クーピードが爆散した結晶がキラキラと降り注ぐ中、破壊された道路や街並みが修復されていく
現れていた樹木や白亜の建造物も消え、元通りの街並みが姿を取り戻す
ーデュアッ…
白銀の巨人ーウルトラマンノーデンスは構えを解くと白銀の光へと変化し、白舟学園の校舎ー
白銀の光の中から出てきた勇人に早速初子と一郎が詰め寄る
「
「勇人くん、いつの間にそんなすごい力を⁉︎ いやそうじゃなくてー」
質問責めしてくる2人を勇人がなだめる
「待った!待った!!んなことオレも突然すぎてわかんねぇんだよ」
と、勇人がふらつき、初子が抱きとめる
「ちょ、ちょっと勇人⁉︎」
「あ、ちょっと……ムチャしたかも…?」
勇人は抱き止められたままそのまま寝息をかき始める
「寝てる…?無理もないですよね、あんなことがあった後だし」
「全く……ほんとに人騒がせなのよ……」
一郎は苦笑を見せるが、初子はどこか複雑そうな、どこか怒りの見える表情を見せる
「こいつ連れて先生とか呼んでくるわ。一郎はこの子たちの様子見てて」
初子が勇人を背負い直しながら壁際によりかからせた愛たちを指す
「あ、はい。初子さんも気をつけて」
教室から出て行く初子たちを一郎が見送る
初子たちの姿が見えなくなると、一郎の表情が暗くなり自嘲気味な笑みが漏れる
「やっぱり、勇人くんは本物のヒーローだ」
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「ん〜……」
勇人が寝ぼけ眼に起き上がる
そこはいつも夜眠りについて辿り着く白亜の街だった
「あ?なんでここに……?」
『それはキミが眠っているからさ。はじめての戦いで随分と疲れてしまったようだからね』
勇人の独り言に応える声があった
驚いて隣に視線をやると、今までこちらの世界で見たことのない人影がそこにいた
勇人と同じくらいの背格好で、ウルタたちに似た群青のローブを身につけた人物
顔布でフードの隙間もほぼ埋まっているが、フードから飛び出してぴこぴこ動く猫耳や尻尾を見るに、ウルタたちと同じこの世界の住人らしいことが察せられた
「え、いや、誰ぇ!?」
『ふふっ、いいリアクションだ』
口元らしいところに手を当てながら愉快そうに笑う人物
『失礼、名乗り遅れたね。ボクは……そうだな、ミライ、とでも名乗っておこうか』
「ミライ…?名乗っておくって……」
『ボクたちには名前という概念が存在しないんだよ。ある時生まれてここにある、それがボクたちウルタという存在なんだ』
話し込む2人の周りにウルタたちが集まり、興味深そうに見つめ始める
「ボクたち……って、あんたはコイツらの同類?」
『そういうことだ。理解が早くて助かるよ』
ミライは側に置いていた杖をとり、一振りする
と、ミライと勇人の背後に一枚のボードが出現し、浮かんだチョークが絵を描いていく
『そもそもユートはここがどういう場所か知ってるかい?』
「…いや、ウルタたちに聞いたことなかったなそういえば…なんか、ここに来れるようになった時、それどころじゃなかったし…居心地悪くはなかったから」
『ではまずそこから話そうか』
『ここは、キミたち人間の言うところで「意識」の世界。キミたちが生きる「物質」の世界とはまた違う知性が生きる世界だ』
「意識の世界…?」
『ボクたちはある日突然芽生えた。キミたち人間が「夢」と呼ぶ意識世界に生きる精神生命体として』
「えーっと……つまり、ミライたちって体がない、のか?」
『その通り、物質としての体はボクたちには存在しない』
ミライはボードをなぞり、それをしまう
『この世界はボクたちウルタの存在域、名付けるならそうだねヒプノピアとでも呼ぼうか。キミたち人間たちの集合無意識の更に深層にある精神の世界であり、キミたちの願望、未来への理想、そういった「夢」と呼ばれるモノの集積地だ』
