捻れた世界の静電気   作:諸喰梟夜

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どこで切るか悩んだ結果ここが途轍もなく長くなってしまいました(土下寝)
せっかくなので色々遊ぶ()などしている


11.口は災いのもと[昼食guilty]

 

 

「なあなあ、他はどんな寮なんだ?」

 げっそりして背もたれに身を預けるエースと、ワクワク顔で身を乗り出すグリム。完全に対比で苦笑がこぼれた。

さて、トレイ先輩の解説によると、前述した7つの寮とは以下の通りであるらしい。

 

・ハートの女王の厳格な精神に基づく「ハーツラビュル」寮

・百獣の王の不屈の精神に基づく「サバナクロー」寮

・海の魔女の慈悲の精神に基づく「オクタヴィネル」寮

・砂漠の大賢者の熟慮の精神に基づく「スカラビア」寮

・美しき女王の奮励の精神に基づく「ポムフィオーレ」寮

・死者の国の王の勤勉の精神に基づく「イグニハイド」寮

・茨の魔女の高尚な精神に基づく「ディアソムニア」寮

 

 …う~~~ん……私の中の横文字苦手な部分がギャン泣きしているのを感じる………。

「みんな名前が長ぇ!そんなに覚えきれないんだゾ!」

「あはは、ざっくりでおけおけ!そのうちいやでも覚えるし!」

「まあ確かに、これからここで暮らしていくわけですからね…すでにSで始まる二つがわからなくなる未来が見えてますけど…」

「ははは…。それで、どの寮に入るかは入学式の時、魂の資質によって闇の鏡が決める、とされているが……何となく、寮ごとにキャラが固まってる感じはあるな」

「それはあるね~めっちゃわかる」

「キャラ…ですか」

「魂の資質…よくわかりませんが、確かに傾向が生まれそうではありますね」

「そういうことだ。例えば…ほら、あいつ」

 

 トレイ先輩がそっと指差す先には、ガタイのいい…待って、なんかケモミミついてる。あと尻尾も。

「あのゴツさは見るからにサバナクロー寮って感じだ」

「それな~!運動とか格闘とか得意なタイプが多い寮なんだよね。肉体派というか、厳ついお兄様系というか。黄色の腕章がサバナクロー寮」

「へぇ~」

「では…あちらの灰色の腕章は?」

 人に指をさすのはほんとはよくないことだけれど、目についた生徒を何の気なしに…あ。指差してから気づいたけどあれ入学式で見たメガネでは?

「オクタヴィネル寮だな。その手前に座ってる臙脂黄色の腕章がスカラビア寮だ」

「どっちも頭脳派揃いって言われてる。筆記テストはそこ2寮がデッドヒートって感じだよね」

 メガネの手前には浅黒い肌の二人組。ふむふむ…とりあえず、肉体派寄りと頭脳派寄りが出てくるのはわかる。けど他には何があるだろう?脱線しそうになった話題をエース君がさっそく取り成ししているのを見つつ、意識を目の前のテーブルに戻す。対人スペック高いよねエース君。

 

「話を戻すと、あっちの…やたらキラキラしいのはポムフィオーレ寮だな。の腕章をしてる」

 別の方向を指差すトレイ先輩。その先のテーブルには…

「ほわっ!?超かわいい女の子がいるんだゾ!?」

「えっ!?男子校なのに!?」

「えっ」

「アホ、男子校に正式入学した中に女子がいるわけないでしょーが」

「「え~っ!?」」

「…あと、ああいうのは女の子みたいとか言われるのを嫌がると思いますよ」

 …私がいるんだけどなぁ。まあ、お世辞にも正式とは言えないか。それにしても男子校だったとは。なんか女子見かけないなとは思ってたけど。…肖像画とのお見合いパーティis何?…聞かなかったことにしよ。

「ま、ポムフィオーレは顔面偏差値&美容意識がハンパない連中ってことで。寮長もフォロワー500万人いるマジカメグラマーだよ」

 …あ、グラマーってことはやっぱりインスタ?こんなとこで判断するのはおかしい気がひしひしとしてるけど。そもそもやったこと………あったっけ。わからない。

「おいおい、顔面偏差値だけで話をまとめるな。ポムフィオーレ寮は魔法薬学や呪術が優秀な生徒が多いのも特徴だ」

「あはは、そーでした。で、イグニハイド寮は………の腕章のやつ、この辺には座ってないな…。あそこの寮、なんかみんなガード固くて。オレも友達いないんだよね」

「インドア派…ですかね?」

「まあそう言えるな。魔法エネルギー工学とかデジタル系に強い奴が多い寮だ」

「工学にデジタルですか…ちょっと興味あります。あとは…なんかDで始まるところでしたよね?」

「お前頭文字で把握してんのかよ…ディアソムニア寮な」

「ディアソムニア寮は……いたいた、あの食堂の奥。黄緑の腕章のヤツ。あそこはなんつーか…超セレブっていうの?庶民が近寄りがたいオーラ放ちまくりなんだよね」

 

