夢の国の技術方面がどこまでいってるのか気になる…少なくともスマホがある時点でそこそこ高水準だろうけども
一時間目の魔法薬学、二時間目の魔法史、三時間目の体育まで…いささか個性的が過ぎる先生方に圧倒される授業時間が終わって、迎えた休み時間。
「なーんか、魔法学校っていっても普通の学校とあんまり変わんないっていうか……想像よりも地味っつーか、魔法使えなくてもそこまで困んねーな…」
「まあ、最初の授業だからってのもあると思いますよ」
「それにしたって、なんかなぁ…グリムもそう思わねぇ?………ん?」
「あ、窓の外を見てみろ!あの毛玉は!」
デュースが指差す先を見ると…グリムがふよふよ飛んでいた。なんか言ってるっぽいけど聞こえない。
「早期逃亡とは…あいつも懲りないな…」
「ぷ、監督生一日目にして監督不行き届きかよ…。ね、グリム捕まえるの手伝ってほしい?」
「いえ、その必要はありません。だってここは二階でしょう?」
「えっ?………ってええぇ!?ユウそこ窓っ!!」
…前世見ててから知ってるけどこの体、オリジナルを反映してかスペックは結構高い。ついでに、ある程度近づけたらあれが使えるのはやっぱり便利だと思う。ほらこんな風にバチッと。
「ふぎゃーっ!?はっ早すぎるんだゾ!?」
「"二人で一人の生徒"なんですから当たり前でしょう?問題を起こされては困るんです。ほら捕まえました。短い逃走劇でしたね」
「やだやだー!!つまんない授業は嫌なんだゾ!!」
「ダメです。地道に基礎を押さえていかないと、大魔法師にはなれませんよ?」
「くそー!オマエ、なんか今日厳しいんだゾ!!」
「やっとお昼休みなんだゾ~!!ふわぁ~~~今日も美味そうなものがいっぱいなんだゾ~!!!ふわふわオムレツ!!!!鶏肉のグリルにベーコンエッグタルト!!!!!」
「知ってましたけど何度見ても凄い食い意地ですね…」
「だーっ声がでけぇ!休み時間だけ元気になりやがってコイツは…」
「こういうのを現金って言うんでしょうか」
昼食のため訪れた大食堂には、すでにたくさんの生徒がいた。学食ビュッフェ形式…しかもけっこう品数が多い。大きな学園なんだな、ということを改めて実感する。
「ユウ!!オレ様鶏肉のグリルがいい!!最後の一個なんだゾ!!あとオムレツも!!ジャムパンも!!」
「はいはいちょっと落ち着いて…おっと」
「あだっ!?」
なにぶん既に混んできていたので、すっかりハイテンションのグリムが上級生とおぼしき生徒とドシンとぶつかってしまった。
「失礼しました」
「あ~~~~~~っ!オイテメェ!お前がぶつかってきたせいでパスタの温玉が崩れちまったじゃねえか!!」
「え?はい、儚いですね」
「儚いですねじゃねえよどう落とし前つけてくれんだ!?」
…あぁ、なるほど。これがいわゆる"絡まれている"というやつか。グリムとデュース君がおろおろしている。…あれ、この上級生パスタ片手に殴りかかってくる。何考えてるの?
「パ、パスタが伸びちゃうから今日のところは見逃してやる!」
…結局なんだったんだろう。少なくともこんな場所で、料理片手にやることではないと思う。短絡的が過ぎやしないか。だから軽くいなして、料理取り上げてテーブルに置いてから鎮圧したけど。
「すごいな監督生!的確に動きを封じていて感動した!」
「いえ、魔法に関しては皆さんが対処してくれたので。ありがとうございます」
「口ほどにもねー奴らなんだゾ!おとといきやがれってんだ!」
グリムの憎まれ口がまた仕事してるけど、一番貢献してくれたからよしとしよう。実は動きを封じるとき少しだけ痺れさせてたけど、それは内緒。
「しかし、騒ぎは起こすなって言われてたんですけどねぇ…」
「とにかくオレらもメシにしよーぜ…」
「はあ、ひどい目に遭った。名門校にあんなテンプレ不良がいるとは…」
「うま~~~い!!オムレツの卵がふわふわで、中からチーズがとろ~り!!」
ようやくありついた…という言い回しを使いたい食卓。グリムの食レポの才能を垣間見るなどしつつ、私もタマゴサンドをもう一口かじる。
「なあユウ、ほんとにそれだけで足りんの?」
「私はもともと低燃費なんですよ」