「へぇ……ん?でもじゃあ、オレはなんでここに…?」
勇人が首を捻る
ミライは残念そうに首を振り答える
『それは、残念だがボクにもわからない。無意識ながら迷い込む人間の精神は何度か見たことあるが、ユートのように確固たる意志を持ってここにいる人間は、ボクにも初めてなんだ』
「そうか……じゃあ、この力…ノーデンスってなんなんだ?」
勇人がノーデンストライデントを取り出しながら問う
『その巨人、ノーデンスはボクらと同じように生まれた存在であることはわかっている。ボクらと同じく、人間の夢から生まれた存在であること、そしてキミが倒したあの怪物ーメアゴーントを倒して人間を悪夢から解放する存在であるということも』
「人間を悪夢から解放する……か……」
ミライの言葉を聞いた勇人が手にしたノーデンストライデントを見つめる
『この世界が人々の夢や未来への想いから生まれたように、人々の負の想い、悪夢からもボクたちのような意志のある存在が生まれた。それが、現状ボクらがメアゴーントと呼ぶあの怪物なんだ』
ミライの話を聞き、勇人が頷く
「そのメアゴーントを倒せるのは、今はオレだけなんだな?」
『その通り、ノーデンスの力を借りるキミが現状唯一メアゴーントに対抗できる存在だ』
その答えを聞いて勇人はニッと笑う
「なら話は早いな。メアゴーントってのが現れたらオレが倒す!ヒーローみたいな力が手に入ったんだ。ちゃんと一善に使わないとな!」
勇人の言葉にミライが微笑む
『頼もしいよ。キミがまっすぐな人間でよかった』
その時、勇人の体が薄れ始める
『どうやらそろそろ目覚めの時間らしいね、ユート』
「あ?ああ、そうみたいだな」
ミライが勇人に手を差し出す
『ではまた、ボクらはいつもここにいる』
『マタネ ユート』
勇人は微笑んで握手を返す
「ああ、これからもよろしくな」
勇人の体が光の粒になって消え、ヒプノピアから現実世界へと帰っていった
がばっと勇人が上体を起こす
そこはどうやら保健室のベッドだった
「お、目覚めたか寝坊少年」
カーテンを開いて養護教諭の男性が顔を覗かせる
「ああ、お邪魔してました…」
「なんだかしらんが、ちゃんと早寝しないと体が保たんぞ」
「え、早寝…?」
勇人が先生の言葉に首を傾げる
「寝不足で倒れたんだろ?浮橋が運んできてくれたんだから後でちゃんと礼を言っとけよ」
「あー、はい。すんません、ベッド占領しちゃって…」
(初子のヤツが適当に誤魔化してくれたのか…?)
勇人は首を傾げながらベッドから立ち上がり、初子が持ってきてくれていたらしい自分の鞄を持つ
「そういえば、他の人らで怪我人とかはいなかったんスか?」
「怪我人…?今日は貧血になったヤツが他に2人だけだな」
「?怪獣が出てあんな騒ぎになったのに…?」
勇人の言葉に先生が首を傾げる
「おいおい、まだ寝ぼけてるのか?怪獣なんていなかったろ。変な蜃気楼が出たとかで騒ぎにはなってたけど」
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夕焼けの照らす中を1人とぼとぼと一郎が歩んでいく
ふと視界の隅に重そうな荷物を抱えたお婆さんが見え、足が止まる
声をかけようとするが、声がうまく出ない
結局お婆さんは信号を渡っていってしまった
「………」
伸ばしかけた手を無言で見つめる
そのまま帰りを急ごうとしたその時だった
『ヨォ、ヒーロー好きのボウズ』
パーカーを白舟学園の制服の上から着た男が突然一郎の隣に現れた
「あ、えっ⁉︎ だ、誰ですか…⁉︎」
パーカーの奥から覗く口がニッと吊り上がる
『知らなくていい。俺は俺だ』
一郎の目前に回り込み、男ーメツはその肩を掴む
