唯 視点
『スタスタ』
「む~~~~」
今、目の前を、お兄ちゃんが通っていった。
で、なんで私が唸っているかっていうと・・・その通っていった、お兄ちゃんのカッコが問題だからだ。
そのカッコっていうのが・・・。
上着を着ないで、上半身、裸のカッコ・・・。
「ちょっと、お兄ちゃん! そんなカッコで家の中、うろつかないでっ!」
「あーーー?」
私が注意すると、お兄ちゃんはめんどくさそうに振り返って。
「別にいいじゃねーか? 家の中なんだから」
「だめよ! だらしがないわ!!」
全く、いくら家の中だからって・・・。
一瞬だけ・・・マサ君の上半身、裸の姿を思い出し。
慌てて頭を振る、うぅ~~~なんてハレンチな・・・。
「チッ・・・最近は大分、丸くなったと思ったのにに、相変わらず、おカタイな・・・って唯? どうした?」
「なっ、なんでもないわよっ! ホントに!!」
言えるワケないじゃない・・・。
「そっか? まっあんまり、おカタイ、ままだと、いつまでたっても男ができねーぜ?」
なっ・・・!?
「何、言ってるのよ!! そんなのいらな・・・」
そこまで言って、言葉が詰まる、いらない!! と言い切るつもりが、言い切ることが出来ない。
どうしても、思い出してしまう、男の子・・・。
強引で、無茶苦茶で、勉強が苦手で、サボり魔で、目つきが悪くて、友達思いで優しい、そんな変わった男の子。
一部の先生には問題児扱いされてるし、きっと彼と出会う前の私だったら、同じ様にただ問題児としてしか見れなかったかもしれない。
でも、ただの問題児じゃなくて、彼の回りは、いつも誰かの笑顔で溢れてる。
私も彼の前では笑う事が多い、まぁ、ため息の数も多いけど・・・。
最近のため息は、彼の無茶苦茶な行動だけじゃなくて、彼の凄い鈍さに対しての方が多いかもしれない・・・。
里沙さんや、未央さん、いわく呪い級、確かにあの鈍さは、呪いよね・・・。
「あーーー? また唸りだしたな?」
『ピロリロリ~♪』
「おっ電話、もしもーし! あ、マユミ? 今日? おう、もちろんヒマ、バッカ、香織とは、もう別れたって~~~」
むっ・・・お兄ちゃん・・・人が悩んでるって言うのに・・・。
「ハレンチだわっ!!」
『バンッ!!』
つい、強い力でドアを閉じてしまった。
ドアの向こうで。
「ん? 何でもねーよ、妹が難しい年頃でね、アイツも、もっと他の事に・・・って最近は、結構、目を向けてるよな・・・まさか・・・イヤ、まさかな・・・っと悪い悪い!!」
そんな、お兄ちゃんの声が聞こえた。
・
・
・
・
「もう・・・うちの家族はどうしてあんなにだらしないのかしら」
気分転換の為に外へと出掛ける。
あら・・・あそこに居るのって・・・。
前の方に見えるのは、買い物袋を下げてあるく結城君に、ララさんの二人。
「あっ! 唯だ~~~唯!!」
ララさんが私に気付いて、何時もみたいに人懐っこい笑顔で、私に駆け寄ってくる。
「急に走り出すなって!! よお、古手川」
少し遅れて結城君も、袋を揺らしながら駆け寄る。
「こんにちは、買い物かしら?」
二人にアイサツをして、そう話題を振ると。
「あっああ、何時も買い物とか家事は美柑やマサに任せっきりだから、たまにはさ?」
「マサも美柑もいっつも頑張ってるもん、だからたまには、お休みしてもらうんだ」
フフ・・・。
「そうなの? それでマサ君はお家にいるのかしら?」
「いや、それが・・・八百屋の、おじさんがギックリ腰になったって聞いて、マジかい!? おっしゃ、ちょっくら手伝ってくらぁ~ って飛び出してったんだよな~」
今のマサ君のマネ似てたわね? それにしても。
「らしい話ね」
「うん、マサは優しいからね」
「俺もそう言ったら、ンなこたぁねぇって、こういうなぁ持ち持たれつってんだ、八百屋のオッチャンには、値引きしてもらってっしな? って返されたぜ、ハハ、妙なとこで照れ屋だよなマサって」