手の中にはタマゴサンドがひとつ、机には野菜ジュースがひとつ。私が買ったのはそれだけ。バグなのかなんなのか、この体がドン引きするほど低燃費なのは前世から知っていて、こっちに来て見た目が成長してもなおそれは変わらないことが判明した。どうしてこの燃費であの高い運動性能を発揮できるのかがひたすらに謎。怖い。我ながら。
「ユウはほんとにぜんぜん食わねーんだゾ…学園長が持ってきた食事も半分以上分けてくれたんだゾ」
「一度に入る量も少ないので…」
「つーか学園長が持ってきてたのマジ?」
「"私の優しさ青天井でしょう?"とのことです」
「へ、へぇ…」
「…ところで、お前たちの寮は今朝見たけど、他の寮ってどんなのなんだ?」
「学園のメインストリートにグレート・セブンの像が立ってたじゃん?あの7人に倣って、この学園には7つの寮があるんだよ」
突然横から声が割り込んできて、視線を向けるとそこには今朝見た顔+αがあった。
「げ!アンタは今朝の!」
「オレ様たちを騙してバラに色を塗らせたヤツなんだゾ!」
「騙したなんて人聞き悪いなあ。オレだってやりたくてやってる訳じゃないんだよ?寮の決まりだから仕方なくやってるだけで」
「めちゃくちゃ笑顔でしたけど…?」
「まあまあデュースちゃんも。寮の外ならルールに従わなくていいし、今のけーくんは後輩に優しい先輩だから!」
「ちゃん付けはやめてください先輩…」
「はは、それはケイトの愛情表現だからな」
「あの…初対面だと思うんですが、あなたは?」
相変わらず軽いケイト先輩の隣で笑う、メガネをかけた緑髪の先輩に問いかける。…今小声で「ナイスアシスト」って聞こえた。エース君の方から。…放っとこう。
「おっと、悪い。俺はトレイ。トレイ・クローバー。ケイトと同じくハーツラビュルの3年だ。君はオンボロ…ごほん、使われてなかった寮の監督生に着任した新入生だろう?ケイトに聞いてる」
「オンボロは事実なので大丈夫ですよ。ユウ・ミサカです」
「そうか。昨日はうちの寮の奴らが迷惑かけて悪かったな」
…そう言いつつ、先輩方二人はちゃっかり同じテーブルについた。まあ椅子がけっこう余ってるなとは思ったけど、躊躇いないな…。
「まあまあ、せっかく同じ寮に入ったんだから仲良くしよーよ。とりまアドレス交換ね!」
そしてやっぱり
「ごめんごめん。で、寮の話だっけ?いいねえ~話題がフレッシュ!何でもお兄さんたちが教えてあげよう」
「つか、他よりまずうちの寮について教えてほしいんすけど。あの『ハートの女王の法律』とかいう変なルールは何なの?」
「私としても、今のところ意外と風変わりな寮というイメージしかありません」
ほんと、"学園の寮にお邪魔して、バラの迷路で花を赤く塗りました"って…こうして文字に起こすと熱の時に見る夢感がすごい。トレイ先輩は苦笑いを浮かべつつ、ひとさし指を立てて話し出した。
「ああ、伝説のハートの女王についてはお前たちもよく知ってるだろう?規律を重んじ、厳格なルールを定めることによって、変な奴らばかりの不思議な国を治めていた」
「そんなハートの女王をリスペクトして、我がハーツラビュル寮ではハートの女王のドレスの色である赤と黒の腕章をつけて、ハートの女王の作った法律に従うのが伝統ってわけ」
「へぇ…」
…やばい。伝説のハートの女王知らない。そういえばエース君が何か言ってた気がするけど…掃除に集中してたなぁ。
「肩が凝りそうな寮なんだゾ…」
「どれくらい厳しくルールを守るかは寮長次第で、前の寮長はかなりゆるゆるだったんだけどね~」
「リドル寮長は歴代の中でも飛び抜けて真面目でね。だからその伝統を最大限守ろうとしてるというわけだ」
「げぇ~~~めんどくさ……」
「エース君は時の運が悪かったようですね…御愁傷様です」
「うるせー」
・ユウ
(オリジナルを反映した)高い身体能力+低燃費を実現した奇跡の個体…と言いたいところだが、低燃費に関しては"ユウ"側の影響が大きい。
・グリム
逃走劇が一分足らずで終了した魔獣。憎まれ口が青天井(継続)。食レポ強者
・エース
首輪なう。そして意外と困らなくて困惑なう
アイツ窓から飛び降りるとかマジかよ…
・デュース
現時点では印象薄くなりがち
心臓に悪いからやめてくれ…
テンプレ不良に何やら思うところアリ?
・ケイト
再び登場
主人公からはまだあまりいい印象をもらえていない。扇風機認定(?)
・トレイ
初登場
実際に画面で見ると確かにメガネでだいぶ印象変わりそうだったネ…