『お前さん、いい目をしてるなぁ。ぐるぐるとドス黒い想いを蓄えたいい目だ』
「な、なんの、ことですか……」
メツは肩から手を離し、ポンポンとその肩を叩く
『まぁせいぜい今日はいい夢を見るんだな』
一郎が呆然としている中、メツは踵を返してどこかに去っていった
「ドス黒い……想い……」
メツが告げた言葉が一郎の中でぐるぐると渦を巻いていた
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自宅に帰ってきた勇人はリビングのテーブルに置かれていたメモを見つける
《しばらく部活忙しいから来れないかも 初子》
「初子、部活忙しいのか…」
リビングにあるソファに腰掛けると鞄の中を探り、それを取り出す
ノーデンストライデント。白銀の巨人に変身することのできる夢の道具
そして勇人の「ヒーローになりたい」という夢を叶えたアイテム
それを眺めていた勇人は思わず頬が緩む
『随分と気に入ってくれたようだね』
「おわっ!?」
突然響いたミライの声に驚き危うくノーデンストライデントを取り落としかける
そのノーデンストライデントからミライの声が響く
『すまない、驚かせてしまったかな?』
「驚くわ!?こっちに通話できたのかよ…」
『ああ、出自が近いはずのノーデンストライデントならボクたちの言葉を中継してくれるのではないかな、と思ってね』
「なるほどなぁ…ん?ってことは、オレ以外の人間とも話できるってことか…?」
『ああ、可能なはずだよ』
それを聞いた勇人はスマホを取り出す
「オレの友達にもミライのこと紹介したいんだけど、いいかな?」
『ボクは構わないよ。驚かれないかな?』
「いいヤツらばっかだから、多分大丈夫だよ。えーっと、初子は今部活だから……」
誰かに電話をかけ、勇人がスマホを耳に当てる
『もしもし、勇人くん?』
「お、よう一郎。今日は色々とんでもなかったよなぁ…」
電話した先は一郎だった
どうやら家に着いていたらしい
「一郎はあの怪獣とか…オレがなんか、でっかい巨人になったのとか覚えてるか?」
『忘れるわけないよ、あんなの。本当にびっくりしたよ』
(一郎は怪獣とかのことはっきり覚えてる…ということは、多分初子のヤツも覚えてるだろうな)
『それで、急にどうしたの?』
「あぁ、そうだった。オレが変身したあの巨人とかのこと、もっと色々離しておきたくてさ、今からそっち行ってもいいか?」
一郎の家はここから近くにある
幼い頃からよく遊びに行っていた馴染みの集合場所でもある
だが、しばらくスマホから返答は返ってこなかった
『ごめん、今日はちょっと体調が優れなくて…』
「え…そうなのか…?ひょっとしてさっきのでどこか怪我したとか⁉︎」
『ううん、違う、違うんだけど、ちょっと今日は一人にして欲しいんだ』
「放っとけるかよ。なんかスポーツドリンクでも差し入れようか?おばさんの帰り遅いならオレがー」
『ー大丈夫だからッ!!』
予想外の怒声に勇人が思わず眉根を寄せる
「……一郎?」
『……ッ、ごめん、勇人くん。それじゃ、また明日…』
ぷつり、と電話が切れる
耳から離したスマホを見つめ、勇人が呆然と呟く
「どうしちゃったんだよ、一郎……」
自室のベッドに腰掛け、一郎も呆然とスマホの画面を見下ろしていた
(……僕、最低だ…)
ぎゅっと、自分の胸を苦しそうに押さえ、そのままベッドに倒れ込む
もやもやとした気分が渦巻く
普段なら眠れそうもないのに、何故か不思議と強い眠気に襲われ、そのまま眠りに落ちる
勉強机の椅子にかけられた制服の前ポケットの中、小さな鉱石のようなものが燐光を放ちはじめていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
勇人くんと出会ったのは、僕たちが小学校に通っていた頃だった
