世界に勝った男   作:ジークフリード

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ちなみに竜木の読み方は「はばき」と読む。


作者的には山田先生と本音が好きだけど、この作品の主人公恋愛には発展しないんだよなあ


 

「いやあ、勝った勝った。これでサマーはクラス代表………そして俺が、何故か副代表」

 

 クラス代表決定戦では、一夏の専用機「白式」に乗り、バッキーも同じく専用機「阨染黑皇(あいぜんこくおう)」を乗り熟し、接戦を演じた。

 ISに一切触れず、運動ばかりしていた一夏とISの知識ばかりで体を動かすことを授業以外でしなかったバッキー。しかしどちらもかなりの精度で操り、成長性ではバッキーが上をいった。なれてくると瞬間加速も使用し一夏を翻弄した。

 最後にはお互い単一仕様能力に目覚め、一夏はエネルギーを消し去る零落白夜(れいらくびゃくや)でシールドエネルギーに直接ダメージを与えようとしたが、バッキーの運動、熱、電力、光の区別なくエネルギーをマイナス値に持っていく染黒(せんごく)によりISが機能停止に追い込まれ、一夏が負けた。

 

「ああくそ、悔しいなぁ! 千冬姉の武器まで使って………」

「ナイフは子供が持とうと人を殺せるけど、大人が持ったほうが多くの人を殺せる。結局は使い手次第さ」

「例えが物騒だけど、それもそうか………俺が千冬姉と同じことしろなんて言われても直ぐには出来ないもんな」

「お、何時かは追いつく気だな? 男の子だなあ」

 

 はははは、と男子同士の笑い声が響く。現在はバッキーの部屋で「祝勝会、就任祝」を行っていた。「クラスの皆は俺に居て欲しくないだろ」とバッキーが気を利かせ食堂に向かわず部屋で漫画を読んでいると、一夏が部屋にやってきたのだ。

 

「しっかし皆も酷いよなあ、バッキーが犯人だって放送は誤情報で、バッキーには絶対不可能な事件まで犯人扱いしてたって謝罪もしてたっていうのにさ」

「仕方ないさサマー。昔は村規模でも、今はこんな板で世界中の人間と情報交換ができる時代だ、肯定してくれる数が不明でも両手の指より多ければ自分を正しいと思えるのが人間だからなあ………あ、また俺の書き込みサイトができてる」

 

 やれ世界を裏から牛耳る組織の総統の息子だの、不遜にも男性の権利を主張する男権団体のエージェントだの色々描かれている。

 

「サマーは好きな虫いる?」

「なんだよ唐突だなあ。ん〜、やっぱ男としてはカブトムシ………いや、千冬姉には蝶の絵とか喜んでもらえたっけなあ」

「りょーかい」

「なんだよ了解って」

 

 その後二人でケーキを食べたり味画に違うので一口交換したり、ゲームをして、本音が戻ってくるまで楽しく過ごした。

 

 

 

 

「一夏、またあの男の下へ行ったのか?」

 

 と、どこか非難するような箒の言葉に一夏はむっと顔を顰める。

 

「なんか文句あるのかよ」

「お前も知ってるだろ、彼奴は………」

「なんの証拠もなく犯罪者扱いされて、そのせいで皆に怯えられてる、だ。違うのかよ」

「それ、は………」

 

 少なくともそれ以上の情報は出てこない。国際機関は何一つ証拠もなく、彼を全世界指名手配にし凄惨な事件の犯人として世に知らしめた。

 もちろん証拠がなかったと報道し、掌返しをした者は大多数いたが事件自体は起きていて、未だバッキーを恐れるものも多い。特に国家代表………IS使用者達が軒並み行方不明になった事件を見たIS学園の生徒達はISの絶対性を脅かされた恐怖が強く残っている。

 

「でも彼奴は、そんな奴じゃない。自分の嫌な噂が広まってることも笑い話にしてるんだぜ? 俺だって思うところだってあるのに………だから、バッキーは良いやつだ」

 

 

 

 

 

 

「エネルギー観測不能、か………」

「ほ、本当にISなんですかね?」

 

 織斑千冬は今回の試合のデータを見直しながらつぶやき、山田真耶が恐る恐る呟く。

 エネルギーを消滅させる特性故か、阨染黑皇はエネルギーの観測ができない。本来ならシールドエネルギーの残量を見て試合を止めるべきなのだが、自己申告以外で判断する方法がない。

 

