東京ミュウミュウ -Rhinoceros Spear- 作:寿垣遥生
オープニングテーマ
『my sweet heart』
歌:小松里賀
エンディングテーマ
『恋はア・ラ・モード』
歌:東京ミュウミュウ
side汐
「ごめん、本当に悪かったって!」
「ふんっ…」
ミュウミュウからの帰り道、依然としていちごは怒っていた。コイツもコイツで年頃の女の子なんだな…叩かれた頬が腫れてて痛い。叩かれたことは2回ぐらいしかないけど、イリオモテヤマネコのDNAを打ち込まれてからまるで力士の張り手ぐらいの強さにまでなっている…このパワーなら地球は守れそうだ。
「仕方ねえだろ、俺と似たようなアザが目に入ってしまったんだから。とりあえず、そのアザは地球が平和になったら消えるって白金さんは言ってたし…赤坂さんから可愛いR-2000を託されたんだから機嫌直そうぜ?」
「…」
「いちご、機嫌直して。これから頑張ろう!」
いちごの携帯のキーホルダーとしてくっついているR-2000も彼女を励ます。ここまで言われたら流石に元に戻るだろうな…そもそもの話で戦士の証を見つけただけでこれは不可抗力。その上、あの後に白金さんからは平和になればアザは消えて全部が元に戻ると言われている…今を乗り切れば大丈夫だ。
「…次はないからね?でも、アザを見つけてくれてありがとう。」
とりあえず、いちごが機嫌を直してくれてこの場は解決した。しかし、問題はこれからだ…俺達の目の前にいつキメラアニマが現れるのか?こんな世の中になってしまった以上、常に気にしないといけないからな。
「何が来る、何が来る!」
「どこ?」
「またキメラアニマか!?」
「分からない…でも、来る!」
「ワンワン!」
「うわっ!?」
R-2000に言われて俺達が後ろを振り返ったその時、1匹の子犬が走ってきては俺に飛び込んできた。そして、俺の頬をペロペロと舐めてくる…コイツ、人を怖がらずに堂々としているから誰かの飼い犬だろうな。
「ちょっ、くすぐってえよ…!」
「こらっ、ミッキーや…戻っておいで?」
「ワンワン!」
車から降りてきたおばあちゃんが『ミッキー』と呼ぶと子犬はそっちの方向へと向かっていった。あの犬、ミッキーって言うのか…それにしても、随分と車が豪華だ。お金持ちのおばあちゃんかな?
「どうも失礼いたしました。こらこら、いきなり走り出しちゃいけませんよ?」
「ミッキー、またおいたをしたのね?」
すると、車の後ろからお団子結びにして上質なオーラを漂わせる女の子が出てきてはミッキーを抱き上げる。この子の犬ってことなのだろうか?2人は俺達の前に歩み寄る。
「ミッキーがとんだ粗相を…」
「礼儀正しくどうも…別にこれぐらい大丈夫だよ。」
「これでお顔をお拭きになって?」
「ありがとう…なんか拭き心地が気持ち良いな、これ。」
俺は女の子から白いハンカチを受け取って顔を拭く。その感触は柔らかくて包み込まれているような感じで優しかった…いちごからハンカチを借りて顔を拭いたことは何回かあったけど、それとは全然違う。
「絹ですの…ご存知なくて?」
「絹は知ってるよ。豆腐でしょ…絹ごし豆腐!君は知ってるよね?」
「豆腐、私は頂いたことがなくて詳しくないので…ごめんなさい。」
「そ、そうかい…」
「とにかく、そのハンカチは差し上げますわ。それでは…ごきげんよう♪」
そう言って女の子達は車に乗って俺達の前から去っていく。お金持ちのお嬢様か…お金持ち、高級車に、豆腐を食べたことがないほどの肥えた舌。この子、ただ者じゃねえな…豆腐のことなんかどうでもいいぐらいの大富豪なのだろう。
『お前のような片親の貧乏人なんか生きる価値無しなんだよ!』