この頃から僕はヒーローが大好きだった
颯爽と現れて、困ってる人を助ける正義の味方
どんな人でも、どんな場所でも必ず駆けつける
そんなヒーローに憧れていた
そんなヒーローに、僕もなりたかった
ある日、クラスの子が教室で酷いいじめに遭ってるのを見た
助けなきゃ、そう思って近寄ろうとした
足が震えて動かなかった
何か言わなきゃ、と思って声を絞り出した
掠れた音が漏れるだけだった
僕は、何もできなかった
ヒーローなら、ヒーローならきっとあの子を助けられるのに
ごめん、と目を瞑るしかなかった
『オイ!そんなよってたかって何してんだ!』
その時、いじめっ子たちに割って入った男の子がいた
『いじめなんてだせぇこと、オレはゆるさねぇ!』
割り込んだ男の子はいじめっ子数名を押し返し、取っ組み合いの喧嘩をはじめた
いじめっ子も僕もしばらくそれを見ていることしかできなかった
『せんせーーい!クラスで暴れてるヤツらがいまーーーす!』
誰かが叫ぶ声
流石に先生を呼ばれては分が悪いと思ったか、いじめっ子たちが逃げ出していく
ぼろぼろになった男の子に女の子が1人歩み寄る
『まったく、また余計なことして』
『ってて、これがオレの日課なんだよ!』
と、男の子がこちらに歩み寄ってきた
『おまえ、すごかったな。よく止めようとしたな』
『えっ……?ぼ、ぼくはなにも……』
『止めなきゃ、って思うことも、りっぱなヒーローの一歩だ』
男の子が手を差し出す
『オレ、
半ば強引に僕の手を取り、握手をかわす
これが、僕と勇人くんの出会いだった
同じヒーロー番組が好きだったことから、僕たちはすぐに友達になった
カッコいいヒーローの話で盛り上がったり
家でヒーロー番組を一緒に見て白熱したり
とても、とても楽しかった
一日一善が口癖な勇人くんは、その言葉通り毎日、困ってる人を見つけたら必ず助けに入っていた
部活の助っ人もこなして、時々やりすぎて初子さんに怒られて
それでも、どんな人もどんな場所でも助けに現れる勇人くんは
とても、とてもかっこよかった
ーばり、ばりばりばりばりばりばりばり
でも、それに比べて僕は、何もできないままだった
ーがりがりがり、ごくり
勇人くんの側で見守ったり、手伝いはしても
僕自身から動くことはできないままだった
勇人くんは、どんどんヒー■ーになっていくのに
ーばくり、ばくり、むしゃ、むしゃ
僕は、ずっと僕のまま
憧れてた■■■■に程遠い臆病なままで
ーごっくん
■■■■の、背中を見ることしかできなくて
そんな僕自身が、情けなくてー
僕はー
ー何に、憧れてたんだっけ?
【ないとめあ あぶそーぷしょん こんぷりーと】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌朝 いつもの通学路
「一郎のヤツ、一体どうしちまったんだ……」
勇人は昨日の電話のことを未だに悩んでいる最中だった
「……なんか、気に障ること言っちまったかな……?」
とぼとぼと1人少し早い朝の街を歩いていく
と、目の前に見知った顔が歩いているのを見つける
「あ、一郎……」
両手に大きなゴミ袋を持った一郎が歩いているのを見つけた
ゴミ袋を町内のゴミステーションに置く一郎に追いつき声をかける
「おーい、一郎おはよう!」
「あ、おはよう、勇人くん」
一郎はにこやかにこちらの挨拶に応える
いつもの一郎だった。不機嫌そうな感じも見られない
「昨日はその……なんだかわからないけど、ごめん!」
一郎に向けて勇人が手を合わせながら頭を下げる
「?なにかあったっけ…?」
「……いや、昨日なんかその…電話かけた時、気分が悪かったって」
「ああ、あのことなら大丈夫だよ。一晩寝たらスッキリしたから」
「へ?やっぱり風邪かなんかだったのか…?」