 指差す先、奥のテーブルにつく一団。一人だけ小柄で個性的な髪色の生徒が目についた。エース君もどうやら同じところに目がいったようで「あれ?」と声をあげた。

「子どもが混じってる…?」

「うちは飛び級入学アリだからな…でも、彼は子供じゃないぞ。俺たちと同じ3年生の」

「リリアじゃ。リリア・ヴァンルージュ」

 あれ?消えた?と思った次の瞬間には、エース君の後ろから声がした。

「っ!?」

「ぬぉぁっ!!?」

「コ、コイツ瞬間移動したんだゾ!?」

「しかも逆さまで宙に…!?」

 小柄で個性的な髪色の…リリア先輩は、くるりと身を翻して着地するといたずらっぽい笑みを浮かべる。

「お主ら、わしの年齢が気になるとな?クフフ、こんなにピチピチで愛らしい美少年のわしだが、確かにそこのメガネが言う通り、子どもとは呼べない歳かもしれんな」

「ピチピチ…」

「自分で言うのは強いですね…」

「遠くから見るだけでなく気軽に話しかけに来ればよかろう?同じ学園に通う学友ではないか。我がディアソムニア寮はいつでもお前たちを歓迎するぞ」

 …わーすごい(語彙力)。ケイト先輩とは違うベクトルで強烈な人が来た。…というか、あそこからすっ飛んできたんだよね…と思いながら目を向けると、ディアソムニアの面々の何人かがこちらをじっと見ていた。すみません、無表情なの怖いです…あ、私もかな。

「あっちのメンツは全然気軽に話しかけてほしいって感じじゃないけどな…」

「クフフ。食事中、上から失礼したな。ではまたいずれ」

 

 それだけ言うと、リリア先輩はやはり音もなく向こうのテーブルに戻っていった。…なんか一人すごく声が通る人いた。リリア様!!って。

「…軽く20メートル以上離れてんのに、俺たちの会話が聞こえてたってこと…!?コワッ!?」

「ま、まあ…そんなわけで、ディアソムニア寮は少し特殊な奴が多い寮だな。魔法全般に長けた優秀な生徒が多い。寮長のマレウス・ドラコニアは世界でも五本の指に入る魔法師と言われてるくらいだ」

「マレウス君は正直ヤバヤバのヤバだよね…つか、それを言うならうちの寮長も激ヤバなんだけど

「残念な語彙力…あ」

「ホンットにな!タルト一切れ食べたくらいでこんな首輪つけやがって…心の狭さが激ヤバだよ!」

「ふぅん?ボクって激ヤバなの?」

「そーだよ、厳格通り越してただの横暴だろこんな痛って!?なんだよいきなり背中叩いて」

「エース!後ろ!」

「え…でぇっ!?寮長!?」

 

 エース君の素っ頓狂な叫びに、私は背中を叩いた手をそのまま額に当てざるを得なかった。…いや、例の電磁波レーダーで誰かが来てるのには気づいてたけど。言うべきか迷う暇もなかったと思う。ほんとに。

 入学式ぶりに見る小柄な赤髪の彼は、いかにも不機嫌ですという表情を浮かべている。こういうのを神経質と言うのだろうか。軽いノリで話しかけたケイト先輩も押され気味。

「ふな゛っ!?コイツ、入学式でオレ様に変な首輪つけてきたヤツなんだゾ!」

「グリム…」

「キミたちは昨日退学騒ぎになった新入生か…人のユニーク魔法を()()()()呼ばわりするのはやめてくれないかな」

「すみません先輩。この子ったら憎まれ口が特技で」

「ふな゛っ!?そん「言い訳は認めません

「まったく学園長も甘い…規律違反を許していては、いずれ全体が緩んで崩れる。ルールに違反した奴らはみんなひと思いに首をはねてしまえばいいのに」

 

