捻れた世界の静電気   作:諸喰梟夜

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せめて章は作っときたくてですね



真紅の暴君 (Chapter:1)
8.ずいぶんとご不満な様子[真夜中hanging]


 

 

「ん…」

 机に突っ伏した状態から顔を上げた。ゆっくりと暗い部屋を見渡す。…オンボロ寮の二階の自室だ。とりあえずで選んだ、階段から一番近い部屋。

 …妙な夢を見ていた気がする。手足と頭がついたトランプが、ペンキを手にいそいそと白いバラを赤く塗っている、そんな夢。なんか…ハートの女王?がどうとか言ってたな。なかなかに意味がわからない…どうやら私はだいぶ疲れているらしい。

 

「…ああ、寝落ちしたんでしたっけ。それなら…当たり前ですね…っ」

 親指を挟んだままだった本にはゴーグルの紐を挟んでおき、背伸びをするとばきばきと凄まじい音が鳴って自分でもドン引きした。グリムが飛び起きたんですがそれは。

「オマエ大丈夫なのかその音…」

「実態は大したことないですよ…多分。…おや?」

 …下から物音。誰かがドアをノックしているらしい。

「こんな時間に誰か来たみたいなんだゾ……ふぁ…」

「行ってみますか…」

 一階に降りて、玄関を目指す。やはり誰か、外からドアを叩いているらしい。…埃が降ってくるな。

 

「どちら様ですか?こんな夜分に」

「…オレ、エース。ちょっと中に入れてよ」

「エースぅ?こんな時間にどうし……げげっ!?その首輪は!!」

 玄関を開けると、グリムが驚いた様子で大声をあげた。…そこには申告通りのエース君。ただし、なんだか見覚えのあるハート型の首輪をつけた姿があった。

「も~~~絶対ハーツラビュルには戻んねえ!今日からオレここの寮生になる!!」

「にゃに~~~~~!?」

 

 

 

「なるほど……自業自得ですね」

「なっ……!?」

 ひとまず通した談話室。事の顛末を聞いて開口一番、ストレートに感想に伝えたらエース君は心外!みたいな顔をした。

 何でもエース君、小腹がすいたと寮のキッチンを漁り、冷蔵庫に入っていたタルトを一切れつまみ食いしたらしい。ホール三つもあるから一切れくらいいいだろって。そこを寮長に見つかり、"ハートの女王の法律・第89条「女王の許しなく先にタルトを食べてはならない」への違反"としてガシャン(擬音語)されたらしい。…なるほど、あの小柄な赤髪の少年がハ…なんとかいう寮の寮長だったのか。

 

「どっちもどっちな気もするんだゾ…」

「まあ、それは確かに」

「や、たかがタルト盗み食いしただけで魔法封じされるのはおかしくね!?」

()()()()って言ってる時点で悪いことしてるなとは思いますが…」

「っそれは…そうかもしれねーけどさ?3ホールもあるんだぜ!?絶対一人で食いきれないだろ!心が狭いにもほどがある!!」

 …エース君はずいぶんとご不満な様子。ご不満な様子はわかるんだけどあんまりテーブル叩かないで。今ちょっと嫌な音した。

 

「…はっ!もしかして…3ホールもあったならパーティ用かもしれないんだゾ!誰かの誕生日とか!オレ様、名推理すぎるんだゾ!」

 不意に、隣にいたグリムが興奮した様子で叫んだ。はっ!から話し始めるのは律儀なのかなんなのか。でも確かに名推理。だけどもうちょっと自己主張抑えようね。

「誕生日ぃ?」

「それなら、盗み食いされて怒るのも当然でしょう。半端な状態で出すのは失礼でしょうし」

「う………オレ、ユウなら絶対に寮長が横暴だって言ってくれると思ったんだけどぉ?」

「どこでそう判断したか知りませんが……ちゃんと謝りましたか?こういうときは謝罪が基本です。たとえ目指す先が大魔法師とやらでも、それは変わらないはずですよ?」

「食べ物の恨みは恐ろしいんだゾ……あ!そういえばオレ様、まだ学園長からツナ缶もらってねーんだゾ!」

「…言われてみれば。今度直撃してみますか。言い逃れするようならシメましょう」

「なんか聞いちゃいけないこと聞いたような……はぁ~わかったよ。謝ればいいんでしょ?ユウが提案したんだから一緒に来いよな?」

「ええ、わかりました」

「じゃ、とりあえず今日どこで寝ればいい?」

「オメー本当に泊まる気か…」

「…踏み込めるところは一通り掃除し終わりましたけど、ベッドの使い心地は保証できませんよ」

「りょーかーい…」

 