「そうみたい。僕こそごめんね」
「なんだ、それならいいってことよ!」
へへっ、と2人が笑い合う
「じゃあ、気を取り直して一緒に学校行こうぜ!この前のマスクドセイバーの考察とかしながらー」
「?マスクドセイバーって、何?」
「ーへ?」
一郎が何げなく言った一言に勇人が凍りつく
マスクドセイバーも勇人と一郎がハマっているヒーロー特撮番組であり、これに関しては一郎の方がより詳しく、熱を上げているのだ。それこそ受注生産限定のグッズも極力逃さないほどに
毎回の話からの考察を一郎から聞くのが勇人の楽しみでもあった
そのマスクドセイバーを、一郎は「知らない」と言ったのだ
「いや、何って……マスクドセイバーだよ。先週はちょうど、マスクドニンジャーとライバルのカラミティが熱い一騎打ちをしたじゃねぇか」
「えっと……ああ、あの朝頃やってる子供向けのヒーローものかな?」
「やだな、勇人くん。僕はもうそんなの卒業してるよ」
尚更信じられない言葉に勇人は思わず後ずさる
その時、一郎の後方ー先程一郎が置いたゴミ袋の中身を見て血の気が引いた
そこに詰まっていたのは、一郎が宝物だと言っていたヒーロー特撮のグッズたちだったのだ
「な、何捨ててんだよ⁉︎」
思わず一郎を追い越しゴミ袋を引っ張り出す
「何って、部屋が散らかってたからいらないものは捨ててるんだよ」
「いらないものって…これ全部宝物だって言ってたじゃねぇか⁉︎」
「……どうしたの勇人くん?なんか変なものでも食べた?」
きょとんとした様子の一郎に勇人が呆然とする
『……これは、少しマズイかもしれない』
腰に下げたノーデンストライデントからミライの声が響く
「どういうことだよ、ミライ⁉︎」
『メアゴーントは悪夢から生まれ、人間の精神に寄生して負の感情やトラウマを悪夢に変換、摂食して成長していく…』
「悪夢を食べるんだろ?なんでそれがー」
『悪夢と夢は表裏一体。同時に強いトラウマや負の感情は、その人間の大事なものや切っても切れない関係のものに密接に繋がっている…つまり、悪夢が食べられるということは、その人間の「夢」や「大切なもの」も同時に失われていくということとも言える……』
ミライの言葉に勇人が目を見開く
ーどさっ
と、その目前で一郎が倒れた
「一郎ッ!!」
助けおこすと、一郎はくうくう、と寝息をかいていた
ズンッ、と嫌な衝撃が走る
ー■■■■■■■■!!!
予想していた通り、黒いワニのような怪獣ープリミティブ体が出現。同時にヒプノピアの建造物や樹木も現れる
プリミティブ体は早速その口を大きく開き膨張。ゴツゴツと角ばった鎧のようなものを纏う木馬のような頭部の怪獣ートロイアードへと変貌した
ーギィィィィィィィィィィィィ!!!
木材が軋むような鳴き声を上げ、トロイアードは街を進軍。破城槌になった左腕を振り回し、建物を破壊していく
ーギィィィィィィィィィィィィ!!!
爆炎と悲鳴が上がる中、トロイアードは力強い進撃を続ける
それを見上げ、睨みつけた勇人は眠り続ける一郎を地面に横たえ、ノーデンストライデントを取り出し、トリガーを引く
光に包まれた中、勇人が左腕のバングルをノーデンストライデントに合わせる
《エントリー:シルバー》
ノーデンストライデントを地面に突き立て、三叉のツノを展開する
「待ってろ一郎!すぐに、お前の悪夢を終わらせてやる!!」
勇人がノーデンストライデントを空高く掲げる
「ノーデェェェェェンス!!!」
《プログレス》
《ウルトラマンノーデンス》
《シルバリックブレイブ》
ーデュアッ!!
白銀の巨人ーウルトラマンノーデンスがトロイアードの前に立ち塞がる
ーデュアッ!!
トロイアードの頑強なボディにノーデンスがショルダータックルをぶつけ、その体を押し込む
ーギィィィィィィィィィィィィ!!!
