変なウマソウルと共に歩む架空ウマ娘の日々   作:ウヅキ

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第23話 遊びも競争なら練習

 

 

 梅雨の時期は嫌いだ。雨ばかり降って、身体に湿気がへばり付くのに、全然渇きが満たされない。いっそ砂漠のような乾いた土地なら、水など無い物と思って割り切れたというのに。なまじ雨の多い国だから不快な思いをする羽目になる。

 それに雨が降っているとトレーニングも屋内になりやすい。特に今の時期はメイクデビュー戦のために、ダンスレッスンが増えた。ダンスは好きじゃない。出来ないとは言わないが、ダンスをしている時間があったらレースをしたい。

 レース中の怪我を理由にウイニングライブを欠場したいが、毎度やってるとすぐにバレるから、嫌だ嫌だと駄々をこねても結局はライブもやるしかない。こういう時に怪我知らずの頑丈な身体が恨めしい。

 ダンスと歌の出来栄えは並からちょっと下。あまり期待はしないでもらいたい。元からやる気が無いのだから、上達のスピードが遅い。意欲というのは上手くなる一番の近道なんだろう。

 まあ、色々ネガティブな事を考えていても――――――

 

「さあ、アパオシャさん!今日は晴れましたから、ランニングに行きましょう!」

 

 友達や慕ってくれる後輩にカッコ悪い所は見せたくないから、ライブもちゃんとやるんだけどね。

 

「そうだな。今日は雨で鈍った体を乾かすとしようか」

 

 元気いっぱいのクイーンちゃんに急かされる形で、今日もトレーニングが始まった。

 

 トレセン学園周辺のランニングコースにしている道は東京だけあって、街には美味しそうな食べ物が溢れ返ってる。特に甘い物は視覚と匂いで、こちらを罠に掛けようと虎視眈々と機会を狙っている。

 

「ゴクリ……くっ!名門メジロ家の私が惑わされてはいけません!」

 

 クイーンちゃんは目を瞑って、首を激しく振り回して決してバターと砂糖の匂いを嗅がないように耐えている。

 いや、そんな気合を入れないとスイーツの誘惑に勝てないってどうなんだよ。俺も甘い物は結構食べるけど、ここまで食べたいとは思わないぞ。

 

「あと1kg……先月の食べ放題……ここまで落としたのにまた太っては………」

 

 そういえばクイーンちゃんは先月のスイーツ食べ放題で俺達の中で一番食べまくってたな。あれから半月は経ってるのに、まだ体重戻ってなかったのか。

 ―――――おまけに甘味処の前で立ち止まっちゃったよ。散歩を続けたくて駄々をこねる犬みたいで可愛いけど、流石にトレーニング中にはダメだぞ。

 

「マックイーン、こんなところで立ち止まって何してるのさ?」

 

「ひぇ!?あっ、テイオー?き、奇遇ですわね。貴女もトレーニングですか?」

 

 同じトレセンのジャージを着た、ポニーテールをピンクのリボンで纏めた子に話しかけられて動揺してる。名前はテイオーか。聞いた名前だな。

 

「おーい、テイオー!どうしたんだよ?」

 

「二人とも待ちなさいよ」

 

 遠くから同じようにジャージを着た二人がクイーンちゃんとテイオーちゃんの元に集まった。

 前髪の一部が白いショートヘアのダークブラウンの子と、長い栗毛をツインテールにしてティアラを付けた子か。よく見ると二人とも見覚えがある。

 

「クイーンちゃんの友達?」

 

「ええ、テイオーは私と同じクラスの友達です。後ろの二人も≪スピカ≫のメンバーですよね?」

 

「俺はウオッカだ!」

 

「アタシはダイワスカーレットよ。よろしくね」

 

「あー、思い出した。ゴルシーが見せてくれた写真に写ってた≪スピカ≫に入った新入生の三人か。俺はアパオシャ、こっちのクイーンちゃんと同じ≪フォーチュン≫のメンバーだ」

 

「アパオシャ…じゃあシチー先輩の友達の」

 

「名前を変な略し方する人って…」

 

 えっ?そんな変なの?別に普通だと思うけど。

 

「えーっと、色々話す事もありそうだけど、ここはお店の邪魔になるから、トレーニング中だし近くの公園に行こう」

 

「そ、そうですわね。ここに居続けたら餡子と白玉の匂いで、皆さんどうにかなってしまいそうですから」

 

「それはマックイーンだけだと思うよ」

 

 友達にツッコまれて動揺した。しょうがないから俺がクイーンちゃんの手を引いて、五人で近くの公園に駆け足で移動した。

 公園に行き、俺達はよく手入れされた芝生の上で休憩がてら話をする。

 

