「ここがドワーフ鉱山…一時期は魔法石の採掘で栄えたらしいが…」
今現在、私とグリム、エース君、デュース君の四人(厳密には三人+一匹)はひと気のない廃鉱山を訪れている。
何でもあのシャンデリアの心臓たる魔法石がここ産のものだそうで、同じ性質の魔法石があれば直せるかも、とのこと。
…それにしてもあのシャンデリア、電球じゃなかったのか…私としてはかなり衝撃的だったりした。永遠に尽きない蝋燭is何?蝋って燃料だよね?燃料の塊だよね?…いやはや質量保存の法則ガン無視とは。本当に恐れ入った。
エース君が小屋を見つけて訪問してみたけど、荒れ放題の空き家だった。まあ廃鉱山だからね…学園長もはっきり言ってたからね…小屋を出て、鉱山の入り口に向かうとしよう。
「うげっ…こ、この真っ暗な中に入るのか!?」
「ビビってんのかよ、ダッセェ」
「なぬっ!?ビ、ビビってなんかねーんだゾ!」
「はいはい、いいから行きましょう」
「なっ、待てユウ!オレ様が隊長だ!」
道中通せんぼしてくるゴーストを、二人と一匹の魔法で都度追い払いながら進む。
「ったく…ここもゴーストがうようよしてんのかよ…」
「いちいち構ってたらキリがない。先を急ぐぞ」
「偉そーに命令しないでほしいんだけど?…だいたい、お前があんなバカな真似しなきゃこんなことにならなかったのに」
「元はといえばお前が掃除をサボったのが原因だろう!」
「それを言ったら最初にハートの女王の像を黒こげにしたのはこの毛玉だぜ!?」
「ふなっ!?オマエがオレ様をバカにするのがいけないんだゾ!」
「静かに!!」
パチッ!という音とともに各々「でっ!?」「う゛っ!?」「に゛ゃっ!?」と悲鳴を上げた。力業で喧嘩を止めてから、私は耳を澄ませる。
「痛って…なんだ今の……」
「…人の声がします」
「なんだって?」
「……さぬ………うう……ぬ…」
「…い…し……ウウゥ……オデノモノ…」
「なんだこの声…?」
「なんか…だんだん近づいて……っおい!?」
恐る恐る声のする方へ近づくと、何かの姿が―――
「イジ…ハ……オデノモノダアアアアア!!!」
「「「で、出たああああああ!!!」」」
「なんだあのヤバイの…」
「ふな゛~~~~~あんなヤバイのがいるなんて聞いてないんだゾ!」
…現れたのは、怪物…頭が大きなインク瓶になっている大男。私たちは一目散に逃げ出して(斬新な見た目に目を奪われていた私はなかば引きずられる形だった)、そろそろ撒けたかな?という状況。
「めっちゃエグい…でも、アイツ石がどうとか言ってなかったか?」
「確かに…私たちの探し物と、何か関係があり「イジハワダサヌ!!」
「うわ出たぁ!?」
「ムムムムリムリ!いくらオレ様が天才でも、あんなのに勝てっこないんだゾ!!」
「だが魔法石を持ち帰れなければ退学……僕は行く!!」
「冗談でしょ!?」
「僕は退学させられるわけにはいかないんだ!」
「ってぇ…何なんだよあんなのいるなんて聞いてねえぞ!?」
「ただのゴーストではなさそうだったな…」
「っ…」
怪物に果敢に挑んだデュース君も、それを助けに入ったエース君も弾き飛ばされ、グリムの炎も全く効き目がないとわかって、私たちは一度鉱山から脱出することを決めた。
…正直手助けしたかったけど、迂闊に『
それと…怪物がいる坑道の奥に、魔法石の煌めきが確認できた。怪物の言う
「もう諦めて帰ろーよ。あんなのと戦うぐらいなら退学の方がいーじゃんもう」
「なっ!?ざっけんな!!退学になるくらいなら死んだ方がマシだ!!魔法石が目の前にあるのに、諦めて帰れるかよ!!」
…ここで意見が分かれてしまっている。心が折れている様子のエース君と、どうしても諦めきれない様子のデュース君。…"死んだ方がマシ"とか日常生活で聞かないよね、と思ったけど既に非日常だったわ。
「は、オレより魔法ヘタクソなくせに何言ってんだ!行くなら勝手に一人で行けよ、オレはやーめた」
「ああそうかよ!!なら腰抜け野郎はそこでガタガタ震えてろ!!」
「はぁ~?腰抜け?誰に向かって言ってんの?」
「落ち着いてください二人とも。グリムが怯えてます」
「はっ!?…ごほん。すまない、取り乱した」
「べっ別に怯えてなんかねーんだゾ!」