だがトロイアードはそのタックルを真正面から受け切り、ノーデンスを押し返していく
その体を振り払い、破城槌を振り下ろす
鈍重な一撃にノーデンスはよろめき、後退する
【僕はヒーローになれない。いつまでも臆病な僕のままだ】
トロイアードから響く声にノーデンスが動きを止める
【勇人くんは本物のヒーローだ】
【僕は結局憧れるだけで何もできない…】
トロイアードの目からは黒い液体が滴り落ち、まるで涙を流しているかのようだった
【僕は、僕がヒーローを夢見ることの方が、間違いなんだ】
ノーデンスが、その拳を握りしめる
『一郎ォッ!!』
裂帛の気合いを込めてノーデンスが肉薄、トロイアードのボディを掴み、押し込む
破城槌が何度もその体に叩きつけられるが、ノーデンスは今度は怯まない
『ーッ!ごめんな、一郎…お前のこと気づかなくて…‼︎』
トロイアードの破城槌を受け止め、その腕を押さえつける
『夢に見たようなヒーローになれて、オレ舞い上がってたんだな。一日一善とか、助けられる人なら助けたいとか、大口叩いといて、一番の親友のお前のことわかってやれなかった!』
『世界を守れても、友を守れぬならヒーローにあらず……ウルトカイザーの言う通りだ。オレは、ヒーロー失格だ……』
ノーデンスが俯く
だが、すぐに顔を上げ、掴んだ腕を軸にしてトロイアードを大きく投げ飛ばす
『まだまだヒーローには程遠いけど、オレは夢を諦めねぇ!』
『まずはその一歩、一善!お前の悪夢を終わらせる!!』
ノーデンスがトロイアードを指差す
『一郎、お前がヒーロー失格?そんなわけあるかよ‼︎オレが、オレがこうして夢を追えるのは、お前がオレの夢を笑わないでいてくれたからだろうが!!』
勇人の言葉にトロイアードがたじろぐ
『お前も、オレにとっては立派なヒーローで、何より一番の親友だ。だからオレは、お前と一緒に夢を叶えたい!オレと一郎2人でヒーローになりてぇんだよ‼︎』
『お前も初子もいるから、オレはここにいられる』
『今度はオレが、夢追 勇人として恩返しする番。悪夢は終わらせて、一緒にウルトカイザーとか見て騒ごうぜ!一郎‼︎』
ーデュア!!
ーギィィィィィィィィィ!!!
ノーデンスが駆け、トロイアードも突進する
2つの巨体が衝突し、大きな衝撃が走り、アスファルトが捲れ上がる
トロイアードが振り回す腕をノーデンスは受け流しながら拳を次々と叩き込んでいく
ーギィィィィィィィィィィィィ!!!
トロイアードの破城槌を振り上げ、ノーデンスが打ち上げられる
ーデュアァッ!?
大きく吹き飛んで巨体が地面に叩きつけられる
立ち上がるノーデンスのカラータイマーが赤く点滅を始める
『ッツぅ…効いたぜ…あのハンマーめちゃくちゃつえぇ…』
『こっちもなんか武器があれば……』
その時、ノーデンスのインナースペースに立つ勇人が手にしたノーデンストライデントが淡い光を放ち始める
『ん?こいつを使え…?こうか?』
勇人がノーデンストライデントのグリップ底を引き、長く伸ばす
同時に、ノーデンスの手にノーデンストライデントが変形した長い三叉槍が光と共に出現した
《ノーデンストライデント》
《トライデントモード》
『おおっ⁉︎すげぇ!これなら…‼︎』
ーデュアッ‼︎
ノーデンストライデントを大きく振り回し、ノーデンスが駆ける
ーギィィィィィィィィィ!!!
トロイアードも破城槌を振り上げ、突撃してくる
破城槌の一撃をトライデントの柄で受け止め押し返し、ガラ空きになった胴体にトライデントの薙ぎ払いが白銀の軌跡を描きながら突き刺さり、鎧のようなその体と大きな火花を散らす
ーデュアッ!!
