変なウマソウルと共に歩む架空ウマ娘の日々   作:ウヅキ

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第51話 シニアになったら

 

 

 秋が深まり、すっかり紅葉の色濃くなった十一月の中旬。東京に来てから秋はもう三回目だ。

 世間はハロウィンが終わり、店には冬物が並び、そろそろクリスマス商戦も始まる時期だった。

 俺達トレセン学園の学生には、毎週のように開催するG1レースへの対応で色々と忙しい時期でもある。

 ただ、そんな時にも休みぐらいはある。特にレースを終えたばかりなら休息を与えられて、学生らしい遊びも積極的にしてリフレッシュをするよう、それぞれのトレーナーから言われている。

 そういうわけで、今日のトレーニングは休み。授業が終わってから、買い物に出かける約束をしてある。

 俺とビジンが学園の正門に行くと、もうゴルシーとセンジの二人が先に待っていた。

 

「二人ともごめん、待ったか?」

 

「心配すんなし、あたしらもさっき来たばっかだって」

 

 センジとゴルシーが笑って流す。そして四人で近くの駅まで行って、電車に乗った。

 下校時間だからか、電車の中は俺達ぐらいの学生が結構乗ってる。周囲の視線も結構感じるし、ウマ娘特有の優れた耳でヒソヒソ話も大体聞こえる。

 内容は有名人の俺達について。特にゴルシーは一番目立つからなー。

 

「女王様は人気だねえ」

 

「うっさいわよアパオシャ。あんただって最強の≪ブラックプリンス≫って言われてるっしょ!」

 

「あっちはユキノを≪雪の天使≫って言ってるし、あたしだけオマケかぁ」

 

「こっちょがしいから堪忍してジョーダンさん。あたしが≪天使≫なンてぇ、おしょうすう」

 

 三者三様の反応で面白いわ。

 ゴルシーは昨日の阪神レース場で行われたG1エリザベス女王杯で、かつての女王達を筆頭に、シニアの強豪を叩きのめして新女王に輝いた。そのニュースは全国に流れて、今日は学園でもその話で持ち切りだった。

 同じく出場したビジンは残念ながら入賞を逃したが、それでもG1ウマ娘でもあり、ひたむきに頑張る姿に多くのファンを抱えている。

 それとイクノディクタスさんも、エリザベス女王杯に出走して四着に入ってた。何気に実力ある人だものな。

 

「センジだってアルゼンチン共和国杯を勝ったんだから、結構顔は売れてるぞ。次は有マ記念だろ?」

 

「まあね。これからどんどんやってやんよ!」

 

 センジは俺の一言で気分を良くする。こいつも才能あるから、重賞の一つ二つは獲れると思ってたよ。次の有マは、ナリタブライアンやビワハヤヒデさんが出るから苦しいだろうが、来年はG1も勝てるかもしれないな。

 四人でワイワイ話したり、同年ぐらいの学生の子から握手を求められたりしつつ、三十分ぐらい揺られ続けた。

 電車から降りて、駅の外に出てショッピングを楽しむ。

 女四人ともなると買い物は靴とか服とかアクセサリーも、化粧品を一つ一つ手に取って、あーでもないこーでもないと姦しい。自分で使うボディーソープやシャンプーだって拘りがある。化粧品とかにそこまで詳しくないから、流行に敏感なゴルシーやセンジが居て結構助かってる。

 俺は冬のコートが結構小さくなってるから、帽子と一緒に新調した。

 この時ばかりと両手に抱えるぐらい買いまくった後は、秋のスイーツを出すカフェで休憩する。

 レースが近い俺はケーキ一つでセーブしていたのに、三人はこれ見よがしに、栗やサツマイモ、ブドウをたっぷり使った何種類ものケーキを遠慮無しに食べていた。

 

「んー!レース後の疲れた体にはこれが一番。ねっユキノ」

 

「はいでがんす!」

 

 ……悔しくなんてないぞ。ぐすん。

 ケーキ一つを食べ終わるのに時間なんて大してかからず、早々に食べてしまったから、ケーキをバクバク食ってる三人を見ないように、さっき書店で買ったレース雑誌をパラパラと眺める。

 

「――――秋の天皇賞を制した≪日本総大将≫スペシャルウィークか」

 