取っ組み合いになりそうだったので、グリムをダシに止めに入っておいた。ここで喧嘩してても時間が減るだけ……何かもっと具体的な話をせねば。
「魔法石を守っているのなら、おそらくここまで来ることはないでしょう。それにしてもご自慢の魔法とやらではどうにかできませんか?」
「…先ほど学園長が言っていた通り、魔法は万能ではない。強くイメージできなければ魔法は具現化しないんだ。大掛かりな魔法や複雑な魔法には訓練が要る」
「だから魔法学校があるんだけどねー。パッと思い付いた通りに魔法を使うにはかなり訓練が必要ってワケ。ぶっちゃけテンパってるとミスりやすい」
「なるほど…それでグリムは炎しか出せないと」
「ふなっ!?こ、これからもっとすごい魔法が使えるようになっていくんだゾ!まだ本気出してないだけだゾ!」
「それならおそらく今回が本気の見せ所ですね」
「とにかく、僕は何とかしてあいつを倒して魔法石を持ち帰る!」
「だーかーらー、お前さぁシャンデリアの時といい実は相当バカでしょ。さっき全然歯が立たなかったくせになんとかって何?何度やったって同じだろ?」
「なんだと!?お前こそ…」
「また始まったんだゾ…」
「止めても意味ありませんでしたね…仕方ありません、私は勝手に行ってきますね」
また言い争いに没頭してしまった二人に背を向け、一歩踏み出したところで「「「えっ!?」」」と声が返ってくる。振り向いたら二人とも目を丸くしてこっちを見ていた。あとグリムも。あ、没頭まではしてなかったのね。
「っはぁ!?お前うっそだろ魔力なしのくせに!?」
「仕方ないでしょう、私はどこにも帰る場所のない居候。居場所を失うのは死活問題ですので」
「っ…だが!いくらなんでも危険すぎるだろ!」
「はぁ…じゃあどうしたらいいかわかります?」
「………っ」
「協力し合うという考えはないんですか?」
わざわざ具体的に問えば、エース君はぎし、と固まり…苦い笑みを浮かべた。
「力を合わせるとか…は、何ソレ寒っ。よくそんなダッセェこと真顔で言えんね?」
「同感だ、こいつと協力なんかできるわけない」
「…なるほど、これがカルチャーショックですか」
どうやら協力し合うという考えはないらしい。それも二人の出会いがアレだったから、というのとはまた別のよう。…まあ、
「でも、入学初日に退学の方がもっとダッセェ気がするゾ」
「う゛、それは…」
「よく言いましたグリム。そこで、私から提案をしたいんですが…」
なんのことはない。"協力"はあくまで"力を合わせる"ことでしかないんだから、別に心の底まで仲良しこよししろとは言わないよ。大事なのはタイミング。
「…はぁ、わかったよ。やればいいんでしょやれば…」
「グルルルル!…ガエレエエエエエ!!」
「断固拒否します。行きましょうグリム」
「やーいやーいこっちなんだゾ~!」
「ワダサヌ……オデノ……オデノ……!」
戻ってきた坑道の入り口には、さっそくあの怪物がいた。ひとまず怪物を洞窟から引き離すのが最優先。これからやるのは、私の力を使わず今いるメンバーの得意分野を最大限活かす作戦。
「ここまで来れば…今です!!」
「オッケー!いくぜ、特大旋風!!」
「アーンド…グリム様ファイアースペシャル!!ふな゛~~~~~~~~!!!」
「どーよ!グリムのショボい炎も、風で煽ってやればバーナー並みの火力だぜ!」
「ショボくね~!んっとにオマエひと言多くてムカつくんだゾ!」
すぐ言い争いに発展させるエース君はさておき。怪物はグオオオオ!と悲鳴を上げながら青い炎に巻き上げられていく。そこへ――
「出でよ!大釜!!」
お察しの通り、本日二度目のゴァン!!が決まった。
「やった!うまくいったんだゾ!見てみろユウ、さっきのエースみたいにぺったんこになってるんだゾ!」
「さっきの俺みたいに、は余計だっての!」
「今のうちに魔法石を取りに行くぞ!」
「マデエエエエ!…ガァッ!?」
・ユウ
地味に『欠陥電気』をちらほら使ってる参謀。結果論的なのは認めるけど、やっぱり一番重要なのはタイミングだよね。
・グリム
本気の見せ所でノリノリな炎担当。
・エース
いっちょやってやりますか、な風担当。
・デュース
退学回避のために本気の重し(大釜)担当。