「俺以外はみんな新入生か。で、俺の名前の略し方って変?」

 

「シチー先輩とスペ先輩は微妙な顔してたぜ。スズカ先輩やゴールドシップ先輩は何も言ってなかってけど」

 

「そうかなぁ?ゴールドシチーだからゴルシー、スペシャルウィークさんはシャルでも良いだろ。メジロマックイーンはクイーンで、そんな変じゃないし」

 

「じゃあボクの名前はどうやって略すの?トウカイテイオーだよ」

 

「長いな。ウオーで良いだろ」

 

「ぶっほっ!!ウオーって!!」

 

「ちょっ、くくっ!!それ反則でしょ!!」

 

「ワケワカンナイヨー、やっぱりおかしいよっ!!なんでウオーなのさ!?別にテイオーでいいじゃん」

 

「ぶふふ、じゃあこっちのスカーレットはどう呼びます?」

 

「ダイワスカーレットだし、カレットで良くないか」

 

「うーん、悪くないけどやっぱり独特な……じゃあウオッカは?」

 

「短いからそのまま」

 

「へへっ!俺のは変える必要のない良い名前って事だな!」

 

「なによっ!」

 

「なんだよっ!」

 

 ウオッカちゃんとカレットちゃんがいがみ合う。なるほど、二人はこういう関係か。同学年で同じチームで互いをライバル視している。適性距離は分からないが、競い合う良い関係みたいだ。

 で、うちのクイーンちゃんとウオーちゃんは……普通の友達って感じか?まだよく分からないな。

 さて、休憩は済んだし、そろそろトレーニングといきたいが、このまま三人とお別れというのも、単にランニングか筋トレは芸が無い。

 あーこの公園アレがあったな。五人なら足りるか。

 

「三人とも、これから俺達と一緒にトレーニングする?」

 

「別にいいけど、ここで筋トレでもするの?」

 

「もうちょっと面白い物があるんだよ」

 

 ウオーの疑問に答えるより、俺は後輩四人を公園の奥に連れて行く。

 奥は簡単な綱の柵が引いてあって、入り口には小さな建物が立っている。

 

「ここ、アスレチック場があったんですか」

 

「そうだよ、クラスの友達がたまに使ってるのを聞いたんだ。有料だけど設備が良いらしい。おじさん、中学生五人分ね」

 

「いらっしゃい、ウマ娘さん達。利用料は一人百円だよ」

 

 五百円玉を出して払いを済ませる。カレットちゃんやクイーンちゃんは自分も出すと言いたそうだが、一応俺が年長者で誘った手前、気にするなと言っておいた。

 場内に入ると、小学生ぐらいの子が数人いる。今日は平日だし空いてるな。

 

「へー色々面白そうなのがあるな」

 

「これで百円って穴場ね」

 

 ウオカレコンビが我先にとロープ登りの競争を始めた。

 

「もーあの二人は子供だなー。じゃ、僕はあっちの面白そうなのをやってみよーっと。マックイーンもやろう」

 

 ウオーは返事を待たずにクイーンちゃんの手を引っ張って、低い壁にカラフルな石を張り付けたロッククライミング台を遊び始める。

 楽しんでるみたいで何よりだ。俺は丸太渡りとイカダジャンプでもやってみるか。

 

 五人でアスレチックを縦横無尽に跳び回って、途中からは先に居た小学生の子達と一緒になって遊んだ。

 子供達にとっては、ウマ娘の俺達がポンポンかっ跳んで行くのは、さぞテレビのヒーローみたいに思えただろう。

 四人も目をキラキラさせた小学生に気を良くして、一緒に競争したりと楽しんでいた。

 休憩を入れて水を飲むと、小学生からレースをするのか聞かれた。

 

「ボク達はあと一年先かなー」

 

「あーあ、あたしも早くデビューレース走りたいなぁ」

 

「そう言うなよ。俺だって一年以上我慢して、ようやく今月に走れるんだ。お前達も地道にトレーニング積むんだぞ」

 

「じゃあお姉ちゃんたちも、そのうちテレビに出るの?」

 

「大きいレースでしたらテレビ放送されますし、東京レース場なら近いですから、いつか見て来てください」

 

「うん!絶対見に行くね!」

 

「俺もー」

 

「あたしもー」

 

 子供達と約束して、五時の鐘が鳴るまで汗を流した。

 俺達も学園に帰ったら帰りが遅いのをトレーナーにちょっと怒られた。途中で≪スピカ≫の三人と一緒に公園で練習してたと言ったら、次からはもう少し早く帰って来いとだけ言われたから、まあそんなに怒ってないんだろう。

 たまにはこういうトレーニングも悪くない。

 

 

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