「どうしたの?」
「あ、ああ…悪い。」
その時、俺は悪い思い出が頭をよぎった。俺がいじめられていた時のことを…あの時の俺をいじめていたのはお金持ちの野郎、あの女の子の見下した態度を見て思い出しそうになった。
「ごめん、間違えた…」
「R-2000は悪くねえよ。キメラアニマには警戒しないといけないもんな…まあ、何かあったらまた報告してくれ。」
「汐…ありがとう。」
「それよりもムカつくよね…あんな人を見下して。私、アイツと仲良くなれる自信なんてないよ!!」
「まあ、落ち着こうか…ひとまず帰って今日はゆっくり休もうぜ?」
「そうだね…」
とりあえず、俺達は家に帰ることに…あの女の子のことを考えるのはまた明日にして今日の残りは宿題とかを済ませてゆっくり休むことにしよう。
~~~~~~~~
(藍沢みんとさん…なるほど、あの子はそんな名前か。)
家に帰ってから俺は部屋の中で宿題を終わらせてからゆっくりしつつ貰ったハンカチを洗う前(もちろん手洗い←洗濯に出したら縮む)に見つめる。裏側の右下には『藍沢みんと』と名前が刻まれてあった…絹のハンカチに刺繍、お金持ちは違うな。
「遅いと思ったら、汐…ここにいたのか?」
「うわあっ、兄貴!?」
声がして背後を振り返ると、そこには兄貴の才川朱我(さいかわしゅが)がノックもせずに部屋の中にいた。兄貴は俺よりも7つ上の大学2年生で今は学校が終わったら親父の代わりに親父の車である86トレノに乗って豆腐の配達をしている…そんな兄貴は親父の代わりに礼儀、料理、家事を俺に教えてくれた『第二の親父』で厳しいところもあったけど、俺とは対照的に優しさがありながら愛想も良くて頼りになる男として憧れの存在だ。
「何だよ…ノックぐらいはしてくれよな?」
「ごめん、そろそろ夜ご飯で父さんがまだかって呼んでたからノックを忘れてたよ。それで、何か考え事をしてたのか?」
「いや、別に…宿題が多くて疲れてただけだよ。」
「まあ、お前も中学生だからな。課題の数は増えるものさ…って、そのハンカチに『藍沢みんと』ってあるけど、もしかしてあの藍沢家の娘さん?」
「兄貴、まさかこの藍沢さんと会ったことがあるのか?」
「いや、娘さんの存在だけは知っててね…彼女のお父さんは藍沢財閥の社長なんだよ。俺、レストラン藍沢でシェフになることを夢見てるって前言ってただろ?あそこは藍沢財閥のグループ企業なんだ。」
なるほど、藍沢さんは兄貴が就職希望のレストランの親会社である藍沢財閥のお嬢様なのか…藍沢財閥の存在や凄さは中学生の俺でもよく知っている。ウチの豆腐屋の取引先でもあるし、グループの企業はいずれも名の知れた大企業ばかり…日本どころか世界を牛耳っている勢力と言っても過言ではない。
「そうなのか?ヤバいな…俺ってそんなお偉いさんの娘からハンカチを借りてたのか。」
「まあ、色々考えるのは後回しにしよう。とりあえず、夜ご飯だ!腹が減っては戦はできぬって言うからね。」
「おう!(まあ、戦はしねえけどな…)」
俺は兄貴の背中を追って晩飯へと向かい腹ごしらえを済ませた。その後…ハンカチは昔ながらに手洗いで綺麗にして、歯磨きと風呂を済ませてから眠りにつく。とりあえず、明日は学校が終わったらハンカチを藍沢さんに返すことにしよう…
~~~~~~~~
翌日、俺達は今日もいちごと一緒に学校へと行っているところで周りの人を観察しながら歩いていく。同じ戦士に選ばれた人間には身体のどこかにアザがある…その人が本当にいるのかは分からないが、探すだけ探さないと地球は救えねえからな。
「それにしても、アザがある人…見つからねえな。」
「うん…だけど、どこかに私達の仲間はいるはず。こうなったらとことん探すよ!」