臨海学校の時にも同じこと言ってたわね。
「マサ優しいのにね~」
「だよな~」
「そうね」
気付いたらこの場にいない人の話題で盛り上がってた。
人付きが下手だった、昔の私には信じられないかもしれないわね。
「あっ! 唯、見て見て~~あのね、こんなの買ったの」
そんな事を考えてた私にララさんが思い出したように、何かを見せてくる。
何かしら? と見てみたら・・・。
「マジカル・キョーコの入浴剤!! 一瞬で溶岩風呂のできあがりだって!!」
えっ何それ?・・・そんな、嬉しそうに言われても・・・。
「大丈夫かよ、それ・・・」
結城君が半目でララさんが持つ入浴剤を見てる。
「大丈夫だよ!! だってキョーコちゃんのだもん!!」
「それがなんで大丈夫ってことに繋がるのかわからないわ・・・」
「だよな・・・溶岩って、危険過ぎる匂いがするし」
そうよね・・・。
「ええ~~~でもでも、温泉の名前に、地獄温泉っていう怖い名前の温泉があるってマサが言ってたよ」
た・・・確かに、そうだけど・・・。
「マサもまた、微妙なことを・・・」
しかも間違った知識じゃないっていうのが、また・・・なんとも言いづらいわね。
それから少しだけ話をして二人と別れ、のんびり、と街を見て歩く。
外に出て来てよかったわね、さっきのことといい、いい気分転換になるわ。
そう言えば、マサ君、今、その八百屋さんの手伝いをしてるのかしら?
気になるわね・・・。
「少し・・・覗いてみようかしら?」
でも・・・邪魔になったら・・・でも気になるし・・・むぅ~~~。
あっ!! そういえば、タマネギが無かったわよね、うん、買い行かないと、そういうことにしよう。
そう、自分を納得させて、八百屋さんへと向かい足を進めることに。
「「「ギャハハハ!!」」」
ン・・・何? あっ・・・何よ、あの人達、歩道なんかに座りこんで・・・。
迷惑って言葉を知らないのかしら・・・。
上向いた気分が下がり始める、やっぱり、ああ、いうのは見逃せないわ。
「あなた達! そこは通行のジャマよ! 道をあけなさい!!」
座りこんでる、男の人達に注意する、すると、その人達は。
「あ?」
ジロリと私の方を睨みながら。
「何? 俺らに行ってるの?」
と詰め寄ってきた。
「そうよ!!」
怯まずにそう返す、マサ君が怒ってる時に比べれば、怖さなんて感じない、比べるまでもないけど。
ホントはカッコのことも言いたかったけど、余りカッコだけで人を決めるのは・・・。
チラッと詰め寄ってきた人のカッコを見る・・・やっぱりダメね、あんな所に座ってた人達だし。
「だいたい! そのカッコは何よ? 親が見たら泣くわよ」
結局は言ってしまった。
「ホホ~~~言ってくれるじゃん」
「おっ、このコ、ちょっとカワイくね?」
「俺もそう思ってたトコ!」
ニヤニヤとイヤらしい笑いを浮かべる、その人達。
何を・・・。
『グッ!!』
「ッ!!」
その人達のうちの一人が私の後ろに回り、羽交い締めにされてしまう・・・。
「はっ放しなさいよ!!」
その人達のリーダー格みたいな人に、そう言うも。
「ヒヒヒ・・・ンな事、言わずに遊ぼーぜぇ」
またイヤらしい笑いをしながら近付いて来て、私のスカートに手を伸ばし。
「キレーな足~~」
スカートを摘み、捲くろうとする。
イヤ・・・なんで、男って・・・全部の男の人がこうじゃないっていうのは、わかってる。
身近にそういう人がいる・・・でも・・・。
誰か・・・何とか言ってよ。
回りに助けを求めても、回りは、見てみないフリ・・・。
なんで、明らかに、この人達、間違ってるのに・・・。
誰かーーー・・・マサ君・・・。
「ウォォォォ!!」
そう思った時、私を囲んでいた男の人達の一人が、突然、大声を上げた。
