないれすか。
「じゃぁ、行くわよ。アン♪ドゥ♪オラァー♪」
スパイダーズカフェまでどれだけ距離があるのかは知らないが、とても後先を考えたスピードだとは思えない速さで移動を開始する。
この速度なら、レミは一日中走れそうだが、他の船員にはかなりきついだろう。
ボンちゃんの仲間が異常にタフなのはこういった移動手段で鍛えられているのだろう。
数時間走り続けたのだろうか。
だんだんと覇気が無くなってきている仲間をボンちゃんが鼓舞しながら走り続ける。
アン♪ドゥ♪オラァー♪
アン♪ドゥ♪クラァー♪
辺り一面砂漠の景色が続く、奥からぽつんと一軒家が建っているのが見えてきた。
「よぉぉぉし。ストップ。あんた達は、ここで待ってなさぁい。ここから先は、Mr.2コンビのあちしとニューイヤーちゃんの2人で行くわ。あんた達はここで待機してなさい。がっはっはっはっは!!」
ボンちゃんは、そう言うと駆けだしていった。
砂漠のど真ん中に家が一軒建っている。
仲間と分かれたことから察するにあの一軒家が目的地のスパイダーズカフェなのだろう。
近づいていくと確かにスパイダーズカフェと書いてある。
砂漠のど真ん中にこんなカフェがあるなんて客はいるのだろうか。
イーストブルーの居酒屋で働いていた頃は、町中であっても客の入りが悪かった。
こんな場所でまともな商売が出来るとは思えないれすね。
ボンちゃんが勢いよく扉から入っていく。
「がっはっはっはっは。最近どぅーーー。」
勢いよくカフェには行ったボンちゃんの後を追うとレミは、店員の女性に馬鹿にされているボンちゃんに出くわす。
それに店内には他の客がいるようだ。
背の低いおばちゃんとふくよかな体型の大男だ。
全員気質の人間ではないのだろう。
店主からもただ者ではない気配を感じる。
「ねぇねぇ。ポーラ、タコパないかしら、タコパ。」
「タコパって何のことかしら。」
ボンちゃんは、店員にタコパについて聞いている。
昨日食べていたタコパフェがそんなにおいしかったのだろうか。
おかまが考えることはよく分からないし、分かりたくないれすね。
「Mr.2うるさいわよ。あんた少しは静かにしなさいよ。腰に響くじゃない。」
「あらいたの。デブチンにオバハン。」
「あんたいい加減にしないとぶっ倒すわよ。で、あんたが噂の新入りかい。Mr.2のパートナーとは大変ね。」
先客の2人が、声を掛けてくる。
レミは、自分が新入りであることを知っていることから、先客がバロックワークスのオフィサーエージェントであることを知る。
「大変じゃないわよーーーん。」
「大変れすね。できればパートナーを交換してほしいれすね。わっちは、ミスニューイヤー。そっちは?」
「Mr.4とミスメリークリスマスよ。」
「えぇん。ニューイヤーちゃん、あなた正気なの!!あちし悲じいぃぃ。」
待ち合わせ時間は20時。
そろそろ全員そろうだろう。
ボンちゃんは、全員そろうまでくるくる回ることになった。
相変わらず、うるさい人れすね。
ドカァン!!
20時ちょうど、扉が吹き飛び、傷ついたボンちゃんの仲間達が転がり込んでくる。
「あんた達、いったいどうしたっていうのよぉぉん。」
砂煙でほとんど見えないが、扉があった場所に立っている相手が下手人だろう。
この時間にこんな辺鄙なカフェに来る人は決まっている。
煙の奥でたたずんでいる人もオフィサーエージェントの仲間なのだろう。
そう、敵が敵の仲間を倒しただけれす。
わっちがクロコダイルと敵対する以上、彼らとは敵対し戦うことになる。
だが、仲間にやられるなんてことあっていいわけないれす。
そう思うと、レミは反射敵にレイピアを持ち飛び出していた。
「ニューイヤーちゃん、まちなさい。」
まさか、ボンちゃんに止められるとは思わなかったれすが、こいつは許さないれす。
ボンちゃんも、仲間をやられて敵意をむき出しにしたが、レミが動いたことで冷静になる。
砂煙を抜けると、目を見開いている大男と目が合う。
レミのレイピアに反応し対応しようとするが、気づくのも動きも遅い。
「はぁぁぁぁ。」
回りながら男の背後を取り、回転の威力をレイピアにのせて横払いの一撃を入れる。
脇腹に入ったレイピアの手ごたえで異変を感じる。
こいつ悪魔の実の能力者れすね。
体が鋼のように硬い。
男は数歩後ずさり、こちらを見据える。
「なぜ、仲間を攻撃したのれすか?」
「お前も死にてぇらしい。」
突然攻撃したわっちにご機嫌斜めのようだ。
だが、機嫌が悪いのはわっちも同じ。
「答えになってないれすよ。」
「不審な動きをしている奴を見つけた。怪しい奴は処分する。弱い奴が悪い。」
「なら、わっちが今ここで怪しい奴を倒しても文句はないれすね。わっちよりだって弱い奴なんれすから。」
「俺が、お前より弱ければの話だがな。」
大男が、腰を低くして構える。
どうやら本気の構えのようれすね。
わっちのスピードに驚いていたレスからね。
「待って、Mr.1! そこまでよ!!」
「止めるな。ミスダ・ダブルフィンガー。俺はあいつを殺す。」
わっちと大男の間に、カフェの店主が割って入る。
「ニューイヤーちゃん。あちし、見直したわ。あなた、普段は少しそっけないけど、それは愛情の裏返しだったのねぇん。仲間思いのニューイヤーちゃん。あちしうれしい。思う存分やっておしまいなさい。」
「Mr.2も火に油を注がないで。そろうべきエージェントはそろったわ。」
店主は、眼鏡とバンダナを外して説明を続ける。
「・・・これから夢の町レインベースへ向かうのよ。その街で、私たちが顔の知らないボスが待っているわ。みんな、店の裏手にあるパンチに乗って。」