変なウマソウルと共に歩む架空ウマ娘の日々   作:ウヅキ

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あけましておめでとうございます。
ある程度ストックが出来たので投稿を再開します。
今年もよろしくお願いします。


第83話 幸先の悪いスタート

 

 

 新年を迎えて俺達もシニア二年目に突入した。いよいよここからは、下級生もシニアになってレースは一層激しく燃え上がるだろう。

 早速センジが正月が終わってすぐに開かれたG3中山金杯を走り勝ちを得た。去年の秋天皇賞といい、幸先の良いスタートを切って、あいつは次に大阪杯を勝ってG1二勝目を挙げるとノリに乗っている。

 うちのチームもクイーンちゃんが次のレースを阪神大賞典に定め、さらにその次は春の天皇賞を見据えている。

 天皇賞はメジロ家にとって特別なレースと聞いている。例え先輩の俺が相手でも、クイーンちゃんは気を遣うまい。必ず全力でぶつかってくる。

 去年シンボリルドルフ生徒会長は、後輩の壁になって立ち塞がれる俺を羨んだ。昨年王者としてその相手をするというのは、確かに楽しみで心地良さを覚える。

 ならば手心なんて一切加えず、俺も本気で勝ちに行くとしようか。その上で俺を倒せたのなら、心から祝福してあげたい。

 さて、未来の話はまた今度だ。今は有マ記念からゆっくり休めた身体を締め直すトレーニングを優先しよう。

 

 今日は正月明けのチームとして最初の練習になる。

 部室にはもうトレーナーが待っていた。しばらく宿題をしてチーム全員が揃い、髭がおもむろに話を切り出した。

 

「よし、みんな集まったな。早速だが決めないといけない事項がある。≪フォーチュン≫のチームリーダーの引継ぎだ」

 

 毎年この引継ぎは年始にやってるから予想通りだ。去年まで現役最年長のバクシさんが務めていたが、引退した以上はリーダーは後輩に引き継がれる。

 以前はカフェさん、フクキタさんと続いていたので、俺達の番が回ってきたというだけだ。

 

「アパオシャさん、次は貴女がチームリーダーを務めてください!」

 

「――――分かりました。みんなもよろしく頼むよ。けど、特別何かが変わる事は無いと思う」

 

 みんな拍手で俺のリーダー就任を祝ってくれた。

 人選も現役最年長は俺とダンしか居ない。俺は集団のリーダーに向いている性格じゃないが、体が頑丈と言えないダンに負担をかけるのは好ましくないとチーム全員が知っている。そういうわけで俺の方に役割が回ってきたわけだ。

 そしてリーダーと言ってもうちは元から仲の良いチームだから、俺が色を変える必要も無い。ただのまとめ役だ。いつも通り、トレーニングをしてレースに出て勝てば良い。

 

「じゃあ、トレーニングを始めようか。正月明けだから、最初は準備体操して軽くランニングから行こう」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

 今年の≪フォーチュン≫はどうなるかなー。

 

 実家からトレセン学園に戻ってきて数日。そろそろ身体の調子が元に戻ってきた頃、俺と髭トレーナーは東京都内にあるURAの本部に来ていた。正確には俺達以外にも≪スピカ≫のカレットちゃんと沖野トレーナー、メジロのドーベルちゃんとそのトレーナー、他にダート部門と障害ジャンプ部門のウマ娘達が呼ばれた。

 今夜は年始に発表のあった各年代の最優秀ウマ娘と年度代表ウマ娘の表彰式で、俺も略式のフォーマルドレスを着ている。

 百人ほどの報道陣や関係者の前で壇上に立ち、司会者から昨年の戦績をそれぞれ読み上げられた後に表彰を受けた。

 最優秀ジュニアがドーベルちゃん、クラシックがカレットちゃん、シニアが俺で、オマケで年度代表ウマ娘も選ばれた。

 拍手の後、司会者が今後の目標等を質問してきた。

 

「えっと、私はトリプルティアラを目指します…」

 

 ドーベルちゃんはこういう所に慣れておらず、多数の視線(特に男の)に少し委縮している。

 反対にカレットちゃんは堂々と、ウオッカちゃんへの全勝宣言で会場を湧かした。ここでも対抗意識バリバリ発言はむしろ感心するよ。

 さらにダート部門とジャンプ部門の子の目標の後、最後に俺の番が回ってきた。

 

「では最優秀シニアと同時に、最多票で年度代表ウマ娘に選ばれたアパオシャさん、今年の目標をどうぞ」

 

「昨年の負けを取り返すために、もう一度イギリスで走ります。それと今年はフランスにも行きます」

 

 会場が一気に騒がしくなった。イギリス行きはある程度予想はしていただろうが、フランスの方は驚きの発言だろう。

 

「皆様、静粛にお願いしたします。えーではアパオシャさんには功績を讃え、URAより新たな勝負服が贈られます」

 

 スタッフの女性にご祝儀袋を頂いた。中身はどんな勝負服だろう、実は結構楽しみ。

 