私のスカートを捲くろうとしてた、あのリーダー格っぽい人が。
「ゲハハ・・・興奮し過ぎだ・・・は?」
動きを止めて、その大声を出した人の方を見る、私も、恐る恐る見てみると。
「ウォ・・ガッ・・・オゴッ・・・ブクブクブク・・・」
足が地面から離れ、浮いている状態、そして口からは泡を吹いて気絶してしまった。
その後ろには・・・。
「テメェ・・・何してんだ、あ? 人の身内によォ? そんなに遊びてぇなら俺が遊んでやるよ?」
何度か見た、あの怖い顔のマサ君がいた・・・。
安心したと同時に、助けに来てくれた嬉しさ、さっきの恐怖、そして、マサ君が怒ってる時、特有の怖さ、そんな気持ちがないまぜになって、ほうけている間に。
『ゴキンッ!!』
「アギャッ!!」
私を羽交い締めにしてた人の手が外れる、今の音・・・。
『ダラン・・・』
「折れ・・・折れ・・・痛でぇ~~~痛でぇ~~~よ」
「うるせぇな? 外しただけだよ」
腕を抑えて、叫ぶ人にマサ君は冷たい目でそう呟く。
「て・・・テメェッ」
「テメェも黙れ」
『ブンッゴギャッ!!』
リーダー格っぽい人を振り返りもしないで、殴りつける。
鼻が折れたか、そのリーダー格の男からは沢山の血が流れでている。
いっ・・・痛そうだ・・・。
そのリーダー格に対して。
「右手・・・だったな?」
そう言って足を振り上げ・・・って、まさか!!
「マサ君!! やり過ぎ、落ち着いて!!」
「あン? って、前にも似たよなことあったな?」
振り返りながら、そう言うマサ君、そう言えば、以前にも、あったわね・・・。
この状態のマサ君にはやっぱり慣れないけど・・・。
「まっいいさね、唯がそう言うなら、この辺でカンベンしてやっか・・・」
『ピ・ポ・パ』
マサ君はそう言って携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始める。
「あっスンマセン、バカが三人転がってんで、救急車三台~ヨロシクお願いしま~す」
『ピッ』
電話してた場所は病院だったみたい。
「コレでよしっと・・・ってイカンな、めっさ注目されてるな?」
マサ君が言うように、回りを見てみると、かなりの注目を浴びていた。
その中には、マサ君を・・・なんていうか・・・かなり、イヤな目で見てる人もいる。
その目を見て凄くイヤな気分になる・・・確かに、やり過ぎ出し、怒ったマサ君は怖いけど、何もしてくれなかったアナタ達が、マサ君を、そんな目で見るなんて!!
そのことに一言、言ってやろうとすると。
「よかよか、慣れとるし? まっよく知らんヤツに、あんな目で見られても屁とも思わんわい、っと、とりあえず離れるべ~」
『バッ!』
と私を抱えて。
「ニン!!」
『シュバッ』
出会った時みたいに、一瞬で移動した・・・つい。
「ハッハレンチよ~~~~~!!」
と言ってしまったのは仕方ないわよね、本当は、嬉しのに。
「はいハレンチいただきました~」
相変わらずのマサ君だった。
・
・
・
・
マサ 視点
唯を連れて、あの場から離脱し、唯を下ろしてから。
「あっと、そういや唯、大丈夫だっか?」
かなり、いまさらながら確認。
「うっうん・・・大丈夫・・・マサ君、助けてくれてありがとう」
大丈夫みたいね、うむ。
「ナッハハ、気にしなさんな、困った時はお互い様ってな?」
「クスッ・・・やっぱり」
ン? 何がやっぱりなんだ? まっいいさね。
っと・・・そだった。
「まだ、八百屋ン手伝いがあるんだったわ」
そろそろ行かねば・・・あんまし遅くなっとオッチャンが無理に出てきてまう。
「そっそういえば、マサ君って八百屋さんの手伝いをしてるんだって?」
「まぁよ、って何故に知ってんだ? って、さっきンでわかったんか、ナイスな推理力だな」
グッとサムズ!!