「ああ…」
いちごの方も説得されるまでは戦士としての活動を嫌がっていたけど、戦いが終われば元通りになると聞いて鼻息が荒くなるぐらいに気合いが入ったらしい。これは地球のためなのか雅也のためなのかは分からないが…人間のために戦っていることは確かだ。
「アザがついてそうな人はいないね。」
「とりあえず、続きはまた昼休みにするか…俺は男子にアザがあるかを訊いてくるからいちごは女子の方を頼むぜ?」
「任せて!」
「桃宮さん、それに汐くん。」
すると、俺達を見つけた雅也が名前を呼ぶ。俺とは最近会って会話もしていないから忘れられたのではと思っていたが…俺のことも忘れていなくて安心した。
「おはよう…」
「おはよう。汐くんも久しぶりだね!こうやって会話するのっていつぶりかな?」
「小学校の卒業式以来だな。まあ、これでも2、3ヶ月だから久しぶりか…それで、昨日は怪物に襲われたらしいじゃん。大丈夫だったか?」
「怪物…うん、よく分からないけど何かに攻撃された感じはしたよ。それでも、目が覚めたら何事もなくて…夢だったのかな?」
雅也は苦笑いを浮かべる。あれはいきなりだったから分からないのは無理もないか…振り向いたらいきなり殴り飛ばされて気を失っていたからな。そんな時、いちごはあることに気づいた…
「アザ…青山くん、その首のアザは?」
「ああ、これは剣道の練習でね…」
「そうなんだ…そりゃあ、そうよね。」
「アザがどうかしたの?」
「ああ、いや…何も!!」
雅也はアザを気にするいちごにどうして気にするのかを訊ねるといちごは動揺と緊張もありながら慌ててごまかす。顔はとんでもないぐらいに赤い…さらに、荷物も落として中身が散らばった。
「ああっ、やっちゃった…!」
「…ったく、手伝うぞ。」
「僕も手伝うよ。」
俺がいちごを手伝おうとすると、雅也もそれに便乗する。それにしても彼は見た目から何もかもが優しい男だ…こんなヤツは兄貴と雅也ぐらいしか俺は見てきていない。そんな雅也をいちごは見つめながらぼんやりしている。その時、雅也の手といちごの手が重なった…
「えっ!?」
「あっ、ごめん…」
これには雅也も動揺したのかこっちも顔を赤くする。いくら女子達から慕われてそれに応える彼とて手と手が触れるのは緊張するのだろうな…そんな中で大きな問題が発生してしまう。
(いちごに猫耳…まさか、イリオモテヤマネコのDNAの副作用か!?)
なんと、いちごの頭から変身した時と同じように猫耳が生えてしまったのだ…何がどうなってこうなっているのかはサッパリだが、こんなところを雅也どころか他の人に見られたらいちごが『猫娘』とか言われてしまう!
「いちご、耳…耳!猫耳出てるぞ…(小声)」
「えっ、うそぉぉおおお!?」
「えっ、どうし…「あっ、あんなところにエイリアンが!?」…汐くん、誰もいないよ?」
いちごが思わず大声を出してしまい雅也が見ようとしたが、俺は強引に反対を向かせてエイリアンがいるとごまかそうとする。これでひとまず、耳は引っ込んだ…しかし、今度は尻尾が出てしまう。
「おい、何をしてるんだ…尻尾も引っ込めろ!(小声)」
「そんなことを言われてもぉ…」
「桃宮さん?」
「ああっ、俺達は教室に行くから…雅也も急がねえと遅刻するからな?それじゃあ、あばよっ!」
俺はいちごを連れて雅也のもとを逃げるように去った。これで一件落着ではあるが、猫耳と猫の尻尾を見られていないか不安になる…雅也はまあ優しいからこれを拡散したりいじめたりすることはしないと思うけど、他の人に見られたらいじめられる可能性がある。次から次へと気をつけることがあって疲れそうだ…
~~~~~~~~