「クラス代表にしなかったのは正解だな」

 

 模擬戦に向かなすぎるし、単純に強すぎる。それに………一夏は仲良くやっているようだが彼が世界人口の1割近く死ぬこととなった怪死事件の発端ではある。今のところ怪しい姿は見せていないが…………

 同室の少女もどこかに連絡を取っている様子も、夜で歩いている様子もないと言っていた…………

 

「判断を下せないが………私としては悪人でないことを祈るしかないな」

 

 一夏にとって、心許せる男友達はIS学園では彼だけだ。ルームメイトには初日に木刀で頭砕かれそうになったらしいし。まあそれでも平然と一緒の部屋に住めるのが一夏だが…………。

 

 

 

 

 ダリル・ケイシーは亡国機関のメンバーである。

 先の事件により大きく人員が減り、それを気に他の裏組織が取って代わろうと、世界は水面下で争いが置き始めている。このまま放置すればそれこそ世界大戦に発展しかねない。

 その元凶とされる竜木■■を捕らえれば、そうなる前に他の組織を潰せるかもしれない。そうでなくても威信を取り戻すことは出来るはずと、彼女の上から命令が来た。

 今のボスではない。今のボスは消極的で接触禁止を言渡している。おそらく自分の上司はその座を奪いたいという思惑もあるのだろうが…………

 

「……………?」

 

 不意にシャランと金属が擦れるような音が聞こえた。周囲を見回し、しかし何も見えない。カン、シャラン、カン、シャランと硬い何かが床にぶつかる音と金属が擦れる音が響く………日本のテレビで見た錫杖のような…………。

 

「っ……」

 

 近付いてくる。一歩一歩…………そして………

 

「…………?」

 

 音がするのに、姿が見えない。やがて音が止まる。一体何が………と、再び周囲を見回し窓ガラスに移る自分の背後に人影があるのに気付く。

 

「っ!?」

 

 慌てて振り返るも、後ろには人影はない。なら窓の向こうに? そんな筈はない、ここは3階階で、窓の外に足場なんて!

 再び窓を見れば、やはり自分の背後に人影がある。

 錫杖を持った山伏のような格好をしたそれは、顔にかけてある布を片手で持ち上げ顔を晒す。

 目も鼻もなく、巨大な口が縦に裂けていた。

 

「ひっ! っ…………あ、え………?」

 

 動けない。声も、上手く出ない。

 山伏はズリュと太い舌を出すと窓ガラスに映るダリルの頭に突き刺す。片手に持っていた壺の中身を探るように動かし、一匹の芋虫を取り出しダリルの後頭部へ持っていき、両手で頭を掴むと……………

 

 

 

 

 翌日、廊下でへたり込むダリル・ケイシーが発見された。

 

「か、かえ………返して、頭…………私の、頭………返して、返して」

 

 錯乱状態にあり直ぐに病院に搬送された。CT検査で、頭部に無数の芋虫の影が浮かんでいた。しかし緊急手術が行われるも、頭部からはなにも発見できなかった。そう、何も……

 

 

 

 

「サマー、ほら蝶々だ」

「おお! すごい綺麗だな、見たことない種類だ…………どこで見つけたんだ?」

「部下に育てさせた」




阨染黑皇(あいぜんこくおう)
制作者:不明
制作会社:不明
バッキーの専用機として何時の間にか整備室に置かれていたIS。誰も運搬をした記憶はない。のに記録だけは正式に残っている。
のっぺりとしたフルフェイスは起動と同時に目玉模様を映し出しバッキーの視線に合わせて動くが意味があるのかは不明。漆黒の機体で背部には翼のようなスラスターがついている、近、中距離型IS。

染黒(せんごく)
単一仕様能力。漆黒のエネルギーのような見た目。
エネルギーを消滅させる点では一夏の零落白夜と類似しているが、この際のエネルギーの動きを観測することは不可能で、観測上エネルギーは存在しているのにまるで減少していくかのように出力が下がっていき最終的には強制停止に追い込む。書類上ではマイナス値に持っていくと記入したが詳細不明で、わかりやすく言うならGODZILLAのギドラがゴジラから熱エネルギーを吸い取ってる状態。観測は別法則の計算式を用意すれば可能。用意自体が不可能だけど。
この単一使用能力の影響か阨染黑皇のエネルギー観測は不可能で、機械的な観測で見ればなんのエネルギー反応もなく動くISらしき何か。本当にISかどうかは聞いてはいけない。
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