雄英高校ヒーロー科一年A組の緑谷出久は、職場体験のために唯一自身を指名したヒーロー事務所に向かって一人電車に揺られていた。日本の一大イベントである、雄英体育祭が終わった直後ということもあり、最近は通学途中にやたらと声をかけられることが多かった。特に悪い意味で目立ってしまった出久には、「体育祭凄かったね。ところで腕大丈夫?」といった具合に毎回一言心配の言葉を添えられるのだ。大変ありがたい気遣いではあるのだが、多くを救うヒーローを目指している身としては…何というか、居心地が悪かった。声をかけられるたびに自身の未熟さを痛感させられた。それがここ数日は毎日続いたのだ。そろそろ精神的に疲れてきたところだったのだが、今この車両が走っている地域は雄英から少し離れているためか他の乗客に話しかけられるということはなかった。しばらくは心を休ませておけるとホッとしていたのだが…
「あれ、何かテレビで見たことあるような…。ああ、そっか。君もしかして体育祭の超パワーの人?こんな所で有名人に出会えるとは夢にも思わなかったよ。」
と、同い年くらいの少年が話しかけてきた。
「ああ、その、えぇっとぉ。」
出久がテンパって返事に困っていると
「確かに、普通はいきなり知らない奴が話しかけてきたら困惑するよね。失礼なことしちゃってごめんよ。」
と、向こうから謝ってきた。
「いや、そんな。別に迷惑とかじゃないよ。ただ、僕自身あそこまで進めたのは無我夢中で精一杯足掻いた結果だから、まだ自分が有名人になった自覚がないというか。」
「流石ヒーローの卵っていうか…君は本当に優しいな。」
「それほどでもないと思うけどなぁ。」
「ところで、今の時間帯は普通学校だと思うけど、もしかしてサボり?」
「違うよ!職場体験で校外活動するためだよ。っていうかそれなら君こそサボりじゃないの?」
「ハハッ、こう見えて僕はもう就職してるのさ。今日はオフなんだよ。」
彼とは性格や趣味の相性が良かったらしく、なんだかんだで話込んでしまった。話題は最近勢いのあるヒーローから、彼らの個性、そして個性自体へと移っていった。
「そういえばさ、ヒーローって発動型や変化型の個性の人が多くて、異形型の個性のヒーローってパッと思い浮かばないなぁ。」
「確かに、言われてみればそうだね。ああでも、シンリンカムイは樹木の異形型個性だし、雄英の教師でもあるハウンドドッグは犬の異形型個性だよ。あと、ウチのクラスにも蛙の異形型個性の子がいるよ。」
「へぇ、シンリンカムイにハウンドドッグかー。聞いたことがあるかも。異形型の人って街中ではたくさん見かけるんだけどさぁ。ヒーローではあまり見たことがなかったかもしれないとふと思ってさ。」
次に停まる駅のアナウンスが流れた。
-次は**##、**##。お出口は左側です。-
「あ、次の駅で降りなきゃ。」
「そっかー。ここでお別れか。少し寂しいけど、君のおかげで有意義な時間を過ごせたよ。職場体験頑張りなよ。」
「僕の方こそ、ヒーローについて語り合えて嬉しかったよ。ありがとう。また会えたらいいなぁ。」
と互いに別れを告げた。
しかし、
「しかし、個性特異点何かが唱えられている現代において科学的に100%人間って呼べる存在はどれくらいなんだろうね。ほら、動物でも個性を発現したために、異形型個性持ちの人間と変わらない存在になったって話があるしさ。」
「え?」
「今や、全知的生命体の8割が個性という何らかの異能を保有しているわけだけどさ…その内50%が発動型、30%が異形型、15%が変化型、4.99999%が複合型って言われてるよ。」
「じゃあ、残りは?」
『普通じゃない、とにかくやばい『ナニカ』だよ。』
最後に彼は微笑と共に意味深な言葉を残していった。
「なあ、ゲームしようぜ。」
ソレはこちらを何とも思っていないような調子で声をかけてきた。
「もし勝てたらここを退くし、何ならあのガキを捕まえるのを手伝ってやってもいい。」
朗々と何ということもないようにソレは告げる。
「俺の名前を当ててみな。」
「お前たちは、俺の名前を知ってるだろ。」
ソレはニィィっと悪魔の微笑みを浮かべた。
「だが万が一にも間違えたら、お前の魂もぶっ壊すぞ。」
続きを書きたいけど時間がないので、失踪するかもしれません。『俺の名前を当ててみな』にちょっとだけ修正入れました。