「違うわよ、ララさんと結城君に会って、その時に聞いて」
ほう、それはまた奇遇な・・・。
ってイカンがな。
「オッチャン無理する5分前だ・・・じゃそういうこったから、俺ァ行くわ、あっと、今から帰るんだったら送るか? さっきみてぇなんに遭ったらイヤだべ?」
そんくらいだったら、パッパッと行けると思うしな? まっ唯ン家がどこにあっかは知らんけど。
「大丈夫よ、それより私も八百屋さんに用事があるから、一緒に行くわ」
ほうほう。
「おけ、じゃ行くべ?」
NINJAしようかと思ったが、普通に歩っても5分で着くんで、歩って行く。
「して、何が入り用だ? 交渉しだいで安くなっぞ?」
「えっとタマネギを・・・」
「何個だ?」
「えっ・・・あっ・・・ひ・・・ひとつ?」
タマネギ一つか・・・。
「何? 悪い!!」
いやさ、急に怒られても・・・悪いとは言ってねぇやん。
「うっ・・・そうよ、別にタマネギを買いに行くわけじゃないわよ、ただ、ちょっとマサ君の様子を見に行こうと思っただけよ」
いやさ、特に何も言ってないっつうに・・・まっ、様子を見に来てくれようと、してくれたんはありがてぇけど。
「ってこたぁ唯、今日ヒマか?」
「えっ? ええ、そうね、今日は、予定はないわね?」
うむうむ、そっかそっか・・・よしっ!!
「何?」
「まっ着いてきんしゃい」
と唯を引き連れて、八百屋へGO。
八百屋へ着いたら案の定、オッチャンが。
「だ~か~ら大丈夫だってんだ・・・イギッ!!」
無理して出てくるとこだった・・・。
「あっマサちゃん、いいところに帰ってきたね~、ほら父ちゃん! マサちゃんが居るから店は大丈夫だよ、父ちゃんは大人しく寝てな!!」
「母ちゃん! だから、こんぐれぇ屁でも・・・ウギッ!!」
大丈夫じゃねぇやん、めっさ脂汗だらけやん・・・ったく。
「オッチャン、無理したら後に祟んぞ? おら、俺に任せて寝る寝る」
「そうそう、そうしな、長引いて困るのは自分達なんだから」
「チッ・・・しゃ~ね~な~、店は頼んだぜ、マサ坊・・・ウガッ・・・」
ひょっこり、ひょっこり、店の中(奥の方が家になっている)戻っていく、オッチャンです。
「ったく、父ちゃんも、いい加減・・・って、おや? マサちゃん、この子は誰だい?」
ぶちぶちグチりながらも、唯に気付いた、オバチャンが俺に、そう聞いてくる。
「よくぞ聞いてくれた!! 本日限定の看板娘だ!!」
ニッと笑いながら唯を紹介、そう、さっき思いついたのは唯に手伝って貰おうってことですねん。
「えっ? えっ!? ちょマサ君!! どっどういうこと?」
まっ、やっぱし唯さん、ビックリしとりますけどね。
「まぁまぁ、頼む!! やっぱ看板娘が必要だろ?」
「マサちゃん、ココに立派な看板娘がいるじゃないかい、オバチャンじゃ役不足って言いたいのかい?」
「残念ながら、年と体重が、つか、看板『娘』だぞ? 娘じゃねぇべさ」
「ハッキリ言うね~~~全く・・・コレでも若い頃は彩南のマドンナだったってのに」
マドンナ・・・ねぇ・・・。
「時代が見えるわ」
「うるさいわ!! まっ寄る年波には勝てないね、で、えっと・・・名前は・・・なんていうのかしら?」
「あっ? えっと・・・古手川 唯・・・です」
「そうかい、唯ちゃんかい、バイト代を出すから、手伝ってくれないかい? こんな目つきの悪い店員だけじゃ、いくらオバチャンでも、花が足りないからね」
うむ、まぁ確かに目つき悪いけど。
「まっつうワケで頼むわ!! なっ? 俺もなんか奢っから」
手を合わせて頼み込む。
したら唯。
「ハァ~~~仕方ないわね? まっ助けてもらった、お礼あるし・・・えっと、よろしくお願いします」