学校が終わって俺達は今日から正式にミュウミュウの従業員として働くことに…そんな時のこと、調理室の中でいちごは白金さんに猫耳や尻尾が生えることを訴えた。
「あっそ…やっぱ出たか。」
「そんなの聞いてないわよ!」
「言ってないからな…」
「もしかして、これってイリオモテヤマネコのDNAによる影響ですか?」
「まあ、そんなところだ。行動がイリオモテヤマネコになるんだったら、その特徴が出たっておかしくもない…お前もいちごのように興奮したらシロサイなら角が出る可能性もあるから気をつけろよ?」
「そうですね…はい。」
白金さんは本を読みながら説明をする。なるほど、DNAの効果はかなり出ているようだ…俺も気をつけなければと気を引き締めることにした。キメラアニマが出てきてからは気を休める余裕がない…そんな俺達よりも白金さんと赤坂さんは大変な思いをしてるだろうな。
「もう、何よ…仲間だって全然見つからないし、私達だけで戦うなんて絶対に嫌だからね!!」
「…」
いちごは白金さんにとにかく吠える。この様子は猫というよりも犬みたいだ…昔からコイツを怒らせるととにかく止まらない。俺も何度か怒らせてしまったことがあるけど、本当に大変だったのは今も印象深く残っている。
「いちごさん…」
「は、はい!」
「りんごのタルトと洋梨のシャルロットの完成です。」
「うわぁ…綺麗!」
「お願いします。」
「あっ、そうだった!」
出来具合に見とれているところに赤坂さんからスイーツを渡されるいちご…そう、俺達は従業員。休憩時に食べ放題とは言われていたもののまだ勤務中である。彼女はそれを注文したお客さんのところへと運びに行くのであった。
「相変わらず素直じゃないですね…」
「…」
赤坂さんは本を読む白金さんに向かって呟いた。男というのは人によるけど、女の子に素直になれずに強がることもある…俺は素直に生きていくのがモットーだからひねくれたような真似は絶対にしないけど、白金さんにはそんなところがあるんだな…
「それと、汐さんはアイスコーヒーを2つよろしくお願いします。」
「お任せください!」
俺は赤坂さんにアイスコーヒーを託されてそれを運びに行く。それにしても、お店はかなり混んでるな…カモフラージュでカフェをやっているとは思えない。まあ、こんなに可愛らしい建物で店をやっていれば好奇心で人が寄ってくるのだろう。
「お待たせいたしました。アイスコーヒー2つでございます…ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「ありがとう。」
「それにしても、随分と表情が固いな…本当は愛想も何もないのに無理やり作ってる感があったり?」
「あっ、そう見えますかね?俺…いえ、私、結構言われるんですよ…『無愛想に見えるからもっと笑え』って。」
「だろうな…まあ、頑張ってくれ!無愛想な男は女から嫌われるぞ〜?」
「ちょっ、ダーリン…ごめんなさいね?」
「むしろアドバイスになりました。ありがとうございます…」
コーヒーを注文したカップル客の彼氏がアドバイスをされてるのかからかわれているのか分からない感じで絡んできた。俺は前から自覚してたけど、目つきと表情の悪さからか『ぶっきらぼう』、『無愛想』と周りから昔も今も言われている…そんなに俺の顔って怖いのかな?もしかして、いちごも…とにかく、顔にも優しさを出せるような男になれるようになろうと心に誓うのであった。
~~~~~~~~
ミュウミュウでの初仕事を終えて、俺達は兄貴から渡された地図を片手に藍沢さんの家へと向かう。あのハンカチをしっかりと洗って迎えた今日…本人は『差し上げる』とは言ってたけど、こんな上質なハンカチは俺には合わないし、名前も刻まれてるから返さないと色々と申し訳ない気もしている。