 

「うわっ」

 翌朝、朝支度をしているとドンドン!!と強くドアが叩かれた。いや強い強い。待って建物揺れてるし、埃降ってくるから待って。

 グリムと、あまりの振動に起きてきたエース君と急いで玄関まで走ると、ドアの外には見慣れた顔があった。

 

「やっぱりここに来てたのか…」

「げ、デュース…」

「おはようございますデュース君。オンボロなのでもう少し加減してくれると嬉しかったです」

「それは悪かった。それでエース、他の寮生から話は聞いたぞ。寮長のタルトを盗み食いして首輪をはめられるとは……お前、相当バカだな」

「うるっせ!お前にだけは言われたくねー!…ところで、寮長まだ怒ってた?」

「そうでもない。少しイライラしている様子で、起床時間を守れなかった奴が3人ほど、お前と同じ目に遭ってたくらいだ」

「「ぜんぜんそうでもなくねえじゃん!?(ないじゃないですか)」…とりあえず、支度がまだなので少々待っててください」

 しっかりハモって思わず顔を見合わせたけど、すぐに朝支度の続きをするため玄関をあとにした。

 

 

 

「おうおうどけどけ~い!今日からナイトレイブンカレッジの生徒であるオレ様のお通りなんだゾ!」

「態度でっかくて草生えますね」

「見ろこの首輪を!オマエのダッセー首輪と違ってめっちゃキマってるんだゾ!」

「キマってるのは認めますが一応寮長さんの魔法ですからねあれ」

「しかもオマエ、今は魔法が使えないんだろ?今日は一日雑用係として学園の掃除デモしてたらいいんだゾ!にゃっは~いい気分!」

「気分よすぎて憎まれ口が溢れ出してますね」

「ぐぬぅ……!お前オレが魔法使えるようになった時覚えてろよ!」

 上機嫌なグリムはどうやら以前の窓拭き100枚案件をずいぶんと根に持っているらしい。痛ましい事件でしたね。ちなみにくだんのハートの女王の像は元通りになっていた。たぶん魔法で。へーすごい(語彙力)

 一方で、言われるがままのエース君はグリムを眼光鋭く睨みつつ、ぎりぎりと歯を食い縛っている。まあ明らかに言い返せる状況じゃないもんね。

 

「昨日、学園長から騒ぎは起こすなと言われたばかりだろう……とにかく、魔法が封じられたままでは授業も満足に受けられない。ローズハート寮長に謝って外してもらったらどうだ?」

 そして、今朝も見たあきれ顔をしているデュース君に横から諭されている。…ローズハートって。すごい名前。

「くっそ~超納得いかねえ~!」

「今から行きますか?まだ授業が始まるまで時間がありますし」

「オレ様、他の寮も気になるんだゾ!エースが謝りにいくついでに見学してやろう!」

「見世物じゃねーんだぞ!ちくしょう!!」

 

 

 

 

 





・ユウ
カタカナ語に弱い。ハ…なんとか寮。
ツッコミ役に収まりつつあるし仕様の口調もちょっとずつ崩れたりしている。ユウ側がちょっと優勢。
ウツボ登場より遥かに早くシメるとか言い出した。☆特に理由のある身の危険が学園長を襲う―――!
鏡の国の話は知らない。

・グリム
この魔獣すーぐ調子乗る…。態度でかくて草

・エース
ギリギリ
もうちょっと悪びれた方がいいと思いました(こなみ)

・デュース
やれやれ…
簡潔ながら謝れる良い子。ポンコツだけど。



ハートの女王の像…まさか焦げっぱなしではないよな…

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