ため息をはきながらも、了承してくれました。
まっ、ンなつもりで手を出したワケじゃねぇんだけどな。
「そうかいそうかい、助かるね~それじゃ、エプロンと野菜の値段が書いてるメモを持って来るから、待っててね、唯ちゃん」
一旦、奥の方へと引っ込む、オバチャン。
「全く・・・マサ君、急過ぎるわよ、一言くらい言って欲しかったわ」
「悪い、ついな? まっやってみっと楽しいぜ? オバチャンも良い人だしな?」
「まぁそれは何となく雰囲気でわかるけど」
と軽く唯と喋ってる間に、オバチャンが戻ってきて。
「それじゃ、唯ちゃんはコレを付けて、マサちゃんは・・・」
「むろん、あるぞ」
例によってスプーキーズ仕様のエプロン。
「用意が良いね~~~、それじゃ唯ちゃん頑張って、マサちゃんは慣れてるから、わからないことがあったら、オバチャンかマサちゃんに聞くんだよ」
「は・・・はい」
と、こんな感じで、八百屋の手伝い、再開。
まっ唯は再開じゃなくてスタートだけど。
っと、その前に・・・。
「オバチャン、コレ通帳」
「あら、忘れてたよ」
大事なモンを忘れんなっつうに。
「えっ? 通帳って何で?」
「ン? 仕入先に入金して来たんだわ、で、な~んか、感が疼いて、ソッチの方行ってみたら、唯とカッチンコってワケ」
いや、ホント、感に従って良かったッスわ、と頷いてたら。
「そう・・・なんだ・・・そっか・・・フフ」
微妙に笑っとります。
はて?
「ン? オバチャンだけのけ者かい?」
「いっいえ、少し、コッチに来る前にあったものですから」
「そうかい? って唯ちゃん、カタイね~もっと普通に話していいんだよ、マサちゃんだって、そうしてるだろ?」
確かに唯、カタイわな、まっ唯だしな。
「えっ? でも・・・」
「う~ん、礼儀正しい子だね~、マサちゃんも、ココまでとは言わないけど、ちょっとは見習いな」
「いまさらですがな」
と、そうこうしてる間にも。
「スイマセ~ン」
お客さん、がやってきた。
「じゃ先ずは俺が対応すっから」
「ええ、それを見て流れを掴めばいいのね」
話しが早くて助かるわい。
っとイカンイカン、待たせっぱなやがな。
「あいあい!」
「おっ? マサちゃん、久しぶりだね」
「おやま、三鷹のオバチャン、何を探してんだ?」
「お姉さんといいな、お姉さんと・・・えっと、ダイコンにレンコン、ニンジンに後は・・・ゴボウだね」
ふむ・・・。
「おでん、にキンピラか?」
「当たりだよ」
そっか、そっか・・・そだ。
「だったら春菊もいいぜ~、ザクッと切って、あんまし煮込まねぇようにすんだわ、美ン味いぜ~」
「そうなのかい? じゃ春菊も!!」
「あいよ!!」
ヒョイヒョイと野菜を詰めて、手渡し。
「じゃ、コレ、お金」
「あいよ・・・えっと・・・釣りはっと」
ぶら下がってるお釣り入りのザルから釣りを出し。
「はい、三百万!!」
チャリンと手渡す。
「古いね~マサちゃん、ホントに高校生かい?」
「現役でな」
「年ごまかしてるようにか思えないね~~それじゃ、頑張りなよ」
「あいよ、毎度あり~~~~」
と、三鷹のオバチャンが帰るのを見送り、振り返ると。
「凄いわね」
「だろ? マサちゃん、相変わらず上手いね~~、オバチャン、惚れ惚れしちまうよ」
唯は目を丸くしていて、オバチャンには、やたらと褒められた。
いやはや。
「照れら~~な? まっこんな感じで唯も」
「さっ流石に、それは・・・」
「そうだね~流石に最初からアレを目差すのは難しいね、まっ先ずは普通にやってみな? ゆっくりでいいからね? ほら、次のお客さんが来たよ」
唯、初陣!!