「ねえ、汐…そういえば、まだこの子(R-2000)に名前つけてなかったよね。」
「名前…R-2000ってあるだろ?」
「だって、それだと言いづらいんだもん。そうだ…青山くんが雅也だからマシャってのはどうかな?」
「えっ、いや…(俺の名前じゃないのかい!)」
「マシャ!マシャ!」
その道中にてR-2000の名前を決めていたのだが、雅也から取ってマシャに決まったらしい…これにはコイツも気に入っているのか嬉しそうである。
「お前、気に入ったのか?」
「気に入った!気に入った!」
「なんか青山くんを呼んでるみたいでちょっと嬉しいかも…」
一方のいちごも凄く嬉しそうな様子だ…俺の名前を呼ぶよりも雅也の方が良いのか。ともあれ、マシャと俺達の付き合いは長くなりそうかもしれない…今後ともよろしくな。
「着いたぞ。ここが藍沢家か…」
「家とは思えないぐらいに広いね…って、マシャ?」
「いたいた、キメラアニマ!」
藍沢家にたどり着いたその時、マシャが通知音を鳴らしてキメラアニマがいることを知らせる。まさか、藍沢さんはもう襲われているということなのか?これは一大事だ。
「でも、暴れてる気配とかはしないけど…」
「そんなのは行ってみなきゃ分からないだろ?とにかく、アポを取って入るぞ!」
俺達はインターホンを鳴らしてからハンカチを返しに来たと伝えてから家の中に入る。とりあえず、たとえキメラアニマが中にいるとしても冷静を装うことに…慌てている様子を見せたら怪しまれてしまうからな。
(5分後…)
「さあ、どうぞお入りください。」
「「お邪魔します…」」
おばあさんに案内されると入口の扉が自動的に開かれる。その中はまさに漫画やアニメのお金持ちの家がそのままリアルな景色として飛び込んだ…しかも土足OKで俺達庶民からすれば別世界で本当に驚かされる。
「あら、お客様?」
ちょうど来たタイミングで藍沢さんが姿を現す。昨日は制服姿だったけど、今日は私服…こっちもこっちで凄く似合ってる。いちごの元気で可愛いのとは違ってこの子からは上質な美しさの中に可愛さがあり違うベクトルで魅力的な女の子だ。
「昨日はハンカチありがとう…返しに来たんだけど、良いかな?」
「貴方達、昨日の…」
「ワンワン!」
「確か、お前はミッキーだっけ。相当人に懐いているな…よしよし。」
「ただいまお茶を…」
すると、ミッキーが俺にまた飛び込んでくる。人懐っこい性格なのかな?本当に犬も犬で可愛い…藍沢さんは良い犬を手に入れたんだなと思う。そんな中でおばあさんはお茶を淹れに行った…
「それで、御用はそれだけかしら?」
「まあ、それぐらいかな…俺は才川汐、コイツは俺の友達の桃宮いちご。」
「どうも。」
「いちご、調べてこい…(小声)」
「う、うん!(小声)」
「どうしましたの?」
「いや、別に…それよりも藍沢さん、ハンカチ返すよ。」
俺はいちごに家の中を調べさせるように小声で指示を出してその通りに行動する。今の様子からしてキメラアニマが暴れた形跡はないのだが、いつ出てくるのかは分からない。ここは調査をいちごに任せて時間稼ぎをすることにした…
「ありがとう…それで、才川ってことは貴方は豆腐屋さんのご子息かしら?」
「まあね…親父のことを知ってるの?」
「知ってるも何も私のお父様とお会いしたことがありますから…それにしても、公の場にも関わらずにジャージにTシャツっていかにも庶民って感じでしたわ。貴方のお父様…」
「そ、そう…いつもはジャージで外を歩き回ってるからね。」