「今年も多くのウマ娘が活躍する事を心より願っています」

 

 司会の言葉で表彰式は締めくくられた。

 式が終わっても俺達ウマ娘は記者達に囲まれて、受賞の感想など色々とインタビューを受けた。

 年度代表ウマ娘の俺が一番質問攻めに遭う。記者達の質問は決まってフランスの事。でも、あえて答えは言わずに適当にはぐらかして、勝負服が楽しみとか、今から多少フランス語を練習しておくなどと、核心までは答えず記者をやり過ごした。

 

 翌日はいつも通りのトレーニングに励んだ。

 今月はクラシック級になったガンちゃんが中京レース場のOP戦、若駒ステークスを走る。

 その相手にみんなで実際のレースを想定した並走を繰り返している。

 並走は毎回シチュエーションを変えて、俺やクイーンちゃんが『逃げ』を選んだり、ダンとバクシさんが壁役になってガンちゃんの進路を塞ぐ事もある。あるいは俺が最後尾から追い立て、ジャンが前をフラフラ走ってブロックしたりと、意図的に不利な状況を作った。

 そうしたレース形式の練習を、ガンちゃんはとても楽しそうに即興で対抗手段を幾つも編み出して攻略して走った。やはりこの子はレースの中で磨かれる天才だ。

 ガンちゃんだけじゃなく、ジャンも結構実力が付いてきて調子が良さそうだ。こいつも今年デビューだから、頑張って勝ってほしいよ。

 クイーンちゃんは何も言う事無し。この子は自分が何をすれば強くなれるか分かってる子だ。俺達はただ一緒に走るだけで事足りる。

 あとはダンだが、なんか顔をしかめて脚の調子を確かめている。ちょっと気になるな。

 

「ダン、足痛いならオンさんに診てもらった方が良いんじゃないか」

 

「私は大丈夫………と言いたいですが、念のために診てもらいますね」

 

 一旦、練習を中断してダンはジャージの裾をまくってオンさんに足を診てもらった。

 その間に俺達も休憩を入れて、水分補給する。

 しばらくするとオンさんが難しい顔をして髭トレーナーと話していた。髭はスマホでどこかに連絡をしている。

 俺達は気になり、髭の電話が終わってから三人の所に行って事情を聞く。

 

「ダンの脚はどうなんですか」

 

「私は専門医じゃないから断定は難しいけど、左脚に炎症の兆候があるね。今日は休ませた方が良い」

 

「今、メジロ家に連絡を入れて、診察してもらうように手配した。俺はアルダンを連れていくから、あとのトレーニングはタキオンに従ってくれ」

 

「皆さん、申し訳ありません。今日はここまでにいたします」

 

 申し訳なさそうに頭を下げる。ダンは元から足が弱かったから、これは仕方がない。

 俺達も気にするなと言って、練習を切り上げた二人を見送った。

 ジャンの耳がペタンと曲がり、ダンを心配する。

 

「アルダン先輩大丈夫かなー」

 

「さて、それは医者に診てもらわないと何ともな。心配だろうが俺達はトレーニングするだけだ」

 

 心配してもダンの症状が良くなるわけじゃない。俺達には俺達のレースがあるんだから、あとは医者に任せてトレーニングを続けよう。

 

 しかし翌日、髭からダンは左脚の屈腱炎と聞いて、チーム全体がショックでしばらく無言になった。

 屈腱炎は骨折と並んでウマ娘を苦しめる故障だ。症状の進行具合によっては引退すら考えなければならない。

 不幸中の幸いで、ダンの場合は発見が早く、症状はごく軽かった。

 それでも数ヵ月は休養を取らねばならず、しばらくメジロの屋敷で自宅療養になった。

 

「みすみすアルダンくんを休養させてしまった。私もまだまだだよ」

 

「そんな事無いぞタキオン。一気に引退なんて話にならずに良かった。今はそう思うんだ」

 

 オンさんは担当ウマ娘の故障を予見出来なかったため、いつもより元気が無い。

 俺達から見たらオンさんだからこそ、元から身体の弱いダンを三年近くケアし続けてG1ウマ娘に導いた事を忘れないでくれ。

 心配はするがレースもあるから、今日もチームは普段通りトレーニングを始めた。

 

 それからはレースが近いガンちゃんを除いて、各自で練習が休みの時にダンの見舞いに行き、それなりに元気な姿を見れた。

 身体は動かせないが出来る事はあると言わんばかりに、山のようなレースのデータを研究して復帰した時に備えるのは、流石メジロの一員と思った。

 

 ガンちゃんも調子は良く、今月の若駒ステークスを完勝して、デビューしてから無敗の三勝目を飾った。

 次は三月にある弥生賞。それも勝ってクラシック三冠の皐月賞に繋げたいところだ。

 

 もう一つ残念な知らせがある。同期のナイスネイチャも屈腱炎を発症して、こちらも無期限の療養となった。

 シニア二年目の主力選手が年明け早々に二人欠けた、今年の幸先の悪さに溜息が出た。

 

 

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