さてさて・・・おっ? 吉田の婆ちゃんか、あの婆ちゃんだったら初陣でも大丈夫だな。
「おやおや・・・今日は随分と可愛い店員さんだね~~」
「えっ? あっえと・・・」
「あっごめんなさいね~~ついね~・・・それじゃ、ダイコンとタケノコを下さいな」
「あっはい・・・えっとダイコンはさっきアッチにあったから・・・えとタケノコは・・・」
あっ、そだった、まだどこに何が置いてあっかわからないわな・・・。
まっでも吉田の婆ちゃんなら。
「フフフ・・・慌てなくても良いよ~、ゆっくり落ち着いて」
「はい、えっと・・・あっあったわ、それじゃ、えとメモメモ・・・」
タケノコ片手にメモを見て、値段を確認する唯。
それをニコニコと笑いながら、ゆっくり待つ吉田の婆ちゃん。
うむうむ・・・流石は吉田の婆ちゃんだな。
「それじゃ、~円になります」
「はい、お金・・・」
ダイコンとタケノコが入った袋を受け取り、代金を渡し、そのお釣りを唯が慌てながらも、渡すと吉田の婆ちゃんは。
「ありがとう、可愛い店員さん、それじゃ~ね」
手を振って去っていきました。
そして、唯が。
「フゥ~~~きっ緊張したわ」
と戻って来る。
「うむうむ、良いでき良いでき」
「そうだね、その調子だよ唯ちゃん」
唯を労う、俺とオバチャン、そんな俺達に唯は。
軽く笑いながら。
「あのお婆さんが優しかったからね、優しいお婆さんだったわ」
と応える。
「まっ吉田の婆ちゃんだからな? たまに遊びに行くと手作りのおはぎを出してくれんだけどな? それがまた、美ン味いのなんのって」
あの味は、そうとう頑張っても出ないわな? ホント絶品です。
「そっそうなの? マサ君、あのお婆さんのところに遊びに行ってるのね?」
「そうなんだよね~ 吉田さん、一人暮らしでね~、マサちゃんが時々、様子を見に行ってるんだよ、吉田さん、孫が出来たみたいだって嬉しそうにしてたよ~」
「そう・・・マサ君は・・・優しいわね、今度、私も連れていって欲しいわ」
ふむ・・・。
「まっ優しいかは知らんが、今度、行ってみっか?」
吉田の婆ちゃん家、落ち着くからな~。
おはぎ美味えし。
「スイマセ~ン」
おっとっと客、客!!
「あいあい!!」
と、こんな感じで、唯と代わる代わるお客さんに対応し。
唯も、段々と慣れてきた頃。
「う~ん・・・やっぱりマサちゃん、この店、継ぐ気ないかい? ほら、ウチは一人娘が嫁に行っちゃった、だろ? マサちゃんだったら、父ちゃんもオバチャンも任せられるんだけどね~」
と、何度目かの勧誘、なんか知らんが手伝うと結構な頻度でされます。
「ほら、唯ちゃんも一緒に」
「えっ!? えっ? そっそれは・・・あの」
おっ? なんか唯も勧誘されてんな? つか赤!!
めっさ赤くなっとるし?
「おやおや、コレは・・・そうかい、そうかい、やっぱりかい」
いやさオバチャン。
「やっぱりって何が?」
「何がってマサちゃん・・・気付いてないのかい!?」
「気付くって何に?」
「あれま・・・やっぱり病気だね~マサちゃんは・・・」
病気って・・・めっさ元気なんだが・・・。
「ハァ~~~唯ちゃん頑張るんだよ、オバチャンは応援してるからね!!」
「えっ? あっ、えと・・・うぅ~~~」
何故か唯を励ます、オバチャンと、う~う~唸る、唯でした。
つか応援って何よ?
とかありつつも、再びやって来た、お客さんに対応する。
な~んか、唯が赤くなりながら、チラチラと俺の方を見てた気がするが・・・はて?