藍沢さんは笑顔で俺の親父と会った第一印象を語る。その表情はあの時と同じく人を見下しているような感じで俺は嫌な気がしなかった…親父も親父でスーツとかで配達に行けば良かったんだけど、この態度には少しイラッときた。
「それにしても、凄い家に住んでるのね…綺麗だし、輝いてるし、素敵〜♪」
「貴方の付き添いは何をされているのですか?」
「まあ、気にしないで…ちょっと、タイム!」
「ええっ?」
俺は藍沢さんから距離を置いていちごのもとへと歩み寄る。先ほどから周りの様子を見てもらっているが、果たしてキメラアニマは見つかったのだろうか?俺が見た限りはいないようにも思えたが…
「おいっ、キメラアニマは見つかったか?(小声)」
「それが…さっきまでマシャは反応していたけど、見つからないの。おかしいなぁ…(小声)」
「ちょっと!?いきなり人の家に押しかけてあちこち嗅ぎ回ってはコソコソと…そんな失礼な方達はお帰りになって!品のない親に育った人達の相手をするほど暇じゃありませ…」
「てめえ、もう1度言ってみろ…誰の品がねえってんだ!!」
その時、藍沢の言葉に俺の怒りは頂点に到達して胸ぐらを掴んで突っかかる。ここまで黙って聞いていたが、もう我慢できない…コイツは馬鹿にしてはいけない人間を馬鹿にしたのだ。一発殴って済まされるようなことではない…
「ええ、何度でも言うわ…貴方も貴方の親も貴方のご友人も品のない人間よ。そんな人間なんて私から言わせてもらえば私の前から消えてしまえば良いのに!ううっ…」
「黙れ、俺の親父はな…片親でも俺をここまで強く育て、いちごもそれで俺がいじめられていて自分の犠牲も関係なく助けてくれた大事な人なんだよ。温室育ちのてめえに俺の気持ちの何が分かる!!」
「片親ですって?父親が浮気をしてそれについていく…大バカですわ!」
「殺す…俺の大事な人をコケにするてめえなんか俺がこの手で殺してやる!」
「くっ…やめっ!」
怒りで血が上った俺は藍沢の首を絞める。俺はシロサイのDNAを打ち込まれて怪力を手に入れた…これには温室育ちのお嬢様は即死してしまうだろう。だが、もう俺だけじゃなくて家族やいちごをコケにしたんだ…そんなヤツなんか死んでしまえば良いと思っていた。
「汐、やめて!!」
「いちご…」
いちごの声を聞いて俺は冷静さを取り戻し、藍沢から手を離した。俺は危うく人を殺しかけようとしていたのだ。こんなことをしたら、白金さんから怒られるだけじゃ済まないよな…
「ごほっ、ごほっ…」
「良かった…お願いだから、自分の力をそのために使わないで。私、汐が殺人犯になるなんて嫌だから…汐には優しい汐でいてほしいの。それに、こんなことをしたらミッキーが悲しむよ…」
「くぅん…」
「安心しろ、お前の飼い主は殺しはしねえよ…怖がらせて悪かったな。」
この様子を見ていたミッキーも悲しそうな鳴き声を出し、俺を見つめていた。そんなミッキーの頭を俺は撫でて安心させる…いちごとミッキーには本当に敵わない。俺が理性を失いかけても元に戻してくれた…これには感謝だな。
「きゃうん!?」
その時、ミッキーの中にクラゲのような小さな物体が入り込んで驚きの声を上げる。今のは一体、何なんだ…急に昨日と同じ嫌な予感が重くのしかかってきた。
(そういえば、あの物体…昨日のキメラアニマからも出ていた気が。)
「ごほっ…ミッキー、何があったの?そんな怖い顔をして…」
「藍沢、ミッキーに近寄るな!」
「貴方、何を言ってるの?ミッキーが私を襲うなんてありえ…」
「ヴヴヴ…ヴオオオオ!!」
藍沢が近寄ろうとしたその時、ミッキーは突如巨大化をしたのと同時に変わり果てた化け物のような姿に変わる。まさか、キメラアニマの正体がミッキーだったとは…さっきまで反応がなかったのにどうしてだろうか?