 険しい目付きのまま、会話の輪を少し離れてぶつぶつ呟くハーツ(略)寮長。と思いきや、顔を上げてまっすぐこちらを向いた。鋭い視線に射抜かれ、反射的に背筋が伸びる。

「学園長はキミたちを許したようだけと、次に規律違反をしたらこのボクが許さないよ」

「…あの~ところで寮長、この首輪って…外してもらえたりしませんかね?」

「反省しているようなら外してやってもいいかなと思っていたけど、先程の発言からしてキミに反省の色があるようには見えないな。しばらくそれをつけて過ごすといい」

「エ゛」

「それはそうでしょう…」

 何をわかりきったことを…冷や汗を浮かべつつ質問したエース君に、思わず怪訝な目を向けてしまう。…口は災いのもとと言うけど、こんな間近で実例を見ることもなかなかないかもしれない。

「心配しなくても、1年生の序盤は魔法の実践より基礎を学ぶ座学が中心だ。魔法が使えなければ昨日のような騒ぎも起こせなくてちょうどいいだろう?…さあ、昼食をとったらダラダラしていないで早く次の授業の支度を。"ハートの女王の法律・第271条『昼食後は15分以内に席を立たねばならない』"。ルール違反は…お分かりだね?」

「はぁ~また変なルール…」

「返事は"はい、寮長"!」

「「はい、寮長!」」

「よろしい」

「まあまあ、俺がしっかり見張っておくから」

「…ふん、キミは副寮長なんだから、ヘラヘラしていないでしっかりしてよね。ボクは"ハートの女王の法律・第339条『食後の紅茶は必ず角砂糖二個を入れたレモンティーでなければならない』"を守るために、購買に角砂糖を買いにいかなきゃならないから、これで失礼。…全く、シュガーポットに角砂糖を切らすなんて重罪だよ…」

 

 途中で声量を落としてぶつぶつ呟きながら、赤髪の寮長はきびきびと歩き去っていった。

「………ひえ~…焦った~…」

「超カンジ悪いんだゾ、あいつ」

「こら、失礼だぞ」

「…寮の外でも、ルール…ありましたね」

「まあ…日時が関わると、どうしても…な」

 ふーっ、と細く息を吐き出したケイト先輩の小声を皮切りに、各々思い思いに口を開く。…なんというかあれは、どちらかと言えば管理者が出す威圧感だと思う。本当、ここまでいくと規則というより束縛と呼ぶ方が適切なんじゃ…?

「…行ったか?」

「…俺、"ハートの女王の法律・第186条『火曜日にハンバーグを食べるべからず』"に違反してたから、見つかったらどうしようかと思った…」

「食うものぐらい自由にさせてほしいよなぁ…」

 周囲の、エース君たちと同じ腕章をつけた生徒からざわめきが聞こえる。いや違反してたのかよと思ったけど、反応からして本気で忘れてたんだろう。……赤髪寮長、さっき339条とか言ってたよね?何条まであるんだろう?

「…寮生から怯えられるのって、寮長としてどうなんでしょう」

「うん………寮長は、入学して一週間とたたず寮長の座に就いた。少し言葉がキツくなりがちだけど、寮を良くしようと思ってのことで、根は悪いやつじゃないんだ…」

「根がいいヤツはいきなり他人に首輪つけたりしないんだゾ」

 グリムの言葉に苦笑いを浮かべるトレイ先輩。…"根は悪いやつじゃない"。その言いぐさは、どこか赤髪寮長を必死にかばっているように聞こえた。

 

「…そういえば、うっかり流しそうになりましたが"ユニーク魔法"とは?」

「ユニーク…独自の魔法、ということですかね?」

「そうだな。厳密に世界で一人かはさておき…一般的にその人しか使えない特別な魔法のことを"ユニーク魔法"と呼ぶ。そのうち授業でちゃんと習うと思うぞ」

 …厳密をさておいた部分が少し気になった。なんか面倒なクレーマーのための注意書きみたいで。でも考えてみれば、理論上は再現可能とかそういう意味合いかも。…私のは再現可能なのかな。