 特集は先月末の天皇賞。その勝者に輝いたシャル先輩。今年の春天皇賞に続いて秋も盾を手にして、春秋連覇の偉業を達成した。タマモクロスに続いて史上二人目とは凄い人だ。

 ルームメイトのウンスカ先輩は惜しくも二着。三着はサイレンススズカさんで、うちのダンは悔しいが四着だった。本人は悔し涙を流して、また来年鍛え直して挑むと言ってる。是非とも勝ってもらいたいものだ。

 

「ゴルシー、シャル先輩はジャパンカップ勝てそう?」

 

「先輩は勝つつもりよ!≪モンジュー≫にだって、スペ先輩なら勝てるってアタシは信じてる」

 

 口にクリームが付いてるまま格好つけてもイマイチ締まらないが、元が良いからあんまり気にならないな。

 ゴルシーの言う通り、今の日本の現役ウマ娘で一番強いのはシャル先輩だろう。今年の凱旋門賞でエルコンドルパサー先輩を撃ち落とした、あの欧州最強の≪モンジュー≫に対抗出来る日本のウマ娘はあの人だけと、世間も評価している。

 あるいはビワハヤヒデさんなら勝てるという意見もあるが、残念ながら本人が有マ記念で妹との対決を第一に考えているから、寄り道している余裕は無い。

 

「地の利はこっちにあるから勝機はあるしな。あーあー俺もジャパンカップの翌週にレース予定無かったら出れたのに」

 

「アパオシャならワンチャンいけるかも?」

 

「アタシらの学年じゃ一番強いから、可能性はあるっしょ」

 

「ナリタブライアンさんに二回も勝ってがらね」

 

 ビジンの出したナリタブライアンの名に、ゴルシーとビジンが頷く。俺達は全員が最低一回ナリタブライアンに負けている。その上でリベンジを果たせたのは俺だけだ。

 一応ダービーと菊花賞を勝った俺が暫定で学年一番になってるけど、有マ記念の結果によっては評価はあっさり逆転する程度の差でしかない。

 他人と評価を競う事に興味は無いけど、有マ記念やジャパンカップの賞金はとても魅力的だよ。もしくは海外の高額賞金レースでもいい。

 

「シニアになる来年か再来年は、いっそ海外レース出てみるかな」

 

「すっげー!大物発言ー」

 

「その前に春の天皇賞が先だけど。……でも、ここもいいなー」

 

 みんなに今月初めにオーストラリアで行われたG1メルボルンカップの記事を見せる。

 

「おー芝3200メートルのレースだべ。海外にもこったなレースもあるんだなはん」

 

「ビジンはダート走れるから、アメリカやドバイ挑戦も考えたらどうだ?」

 

「そったなあたしみだいな田舎者が海外だなンてぇ……」

 

「いーじゃん!アメリカ。かっけー!」

 

「ユキノだってもう立派なG1ウマ娘なんだから、日本代表でアメリカで走ってもいいっしょ!」

 

 みんなで雑誌に載ってた海外レースを見ながら、フランスが良い、イギリスだ、とわいのわいの騒いだ。

 俺達だってもうすぐシニアになる。日本ばかりがレースを走る所じゃないから、外に目を向ける事だって良いと思う。

 ケーキを食べた後は、帰るまでの時間が少し余ったからゲームセンターに行って、UFOキャッチャーやダンスゲームで遊んだ。

 また明日からはトレーニング三昧なんだから、時間の許す限り遊ばないと。

 

 この週の日曜日はトレーニングの休憩を兼ねてチームの皆で、阪神レース場でやってるマイルチャンピオンシップをテレビ観戦した。

 安田記念王者のバンブーメモリーさん、同期のハッピーミークも出走する見応えのあるレースを勝利したのは、一年先輩のキングヘイローさん。

 同期のG1勝者達に比べても遜色無い強さでG1入賞常連ではあっても、いまいち勝ちきれない印象のある人がようやく掴んだ栄光に、レース場は拍手で溢れた。

 二着はバンブーメモリーさん、ハッピーミークは三着だった。ゴルシーや桐生院トレーナーはガッカリしてるだろう。

 来週のジャパンカップもどうなることやら。

 

 

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