「どうして…さっきまで反応がなかったのに!?」
「不完全、不完全!」
「とにかく、今は変身するぞ!」
「でも、藍沢さんの目の前なのよ?人前で変身したら…」
「そんなことを言ってる場合か!?」
「きゃあっ!?」
いちごが変身を躊躇している間にキメラアニマと化したミッキーが藍沢を投げ飛ばす。もうコイツに理性も何もない…エイリアンによってミッキーは駒として使われているのだ。
「このままだと藍沢どころかこの家が壊れてしまい野に放たれてしまう…そうなると、街が大変なことになるんだぞ!?キメラアニマを止められるのは俺といちごしかいねえんだ!」
「…そうだね。ここで止めないと!汐、行くよ!!」
「おうっ!」
「ミュウミュウシオ…」
「ミュウミュウストロベリー…」
「「メタモルフォーゼ!!」」
そして、俺達は昨日のように変身をする。人前だろうともう関係ない…驚かれて拡散されるのも覚悟しないといけないが、俺達の任務はエイリアンから地球を守ること。それが最優先事項だ…変身を終えてからミッキーと藍沢の間に割って入る。
「エイリアンめ、大人しくミッキーから離れな!」
「離れないなら、地球の未来にご奉仕するにゃん♪」
「ちょっと、何!?」
「驚かせてごめん!後で話すから。」
「だったらその用事を早く済ませてやろうじゃねえか。昨日は簡単に倒せたんだ…ここから俺達のステージで決めてやるぜ!シオスピア!!」
「やめて、その子を傷つけないで!」
シオスピアを出した瞬間、藍沢は『やめて』と叫び、俺は彼女の方を振り返った。まあ、いきなり槍を出したのだからこういう反応するのも致し方ないとは思っていたが、俺にはこれしか武器がない。どうすれば…そう考えていたその時。
「がはっ!!」
俺はミッキーから殴られて壁まで吹き飛ばされた。今回はパワーが十分あって強い…まともに攻撃を初めて食らったけど、決して油断できない相手だ。
「汐!」
「どうしちゃったの、ミッキー…お願い、もうやめて!」
「バカ、来るんじゃねえ!!」
「きゃあっ!!」
藍沢はミッキーを戻そうと間に割って入って食い止めようとする。俺でさえ吹き飛ばされたのにただの人間が入ったところで止まるはずもない…そして、俺を庇う格好で背中を引っかかれる。
「大丈夫か、藍沢…ってそのアザは!?」
「アザ?」
服が破れた背中には羽のようなアザが刻まれていたのだ。もしかして、俺達が求めていた仲間の正体が藍沢だと言うのだろうか…
「まさか、お前が仲間だったとはな…」
「仲間、どういうこと?」
「マシャ、藍沢に例のを渡してやれ!」
俺がマシャに指示を出すと、口から俺達が使ってる変身アイテムを出す。これを受け取れば良いものの藍沢は迷っているのか信じられないのか拾えずにいた…
「良いから、変身しろ!」
「そんなの無理よ!できるわけないじゃない!?」
「グオオオ…オオッ!?」
「くぅっ…汐達の前には行かせない!」
「いちご! 」
藍沢はまだこれを悪い夢と思っているのか変身できずだ。一方のいちごはミッキーの動きを防ごうと尻尾を引っ張って足止めしようとするが、相手の力も強いのでいつまで持つかは分からない。このままだと防戦一方だ…
「信じられねえという気持ちもあるけど、これは現実なんだ…ミッキーを取り戻すにはお前の力が必要なんだよ!」
「だけど…!」
すると、ミッキーは俺達の前までやって来ては腕を振り下ろす。このままだと俺達が下敷きになってしまう!俺は覚悟して手を出して持ち上げようとした。
「もうやめて!!」
「藍沢!?」
藍沢が叫んだその時、変身アイテムが光り出してその光が藍沢を包み込む。これは俺達が変身した時と同じ…その光が青になった感じだ。
「ミュウミュウミント…メタモルフォーゼ!!」
彼女が呪文を唱えた瞬間、変身が始まっていく。その振る舞いはまさにバレエのダンサーのように華やかで衣装を身に纏っていった…
「やった!」
「よっしゃ…これで3人目だぜ!」
「うそ…」
変身が終わると藍沢は自分の姿を確認する。俺達も変身した時はこんな感じだったな…そりゃあ、いきなりこうなると驚くのも無理はない。
「藍沢、一気に決めるぞ…心に浮かんだ言葉を思い浮かべて武器を出すんだ!」
「そんな…できないわ!」
「できる!こうやって変身できたんだ…何もできない訳がねえだろ?俺を信じるんだ!」
「そうね…」
藍沢はミッキーと向き合ってから目を閉じる。心の中から言葉を浮かべようとしているのだ…ミッキーの中に住むエイリアンと戦うための武器の名を。
「ミントアロー!」