「リドル君のユニーク魔法は『他人の魔法を一定期間封じることができる魔法』。その名も『首をはねろ(オフ・ウィズ・ユアヘッド)』!」

「ビエッ!?」

「グリムは一度受けてるでしょう…まあ慣れるものではないのはわかりますが」

「魔法師にとって、魔法が使えなくなることは首を失うのと同じくらいイタいからね~」

「イタいというか即死じゃ…」

「デュース君、私も思いましたけどたぶんプライドとかそっちの話です」

「あはは…とにかく、寮内ではリドル君に逆らわない方がいいよ」

「逆に、ルールにさえ従っていればリドル寮長も怖くないってことだ」

 取り繕ったような笑顔の先輩方を前に、エース君はなぜだか私を見てきた。いや何。私にできることなんてないが。トレイ先輩も簡単なことみたいに言うけど……それはそれでどうなんだろう。

 

「そういやオレ、タルト買ってこないとまたケイト先輩に追い出されるわけ?」

「そうだね~"ハートの女王の法律・第53条"でそう決まってるからさ。あとリドル君、ホールケーキの最初の1ピースを食べるのを楽しみにしてるから、きっとホールじゃないと許してくれないよ」

「なるほど、エース君は的確に地雷を踏み抜いたわけですね」

「仲良くしようとか言っといてそこは見逃してくんねーのかよ…」

「それはそれ、これはこれ」

「公私のけじめはしっかりつける。言うまでもありません」

「監督生もそっち側かよ…」

 まあ、まだ常識的な感性は残してるはずだから私はそれに従うよ?エースはテーブルにがっくりと突っ伏し…てるつもりなんだろうけど首輪がつっかえて苦しそう。すぐに起きた。

「しかし…ホールケーキってだいぶ高くありません?」

「正確にはタルトだが、そうだな」

「げー…オレそんな金持ってねえよ」

 

 ケーキ屋に行った経験は…少なくとも前世ではないけれど、ホールの状態でそこまで安くはないことは想像に難くない。ここに来て暗礁に乗り上げた。…詰みでは?と思ったけど、ここでケイト先輩から思いがけない提案があった。

「じゃあ作っちゃえば?あのタルトも全部トレイ君が作ったやつだし」

「えっ」

「え!あのタルト、トレイ先輩が作ったの!?すげえ!売り物みたいでしたよ!?」

「はは、ありがとうな。…確かに器具や調味料なんかは一通り揃えてあるが……タダで提供するわけにはいかないな」

 にやりと笑みを浮かべるトレイ先輩に、「エ゛ーーッ!?」とエース君がテーブルに突っ伏して…すぐ起き上がる。やっぱり苦しいらしい。

「金取んの!?」

「ははは、後輩から金を巻き上げるわけないだろ?次にリドルが食べたがっていたタルトを作るのに栗がたくさん要るんだ。集めてきてくれないか?」

「どっちにせよめんど…」

「まあまあ。たくさんって、具体的にどれくらい必要なんでしょうか?」

「"何でもない日のパーティ"で出すとすると……2、300個は必要になるかな」

「「「そんなに!!?」」」

「ひとつの寮のパーティなわけですし…そうなりますか」

「栗に熱を通して、皮をむいて、裏ごしするところまでは手伝ってもらおうか」

 

 …トレイ先輩、いい笑顔してらっしゃる。「帰っていいか?」とか言い出したグリムと乗っかったデュース君に怒鳴るエース君を眺めつつ、私は内心わくわくとしていた。当方スイーツ作りなんて初めてなもので。

「まーまー、みんなで作ってみんなで食べたら絶対に美味しいって!」

 思い出作りってやつ?とフランクに話すケイト先輩。デュース君が考え込む姿勢になった。グリムはまだぶうぶう言っていたけれど、決め手をかましてくれたのは内緒話のように声のトーンを抑えたトレイ先輩。

寮長には内緒だが…マロンタルトは出来立てが一番美味いんだ。出来立てを食べられるのは、作った奴だけだぞ

おうおうオマエら気合い入れろ!栗を拾って拾って拾いまくるんだゾ!

「現金ですね…」

 …うん、知ってた。ところでどこで栗を集めるんだろう、と思ったら、植物園というところの裏手の森にあるらしい。放課後そこに集合!ということで話がまとまった。

 

 

 

 

 





・ユウ
しばし傍観者に徹する。まあ監督生ですし
彼女の中の横文字苦手な部分が(苦悶の)唸りをあげるッ!!

・グリム
とても現金な魔獣

・エース
時の運が悪い大賞受賞者

・デュース
影薄くなりがち。次々回辺りまで待って

・トレイ
タルト作れる系副寮長

・ケイト
ムードメーカーパイセン

・リリア
通りすがり()の高尚寮生。

・リドル
厳格なる寮長
(地味に変換一発で出せなくて困る
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