強烈なトライデントの一突きを胸に受け、トロイアードは大きく後退する
ノーデンスもトライデントを振り回しながら後退
そのインナースペースで勇人がトライデントとバングルを打ち合わせる
《マキシマム》
《トライデントモード》
『はぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
穂先にエネルギーがみなぎり始めるトライデントをノーデンスが振り回し、構える
『シルバリウムペネトレイト!!!』
槍投げの要領でトライデントが投擲される
トロイアードの胸部にトライデントが直撃、派手な火花を散らしながらその巨体を貫く
トロイアードに背を向けたノーデンスが右手を掲げると、トライデントが飛来しその手に収まる
トライデントをくるくると回して柄を地面に立てると同時に、貫かれたトロイアードが銀の宝石状に硬化し、弾け飛ぶ
街にキラキラと幻想的な光の雨が降り注ぐと共に壊れた街並みも元通りになっていった
『はっ、青臭い話だ。全く』
光の雨を眺めていたメツがつまらなそうに告げる
『惜しいメアゴーントだったなぁ…いい悪夢だったというのに』
『宿主がなよっちいからすぐにやられちまったんだよ』
くっくっく、とアクムが含み笑いを返す
『ーなら、宿主もある程度強いなら、もっといいメアゴーントが育つかもねぇ……クヒヒヒヒ……』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ぱちり、と目を開ける
体を起こした一郎。その隣には勇人が座っていた
「よっ、一郎」
「あれ?勇人くん…?」
寝ぼけ眼であたりを見回す
ここは一郎の家の庭だった
「あれ…僕たしか、家を出て……あれ?」
とあるものに気づき余計に一郎が驚く
「えっ⁉︎ 僕のコレクション⁉︎なんでこんなゴミ袋に詰まって…⁉︎」
一郎は慌ててゴミ袋からグッズを取り出して無事を確認する
ノーデンスから勇人に戻る前に全て回収したから恐らく問題はないはずだろう
その様子を見て勇人が安堵の息を漏らし、ふと腕時計を見て顔を引き攣らせる
「やっべ⁉︎遅刻しちまう⁉︎」
「え?わぁッ⁉︎なんで⁉︎もうこんな時間⁉︎」
「急ぐぞ一郎‼︎ 遅刻なんてしたらヒーローが遠くなっちまう‼︎」
「うん‼︎」
慌てて2人が立ち上がり、通学路を走っていく
隣をぜぇぜぇ息を漏らしながら走る一郎を見て、勇人はある思い出を思い出していた
小学校ぐらいの時、一郎の家で勇人は一緒にヒーロー特撮を見ていた
『カッコいいなぁ、ウルトマグナス…』
『ああ、めちゃくちゃカッコいいよな…‼︎』
2人の少年は目をキラキラさせて画面に集中していた
弱きものを助け、悪をくじくヒーローの勇姿に釘付けになっていた
『こんなヒーローに、オレなれるのかな…』
勇人がふとこぼした一言に一郎が首を傾げる
『ヒーローに?』
『うん。オレの今の夢。ヒーローになって、オレも誰かのために戦いたいんだ』
拳を突き出しながら勇人が言う
前に初子に話した時は呆れられ、クラスメイトに話した時は笑われて、先生たちに話した時もあしらわれた言葉だったからまた笑われると思っていた
『すごい!僕もヒーローになるのが夢なんだ‼︎』
だから、こんな風に瞳を輝かせて言ってきた一郎に本当に驚いた
『…笑わないのか?』
『笑う?なんで?勇人くんならきっとカッコいいヒーローになれるよ』
あっけらかんと、当たり前のように一郎が笑って告げる
このなんでもない一言が、勇人にとっては何よりも嬉しかった
「なぁ!一郎!!」
「はぁ、ひぃ、な、何?勇人くん……?」
ニッと笑って勇人が告げる
「ありがとな!オレの夢を笑わないでいてくれて!」
「え…?夢……?」
今度は一郎がキョトンとした顔になる
「だから、オレも!お前の夢をいっぱい手伝う!」
「一善とかじゃねぇ!親友として、一緒にヒーローやる仲間として!」
勇人が笑って告げた言葉に一郎は少し照れ臭そうに、それでも満面に笑みを浮かべて頷く
「こちらこそありがとう!勇人くん!」
2人の少年は通学路を全力ダッシュしながら笑い合った
ヒーローになるための一善!
そのためにオレたちの部活を作るんだ!
え、顧問の先生がいる?
部員も足りない?
おいおい問題山積みじゃんか⁉︎
変な先輩も現れるし、どうなるんだよ⁉︎
次回
「作れ!オレたちの部活!」
銀色に煌めけ、夢のヒーロー!!