まっ今はお客さんに集中っと。
で、暫くそんな感じで進み、そろそろ日が傾いてきて、晩メシの食材を買いに来た、お客さんも下火になってきた、そんな時。
「いらっしゃいませ・・・ってお母さん!!」
どうやら唯の母ちゃんが買い物に来たらしい。
「あら? 唯、何してるの?」
「えっ、えっと」
なんか、めっさテンパってるな、どれ。
「どうも~、唯ン母ちゃんッスか? 娘さんお借りしとりま~す」
軽くアイサツ。
「ちょっマサ君!? マサ君はアッチ行ってて!!」
あれま・・・照れくさいんかねぇ~。
まっあんまし、邪魔しても、コラッてされるし、ボチボチ店も閉める時間ってことで。
「じゃ俺ァ、明日ン準備に回りますわ」
「はいよ」
と裏に回る。
なんか唯と唯の母ちゃんがキャイキャイ言ってるのが、気にならんこともねぇが。
スルーしつつ作業を続ける。
で、唯の母ちゃんでラストってことらしく、店じまい。
唯がまた、赤くなりながら、うぅ~うぅ~唸ってたが・・・オバチャンから給料を受け取り。
唸ってる唯を送って本日は帰宅したのでした。
・
・
・
・
唯 視点
マサ君に家まで送ってもらって。
「あ・・・ありがとう・・・」
とお礼を言いマサ君を見送った後、家の中へと入る・・・。
うぅ~~絶対、お母さんにからかわれるわ・・・。
まさか、お母さんがあの八百屋さんに来るなんて・・・。
まっまぁ、私も八百屋さんのお手伝いをするなんて思いもしなかったけど。
家の中に入ると、案の定、ニヤニヤとしてる、お母さんに・・・お兄ちゃん・・・。
うっ・・・お母さん・・・お兄ちゃんにも話したのかしら?
この様子だったら話してるわよね・・・。
ハァ~~~~。
どうしよう。
うん、とりあえずはお風呂に入って時間をかせごう。
少しは落ち着くはずよね?
そして、お風呂に入って、気分を落ち着かせ。
晩ご飯の時間になった。
やっぱり時間を置いたのがよかったのかしら?
お風呂から上がった後は、マサ君のことは聞いてこなかった。
あっ? 今日はお鍋なのね? そう言えば八百屋さんで、シイタケとかの、野菜も買ってたし。
食卓について、お鍋をつつく。
うん、美味しい、温まるわね・・・。
「で、唯、あの男の子は彼氏?」
「ウグッ!! ケホッケホッ・・・お、お母さん!?」
いきなり何を言い出すのよ、思いっきりむせちゃったじゃない。
「あらあら、遊ちゃん、お水」
「ああ、ほら、唯」
お兄ちゃんか、水を受け取り、喉をならして飲む・・・。
フゥ~~~~なんとか少しは落ち着いたかしら・・・よし、普通に普通に・・・。
「ちち違うわ、クラスの友達よ」
少し吃ったけど、なんとか上手く返せたかしら?
「へぇ~~~『今』は友達か」
「ええ、今は・・・ってお兄ちゃん!! 今はって何よ、今はって!!」
「いや~~、なるほどね~~~ってな? そっか、そっか、どうりで最近は丸くなったワケだ」
むぅ・・・丸くなったって何よ、丸くなったって。
「唯も春が来たのね~~~母さん、嬉しいわ~~~、今度、あの男の子を紹介してね?」
「だからマサ君は、そんなんじゃ!!」
「あらあら、マサ君って言うのね~~」
ああ~~~もう、ドンドン墓穴を掘ってる気が・・・。
「で、どんなヤツだ?」
「う~ん、母さんは少ししか見てないけど、見た目だけだったら、ちょ~っと目つき悪くて、怖そうだったかしら? でも、雰囲気は良い子そうだったわよ?」
「へ~~~~、そうなのか唯?」
うっ・・・私に振らないでよ・・・コレ以上、喋ったら、また余計なことを言っちゃうじゃない。
「あらあら、照れちゃって可愛いわね~」
「クク・・・まさか、唯のそんな反応が見られるとはな~」
黙ってたら黙ってたで、勝手に想像してるし・・・。
どうしろって言うのよ~~~~~~。
結局その日は、二人に散々からかわれた・・・。
もう、怨むわよ、マサ君!!