今回短め
「おわ~!本当にたくさん栗が落ちてるんだゾ!これだけあればマロンタルト食べ放題…!」
「凄まじい食い意地…あ、待ってください素手は」
手近な栗に手を伸ばすグリムに声をかけたけど時既に遅し。トゲが刺さってふぎゃー!!と悲鳴を上げていた。見ればわかるでしょうに…と思ったけど、柔らかいトゲも世の中にはあるものね…それこそ箒とか。
「素手で拾うのは無理そうだな…」
「出来なくはないですが痛いですね。それに、集めるカゴかバケツも欲しいところです」
「植物園の中にどっちもありそうじゃね?」
「行ってみるか…」
振り向いて、さっき横を通り過ぎたガラスのドームを見上げた。…本当に大きいな。ひとつの研究所レベルなのでは?さすが名門校と称されるだけあるな…。
「フルーツがたくさんなってる!いい匂いなんだゾ~!」
「主目的は忘れないでくださいね?」
「わかってんだゾ、マロンタルト食べ放題!」
「やれやれです…おっ、と??」
興奮した様子で飛び上がる*1グリムに気を取られて、うっかり足元を見ていなかった。何かを踏んだ感覚…がするのが早いか、横合いから「いって!!」という叫び声が響いた。
「失礼しまし…あ」
「…おい」
声の主は、入学式で見覚えのある顔。寮長メンツの中にいたと思う。けどその頭には一対のケモミミがあって、尻尾が私の足元まで伸びていた。…気配には気づいてたけどそうか、尻尾は完全に盲点だった。いや、だって普通思わないじゃん。
「こちとら気持ちよく昼寝してたとこだってのに、思いっきり尻尾踏んでいきやがって…最悪だ」
「通路に尻尾が出てるのもどうかと思いましたが、すみませんでした」
「お前…入学式で鏡に魔法が使えねぇとか言われてた草食動物か」
認知されてた…。一応肉も食べます。…あ、どちらかと言えば
ケモミミ寮長(仮)は私をしげしげと眺めると、ずいっと顔を近づけてきたりした。…嗅がれている?…なんかあれっぽい。猫の仕草としてあるやつ。隣を見るとグリムは固まっていた。…何とかしてくれない?無理?あ、そう。
「…このレオナ様の尻尾を踏んでおいて、何もナシってのはねえよなぁ?」
名前が判明したレオナ様はそう言って眼光鋭く睨んでくる。態度でっか。そして自称"名前+様"仲間が見つかったよグリム…いやそれどころじゃないな今。
「え…何かと言われましても、…雷ぐらいしか」
「なんで出せんだよ…はぁ。気持ちよく寝てたところを起こされて機嫌が
「何に使うんです?…あ、そういう」
思考停止しかけたけど、ユラリと立ち上がる様子から察した。あ、折りに来るんですねなるほど。自力で抜歯とかムズいぞって思った。そこへ「レオナさ~ん!」という第三者の声が飛び込んできた。見ればケモミミがもう一人。
「もー!やっぱりここにいた!レオナさん今日は補修の日ッスよ!」
「はぁ…うるせぇのが来た」
「レオナさんただでさえダブってるんスから。これ以上留年したら来年はオレと同級生ッスよ!」
「うるせえな…キャンキャン言うんじゃねぇよラギー」
…なんか始まったけど聞いてていいのだろうか。いやダメだと思うけどこっそり立ち去っていいのだろうか。悩んでたら話は進んでいて、「今度俺の縄張りに入るときは気を付けろ」と言い残し、レオナ先輩はラギーさんに連れられていった。
「………ぷはぁー!緊張したんだゾ…!なんなんだあの凄みのある管理人さんは!?」
「…管理人さんではなさそうでしたよ」
立ち尽くしていると、トングとバケツを見つけたらしいエース君とデュース君に話しかけられた。成果がなくてゴメン。
「はっ、そうだ栗拾い!いっぱい集めないとタルトの食い扶持が減るんだった!」
「この子ご褒美作戦が
「本当にすごい食い意地だな…」
・ユウ
脅しが絶妙に通じなかった少食動物。凄絶な前世の影響で反応が薄い。"様"つき一人称をグリム以外に初めて聞いた。
・グリム
結局ずっとワイルドな管理人だと思ってた。ご褒美作戦が効果覿面すぎて今後の参考にされる。
・エース・デュース
端役状態の二人
・レオナ
顔を覚えられていた寮長。怯えることもなく、かといって強がる様子もなく無表情なのが少し気味悪く感じた。匂いも妙に薄かったな…。
・ラギー
ニアミス。まだあんまり気にしてない。