彼女は弓を召喚することに成功した。これで一気に畳み掛けられる…そして、その弓をミッキーに向けて構えて狙いを定めた。
「リボーンミントエコー!!」
「グオオ!?」
「今だ、いちご…背負い投げだ!」
「うん…てええええええい!!」
そして、放った渾身の一撃は見事にミッキーに命中して体が持ち上がて尻尾を持っていたいちごが背負い投げで一気にねじ伏せる。連携技が見事に決まった…女の子同士って阿吽の呼吸で決まるものなんだな。俺は男だからこういうのって全く分からねえ…
「いちご、最後のとどめはお前に任せる!バシッと決めてこい!!」
「うん!」
「えっ、どうして?」
「お前がミッキーを傷つけるなって言っただろ?俺のような槍使いよりもいちごに任せた方が最適だと思ってな…」
「貴方って変に優しいのね。」
「変には余計だ…」
俺はいちごにとどめを任せて藍沢と2人で行く末を見守ることに…槍を使う俺よりも槍を使わないであろういちごの方が最適だと思ったので任せることにした。(まあ、弓で攻撃した藍沢も藍沢だけど俺の槍と藍沢の弓では使用用途が違う…)
「ストロベルベル…リボーンストロベリーチェック!!」
いちごはハートのタンバリンみたいな武器…ストロベルベルを召喚してはミッキーに狙いを定めてピンク色の光線を放った。それが命中し、ミッキーは元の姿へと戻った。
「回収、回収!」
一方のクラゲのような小さな物体はマシャが食べて無事に回収成功。これで万事解決ってところかな…そんな中で藍沢は心の底は良いヤツだということも分かった。お金持ちがみな悪人ではない…これだけでも偏見は直りそうな気もする。
「ミッキー…よしよし、良かった。ありがとう…2人とも!」
戦いが終わった後、藍沢はミッキーを抱きしめて頭を撫でながら俺達に『ありがとう』と一言お礼を伝えた。世間のお金持ちはどうしても感謝ができない人間はとんでもないぐらいに多いが、彼女はお礼も言えてとても良い子だと言える。
「いや、お前がいなかったら俺達は負けてたぜ…」
「藍沢さんがいたからこそ勝てたんだよ。こちらこそ、ありがとう!」
「ふふっ。それと、汐…さっきは酷いことを言ってごめんなさい。辛い思いをしていた貴方の気持ちを理解できていなくて…」
「もう良いよ。俺も熱くなりすぎた、こっちこそごめん…って、俺のことを名前で呼んだか?」
「いけませんか?それと、私のことはみんとと呼んでくださる?」
「分かったよ、みんと…」
「みんと、これからもよろしくね!」
「しょうがないですわね。特別に貴方達とお友達になってあげましょう…これからもよろしく頼むわね、いちご、汐。」
こうして、俺達の仲間にミュウミントことお嬢様の藍沢…いや、みんとが加わった。これから先に大変なことが待っているかもしれないが、3人集まれば文殊の知恵とよく言うものだからな。まだ3人足りないが、俺達なら仲間をあっという間に増やして地球を守れると確信している…みんと、これからもよろしく頼むぜ!
才川朱我(さいかわしゅが)
CV:日野聡
誕生日:8月4日(満20歳)
身長:178cm
体重:63kg
見た目:『銀魂』の神威
解説
汐の兄で大学2年生。父である文太の代わりとして汐に礼儀、料理、家事を教え、彼にとっては『第二の親父』と言えるような存在だ。時には厳しい時もあるが、普段は表情から優しい上にかっこよくて汐にとっては目標とする男の1人として尊敬している。学校が終わってからは毎日豆腐の配達をしつつ、夢であるシェフに向かって突き進む。
ひとまず、今回出てくるオリキャラは全員出しました。ちなみに、原作で出てくるいちごちゃんの友達であるみわちゃんともえちゃんはこっちには出ません。ご理解の方をよろしくお願いします!
しかしながら、みんとちゃんのリメイク前の声優がかかずゆみさんなのは驚きましたね…走り屋のコ・ドライバーをやった後と国民的ヒロインをやる前がお嬢様戦士、凄いキャラ遍歴です。リメイク前をリアルタイムで観た人からすればゆみさんと言えば『ドラえもん』のしずかちゃんよりもみんとちゃんなのでしょう。(それより前の世代だと『頭文字D』の沙雪かな?)
そんなゆみさんはアラフィフになっても美人ですよね。未亡人で子供が2人いるとは思えませんよ…僕のお母さんよりちょっと下ですけど、お母さんを交換してほしいぐらいです!まあ、そんなことはお母さん本人の前では死んでも言えませんがw
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